マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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その頃の地上は凄まじいことになっていたりする…。





第百五十六話~閉じ込められ、Nは語る~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…こんにちは、妹のヒナです。現在私たちは出入り口のない穴の中に座っています。ライトストーンが光り輝いているためパニックにならずに済み、良かったと一安心しています。

最初は落下中に意識を失っていたんですが、兄が助けてくれたおかげで怪我1つなく、起きた時には心配して泣いていたヒトカゲとピチューにきつく抱きしめられた。…心配かけてごめんね。

 

「出入り口がなくて…それでさっき落ちてきた穴も塞いでる…じゃあどうやって外に出たらいいの…?」

『カゲェ…』

『ピチュゥ…』

 

「大丈夫だ。外にはアイリスたちもいるし…心配すんなよ」

『ピッカ!』

「ああ、そうだね…」

 

外にいるみんなに任せて私たちはそれぞれ座り込み、救助が来るのを待つことになった。兄は座る前に近くにあった壁を調べていて、周りを見渡していたからもしかしたらここから出る方法を考えているのかなと思った。けれど外の救助を待つことにしたらしい。私とヒトカゲとピチューと…そしてNさんの近くに座り、待ちながら話していくことになった。

話すといっても、Nさんが疑問に思ったことを独り言のように呟いていた。私たちと別れてからずっと考えていたことを、Nさんと一緒にいた女性…ヘレナさんとバーベナさんが何で人間を否定するのかを…そして私たちが望むポケモンたちとの絆を…。

 

「僕は不思議だと思った…。ヘレナとバーベナが人間を否定し、ポケモンと人間が別離した世界を望む一方で、君たちのようにポケモンと人間が絆を結び、信頼し合っている関係を築く…世界を見てきたときもそうだったよ。ポケモンを家族のように思う者。共に仕事で汗を流す者…あるいは、ポケモンを捨ててしまう者…人の考えることは本当に様々だと感じた」

「それは…やっぱり見てきた世界が違うからじゃないですか?」

『ピィカ?』

「見てきた世界が…違う…?」

「そうですね…お兄ちゃんの言う様に、人はそれぞれ違う考えを持ってます。それはつまり、見てきている光景が違って見えているのと同じようなことだと思うんですよ」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

Nさんの疑問は世界中で起きている人間とポケモンとの関係、そしてその考え方だった。ヘレナさんとバーベナさんが人間を否定しているということは、私たちの関係を否定しているということ。私たちにとってポケモンと人間がそれぞれ離れて暮らすというのはあり得ない世界だと思っているから、やっぱり見てきたもの、考え方の違いによって変わるものなのだろうと思う。それぞれの人間がいて、様々な関係を持っているからいろんな絆があるのだと私は信じている。兄や私たちのようにポケモンを家族だと思う者たちがいて、そしてジュンサーさんやジョーイさんたちのようにポケモンと仕事を共にしていく者もいる…つまり、考え方の違いとは世界の見え方の違いだと思う。世界がポケモンたちを傷つけ、悪意が蠢くと信じている者は、すべての人間がポケモンたちを傷つけていると錯覚する。逆に人間といるポケモンたちは皆幸せだと思う者は、町で見かける人とポケモンの姿を見てああ皆が幸せなんだと誤解する。…まあつまり、自分たちの考え方、見えている光景の感じ方によって違ってくるということだと思う。だからヘレナさんとバーベナさんも、私たちとは違った見え方をして、考えているのだろう。それこそ、ポケモンと人間がそれぞれ分かれて暮らしていくと言う世界を望んでいるように…。

Nさんは考えるような表情をしてから、兄に向かって言う。

 

「サトシ君はレックウザに強き者として恐れられ、そして恩人として感謝の念を抱いていた。でも、他の人間だったらそうはいかないだろう…キミだからこそ、そう感じているポケモンたちが大勢いるはずなんだ。他の人間だったら捕まえて研究材料にしたいと望む者、捕まえて自慢したいと考える者がいるかもしれない…」

「それは…どうなんでしょう?俺の他にも、例えばアイリスとかデントとか…もしかしたらほかにも大勢…レックウザを見たとしても俺と同じように友達になりたいと思うかもしれませんよ。俺だけじゃない、ヒナだってそうだしな?」

『ピィカ!』

「まあ一応そうなんだけどね…でもお兄ちゃんの言うとおり、レックウザを見たとしても、私たち以外の人間全員が捕まえたり、研究材料にしたいと望みませんよ。それこそ…ヒカリさんとか、ハルカさんとか…伝説と仲が良いですからね」

『カゲカゲ!』

『ピッチュゥ!』

「ヒカリ……と…ハルカとは一体誰なんだい…?」

「俺が他の地方を旅していた時に同行していた仲間ですよ。ヒカリは…シンオウ地方で伝説と呼ばれるギラティナやシェイミに好かれていて、仲間として一緒に旅したいと望まれてついて行ってますし…それにハルカも、マナフィっていう伝説のポケモンから母親として見られてて…でも海で生きるマナフィのために幸せを祈って別れたんです」

『ピィカ』

「まあそれでも、ハルカさんは無事にマナフィと会えましたよ?マナフィもその時再会を喜んでいましたし…レックウザだけじゃない…伝説のポケモンだからと邪な気持ちで捕まえようとする人はいるかもしれませんが、それは全員じゃないです。私たちやヒカリさん達のように…いろんな人がいて、そしていろんな関係を持っているんですよ!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

「…君たちは何で、ポケモンと仲良くなりたいと望んで一緒にいる?トモダチ…とは違った感じがするけれど……」

 

Nさんが伝説を捕まえようとする人間はいるかもしれないけれど、それは全員じゃないという言葉に納得し、少しだけ笑みを浮かべていたけれど、すぐに気を引き締めて口を開いた。そして私たちにポケモンとどう望んで一緒にいるのか、そしてその関係を聞いてきた。私と兄と…そしてピカチュウたちと一緒に顔を見合わせてからその質問に答えた。

 

「俺たちはポケモンと仲良くなりたい…もっともっと知って理解したいと望んでいるんです!」

『ピィカ!』

「お兄ちゃんの言うとおりです!…それに私たちの関係は友達のような大切な家族のような関係ですよ。切っても切れない絆なんです!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

「そうか…キミたちのような人間がいるということが…とても嬉しいよ…!」

 

Nさんは笑って私たちを見てくれた。その笑みは、私たちとの関係を受け入れてくれたと感じて、私たちも笑顔でNさんを見つめた。ヘレナさんやバーベナさんもNさんのように、ポケモンと人間との絆を信じてほしい、分かってほしいと望みながらも――――――。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

――――――――Nさんと話し合った後。何か、大きな音が聞こえてきたのを感じて、私たちは立ち上がった。

 

「何だ…?」

『ピィカ…?』

「大きな音…爆発音かな?」

『カゲェ…?』

『ピチュゥ…?』

 

「ッ…トモダチの声が…悲鳴が聞こえている…!」

 

 

Nさんが悲痛な表情を浮かべて天井を見上げた。でも見えているのは土と壁と岩だけの光景。外に出ようと思っても出られるか分からない状況。外で何が起きているのか私たちは気になった。Nさんが外でポケモンたちの悲鳴が聞こえているということは、何か問題が起きたということだ。

 

「外で何か起きてるってことなの…!?」

『カゲカゲ!?』

『ピチュピッチュ!?』

 

「もしかしたら…プラズマ団かもしれない…!」

 

Nさんはプラズマ団がこちらに襲いかかってきているかもしれないと言ってきた。もしそうなら外にいるアイリスたちが危ないということ、プラズマ団が何かやろうとしていることがわかる。でもこのまま外に出られないとなったらどうすればいいのだろう…。

 

「外からの救助はもう期待できないし…このままここにいるしかないの?」

『カゲ…』

『ピチュ…』

 

「いや、そんなわけないだろ?」

『ピカピカ?』

 

兄が自信満々な表情でボールを次々と投げて手持ちのみんなをボールから出す。そしてここから脱出するために穴を掘るぞと叫んできた。

凄く無茶な気もするけれど…でもそれができちゃうのが兄なんだよねと思い、苦笑してしまった。そしてその間も、Nさんは驚いたような表情を浮かべていたけれど、すぐに真剣な表情で兄たちを手伝おうとして行動していた。私たちもその手伝いをしないといけないと思い、ヒトカゲ達と一緒に兄たちに近づいた――――――。

 

 

 

 

 




To be continued.





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