マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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ピチューとは仲良くなったけれど、強くなったわけではない。





第百三十七話~妹はピチューと特訓した~

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは妹のヒナです。現在イッシュリーグの開催地が決定し、その場所へと向かっている途中なんですが…その休憩中に兄とピカチュウと私とピチューで修行をすることになりました。どうしてかというと…

 

「いいかヒナ。お前はヒトカゲとの連携はとれてるけどピチューとはまだうまくいってない…だから俺とピカチュウで一緒に修行するぞ」

 

…という言葉を休憩中に兄に突然言われ、その後またいろいろあってピチューが納得したような表情を浮かべて修行にやる気を出したためにやることになったというわけです。

いろいろあったといっても、ピチューにでんきショックだけではなく10まんボルトを覚えてもらおうと兄が考えていたみたいで、ピカチュウの10まんボルトを見ながら特訓をするということになりました。どうしていきなり兄がやる気を出したのかというと、前にやったオーシャンカップでの戦いでピチュー達とのバトルが様になっていたことや、今から少しづつ鍛えて行けばもっと良くなると言ってきたからだ。

でもそれだけでは私たちは納得しない…。特にピチューはトレーナーとしてのバトルよりもコンテストなどのパフォーマンスが好きらしいからバトルで強くなるのはどうにもやる気がでなかった。10まんボルトもトレーナーになった頃にいつかは覚えるのではないかと思っていたからだ。

 

『ピチュ…』

「ほらお兄ちゃん…ピチューもあまりやりたくないって言ってるし…それに私まだトレーナーじゃないから今からもっともっと強くなるつもりはないよ?そりゃあ修行はしてるけど何かあった時のためだし…あまり焦らなくてもいいだろうし……」

『カゲカゲ…』

 

「いや、逆に考えればトレーナーになるまでにちょっとぐらい強くなっても構わないだろ?まあ覚えて損はないと思うぜ。それとピチュー、今なら前にコンテストでやったピカチュウの電気花火を教えるけどそれでもやる気はないのか?」

『ピカピカ?』

 

 

『ピィッチュ!?ピチュピチュ!!』

 

 

「お兄ちゃん…」

『カゲェ…』

 

 

絶対に兄は何かたくらんでいると思ってしまった。オーシャンカップでバトルした後、兄はヒトカゲに猛火の炎のやり方についてルカリオから聞いたり、ルカリオと共に私たちの技の向上を目指して考えたり、ピチューと修行をしている最中に観察していろいろとアドバイスを言ったりしてきたことがあったからだ。

今まではまだトレーナーじゃないから必要最低限の言葉以外のアドバイスは言ってこなかったというのに今ではよく言うようになっている…それがなんというか、怖い。

そりゃあオーシャンカップでバトルをするのは楽しかったけれど、それは勝つためのバトルではなく楽しむためのバトルをしていたからだ。兄と対戦となった時点で私たちの負けは確定したも同然だと分かっていたからこそ、決勝戦ではバトルに勝つというために戦うのではなく、楽しむために戦うと決めていた。だからちょっとだけこれから起きるかもしれない未来が怖い―――――――――――。

 

 

いつか兄と全力で≪勝つ≫ためのバトルをしなければいけないという未来が起きそうで怖いだけなのだ。

そしてその予感はもしかしたら外れていないかもしれない…。

 

 

 

 

そんな考えを持っている私に気づいていないのか、兄はピチューが放つでんきショックを見てピカチュウと一緒にでんきの状態を確認していた。私は引き攣った表情を浮かべながらも兄たちへ近づく。

 

 

「ふむ…ピチューの電気量に問題はないか…なら後はレベルと、技の調整だな」

『ピカピカッチュ』

「そうだなピカチュウ。あれやるか」

『ピッカ!』

 

 

「えっと…お兄ちゃんにピカチュウ…すっごく聞きたくないんだけど…あれって何?」

『ピチュゥ?』

「ピチューの逐電量を増やす」

『ピカ』

「ちょっと待ってそれ強引すぎない!?」

『カゲ!?』

『ピッチュ!?』

「平気だってちょっとピカチュウの電気を与えるだけだ。怪我も苦痛もないぜ」

『ピカピカ!』

「な、何か信じられない…」

『ピチュゥ…』

『カゲカゲ…』

 

そう言いながらも始まったのはピチューとピカチュウがお互いに手を繋ぎ、ピカチュウが軽く電気を流している光景だ。ピチューは電気が流れてきたことに最初は驚いていたが、特に苦痛などはなく問題はないと分かった。むしろ電気マッサージのように気持ちよさそうだ。

でも私とヒトカゲは少しだけ心配だった。兄は私たちに危険なことはさせはしないし巻き込まれたらすぐに助けてくれる。でも、たまに私たちとは関係ないことで無茶をしたり暴走してやらかしたりすることがあるから今回は大丈夫なのか心配なのだ。…まあでもピカチュウが大丈夫だと言ってくれたなら大丈夫かもしれないけれど……。

そしてピカチュウの電気をピチューに流し、ピチューはちょっとだけ放電状態になっていたけれどすぐに落ち着き元気よくジャンプしてきた。ピカチュウに電気を貰って身体の調子がよさそうだ。それを見た兄が満足そうな様子で言う。

 

 

 

「よしこれなら問題ないな!今からでんきショックを10まんボルトに変える練習でもしてみるか!」

『ピカピッカ!!』

 

 

「まあやってみるけど…でも怪我とかは絶対にしちゃ駄目だよ?無茶だけはしないでね?」

『カゲカゲ…』

『ピィッチュ!!』

 

 

 

―――――――――――――結果ですか?ピチューの技に兄のピカチュウ直伝の10まんボルトを覚えたということと、電気花火というパフォーマンスにも似た遊びを覚え、ヒトカゲのひのこを宙に放って花火にするのと同じようによく遊ぶようになってしまったりする。

私はピチューが満足そうなら問題はないんだけれど、また兄が何か私たちに修行という名のレベルアップをしてくるのではないかと戦慄していたりする。私としては少しでもいいから平穏が欲しいです……。

 

 

 

 

 

 

 




妹の心境。
 今度はヒトカゲの炎の強化になりそう…。




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