プラズマ団と兄たちとの対立…。
こんにちは妹のヒナです。現在霧の中を歩いています。Nさんが連れられてどこかに行こうとしているため私たちもそのあとを追い、歩いているのです。
というよりも…この光景はどこかで見たような気がする…おそらく原作知識で見た光景なのだろう。でも何があったのかさえ思い出せないし、Nさんを連れている2人の女性についても分からない。…でも危険だという感情はないから大丈夫…かもしれない。とにかく警戒はしないと駄目だと思いながら歩いていった。兄とピカチュウとルカリオも警戒しながら歩いているし、アイリスやデントも彼女たちが危ない人でNさんに危害を加えると分かったらすぐに助けようと考えているみたいだ。とにかくこの場所は何処なのだろうと思いながら私たちは歩いて行った。
―――――――そして着いた先に待っていたのは、大きな泉だった。でも底は浅く、歩いても大丈夫なぐらいの水深みたいだと分かった。そこにNさんを静かに降ろしていく。Nさんは泉の水に浸かり、このまま大丈夫なのかと心配したときにそれは起こった。
「これは…!」
『ピィカ!?』
「一体何が起こってるの…!」
『キバキ!?』
「Nさんの怪我が…治ってる!?」
『カゲカゲ!?』
『ピチュピチュ!?』
泉の水が光り、Nさんの怪我が治っていく。その様子を見て私たちは驚いた。Nさんの近くに行って大丈夫なのか見たいのだけれど、サーナイトが私たちを睨み、近づけさせないようにしているため無理やりは駄目だとその場に立ち止まる。そしてNさんが目覚め、怪我が治り大丈夫だと分かって私たちは安心した。でも女の人たちは私たちのことを睨んで、口を開いた。
「あなたたちは、招かれざる客です!」
「すぐに、ここから立ち去ってください!」
「え…?」
女の人たちが私たちを連れてきたというわけじゃなく、連れてきてしまったということを考えていたと知った。Nさんに危害を加えていないし、逆に怪我を治してくれたためこのまま帰ることはできないけれど敵だと認識して攻撃もできないと兄たちはそう考え悩んでいた。でもその前にゴチルゼルが動いて私たちをサイコキネシスで宙に浮かせ、そのままどこかへ連れて行こうとする。でも私たちは納得できなかった。Nさんは大丈夫なのか…そしてNさんは何でプラズマ団に襲われてしまったのか…女の人たちは一体誰なのか知りたくて、でもゴチルゼルを攻撃できずどうすればいいのかと悩む。
「待ってくれ!彼らなら大丈夫だ…」
「…でも」
「サトシ君たちは、ポケモンと強い絆を持っている…それは彼らに聞いてみればいい」
Nさんが止めてくれたため、私たちは地面に降ろされ品定めするかのような目で私たちを見る。そしてNさんが言う≪彼ら≫という言葉を理解したピカチュウやキバゴ、ヒトカゲやピチューが大丈夫だと私たちにすり寄ってきたり抱きついてきたりする。そしてルカリオも大丈夫だという意味を込めて頷いた。
それを見た彼女たちはNさんの言葉を信じたらしい。少しだけ警戒されているけれど、でもこのままどこかへ連れて行かれるという心配はなくなった。そして私たちは話を聞いた。この場所が何処なのか…そしてNさんとプラズマ団の関係や…彼女たちは誰なのかについて…。
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この場所は隠れ家のような役割を持っているらしい。外から人間たちが来ない楽園のような場所。そしてこの周りにいるポケモンたちは人間によって傷つき、心を病んでしまっていた。Nさんたちが近づいても笑顔でいるのだけれど、私たちが近づくと恐れたような表情で逃げていく。その態度に…そして心の傷に私たちはショックを受けた。兄も拳を握り、そんなポケモンたちを傷つけた人間に怒りを覚えていたらしい。でも…人間はそんな人ばかりじゃないと説明したけれど、Nさんはともかく、彼女たちはそれを信じようとしない。私たちを警戒し、ポケモンたちに近づけさせないようにしていた。
そしてプラズマ団について聞いたのだけれど、最初はNさんたちは話すべきか悩んでいたと分かり、あまり検索しない方が良いと思い私たちは口を閉ざしたのだけれど、Nさんが意を決して話してくれた――――――。
「Nさんは…プラズマ団にいた…か…」
『ピィカ…』
「でもプラズマ団が悪いってわけじゃない…ポケモンを傷つける人間が悪いって話なのよね…」
『キバキ…』
「彼らの心は人間に敵意を抱いている…そんなテイストがしたよ…」
『人はそれぞれポケモンに対する対応が違っているからな…傷ついたポケモンが人間を嫌うのも…仕方ないことだ』
「それはそうだけど…」
『キバキ…』
「……………」
『カゲェ…』
『ピチュ…』
私たちは今隠れ家の外にある泉の近くで座り、Nさん達から離れて話し合いをしていた。Nさん達から聞いた話に少しだけ疑問を抱き…そしてちょっとした怒りがあったからだ。
プラズマ団にポケモンと心が通じる力を利用しようとして、物心つく頃から屋敷に閉じ込められ、育てられたということ、そしてある儀式をしようとした時、レシラムが現れてその儀式を邪魔したこと…そしてその後、プラズマ団から逃げて、この隠れ家にたどり着いたということを…。でもそれだけじゃない、彼女たちはプラズマ団だけじゃなく人間たちにも怒りがあった。ポケモンを傷つけ、利用するトレーナーに敵意を抱いていたのだ。そしてポケモンと人間は別々に別れて暮らすべきだという理想を持っていた。
そのことに私たちは疑問を思った。ポケモンを傷つけるトレーナーがいることに対して怒りはあるけれどそれは仕方ないことだと思う。世界中の人間すべてが良いだなんてことありえないのだから。人間はそれぞれ違った考え方を持っていて…だからポケモンと真の絆を持っているトレーナーがいれば、強制的に戦わせる偽りの絆を持つトレーナーもいる。だから彼女たちの言う理想に私たちは頷けないのだ。ポケモンと別れて暮らすということは…それはヒトカゲとピチューと…みんなと離れるという意味を持つ。だからそんなことできない。
でも、彼女たちに納得できるような言葉が思い浮かばず、そのまま私たちは外に出て話し合いをすることになったのだ。
「…でも、そんなのおかしいよな…ポケモンと別れて暮らすだなんて…俺にはできない!」
『ピカピカ!』
「ええ、私もキバゴ達と別れたくないもの!…でもどうしたらいいのかしら…」
『キバキバ!』
「諦めたらいけない…もっとポケモンたちと仲良くなりたいってことを伝えないと!」
『カゲカゲ!』
『ピチュピチュ!』
『ああ、人とポケモンが助け合い…協力するのが本来の絆だからな…』
「うんうんそれこそ真の絆といえるものだよ!…それにはお互いの理解も必要だろうね」
私たちは決めて、彼女たちに伝える努力をしようと決意する。ポケモンと人間が別々に暮らすということに納得はできないから、私たちにできることはただひたすら伝えることだけだ。ポケモンが大好きだということを…そしてポケモンと一緒に暮らしていきたいということを…!
『シジ…?』
『ポー…』
「あ、シキジカたち…大丈夫だよ、こっちへおいで!」
『カゲカゲ!』
『ピチュピッチュ!』
「マメパトたちもいるな…俺たちはお前たちを傷つけたりしないよ。大丈夫だ」
『ピッカ!』
マメパトたちとシキジカたちがそれぞれ恐る恐る私たちに近づいてきて、手や足にすり寄ってくる。人に傷つけられ、心が病んでしまったとしても、私たちに近づいてきたということは人間のことを深く敵意を持っているわけじゃないということだろう。ただ怖いだけ…また傷つくのを恐れているだけなのだ。でも私たちが何もしない人間だと分かると笑顔で遊ぼうと言って来たり、すり寄ってきたりする。私たちはお互い顔を見合わせて笑顔になり、シキジカたちと遊ぼうとする。
――――――そんな時に大きな爆発音が聞こえて、奴らはやって来た。
「Nよ!こんなところにいたか!…だがもう逃げられないぞ!」
「クッ!」
爆発音に何があったのか私たちは走り出す。すると隠れ家にいたはずのNさん達も出てきて辺りを警戒する。私たちのことをまだ警戒しているのかサーナイトがNさんに近づけさせないようにしていたため、ちょっとだけ悲しいと思いながらもどこに爆発の原因がいるのかを探す。そして見つけたのはプラズマ団だった。
プラズマ団はNさんを連れ出そうとしていた。でも私たちがそれを許すはずもない。
「Nさん達は先に逃げてください!」
『ピッカァ!』
「え、でもそれは…」
「大丈夫ですよNさん!私たちは奴らに倒されるほど弱くないですから!」
『キバキ!』
「さあ早く今のうちに!!」
「あ、シキジカやマメパトたちも早く逃げて!!」
『カゲカゲ!』
『ピチュピチュ!』
『後は任せろ!』
「分かった…頼んだよ!」
―――――Nさんたちが逃げた後の惨状については何も言うつもりはない。そして同情するつもりもない。
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「ふふふ…はっはっは!!!」
とあるプラズマ団の基地で男は笑っていた。男…いや、アクロマはある機械を起動させながら狂ったような笑みを浮かべて楽しそうにしている。アクロマ以外のプラズマ団の人間はいない。彼1人だけ、この部屋に立っていた。
「面白い…面白い!!ポケモンの力を超えた、良質な存在!!」
アクロマは興味を覚えた出来事を思い出し、興奮していた。ポケモンの力を借りずにピカチュウを操ろうとする機械を壊す破壊力、そして力が限界まで引き出され暴れていたカイリューを素手で叩き落とし、動きを止めたあの人間離れした力を欲していたのだ。そしてアクロマは考えたことを口に出して叫ぶ。その声はとても興奮し、息を荒くしていた。それほどまでに、≪彼≫を欲していたのだ。
「少年を…サトシ君を操ることができたらどんな素晴らしい結果になるだろうか…!」
アクロマは興味を持った。人やポケモンよりも優れた力を持つ少年に…サトシを操れることで何が起きるのか結果を知りたいと思えたのだ。そして彼は自分の興味と欲した欲望に忠実に行動し始めた。サトシを操れる機械を作るために…。
アクロマの笑みや瞳には通常の人とは違う、どこか狂っているような印象を与える表情をしていた。でもそれを指摘する人間は、ここにはいない…。
「待っていてくださいね……実験対象―――――サトシ君!」
To be continued.