マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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妹が目を覚ましたのは翌日のことだった…。




第百六十一話~後日談という名の…~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、伝説たちの…サトシ君たちの絆だったんだね…」

Nは先日起きた光景を思い出し、考えていた。Nたちはあの白の遺跡に戻り、少しだけ崩壊している部分を見てからここで何があったのかを思い出していたのだ。もちろんそれはNだけじゃない、ヘレナとバーベナも一緒に考えていた。でもヘレナとバーベナはNとは違った感情を持っていた。それは疑問だった。何故人間のことを心配し、強い絆で結ばれていたのだろうかという疑問…外の世界に出ていない彼女たちだからこそ、見えてしまった世界なのだと。

Nは彼女たちを見てから言う。

 

 

「僕は世界をもっともっと知りたいと思うんだ。人間とポケモンの絆を…サトシ君たちのような強い絆を…。もちろんヘレナやバーベナにも伝えたい…だから一緒に外に出よう!」

「外に出るって言っても…何処へ?」

「ええ、何も知らないというのに…」

 

ヘレナとバーベナは不安そうな表情でNを見ていた。でもNはその不安を吹き飛ばすように小さく笑みを浮かべて自信満々な表情で言う。

 

「この世界を旅するんだ。ポケモンと人間の様々な関係を見て、そして一緒に学ぼう!…そしていつか、マサラタウンに行こう。サトシ君たちの絆を…そしてヒナちゃんたちの絆を確かめていきたい」

「……Nがそう、望むのなら」

「ええ、一緒について行きます」

「ありがとう!」

 

Nは嬉しそうにヘレナとバーベナを見る。そんなNの幼い頃に浮かべていた久々の笑顔を見たヘレナとバーベナも最初は驚いたような表情をしていたが、すぐに笑顔を浮かべてこれからの旅を少しだけ期待する。何があるのかわからないけれど、でも私たちなら絶対に大丈夫という安心感もあった。

Nはヘレナとバーベナを見た後、何処かの森の方角を見て、そして呟いた。

 

「サトシ君たちにお別れをいわないとね……」

 

 

 

まさにNが見たその森の方角に、サトシ達はいたのだった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「マサラタウンに帰れ」

『ピィカ』

 

「嫌!」

『カゲ…』

『ピッチュゥ…』

 

こんにちは…妹のヒナです。気を失っている間に何やら凄まじいことになっていたようです。ですが事件が起きたのは前日…つまり操られていたみたいですが、その後一日眠っていたみたいなんです。そしてポケモンセンターには兄たちがおらず、アイリスとデントに聞いてやって来たのは森の中。森の中には伝説達やマサラタウンにいるはずの兄のポケモンたち。そしてハルカさんだった。アイリスとデントはポケモンセンターで待っていると言われたため、何かあるのかなと思ったら、いきなり兄からマサラタウンに帰れと言われてしまった。もちろんそれは嫌だから私は拒否する。でもヒトカゲやピチューは微妙そうな表情を浮かべていて…私が寝ている間に何があったのだろうと思ってしまった。

 

 

『ヒナ…サトシの言うことは素直に聞け。お前が旅をして危険な目に遭ったということを…そしてこれ以上の危険が起きる前にマサラタウンで暮らせと言うその心を…』

 

「ミュウツーの言うことは分かるよ。お兄ちゃんの言いたいことも……でも私はまだイッシュ地方を一緒に旅したい!…ううん違う。お兄ちゃんと一緒にマサラタウンに帰りたいの!」

「ヒナ…」

『ピィカ…』

『カゲカゲ…』

『ピチュピチュ…』

 

この白の遺跡を見たら、兄はその後マサラタウンに帰ると言っていた。だから私はこのまま帰るより、一緒に帰りたいと望んでいるのだ。危険だからとこのまま帰ってしまったら、この先私が成長したとしても何もやっていけないような気がする。危険だからと一度逃げてしまったら、その先も一緒だと思ったからだ。だから私は、先にマサラタウンに帰れと言う言葉を拒否した。

 

『ダネダネ!』

『ベイベーイ!!』

 

「フシギダネ…ベイリーフも…でも私は絶対にお兄ちゃんと一緒に帰るの!そう決めたのよ!修行の時もそうだった…私は大丈夫だから…だから私は先にマサラタウンに帰らないからね!」

 

 

フシギダネやベイリーフも私に近づいて早く帰ろうと言ってきた。人の言葉に変えて教えてもらわなくても分かる。フシギダネやベイリーフだけじゃない…皆が私のことを心配しているのだと分かっている。でもこのお願いは聞けない。私は絶対に兄と一緒に旅をしながら帰ると決めたのだから。

でも兄たちは難しそうな表情をしていた。私の真剣な声を聞いて望み通りまだここに残ってもいいと思ってしまうけれど、でもそれは危ないのではないか。また≪あのようなこと≫になったらどうするのだと考えている。

 

ハルカさんは何か思うことがあったのか、近づいてきて私や兄たちに向かって言ってきた。

 

「サトシ。ヒナちゃんがこんなに望んでいるのならその通りにしたらどうかな?」

『それは…』

『その言葉は、つまり優れたる操り人の妹を旅を続行してもよいということか?』

『ワニワニ?』

『ヘイヘイ?』

「そういうことよ。私もマサトが…弟がいるからわかるの。でもこのままマサラタウンに帰っちゃったらヒナちゃんのためにならないと思うのよ。だからヒナちゃんの望みどおりにしてあげて…!」

「………………………………」

 

 

兄はハルカさんの言葉を聞いていても黙ったまま、何かを考えているようだった。その表情はまるで過保護な娘を独り立ちさせようか迷っている父親のようにも見えてしまって…でも私はそんな兄たちに絶対に納得してもらいたいと思って、ハルカさんのことを見てから口を開く。

 

「私はね…もっと大きくなったらいつか旅に出ると思うの…。でも昨日のように危険だからということでマサラタウンに帰っちゃったら、もう二度と旅に出れないような…そんな気がするんだ。だから私はこのままお兄ちゃんたちと旅を続行したい!私は、もっともっと世界を見たいの!…ヒトカゲ達はどうかな?私と一緒に旅をしてもいい?」

『カゲ…カゲェ!!』

『ピッチュゥ!!』

 

「ありがとう…ヒトカゲにピチュー」

『カゲカゲ!』

『ピチュピッチュ!』

 

ヒトカゲとピチューが私の言葉に頷き、兄たちを見て一緒に旅をしたいと言ってくれた。その言葉を聞いた兄のポケモンたちは少しだけ動揺し、心が揺らいだみたいだった。このまま私をマサラタウンに帰すのはいいかもしれないけれど、それでもそれは成長にはつながらない。…過保護に平和な暮らしをするだけなら、それこそヘレナさんやバーベナさんと同じような状況になる。私はこのまま閉じた世界で一生過ごすつもりはない。このままマサラタウンに帰って、平和に暮らすつもりはない。危険があるかもしれないけれど、それを乗り越えて強くなりたいと望んでいるからだ。

兄は私の目をじっと見つめて、口を開いた。

 

 

「お前を守ると俺は誓った。…でもあの時油断して、ヒナを守りきれなかった…もしかしたら…いや、絶対にもうそんなことは起こさないけれど、でもお前が危険な目に遭う可能性だってあることに、俺は怖いと思う…それでもヒナは俺と一緒に旅をしたいのか?」

『ピカピカ…?』

「うん!旅をしたい。私は…ううん、私たちはもっともっと強くなりたい!!」

『カゲェェ!!』

『ピッチュゥゥ!!』

 

「……そうか」

『ピィカ…』

『待てサトシ…!良いのか。ヒナをマサラタウンに帰さなくても…?』

「ああ、良いんだミュウツー…ヒナが旅をしたいと望むなら、俺はその通りにしたい。それにもうあんな危険な目には絶対に合わせないさ」

『…優れたる操り人がそういうのなら…私たちはその通りにしよう。だが何かあれば私たちも力を貸す』

「おう。ありがとうなルギア…」

『ピカピカ…』

 

『ダネ…』

「大丈夫だよフシギダネ。俺たちは…ヒナを無事にマサラタウンに連れて帰る。その時は頼むぜまとめ役」

『ピッカ!』

『ダネ…ダネダネ!』

 

『ッッ―――――――――――!!!』

 

 

「何はともあれ、これで解決かも…?」

『ハルカ、カモカモ?』

「ええそうよマナフィ。もう大丈夫よ」

『マナァ!』

 

兄たちが納得してくれて良かったと思う。マサラタウンに強制送還だなんてことになったら嫌だもの。でも、兄は私が危険な目に遭ったことで考え直したらしい。もう油断はしないということと、これからは絶対に私たちを守るということを…。まあやらかさなければ私は何も文句は言わないんだけどね…。でもこれからは絶対に事件に巻き込まれないように気をつけないといけないと思い、気を引き締めた。

これから兄たちと一緒にマサラタウンに帰ることになるから、皆とは一時のお別れかなと思いながらも…。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「…そういえば、ルカリオ…どうしたの?」

『カゲカゲ?』

『ピチュピチュ?』

 

ルカリオが私たちよりも少しだけ遠くの方で座り込み、落ち込んでいる様子が見れた。ルカリオの周りに何か暗すぎる雰囲気が漂っていて、うかつに近寄れないような感じがした。私たちが森の中に来たときはもうルカリオは座り込み落ち込んでいたからちょっとだけ気になっていたのだ。森の中に入ってすぐ兄に帰れと言われたから今まで指摘できなかったけど、今もずっとその状態を維持しているルカリオのことが気になり、恐る恐る兄たちに聞いて見た。すると兄は苦笑して教えてくれた。

 

 

「ああ、操られてしまったことに落ち込んでるんだよ…あっちにいるレシラムもな」

『ピィカ』

「レシラム…!?うわ本当だ落ち込んでる!!」

『カゲカゲ!?』

『ピチュピチュ!?』

 

 

 

『…………………………………………』

『…………キュウゥゥウ』

 

 

 

 

―――――――――――その後、Nさんがお別れを言いに来る間に私たちはルカリオやレシラムを必死に慰めていたことは言うまでもない。…まあ私も操られていたし、これから頑張ればいいから大丈夫だよルカリオにレシラム。

 

 

 

 

 




妹の心境。
 まあこれで平和な旅ができるようになったのかな…?




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