妹にとっての、物語の始まり
『ミュッ!』
「…なにこれ?」
『ミューィ!!』
「…ミュウ、この卵私にくれるの?」
『ミュ!!』
こんにちは妹のヒナです。森の中で散歩中にミュウに出会っていきなり大きな卵をプレゼントされました。しかも卵がなんだか暖かくて動いているような気がします。そう言えば気がついたんだけどもう伝説に会うのって私にとって普通になっちゃったね…。
「…え、この卵ってミュウが生んだの?」
『ミューゥ』
ミュウは首を横に振って生んでいないという。…じゃあこの卵はいったいなんなのだろう?
というよりも何でミュウがこの卵を私に持ってきたのだろう。
「この卵のお母さんとお父さんはどうしたの?」
『ミュ、ミュゥ』
「…え?」
ミュウは悲しそうな表情になってまたしても首を横に振っていた。
その表情に私はある考えが浮かんでしまった。
「…もしかして、この卵のお母さんとお父さん…いないの?」
『ミュー』
ミュウはそのまま頷き、私の顔をじっと見つめてきた。この卵の両親がいないというのは、何か最悪なことでもあったかもしれない。もしかしたら、兄が世話していたヨーギラスのような境遇を持っているかもしれない。でもなぜ私に卵を渡すのだろう…。
「なんで私なの?お兄ちゃんのほうが絶対に卵も幸せになるよ?」
『ミュゥ!!ミューゥ!!』
ミュウは少し怒ったような表情になって、私と卵を交互に指差してきた。何が何でも私に卵を渡したいらしい。
その表情が、絶対に私に育ててほしいと言っているようで、卵も同じようにカタカタと揺れてミュウに同意しているようで…。
「私は、お兄ちゃんみたいにポケモンのことまだよく知らないし、ポケモントレーナーでもないただの子供だよ?」
『ミュッ!ミュ!!』
「…うん。私ね。お兄ちゃんみたいにできるかどうかわからないけど、でも絶対に卵から離れたりしないからね!私が必要なら、出来ることは全部するよ!!」
『ミューゥ!!』
卵にとって私が必要ならば、少しだけでもいいから兄のように生きてみよう。ポケモン優先の兄のように、いづれ生まれてくるこの卵が幸せに生きられるように。
私にできることがあれば精一杯努力していこう。
『ミューィ!!』
「えっ…」
ミュウが大きく叫ぶと、卵が大きく動いていき、一気に光り輝いていく。
目の前が真っ白にしか見えないくらい輝いていた光が少しづつ薄れて消え、気がつくと腕の中に卵ではなく小さなポケモンがいた。
「う、生まれた…?」
『ミュゥ!!』
ミュウが大きく頷いて、生まれたばかりのポケモンの様子をうかがっている。
目がパッチリしていて、とても可愛くてオーキド研究所ではよく見かけるポケモンなんだけど…少しだけ色がおかしい。もしかしたら色違いかもしれない。
だからミュウは私に託したのだろうか?いやただの色違いでミュウが私に託すのが何かおかしいような…まあ考えても仕方ない。
それに生まれたばかりのこのポケモンは私が色違いだということやこれからどうするのかということを考えていても、なにも気にせずにただ私ににっこりと笑いかけてくる。それが何だか兄のピカチュウのように思えてしまった。私も兄とピカチュウのような関係を築くことができるようになるかはわからないが、とりあえず今はたっぷりと愛情をこめて育てよう。
「よろしくねヒトカゲ!」
『カゲッ!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ミュミュミュ!』
『…ああ渡してきたのか。ちゃんと主人公のサトシに渡してきたんだろうな?』
『ミュ?』
『………………妹?……まあいいか』
妹の心境
これからはヒトカゲと一緒に頑張ろう!