マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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――――圧倒的な強さを手にしたと同時に手加減をすることで戦いを楽しむことを知る。





第百五十話~兄はリザードン達のバトルをする~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは兄のサトシです。カイリューが出会ったばかりの俺のリザードンとバトルをしたいと叫んできて、リザードンもカイリューとバトルをしたいと言ってきたので、アイリスと顔を見合わせてお互いが納得できるバトルをしようということになりました。

 

「ではリザードン対カイリューの試合を始める…試合開始!」

 

 

試合が開始されたとともに激突したのはお互いが放つ凄まじい炎。かえんほうしゃが放たれたのだ。もちろん俺やアイリスは指示をしていない。リザードンとカイリューのちょっとした挨拶のようなものだと分かっているから、俺は指示をしないままかえんほうしゃをお互いが放っても焦ることはなかった。だがアイリスとカイリューは焦っていたようだ。リザードンの放つ勢いのあるかえんほうしゃの威力に驚き、強いということを感じていた。カイリューのかえんほうしゃがリザードンのかえんほうしゃに巻き込まれ、そのまま大きな炎の渦となってカイリューに襲いかかっていく…。それをカイリューはとっさに飛んで避けてリザードンを睨みつけた。自分よりも強い敵だという認識をもって、冷や汗をかきながらも…。

俺たちはそれぞれかえんほうしゃの猛烈な攻撃が終わったのを見計らってすぐに指示を出すため口を開く。

 

「リザードンこっちも飛んで、つばさでうつ!」

『グォォォオオ!!!』

 

「カイリュー回り込んでかみなりパンチよ!!」

『バゥゥウウウ!!!』

 

 

リザードンとカイリューの攻撃によって激しい風と雷が空に飛び交う。リザードンは自分の苦手なでんきタイプの技を受けたというのにそれを全然気にもせず軽く受け止めてしまった。それにカイリューとアイリスが驚き、カイリューはそのままリザードンの技から避けようとしたのだけれど避けられずそのまま地面に激突してしまう。

 

「カイリュー!?」

『…バゥゥ…バゥゥウウウウ!!!!!』

 

「さすがはカイリュー。リザードンの技を受けても倒れないとはな…でもリザードン…お前全力出して戦えよ」

『…グォォウ』

 

でも、カイリューはもう満身創痍で倒れそうになっていた。つばさでうつという攻撃しか当たっていないというのに、その強烈な強さに吹っ飛ばされ、地面に激突した衝撃で体力が限界ギリギリになっているのだ。

そして俺は笑みを浮かべてリザードンを見た。技の一つ一つを見ても分かる。リザードンの方がカイリューよりもレベルが強いということを…すべてが鍛えられている強者の強さだということを。本当に強くなったと思う…けれどカイリューと全力で挑めよと思ってしまった。リザードンは無意識に手加減してしまったのだ。でもそれはバトルにおいて相手のポケモンに対する無礼に値する行為だ。リザードンはバトルをもっと長引かせたいのだろう。面白そうなバトルだと分かれば手加減をしてわざと長引かせてしまうというのはバトルフロンティアで見た光景だ。その時は俺がキレて本気でやれと言ったからすぐに終わったけれど…まだその癖治ってないのかと思う。後でいろいろと話し合いでもするか…?

アイリスはその様子にただ拳を握りしめ悔しそうな表情を浮かべていた。カイリューもそうだ。リザードンとの力の差がありすぎて倒せないという現実を受け入れ…それでも、負けるかもしれないと分かっていても全力で挑もうとする。

 

 

「クッ…カイリュー…あなたの力はそれだけじゃないはずよ!ドラゴンダイブ!!」

『バォゥウゥウウウウ!!!!!』

 

 

カイリューは全力でドラゴンダイブを発動し、リザードンに向かって攻撃をしてくる。それはまさにカイリューのすべてがこのドラゴンダイブに力を込めているように見えた。でもリザードンはそれでは倒せない。俺はリザードンの方を見て、リザードンも俺の方を見て頷いた。

そして起こるのは凄まじい衝撃と砂煙。だがリザードンは倒れない。むしろカイリューのドラゴンダイブを正面から受け止めたというのに、ダメージなどまったくないという状況にアイリスとカイリューは驚愕する。カイリューとリザードンとの強さの差がありすぎて技が効かない。そんな事実に目を見開いて驚き、そして悔しそうな様子を浮かべていた。でもそれが、リザードンが強さを求め、鍛えていった結果だから俺は何も言わない。カイリューも鍛えていけばリザードンのように強くなれるだろうから心配もしてない。すべてはアイリスとカイリューの選択で決まることだ。

 

 

「そんな…!」

『バゥゥウウ!?』

 

「アイリス…それだけじゃあ俺のリザードンは倒せないぜ?」

『グォォォオオ!!!』

 

 

「―――――――――バトルはそこまで!!…リザードンもカイリューもお互いの力を知って満足している。これ以上のバトルは必要ないだろう」

 

 

 

Nさんがカイリューとリザードンの間へ歩いて両手を広げてバトルを中止するように言い、お互いが力の強さを知って満足していると言っていた。リザードンはバトルができて良かったという表情を浮かべているからきっとそうなのだろう。まあカイリューはそれでもなおリザードンのことを見ていて、おそらくまたリザードンとバトルをしたいと言ってくるかもしれないなと思ってしまった。

そんな俺たちに、妹達が近づいてきた。

 

「バトル凄かったよ!」

『ピチュピッチュ!!』

「ああーいいね!豊潤で豊かな香りがしそうだ!」

 

 

『……カゲ!!』

 

 

「ヒトカゲ?」

『ピチュゥ?』

「ヒトカゲ…どうしたんだい?」

『………なるほどな』

 

 

『カゲ!!カゲカゲェ!?』

『…グォォオ!!』

 

 

ヒトカゲが妹よりも前に出てきて、リザードンに向かって叫ぶ。リザードンがその声を聞いて何かを考えるような表情をしてヒトカゲに向かって言う。その様子はまるで、自分もリザードンのように強くなれるのかと聞いているように感じた。ルカリオに聞いたらその通りだと頷いたため、ヒトカゲはリザードンのように強くなりたいと分かった。そしてリザードンはヒトカゲの問いに強さは自分で選択して行動するものだと言っているらしい。その言葉を聞いたヒトカゲは覚悟を決めたような表情を浮かべて妹を見る。妹がそんな強気な表情を浮かべているヒトカゲを抱きしめて、口を開いた。

 

 

「大丈夫だよヒトカゲ、私たちも一緒に強くなるから…頑張ろうね!」

『ピチュピチュ!』

 

『カゲカ!!』

 

 

『ヒトカゲは自分の目標を見つけたということか…』

「明確な目標は強靭な強さをもつ力となるということだね!うーん何という素晴らしいテイストだろう!」

「ヒトカゲもそうだけど…こっちも負けてられないみたいだね」

 

「サトシ…私たちはもっともっと強くなるわ…だからまたバトルしてくれる?」

『バゥゥゥウウ!!!』

「何言ってんだよ当たり前だろ!その時はまたバトルしようぜ!な、リザードン!」

『グォォオオオ!!!』

 

 

まあバトルをしたりリザードンが旅に加わったりといろいろと面白いことになりそうだと思った一日だった。…リザードンにも後でプラズマ団についての話をしないといけないから…まあそれは後で皆が寝静まってからにするか……。

 

 

 

 

 




兄の心境。
 リザードンはいつも通り楽しそうだ…。



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