兄が旅で出会ったのは立派な髪型をした集団だった。
こんにちは兄のサトシです。最近キモリがジュプトルに進化して、仲間たちも増えて毎日が楽しい旅です。
まあそんな楽しい旅をこの目の前のトレーナーたちが邪魔しているんですけど…
「だからァ?お前のジュプトルと俺のコイキングと交換してくれって言ってんのよ?頭大丈夫?」
「いやお前の頭の方がおかしいだろ」
「んだとォ!?」
俺の目の前にいるのは、不良もびっくりの立派なリーゼントをした青年とその愉快な下っ端たちだ。俺たちを逃げないようにするためか不良と下っ端で周りを囲み、下品な笑い声を出して脅してきた。
不良どもにジュプトルとちょっとした修行を見られたからこんな面倒なことになっているというのは理解している。ちなみにその交換したいと言っているジュプトルはボールの中にいる。先程からずっとボールがガタガタと揺れていて出てきそうだが、そうしたら本当に危険だ。目の前の不良たちがという意味で。
ジュプトル達は…まあなんというか、手加減というものを知らず、よく暴走をしている。俺やピカチュウもよく吹っ切れたり暴走したりはするけど、周りの被害はちゃんと確認するからそこまで悪くないと思っている。でもジュプトル達はそういう手加減を知らない。ヘイガニはもちろんだが、特にジュプトルがやばい。
あれかな、狙った獲物は逃さず切り刻む的な。
まあこの場合出てきても特に問題はないのだが、ハルカとマサトの情緒には良くないからジュプトル達の入ったボールを押さえて出るのを我慢してもらっている。
そして俺とタケシでハルカとマサトを守り、ピカチュウも手加減をしてこの不良たちを蹴散らそうと電撃の準備をしていた。これで俺の指示をとばせばすぐに終わるはずだった――――――
「ハッハァ。お前もしかしてジュプトルが弱っちぃの気にして交換してくれないとかかぁ?」
「あーそれでかよ」
「ギャハハハ!!安心しろよ!お前のジュプトルは俺が責任もって育ててやるからよォ?」
――――――この言葉が無ければ。
「誰が弱いって?」
「あぁ?」
「誰のジュプトルが弱いって!!!?」
『ジュッ!!』
押さえていたはずのボールから勢いよくジュプトルが飛び出し、不良たちを睨む。俺が手でジュプトルを押さえているからジュプトル自身も俺の意思を聞きとり不良たちを切り刻もうとはしない。でも不良たちは俺とジュプトルの怒気に押され気味のようだ。少し怯えたような表情を浮かべている。
「ちょっとサトシ!?」
「サ、サトシ!!?」
「いいから…大丈夫だから…なぁ?」
「ヒィ!!」
不良たちは俺の顔を見て怯えていた。身体が震え、今にも逃げ出しそうだ。
だが不良の頭でもあるリーゼントはプライドなのかボールからハッサムを出し、バトルを挑んできた。でも俺はそんな普通のバトルなんてやるつもりはないけどな。
「なめんな!!」
『ジュルッ!!!』
俺とジュプトルが一緒に飛び出した。ポケモンだけでなく人も一緒に飛び出したことにリーゼントたちは驚き、ハッサムにまともな指示を出そうとしない。そんな彼らに俺はまず目の前にいるハッサムに回し蹴りを食らわし、ジュプトルの方へ飛ばす。そして俺がリーゼントたちの方へ走る間にジュプトルは飛んできたハッサムにリーフブレードで切り刻み戦闘不能にしてリーゼントの目の前へやってきた。
「ヒッヒィイイイッッ!!!!!」
その時間、2秒もかかっていなかった。
リーゼントたちは驚き、恐怖で震えていた。なんせポケモンとトレーナーが一緒に走ってきたと思ったら自分のハッサムは戦闘不能になり、目の前に真顔で立っているのだから。
「……それで?」
「も、申し訳ありませんでしたァァア!!!!!」
「それだけで許してやると思ったかゴルァ!!!」
『ジュルァッッ!!!!』
俺がリーゼントに右ストレートで殴り、その間にジュプトルがリーゼントのリーゼント(髪の毛)を切り刻む。
「うわぁあああすいませんでしたぁあああ!!!」
「ほんとうにもうしませんからあぁああああ!!!」
吹っ飛ばされたリーゼント…いや不良集団の頭に下っ端たちは恐れ戦き、倒れている頭とハッサムを連れて逃げて行った。
「…チッ今度会ったらトラウマ作ってやる」
『ジュッ』
俺の舌打ちと同時にジュプトルも頷き、逃げて行った不良集団たちを睨み続けていた。
「あーやっちゃったな…」
『ピカッチュゥ…』
「サトシ…かっこいい!」
「すごいや…僕もあんな風になってみたい!!」
そして俺とジュプトルの後ろの方ではため息をつく1人と1匹。
そして感嘆の声を上げ、もっと頑張ろうとやる気をだす姉弟がいた。
兄の心境。
ジュプトルといいコンビネーションができた。