兄がいない不安とプラズマ団との対立…。
こんにちは妹のヒナです。兄がカント―地方に戻ると言ったため、私たちはこの先にあるポケモンセンターへ向かって歩いています。その場所で待ち合わせをしているため、もしかしたらもう来ているのではないかと急いで向かっているのです。途中でサンギ牧場のデンリュウにかみなりパンチを教えていたため、余計な時間が過ぎてしまい、兄たちがポケモンセンターで待っていると不安になった。まあもしかしたら来てない可能性もあるけどとにかく急がないとね…。
「このすぐ近くにポケモンセンターがあるよ!」
「もうすぐね!…サトシもう来ているかしら……」
『キバキバ…』
『行ってみればわかることだ。それにもしかしたら俺たちの方が早く着いたかもしれない…』
「お兄ちゃんカント―まで行っちゃったからね…まあ遅くなることもあり得るよね…」
『カゲカゲ…』
『ピチュピチュ…』
私たちは苦笑し、兄が来ているかどうか話しながら歩いていく。豊かな木々がとても綺麗な森で…兄が来たら外でのんびりしたいと思っていた…時だった。
「―――――――――――うっ!」
『……ゥォォウ』
「ちょっえ、Nさん!?」
草木から抜け出すように…倒れ込むようにして現れたのは怪我をしたNさんとウォーグルだった。Nさんが苦しそうな表情をしながらウォーグルを早く治療してほしいと言ったため、私たちは急いでNさんとウォーグルを連れてポケモンセンターへ行く。ポケモンセンターの中に入ると、怪我をしていることに気づいたジョーイさんがすぐにウォーグルの治療を開始してくれて私たちはその様子を眺める。私とヒトカゲ、ピチューはポケモンセンターの周りを見て、兄がいないことに気づいた。…まだ来ていないようだ。
…その後、ジョーイさんがウォーグルの怪我はまだ飛べる状態じゃないけれどすぐに良くなると言ってくれた。そしてその後Nさんの怪我の治療をしてからウォーグルを安全な場所まで運ぶ。
大丈夫だということに私たちはホッとして、Nさんは寝た状態のウォーグルを撫でて良かったと安心していた。
ジョーイさんとタブンネは他のポケモンたちの様子を見るために私たちに挨拶をしてから部屋の外に出て行った。部屋に残った私たちとNさんはそのままウォーグルの様子を見て、ウォーグルが寝るのを待つ。寝たら部屋を出て用意された宿舎である自分たちの部屋へ行くためだ。ウォーグルを撫でていたNさんが周りを見てから私たちに聞いてきた。
「サトシ君はどうしたんだい?いないみたいだけれど…」
「あ、えっとサトシはちょっと用事で離れていて…」
「このポケモンセンターで待ち合わせをしているんです」
『キバキバ』
「た、たぶんすぐに戻ってくるから気にしないでくださいね…」
『カゲカゲ…』
『ピチュピチュ…』
『………………………』
私たちは兄がいないというNさんの言葉に何といえばいいのか迷いながら話した。兄がこちらに来ると分かったNさんはそれで納得したらしい、すぐにウォーグルに視線を移し、また優しく撫で始めたからだ。その様子に私たちは苦笑しながらため息をつく。…まさか兄がカント―地方に用事があってそちらに行ってるだなんて言えないよね。
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その後、私たちはウォーグルが寝たのを確認してから静かに部屋を出て自分たちの用意されている部屋に入る。ジョーイさんに頼んで、兄が来ることを想定して4つのベットが用意された大きな部屋にしてもらった。ルカリオがいるから4つではなく5つのベットが必要だと思うかもしれないが私たちと一緒に寝るから大丈夫。
…何故かというと、ルカリオは最初マサラタウンに来た時、自分は大丈夫だと言って座りながら眠ってしまったため、それを心配した母と私でベットで寝ろと言い、私が小さいため一緒のベットで寝ることになったことがある。そのため4つのうち1つのベットでは私とルカリオとヒトカゲとピチューで寝ることになっているのだ。大人が1人しか寝れない通常サイズのベットでも私たちなら皆で寝ることができるためそうなったのだ。…あ、あとヒトカゲの炎の尻尾対策にほのおタイプのポケモンと一緒に寝る時に使われる防火用の毛布で寝るから安心してほしい。尻尾の炎は大丈夫だし燃え移ることもないから安心だ。…まあヒトカゲも火傷しないように頑張って調節することを覚えようとしているみたいなんだけどね…。
「それにしても…サトシ大丈夫かしら…」
『キバキバ…』
「近くにプラズマ団がいる可能性があるからね…サトシなら逆に返り討ちにするかもしれないけれど……心配だね」
「でも、きっと大丈夫…お兄ちゃんだから…絶対に大丈夫!」
『カゲカゲ!』
『ピチュピチュ!』
『ああ、サトシなら心配はないだろう』
「…そうだね」
「ええ…そうね。サトシは大丈夫!」
『キバキ!』
兄がまだこちらに来ていないことに不安になった私たちが心配して話し合っていた。プラズマ団と兄が会ってしまったらどうしようという不安。兄とピカチュウたちは大丈夫なのだろうかという心配があったからだ。でもいつもの兄なら絶対にプラズマ団に過剰防衛でいろいろとやらかすに違いないから大丈夫だという安心もあった。
朝になっても来なかったらカント―地方のオーキド博士に連絡してまだ帰ってないか聞いてみないと…あ、でも兄がオーキド研究所に戻るといってないから無駄かもしれない…まあその時に考えよう…。
――――――そう思っていた時に、停電が起きた。
「何!?」
『キバキ!?』
『停電か…?』
「いやおかしい。外は明りがついている…このポケモンセンターだけみたいだね」
「でも何でここだけ…」
『カゲカゲ?』
『ピチュピチュ?』
「すまない…ちょっといいかい?」
『ウォォウ…』
「Nさん?」
「ウォーグル…どうしてここに?」
Nさんの話を聞くと、このポケモンセンターにウォーグルを狙ってプラズマ団が仕掛けてきたということ、停電も奴らの仕業だということが分かった。そしてNさんは自分が囮になるからその間にウォーグルを安全な場所まで逃がしてほしいということ、その協力をお願いしたいということを言ってきた。でもそれはポケモンを持っていないであろうNさんが危ないということになるから私たちは反対だ。
「そんなお願い…駄目です!Nさんもしもプラズマ団に捕まっちゃったら…!」
『カゲカゲ!』
『ピチュピチュ!!』
『ウォォォォオ!!!』
「君たち…それにトモダチ…心配してくれているのか。大丈夫だよ、僕は絶対に捕まらない」
『それは本当に保証できることか?お前が捕まらないという絶対的な信用などないに等しいと思うが…』
「トモダチ…キミは人の言葉を喋れるのか…!」
「いや、喋っているというよりテレパシーなんだけどね…でもルカリオの言うとおり、本当に大丈夫なんですか?できれば他にも誰かと一緒にいた方が安全なんじゃ―――――」
「……いや、大丈夫だよ。僕は絶対に捕まらない。とにかく、この子を安全な場所まで逃がしてやってくれ」
「………わかりました。ですがNさん…絶対に怪我だけはしないでくださいね!」
「ウォーグルを安全な場所まで逃がしたら、すぐにNさんのもとまで駆けつけますから!」
『キバキ!』
「ああ…頼んだよ」
そうして、Nさんは自らを囮になってポケモンセンターの外に出て行き、私たちはルカリオの波動を頼りにウォーグルを安全な場所まで連れて行くことになった。安全な場所というのは。この近くにある保護区域の森に行くということだ。そこまで行けば安心だから大丈夫なんだけど、ウォーグルは何度も後ろを振り返ってとても心配そうな表情を浮かべている。ヒトカゲ達もその様子を見て、Nさんのことを心配していた。私もそうだ…あの時に言ったNさんの言葉は信用できない…。怪我をしてしまうのではないか、捕まってしまうのではないかという意味で信用できないのだ。不安が心の中をぐるぐると回りながらも、私たちは保護区までの道を歩いて行った。
「頑張って…もう少しよ…」
『キバキ!』
「ここから先に進めば保護区域の森がある…だからプラズマ団が来ることもないよ!」
『プラズマ団はこの近くにいないみたいだな…』
「じゃあもう大丈夫なんだよね…安心して保護区域に行きなさい。ウォーグル…」
『カゲカゲ』
『ピチュピチュ』
『ウォォオオオオッッ!!!!』
「なッ!?ちょっとウォーグル!?」
『カゲカゲ!?』
『ピチュピチュ?!』
ウォーグルが先程来た道を戻ろうとしてきたため私たちはウォーグルの行く道をふさぎ、止めようとする。でもウォーグルは先ほど来た道を見て悲しそうに鳴いていた。まるで、その先にいるNさんのことを心配しているような表情で…。
「…ねえ、サトシなら。サトシだったらこの時どうする?」
『キバキ?』
「サトシだったら…そうだね。まず先に元凶であるプラズマ団を倒しに行きそうかな…」
「お兄ちゃんだったらそれぐらいやりそうだね…」
『カゲカゲ』
『ピチュピチュ』
「でしょう?ねえ私たちは…私たちは何もやらなくていいの?あのままNさんを危険な目にあわせて…それでウォーグルは安心できるの?」
「それは……」
『アイリスの意見に賛成だな。ウォーグルもこのまま保護区域にはいかないだろう。まず先にプラズマ団を倒す方が安全だ』
「でも…本当にうまくいくのかな?」
『カゲカゲ…』
『ピチュピチュ…』
「大丈夫よ。私たちなら絶対に倒せるわ!」
『キバキバ!』
「危険だと分かればNさんを連れて逃げればいい…このまま彼を囮にする方が危ないからね」
「…うん。そうだね…戻ろう!」
『カゲェ!』
『ピッチュゥ!』
『ウォォォオオオオ!!!!!』
『なら案内しよう…こっちだ!』
私は心配していた。アイリスの言うプラズマ団を先に倒すというのは兄がいるからできることなのではないかと思ったからだ。アイリスもかなり兄に似てきてはいるけれど、それでもまだ兄のような圧倒的な強さはない。このまま行って大丈夫なのかだけ心配していた。でもこのままここにいても仕方ないという気持ちも強い。だから私たちはNさんのもとへ…プラズマ団のもとへと戻ることにした。元凶を倒し、Nさんを救出することが優先だからだ。ルカリオの波動で案内されながら、私たちは走り出した。
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――――――――着いた先に待っていたのは、ちょっとした惨状だった。
Nさんが傷つき、ポケモンを出しているプラズマ団たちが対峙している状況。ウォーグルが攻撃されそうなNさんを庇って前に出たため、私たちはそれよりも前に出て怪我をしているNさんとウォーグルを庇う。そしてプラズマ団とバトルをすることになった。Nさんは以前ポケモンバトルが嫌いだと言っていたけれど、この状況だとバトルをしなければ危ないため仕方ないと思いながらも私はヒトカゲとピチューを守りながら、ウォーグルたちの壁になる。バトルをしているのは主にデントとアイリスだからだ。ルカリオも危険だと判断したらすぐに敵にはどうだんで攻撃しているため問題はない。デントのヤナップとアイリスのドリュウズ、そしてルカリオが優勢になり、プラズマ団に勝ったと思った…でもプラズマ団はまだ諦めていなかった。
「どう?これでもう戦えるポケモンは残っていないでしょ!?」
『ドリュゥゥウウ!!』
「僕たちの勝ちだ!これ以上の争いは無駄だよ!」
『ヤナァァップ!!』
『……………………………』
「クッ…畜生!このまま諦めてたまるかよ!!!」
「仕方ない…おい出てこい!!」
「待って…駄目!!」
『カゲカゲ!!』
『ピッチュゥ!!』
「ヒナちゃん…!」
『ウォォ!?』
『ヒナッ!!』
「ヒナちゃんたち!!」
「危ない避けて!!」
プラズマ団がいきなりミルホッグを出して先制攻撃をしてアイリスのドリュウズやデントのヤナップを攻撃せず…私たちの後ろにいたNさんとウォーグルを攻撃しようと動いてきた。私とヒトカゲとピチューはそれに気づき、すぐに後ろに駆け出してNさんとウォーグルを守ろうとミルホッグの前に出た。そのままミルホッグが庇った私たちごと噛みつこうとしてくる――――――――。
「何やってんだおいゴラ」
『ピィカッチュ』
『ミルホォォオッ!!!??』
「え…お兄ちゃん!?」
『カゲカゲ!?』
『ピチュピチュ!?』
今にも襲いかかってきそうなミルホッグがいきなり吹っ飛び、近くにあった木に叩きつけられる。何があったのか周りを見ると、兄とピカチュウが青筋を立てた顔でこちらを見ていて驚いた。…主に兄とピカチュウの近くで怯え震えているポケモンを見た瞬間に……。
「待って!?何でレックウザがいるの!!?」
『カゲカゲ!?』
『…ピチュ?』
「何でって…カント―地方からイッシュ地方まで往復で乗せてってもらったんだよ」
『ピカピカ』
「どういう状況!?なんでそうなったの!?」
『カゲェ!!』
『……ピチュゥ?』
『聞くな…頼むから聞くな…!』
『ピッチュ…?』
ピチューがずっと兄の後ろにいるレックウザを見て首を傾けてあれは何とルカリオや私たちに聞いてきた。でも今は答えられる状況じゃない。レックウザに乗せてもらったってどういうことなの…イッシュ地方の近くにレックウザがいたの?凄く聞きたいことがたくさんあるけれどそれは周りも一緒らしい。
――――――兄が来たらカオスになった瞬間でもあった。
レックウザと対面したことのある私やルカリオ、ヒトカゲはこの状況に遠い目をして現実逃避をし、ピチューはどういうことなのか聞きたそうにしていて…そしてアイリスやデントは伝説に驚いていたけれど兄だからと納得し、他の人やポケモンたちは驚きまくっていた。そしてプラズマ団は突然現れた伝説に恐怖し青ざめていた…まあ仕方ないよね……。
「おいゴラ今ヒナたちに攻撃を指示したのは何処のどいつだ…ぶっ潰すぞ?」
『ピッカァ?』
『ッッ―――――――!』
「ちょっと待って…何でお兄ちゃんの言葉でレックウザが怯えてるの…?」
『カゲェ…』
『マサラタウンであった出来事を思い出せヒナ…』
「……ああ」
プラズマ団の表情が青を通り越して真っ白になり、怯えているのと同時に、兄たちの後ろにいたレックウザもその言葉と声色に余計怯え震えていた。何でだろうと思ったけれど、ルカリオが言ったことでマサラタウンでのカオスを思い出し、また遠い目をしてしまった…ああもういつものことか…。
「く、くそ…逃げるぞ!!」
「ヒィィ来るな!!!」
「待てッ!!」
『ピッカァ!!』
「……………あーっと…ま、まあプラズマ団が逃げて良かったね!」
『カ、カゲカゲ!』
『ピッチュ…?』
「そ、そうだね!良かったよかった!」
「そうね…とにかく後で話を聞くとして…まずはウォーグルを保護区域まで連れて行きましょう!」
『キバキバ!』
『あ、ああ…そうだな…それが良い』
「……トモダチ…キミはサトシ君のことをどう思っているんだい?」
『……ギュァァァァ!!』
「そうか…とても強く、恐ろしい力を持っているが、大切な恩人…か」
逃げたプラズマ団を追う兄とピカチュウが行ったため、取り残された私たちは周りに漂う微妙な雰囲気に苦笑しながら慌ててウォーグルを保護区域まで運ぼうと言っていた。だがNさんが近くにいたレックウザに近づいて話しかけ、そしてレックウザはそのまま私たちを見てから空高く飛んでいき去って行った。Nさんはレックウザに会えたことと、話しかけた時に聞こえてきた声に満足したような表情を浮かべて、私たちの近くにやってきてウォーグルを連れていくことになった。
そしてウォーグルは保護区域の近くまで空を飛び、無事に逃がすことに成功した。私たちはそれを見て安心し、微笑んでポケモンセンターへ戻ることにする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お兄ちゃん…すっごく聞きたくないけどその満足そうな笑みは何?」
『カゲカゲ?』
『ピチュピチュ?』
「ん?ああ、プラズマ団に話し合いしてジュンサーさんの所に連れて行ったからな」
『ピカピカ』
「それって絶対に平穏な話し合いですまなかったよね!?」
『カゲカゲ…』
『ピチュ?』
『ピチュー…後でちゃんと教える。お前もマサラタウンに行くのなら覚悟した方が良いぞ………』
『ピ、ピチュ…』
兄とピカチュウがポケモンセンターに帰ってきた。でもその表情は何かをやり遂げたような満足げな表情で私は凄く嫌な予感がした。これは絶対に話し合いだけじゃなかったと思いながらも被害に遭ったプラズマ団に同情した。レックウザが怯えるぐらいの激怒した兄に敵意を持たれたから仕方ないけど…本当にごめんなさい…。
そしてそんな兄に私たちが苦笑している間、Nさんは兄に近づいて話しかけていた。
「サトシ君は…あのトモダチのことをどう思っているんだ?」
「あのトモダチって…ああ、レックウザのことですか?あいつは前に仲良くなった友達ですよ」
『ピッカ!』
「そうか…なるほど…サトシ君。キミは本当に何もかも僕と違うわけではないようだ」
「はい…?」
『ピィカ…?』
Nさんが何かに納得したようで兄とピカチュウが首を傾けてどういう意味なのだろうと考えている。私たちもNさんの言う意味が分からずにいたのだけれど、Nさんが気にしないでと言い頬をかいたため詳しく聞かないことにする。そしてNさんがまた口を開いた。
「頼みがあるんだけど…サトシ君たちとしばらく一緒にいても構わないかい?」
「え!?それって一緒に旅をするってことですか?」
『ピィカ?!』
「ああ、駄目かな?」
「いやそんなことないですよ!」
『キバキバ!』
「そうですよ!むしろ旅仲間が増えて賑やかなテイストになりそうだ!」
「……そうだね!よろしくお願いしますNさん!」
『カゲカゲ!』
『ピチュピッチュ!』
『一緒に旅をしたいと望むのなら歓迎する』
「そうか、ありがとう!」
―――――まあそんなわけで、Nさんが私たちと旅を同行することになった。この先ちょっとだけ不安があるけれど…でもまあプラズマ団の下っ端を倒したあの兄がいるなら大丈夫かなと安心していたりもする。
妹の心境。
Nさんと一緒に旅をすることになったけど…昨日のことはいいか…。