マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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科学者は全ての行動を≪実験≫としてしか見ていなかった…。






第百五十八話~科学者は何を思う?~

 

 

 

 

 

 

 

 

「アクロマ貴様!勝手な真似をするなとゲーチス様に言われていただろう!!」

「いえ、私が聞いたのは、Mr.ゲーチスの邪魔をするなという言葉ですが?それに≪あれ≫を操ったところで邪魔になるどころかむしろいい人質となる…それに実験も出来て一石二鳥ですよ」

 

プラズマ団にヒナを操り、勝手にいろいろと機械を作動させ行っているアクロマに怒って叫んでいたが、アクロマは冷静に言う。自分の実験は邪魔どころかむしろ貢献しているのだということを。そしてその言葉に否定できなかったプラズマ団はうめき声をあげてアクロマを睨むだけに抑えた…。

 

――――――今はまだ、ゲーチスは来ていない。

 

 

 

「クッ…ピカチュウ、10まんボルト!!」

『ピカピカ…ピカッチュゥゥ!!』

 

「………ルカリオ、はどうだん」

『…………………』

 

 

ピカチュウの10まんボルトは妹であるヒナが操られたというサトシの動揺を感じ取り、自身も同じように動揺したからかいつもより威力は低い技を放つ。それを操られ能力が向上したルカリオのはどうだんによって防がれてしまった。ヒナは操られただけじゃないらしい。冷静にバトルを見て考え、どう指示すればいいのかというトレーナーとしての能力の力が伸ばされていた。そしてサトシは目の前の光景に動揺し、手持ちのポケモンたちも攻撃しようと思えずにいつもより調子の悪い技を放って何とかバトルの形にしていた。リザードンがいつまでも調子の出ないサトシにキレてサトシに向かって炎を放つ。サトシはそれを避けきれず、受けてしまった。だが、サトシは火傷などを負わず、むしろ炎を放ったリザードンの激励に冷静さを取り戻したかのように見えた。

 

 

『グォォォオオオオオ!!!!』

「リザードン…そうだな。このままじゃいけないよな…リザードン、ドラゴンテール!!」

 

「おやおやこれはいけませんね…さあ≪防ぎなさい(・・・・・)≫」

「…はい。アクロマ様」

『……………………………………』

 

 

 

『ッッ!?』

「止まれリザードン!!!………アクロマ…!」

 

 

 

リザードンの素早いドラゴンテールがルカリオに当たりそうになった瞬間だった。アクロマがこのままルカリオを戦闘不能になるかもしれないという事態を見て、小さく笑みを浮かべて言ったのだ。そしてヒナはその指示に従い、動いた。ルカリオの前に向かって、動いた(・・・・・・・・・・・・・・・)

それを見て驚愕したリザードンがドラゴンテールを放つのを止めてすぐに後ろに下がる。そうして見えた光景は、気分が悪くなるような光景だった。

 

ヒナが両手を広げてルカリオの前に立ち、リザードンのドラゴンテールを受けようとしていたのだ。

――――――アクロマがやったことは、サトシにとってバトルとは言えないこと…。妹を使った明らかな牽制だった。人質として操っているんだぞという、牽制だった。

このままルカリオを攻撃しようとしても、ヒナがそれを防ごうとして受けに行く可能性が高い。サトシのポケモンたちはレベルが強く、手加減をしてもポケモンにとっては大丈夫かもしれないが、人間にとって怪我以上の危険性が高いと考えていた。

 

このままではいけないというのに、技の指示を出すのを躊躇させてしまう光景が広がっていたのだ。

 

 

 

「さあ見せてくださいよサトシ君!君の答えを!実験動物(あれ)を犠牲に止めるか、そのまま敗北を選ぶのか…どちらかをね!!」

 

 

 

アクロマはただ単純に気になっていた。操られているルカリオや他のポケモンたちに対して戦闘不能になってしまうような攻撃はすぐにヒナの身体によって防ごうと指示をしていて、まともな攻撃をできなくしたことによるサトシの選択に気になっていたのだ。もちろん、普通の操られている人間だったら攻撃されそうなポケモンの間に入って庇うという行動はできないだろう。だが修行をし、素早く動けるようになったヒナだからこそ…そして操られたことによって能力と指示の向上ができたヒナだからこそできたこと。ヒトカゲ達と強くなり、守ろうとした力が…皮肉なことに今ここで彼らを殲滅しようと動く力となってしまっていた。でも、サトシは負けを認めない。このままの状態でいいとは思わないからだ。だから、ヒナを動かさないという形でルカリオを攻撃することにした。

 

 

「ミジュマル、アクアジェットでルカリオに回り込め、ツタージャはヒナがルカリオに近づかないようにつるで援護!リザードン、かえんほうしゃ!」

『ミッジュゥゥゥ!!』

『タジャ!』

『グォォォオオ!!!』

 

「……ルカリオ、一歩右二歩後ろ…そのままジャンプしてはどうだん」

『…………………』

 

「…ハッ!流石俺の妹と言ったところか…?まったく嫌になるな…本当に…」

『ピィカ…』

『ミジュ…』

『タジャ…』

『グォォ…』

 

『カゲ…』

『ピチュゥ…』

 

ヒナで攻撃を防がれないように、ツタージャの援護でルカリオを攻撃しようと指示を飛ばしたけれど、ヒナは的確な指示によってかえんほうしゃとアクアジェットを避け、その余波を受けないようにはどうだんで防いだ。普通のバトルだったらその指示に感心している所だが、今は違う。この状態を維持してはいけないと思うのだから。

サトシは拳を握りしめて考える。このままではいけないということ。でも直接倒しに行こうとしても…ヒナの首輪を壊そうと動いたとしても、アクロマがそれを想定して何かヒナに致命傷を負わせようとしてくるかもしれないと考え、反撃に移れないのだ。ピカチュウたちも同じように考えていた。サトシと同じようにルカリオ達の攻撃を防ぐことしか、やるべきことはないと感じていたのだ。そしてアクロマが後ろからあの機械で自分たちを操ろうと狙ってくるという可能性にも十分警戒しながら、動いていた。その消耗は激しく、ある意味チャンピオン戦の時よりもキツイと思える戦いになっていた。ヒナが人質のような役目でサトシ達に立ちはだかり、ルカリオを指示して攻撃してくるその行為が、何もかも苦しいと思えた。それを見ていたヒトカゲとピチューは涙を浮かべ、悲しんでいた。この目の前の光景を、兄であるサトシと同じように苦しみ、見たくないという考えとその光景による絶望が突き刺さった。

 

――――このままだと駄目だとそう考え、どう突破するのか考えていた時だった。

 

 

 

「やめるんだ!!」

 

 

Nの心からの叫び声に周りが一瞬停止した。それぐらい大きな声でアクロマ達…いや、プラズマ団に向かって叫んだ心の声だった。Nが自分の手に持っているのはライトストーンの入っている箱。それをアクロマ達に見せる様にして、口を大きく開いて叫ぶ。

 

 

「このライトストーンがどうなってもいいのか!?」

 

 

「N…?!何をするつもりだ?!」

 

捕えられていたハンサムがNの行動に驚愕し、叫ぶ。ライトストーンはプラズマ団の目的の物であるけれど、それと同時に他の人間にとっても重要なものだと考えられていた。だからこそ、Nのすることはプラズマ団を止める行為だとしても、ほかの人間にとっても害となる行為だと考え、叫んだのだ。でも、Nはそんなことどうでもよかった。ヒナたちを解放することができたらと…悲しむサトシ達やヒトカゲ達を見ていられなくなって飛び出したのだ。

 

 

「お前たちが欲しいのは…僕とこのライトストーンのはずだ!ヒナちゃんたちのコントロールをやめれば…これを渡す!だがそうでなければ…!」

 

「チッ…いかがいたします?アンジ―さま!」

「我々の目的はライトストーンのみだ」

 

「分かった!取引に応じよう!さあ、ライトストーンをもってこっちへ来るんだ!」

 

「Nさん…!」

「大丈夫だよ、サトシ君。巻き込んでしまって本当にすまない…」

 

プラズマ団の人たちが話し合い、Nの声を聞いて答える。Nの言うとおりコントロールをやめようという答えを。その間、アクロマは何も言わず、ただその話し合いと取引を聞いて見ているだけだった。

 

そしてNはその通りにライトストーンをもって近づいていく。サトシはNのことを気にかけ、捕まる必要はないと考えたが、ヒナたちがコントロールされている以上取引をしないといけないということも感じていた。Nはサトシを見て、罪悪感を抱いているような表情を浮かべていたが、すぐにプラズマ団に向き合い、近づく。サトシ達はNを見て、そしてヒナたちを見ていた。でもNが近づいてライトストーンを渡しても、Nが捕えられたとしても何も変わらなかった。それに気づいた時、プラズマ団はライトストーンをもって、そしてNを捕えている状況だった。

Nは取引を破ったことに対して怒り、プラズマ団に向かって大声で叫ぶ。

 

「話が違うじゃないか!」

「いえ、確かに取引はしましたよ?それに応じてルカリオ達の支配は解きました。ですが首輪からのコントロールを止める方法は首輪を取り外すほかにない…それは最初にも言いましたが話を聞いていましたか?」

「クッ!!」

 

アクロマが馬鹿にしたような表情でNのことを蔑み、笑う。Nはポケモンたちはコントロールの支配から解かれたというのに、ヒナを解放できなかったことを悔やみ、そして自分の行動によってサトシ達を劣勢にしてしまったことに深く後悔した。でももう遅いことだった。サトシも、Nのことを守れず、そのまま見過ごしてしまったことに後悔していた。

 

 

「…ゲーチス様の到着だ」

 

 

 

―――――何もかも、サトシ達にとって良くないことが起きた後に、プラズマ団のリーダーが到着してしまった。

 

 

 

 

 

 

 




To be continued.



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