マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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今までよりもカオスなマサラタウンに訪れたのは…。






第百五十一話~マサラタウンは混沌となっていた~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マサラタウンはいつも通り平和で、時折騒音がして…そしてソーラービームが空高く上がっていた。普通の旅人や外から来たトレーナーはその騒音と極太ソーラービームに驚いてしまうだろうが、マサラタウンではいつものことだと慣れてしまっていた。

そしてその外から来たトレーナーとして例外が1人、マサラタウンのオーキド研究所へと訪れていた。よく伝説と呼ばれているポケモンのマナフィに会いに行くためにマサラタウンに訪れるハルカだ。ハルカはサトシの影響と、マサラタウンの日常からちょっとした騒音に慣れ、極太ソーラービームが空に上がっても気にしない。

だがそんな彼女でも、オーキド研究所に入った時から見えた光景に驚いた。オーキド博士の顔には何かに攻撃されたような傷跡がいくつも残っていたからだ。しかもその傷は顔だけじゃない…切り傷、打撲、火傷と重症と言ってもいいぐらい酷かった。だがオーキド博士は怪我を気にせず笑顔でハルカを迎え入れたため、野生のポケモンに襲われたのかという疑問が浮かんできた。

 

 

「こ、こんにちは…あの、大丈夫ですか?」

「お…おお…大丈夫じゃ……」

「何か凄く大丈夫そうに見えないかも…」

「あ、ハルカ。いらっしゃい」

「ケンジ、こんにちは!」

 

「わざわざマサラタウンに来てすまないが…今は森に行かない方が良いじゃろう」

「え!?どうしてですか?」

「実は―――――――」

 

 

ケンジが語ってくれたのは、サトシのリザードンがこちらに来た時から起きた騒ぎだった。どこから知ったのかわからないが、リザードンがサトシに呼ばれているということ、イッシュ地方でそのまま旅をするということがサトシの手持ちたちに伝わりリザードンVSフシギダネ以外のサトシの手持ちたちという戦争になってしまった。悪化した状況を普段なら鎮静化するはずのフシギダネは止めるつもりがなくむしろオーキド博士に八つ当たりで攻撃しようとしてくるワニノコやベイリーフ、ヘイガニの対処をしていただけだった。そしてその酷さとカオスを聞いたハルカは考えるような表情を浮かべてからオーキド博士とケンジの顔を見る。

 

「原因については分かったわ…でも私なら平気だから行って来ます!」

「ええ!?いや無理だよ危険だから森の中に入ったら今は駄目だ!」

「大丈夫かも!私はバシャーモ達もついてるし…それにサトシのポケモンならいきなり攻撃することもないでしょ?」

「それは…そうだけど…」

「まあ良いじゃろう。ハルカは研究所の森を知り尽くしておる…ただし、危険か何かあったら言うんじゃぞ!」

「はい!!」

 

 

そうして、ハルカはオーキド博士たちに見送られながらも森の中に入って行った。マナフィに会うこともそうだが、いまどんな状況なのか気になっているということもあるからだ。

森の中はいつもと同じでとても静かだ。時折ポケモンたちの声が聞こえてきて、草木から見える日の光がとても心地よいと感じながらいつもの道をただひたすら歩き続けた。サトシ達のポケモンやマナフィに会うために―――――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

『だから離すニャ!ニャーは行かなくちゃいけないのニャ!!』

『ベイベーイ!!!』

『コォォォオオオオ!!!!』

『ヘイヘイヘーイ!!』

 

『マナァ!ハルカ!』

「マナフィ!久しぶりね!…何かあったの?」

『……マナ』

『…ダネダネ』

 

『ホォォオ』

「あら?始めて見る子ね…こんにちは!私ハルカ!サトシとホウエン地方を旅していたことがあるの!」

『ホォォォォ!』

「サトシのポケモンよね。名前は…ううんその前にこの状況を教えてくれないかな?」

『マナマナ…』

『ホォォ…』

 

 

ハルカが見た光景は、ニャースガ大勢のサトシの手持ちたちに取り押さえられ、何かを訴えている様子だ。何故ニャースが取り押さえられているのか、そして何故フシギダネはサトシの手持ちたちからニャースを助けようとしないんだろうとハルカは首を傾けて疑問に思った。サトシの手持ちであるケンホロウに会って自己紹介をしたが、その前にこの悲惨な状況を説明してほしいと苦笑しながら言う。だがそれはハルカ達より後ろにいたルギアが教えてくれた。

 

 

『そこにいるニャースは…これから優れたる操り人のもとへ行く。だから彼らはそのことに怒り、ニャースに連れて行けと頼んでいるのだ。私も同じ気持ちだからわかるが…』

『これが頼んでいる状況に見えるのかニャ!?どう見ても脅してるニャ!!!!…って痛いニャ尻尾はひっかくニャ!?』

『ベェェイ!!!』

『カフ!!!』

 

「…え、ニャース…サトシの所へ行くの?」

『マナマナ』

『ダネェ…』

 

『ああ、なんでもロケット団からの指令でイッシュ地方にいる優れたる操り人のもとへ行くことになったらしいが…何かあったのかと私たちは心配なのだ…』

『…まあ、サトシなら何かあったとしても無傷で生還しそうだが…ヒナのことが心配だな…』

「そうね…ルギアやミュウツーの言うとおり、もしかしたらかつてのマグマ団やアクア団のように悪い奴らが襲ってきているかもしれないもの…」

 

ハルカはホウエン地方で旅をしていた頃の出来事を思い出していた。ホウエン地方では時折アクア団やマグマ団がハルカ達に襲いかかったり、悪さをしていたということを…。それらをすべて解決させたのがサトシだった。

サトシが何をしたのかはその時旅に同行していたハルカ達は知らない。だが一時期ハルカ達から別れて行動していた時に≪何か≫をやって…そしてその後、戻ってきたサトシに何があったのか聞いてみたが首を横に振って何もないと誤魔化され、後にマグマ団とアクア団がサトシの前にやってきて土下座したという光景があった。その時に気づいたのだ。サトシがすべてを終わらせていたということを…そしてマサラタウンで交流するようになったニャースから話を聞いた。ロケット団と交渉して一緒になってアクア団とマグマ団の悪さをすべて止めさせてしまったという所行を…だから今回もそういう感じなのではないか…もしかしたら悪い連中がサトシ達に襲いかかってきているのではないかと思ったのだ。

 

だからこそ、ハルカは決心してベイリーフにのしかかられ、ワニノコに噛みつかれているニャースに近づいて話しかけた。

 

 

「ねえニャース…それって私も行くことはできない?」

『ニャ?!何を言ってるニャ!?』

 

「サトシがロケット団と手を組んで悪い連中を倒しに行くと言うのなら…私も一緒にサトシの手伝いをしたいのよ!バシャーモ達と一緒に手伝うわ!」

『――――――――ッッ!!』

 

 

ハルカの言葉に良い提案だと周りにいるポケモンたちが鳴き、ニャースを睨みつける。一斉に睨みつけられたニャースは悲鳴を上げて縮こまり、そんニャことできないニャ!と叫んでいる。だがハルカとフシギダネ以外のポケモンたちは全員もう決意していたようだった。

 

フシギダネはイッシュ地方に行きそうな状況に異議を唱え、叫ぶ。

 

 

『ダネェ!?ダネダネ!!!』

 

『…それは』

「…え?フシギダネは何ていってるの?」

『フシギダネは≪お前たちはイッシュ地方に行って何をする気だ!?もしも悪い奴らが活動してなかったらサトシの迷惑になるだろう!!!≫と言っている…』

「そうね…それは分かるわ…」

『キューン…』

『マナァ…』

 

『ダネダネ!』

 

「でも…サトシがロケット団にイッシュ地方に来て…サトシに会いに行くという指令は通常おかしいことだと思うのよ…。何かあったのは間違いないわ…だから私はイッシュ地方に行く。何かないだなんてこと有り得ないもの!…それにフシギダネ。もしも行くのなら私の方からオーキド博士たち…サトシに頼むわ。迷惑になるようなことはしない…だからイッシュ地方に行かせて!!サトシの手伝いをさせてほしいの!!!」

『――――――――――ッッッ!!!!』

 

 

ハルカが頭を下げたのと同時に、サトシのポケモンたちも頭を下げてフシギダネにお願いする。フシギダネがいうことは正論だと思う。だが、それでもサトシが何か困っていたら助けたいと思うのは皆同じだ。以前なら会いに行くだけでは迷惑になるからマサラタウンにいたが……今回はロケット団が動いたことから、イッシュ地方で何か起きたのだと分かってしまった。だから…助けたいから会いに行きたいという気持ちが抑えきれなくなった。

フシギダネも先ほどニャースを取り押さえられた時に止めないという行動を選択していたからわかるだろうとハルカは思っていた。たとえフシギダネがオーキド研究所のまとめ役だとしても、サトシの手持ちであり、仲間なのだから助けたいという気持ちは一緒だと分かっていたからだ。そんなフシギダネなら私たちの気持ちも分かってくれるだろうとハルカは信じていた。信じて頭を下げているのだ。

 

その間、伝説たちは傍観していた。自分たちが行くのならハルカ達が行くと決心してからだと考えていたからだ。伝説だからむやみに姿を現そうとは考えていない。いきなり姿を見せてしまったら周りが大騒ぎになってしまうからだ。そしてサトシに迷惑をかけるかもしれないということ、サトシを怒らせてしまうかもしれないという事実があったために行けないでいた。

そのため、サトシが困っているのなら助けたいという気持ち、そして迷惑になるかもしれないからイッシュ地方に行けないという気持ちと平等に考えて―――周りの状況によって判断すると決めていた。

 

…ちなみにこの時ラティアスはサトシの手持ちたちと一緒になって頭を下げていた。サトシ達に会いたいという気持ちが強く、もしも困っていたら助けたいと願っていたからだ。だから伝説たちのように傍観はせず、頭を下げてフシギダネに頼んでいた。そしてその様子を見た兄のラティオスは困ったような表情をしながらもそのままにさせていた。ラティオスもサトシ達に会うという気持ちは変わらないからだ。

 

そして、一瞬の静寂の後…フシギダネはため息をついてハルカ達を見る。その瞳は、仕方ないという諦めと、サトシを助けたいという強い願いが込められていた。

 

 

『…ダネ』

 

「良かった!!ありがとうフシギダネ!!」

『―――――ッッ!!』

 

 

周りが歓声に沸き、まず何を準備したらいいのかと話し合っている。もしもバトルになるのならきのみなどを準備した方が良いとそれぞれが話し合って決めていた。もう行くという選択以外になさそうだ。

 

そして、それを見たミュウツーたちは笑みを浮かべて頷く。

 

 

『さて、俺たちも行くか…』

『そうだな…優れたる操り人とその妹に何かあっては危険というもの。私たちも助力を尽くそう!』

『―――――――ッッ!!!』

 

 

 

伝説たちもイッシュ地方に行くと決めた様子を見てこちらも行くという選択をしたようだ。伝説たちがそれぞれ雄たけびを上げてやる気を出している。

そんな中、ある一体のポケモンは困り果て叫んでいた。

 

 

 

『何考えてるニャ!!!??おみゃーらが行ったらイッシュ地方が消えてしまうのニャ!!』

 

 

 

 

 

――――――――まだまだマサラタウンでの騒動は続きそうだ。

 

 

 

 

 






プラズマ団終了のお知らせ…?





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