マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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ロケット団がいないことで弊害が起きたと感じていた。





第百四十二話~妹は未来での変化を予想した~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは妹のヒナです…。何というかNさんが来たと思ったんですけど…このままの状態で良いのか少しだけ不安になりました。ロケット団がいない状況だと、トラブルも少ないし何も問題は起こらないけれど…その結果Nさんが凄いということも、ちゃんとポケモンと心が通じているということも伝わらずただそのまま別れてしまうのではないかと不安になったからだ。原作崩壊もやりすぎてしまうと何か変化が起きてしまうということ…もしかしたら最終的に物凄く悪い方向に進んでしまうのではないかと思ってしまったのだ。

 

 

 

「はぁ…どうしようかな…」

『カゲカゲ?』

『ピチュピチュ?』

「ちょっとね。これからの未来が不安で不安で…」

『カゲェ…』

『ピチュゥ…』

 

 

―――――現在、兄とルカリオとアイリスでトリプルバトル的な試合を開始しています。そして審判はデントで私たちはその試合を遠くから観戦しているという状況です。トリプルバトルについては…兄の出したピカチュウとルカリオがお互い攻撃し合ったり、その攻撃をしている隙にアイリスがエモンガでほうでんしようと突撃したり…いわゆるみつどもえの状況です。

 

その様子は高レベルなバトルのようで見ていてとても楽しいと思えるけれど…でもこの平和な時間こそ私にとって恐れていることであり、このまま次の町についてNさんは兄たちにさよならも何も言わずに離れて行ってしまうのではないかと思ったのだ。

出来れば原作通りの展開になってほしいと思う。何もかも皆が無事に事件を終わらせたいと願う。でも最近だと私も細かな内容まで思い出せずにいて…Nさんとどんな感じで知り合ったのかさえ、直接会ってからでないと思い出せなくなってしまったのだ。何かきっかけさえあれば思い出せるときもあるけれど、そのきっかけのせいで最悪なことになってしまったらどうしようと悩む。兄ならすべて叩き潰して無事に事件解決させてくれるかもしれないけれど…もしもという不安が私にはある…。

 

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

「…ありがとうヒトカゲにピチュー」

『カゲ!』

『ピッチュ!』

 

 

「随分と懐いているんだね…」

 

 

悩んでいる私にヒトカゲとピチューが私を抱きしめるような行動をして、そして力強く言う。ヒトカゲ達の言った言葉は分からないけれど…でも私に活を入れてくれたようで私は笑みを浮かべて抱きついているヒトカゲとピチューを思いっきりギュッと抱きしめて礼を言う。ヒトカゲとピチューは照れた表情を浮かべていたけれど、すぐに返事をして私に向かって笑みを浮かべてくれた。

 

―――そして、そんな私たちに近づいてきたのは悩みの原因であったNさんだ。

 

 

「Nさん…」

「君たちとはまだよく話をしていなかったと思って…隣りいいかい?」

「はい。大丈夫ですよ」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

 

私に何か話をしたいと言って近づいてきたため、私たちはお互い顔を見合わせてからNさんに笑みを浮かべて了承する。何を話したいのかはわからないけれど、きっとポケモンについてなのだろうと思った。

兄たちも近くにいるし、もしも何かが起きたらすぐに大声で叫べば大丈夫かと思ったからというのもあったりする。

 

「君のポケモンは君のことが大好きみたいだね…」

「それは、心の声ですか…?」

『カゲ?』

『ピチュゥ?』

「ああそうだね。サトシ君のピカチュウと同じ声が聞こえてきたよ…それに、君はまだ幼いというのに…何故ポケモンと絆を強めることができたのか興味を持った」

「絆…ですか…でも私はヒトカゲとピチューのことを大事な仲間だって思ってますし…家族だという気持ちも強いですから…もしかしたらそのせいではないかと…」

『カゲカゲ!』

『ピチュピッチュ!』

 

 

兄と似たように私とヒトカゲ、ピチューも絆が強いと言って興味をもっていたらしい。Nさんは近くにいたヒトカゲの頭を撫でながらも、何か考えるような表情をして、私に問いかけてきた。

 

 

「君たちは…ゼクロムとレシラムに会ったことがあるのかい?」

「へ?えっと、それはお兄ちゃんが言っていたイッシュ地方での最初の――――」

「いや、その話じゃない。デント君が≪あの時≫と少しだけ言っていたけれど…キミたちは何か隠していると…ゼクロムとレシラムに会ったような印象を強く受けたんだ。だから話してくれないか?」

「えっとそれは…」

『カゲェ…』

『ピチュゥ…』

 

恐らくNさんは私たちがアイントオークで封印されていたゼクロムとレシラムに会ったことを聞きたいのだろうと思う。でもそれは原作とは関係ない…映画の話なのだ。ゼクロムもあの時イッシュ地方で最初に出会ったゼクロムとはいえないだろうし…おそらく話したとしても意味のないことだ。それに話してしまったら何か原作を変える可能性だって出てくると私は危惧していた。

アイントオークで封印されていたゼクロムとレシラムに会ったという話をしてしまったら、おそらくNさんは興味をもってその町へ行くだろう。そしてその時間と距離は原作を変えてしまう原因になりかねないと思う。そんな危険なことは私にはできないと躊躇していた。

でも私が言えないということに気づいたのか、Nさんは真剣そうな表情を一変させ、優しそうな笑みを浮かべる。

 

「すまない。こんな質問…困る内容だったね…。今のは聞かなかったことにしてくれ」

「あ、はい…あのNさん…本当にごめんなさい」

『カゲカゲ…』

『ピチュピチュ…』

「いや、君たちが真剣に僕のことを考えて喋るかどうか悩んでいてくれたというのは理解できたよ…会ったという内容さえわかれば僕は満足だ」

「そう…ですか…」

 

Nさんの表情から何を考えているのかはわからない…。もしかするとレシラムについて考えているのかもしれないと思いながら私たちはNさんが喋るのを待つ。Nさんが喋らない間、その静寂な雰囲気は兄たちが遠くでバトルしている騒音でかき消されてしまったけれど、でも何か静けさが伝わってきた。

 

 

「うん…そうだね。君たちにはまた、会えるかもしれない…もちろん、サトシ君たちにも」

「そうなったらいいですね」

『カゲカゲ!』

『ピチュピッチュ!』

「ああ、きっとなるよ…ゼクロムに会えたならきっと…」

 

そう言ってNさんは私たちから離れて行ってしまった。私たちはNさんに手を振ってまた会おうと叫ぶ。Nさんも前を歩きながら後ろにいる私たちに向かって手を振ってくれたから私たちの言葉を忘れることはないと思った。

 

原作とは違うお別れだけれども…何か良いことが起きればいいと私は思えた――――――――。

 

 

 

 

 

 




妹の心境。
 できればプラズマ団が暴走しませんように…お兄ちゃんがやらかしませんように…!




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