バトル大会という名のオーシャンカップ
こんにちは兄のサトシです。俺たちは今ケルディオ達と別れてからオーシャンに戻ってバトル大会に出場します。
今回はシューティー達はおらず、俺たちだけで出場するちょっとした小さな大会らしい。しかも年齢制限がなくポケモンを持っている人ならトレーナーじゃなくても参加できるらしく、妹ぐらいの小さな子も参加していた。トレーナー未満の子供たちは決勝まではお互いトレーナー未満同士で戦い、そして決勝戦でトレーナーと戦うらしい。ある意味トレーナー未満の子供たちにとって、将来トレーナーとして戦うために必要なことを勉強できる良い大会だと思えた。
それを見て俺たちは妹に大会に参加したらどうかと勧めた。
「なあヒナ一緒に参加しようぜ!」
『ピカピカ!』
「嫌だったら参加しなくてもいいけどね。でも将来トレーナーになるなら良い勉強になるわよ!」
『キバキバ!』
「そうだね。せっかくの機会なんだし…ヒナちゃんも一緒に参加したらどうだい?」
『修行の成果も出せるだろうしな…気楽に参加してみたらどうだ?』
「うーん…ヒトカゲとピチューは参加したい?」
『カゲ!カゲカゲ!!』
『ピチュピッチュ!!』
『参加したいと言っているぞ』
「分かった。私も参加する!!」
『カゲカゲェ!』
『ピチュピッチュ!』
「その意気だ!頑張って優勝目指そうぜ!」
『ピカピッカ!』
「いや…たぶんお兄ちゃんが参加する時点で優勝はもう決まってるようなものだと思うけどね…」
『カゲェ…』
『ピチュゥ…』
「そんなことないぞ。バトルは常にどう勝敗が決まるのかわからないんだからな!」
『ピカピッカ!』
―――――――――――まあそんなわけで、俺たちは参加することになった。ああでもルカリオは観戦席で見ることになっていて、どこから購入してきたか分からないがカメラを取り出し、後で試合映像をマサラタウンに送ると言ってきた。その表情はとても楽しそうで良い映像を撮ろうと観客席へすぐに移動していて……そういう行動が本当にオカンというか保護者というか…ああいやもういいか。
あとトレーナー未満の子供たちは大会の出場条件として2体のポケモンが全員参加することが決まっているらしく、妹はヒトカゲとピチューで参加する。
これは、まだトレーナーになっていない幼い子供たちがトレーナーたちと戦うハンデとして2体全員で戦うことができるという特別ルールのようなものになる。それに対して俺たちトレーナーは3体の中から1体を選んで戦うということになった。
…まあこれぐらいなら妹にとっても大丈夫だろう。妹もポケモンバトルに関してはマサラタウンで修行して鍛えたみたいだし。
そして始まったポケモンバトル大会…オーシャンカップが開かれた。
オーシャンカップではまずバトルの前にルーレットで対戦相手のどちらかが最初にポケモンを出すことになっているらしい。ジュニアカップではなかったルールに俺は笑みを浮かべてバトルを待つ。
最初にデントはこの町に住むトレーナーと戦って勝ち、次は俺たちのバトルが始まった。
【さあやってきましたよオーシャンカップ!!第一試合はサトシ選手VSアイリス選手となります!!】
「よろしくなアイリス!正々堂々と勝負だ!」
「ええ、こちらこそよろしく!絶対に勝ってやるわ!」
【さてルーレットが回され…止まった先はアイリス選手です!まず先にアイリス選手からポケモンを出してもらいます!!】
ルーレットはアイリスの写真を指しており、まず先行としてアイリスがポケモンを出すことになった。アイリスはもう誰を出すのか決まっているらしく、笑みを浮かべて口を開いた。
「行くわよキバゴ!あなたの力を見せてあげなさい!」
『キバキバ!!』
「キバゴか。じゃあこっちは…ズルッグ!君に決めた!!」
『ズッグゥゥ!!』
【キバゴ対ズルッグの勝負となりました!さて勝敗を決めるのはどっちかぁぁ!?】
「行くわよキバゴ!りゅうのいかり!!」
『キッバァァァ!!!』
「ズルッグ、きあいだま!!」
『ズッグゥゥゥウ!!!』
キバゴのりゅうのいかりとズルッグのきあいだまが激突し爆発した。その爆発の余波にキバゴとズルッグが巻き込まれそうになるが耐えて次の指示を待っていたため俺たちはお互い口を開いて声を出す。
「キバゴ、≪竜のげきりん≫!!」
『キバキッバァ!!!』
「ズルッグ、≪気合いのずつき≫だ!!」
『ズッグゥゥゥウウ!!!』
アイリスは旅をしている最中に俺が新しい合体技を作っているのを見て、自分でも何かできないのかキバゴと鍛えながら行ったりゅうのいかり+げきりんの合体技だ。さすがにまだ新しい技を開発することはできないようだが、りゅうのいかりにげきりんを上乗せして攻撃するやり方はかなりダメージを食らう。対して俺もズルッグの気合いのずつきというきあいだまを放った後にそのきあいだまに向かってずつきをする新しい攻撃方法を指示する。
お互いの技がぶつかり合い、凄まじい土煙の後見えてきたのは……。
【おっと!?倒れているのはキバゴだぁぁあ!!サトシ選手が次に進むことができます!!】
「…ありがとうキバゴ。お疲れ様」
『キバァ…』
「よくやったズルッグ。ありがとうな!」
『ズッグゥ!』
「…また負けちゃった…でももっと強くなるために私、頑張るからね!」
「ああ、その時はまたバトルしてくれよ!」
「もちろん!!」
俺たちはお互い笑みを浮かべて握手をし、第一試合を終わらせることができた。その後妹と妹ぐらいの幼い子供がバトルをすることになったんだけれど…勝敗はもう決まっていたみたいだ。
【次はヒナ選手VSミーコ選手です!ルーレットが周り…ミーコ選手から先行になりました!!】
「よ、よし…いくわよオタマロ!!」
『マァロ…』
「オタマロ…なら私はピチューお願い!!」
『ピッチュゥ!!』
【さて始まりましたピチュー対オタマロの戦い!どうなるのでしょうか!!】
「えっと…どうするんだっけ…あ、そうだオタマロ、あわ!!」
『マロ…!』
「ピチュージャンプして避けて!そのままでんきショック!!」
『ピッチュ!!』
『マァロォォォオ!?』
【おおっとオタマロが一撃でやられてしまったァァ?!ヒナ選手まるでバトルに慣れたトレーナーのように強いですね!!さて次にミーコ選手の2体目のポケモンがでます!!】
――――――まあ結果としては妹が勝利した。相手の出したポケモンはオタマロとマメパトというでんきタイプに弱いポケモンばかりが出てしまったため妹はピチューだけで2タテしてしまった。そして負けてしまったミーコという子は泣きながら妹と握手をしていて、妹の方はそんなミーコを見て苦笑しつつも慰めているという出来事があったりする。
…第二試合も俺たちは無事に勝ち上がることができた。もちろん妹もデントも無事に勝ち上がることができた。
そして次に行われた第三試合。俺とデントの戦いになる。
【さてさて次に行われたのはサトシ選手とデント選手によるバトルです!!ルーセットが周り…サトシ選手が先行となりました!】
「俺か…ツタージャ、君に決めた!」
『タジャ!』
「ツタージャ…ピリリとビターなテイストになりそうだね……行くよマイビンテージ、ヤナップ!」
『ヤナァァァップ!!』
【ツタージャ対ヤナップの草対決となりました!!さて勝敗を決するのはどちらか!?】
「サトシ相手に長期戦はまずいからね…先手必勝だよヤナップ!ソーラービーム!!」
『ナァップ!!』
「ツタージャ、≪リーフの舞い≫!」
『タァジャ!!』
『ヤナァ!?』
「ああヤナップ!?」
ヤナップに仕掛けたのはリーフの舞いという新しい技である。まあ簡単に行ってしまうのならリーフストームで凄まじい風を起こしてポケモンの技で言うたつまきのような効果を生み出しながらもメロメロを発動させヤナップをまともに動かせないようにする効果を発揮する。
そのおかげでヤナップはまずメロメロの効果でツタージャの攻撃からまともに動けなくなり、その後起きた技リーフストームのタイプがくさとひこうの強化版にやられ吹っ飛ばされてしまう…。もちろんそんな強い技に耐えられるわけもなく…。
【ヤナップ戦闘不能となり勝者はツタージャだぁぁ!!!サトシ選手が決勝まで進出することができます!!!】
「お疲れ様ヤナップ…本当にありがとう」
『ナァップ…』
「ありがとう。よくやったよツタージャ!」
『タジャ!』
「さすがサトシだね…でも僕もポケモンソムリエとして負けてられない…今度は絶対に勝ってみせるよ!!」
「おう!望むところだ!またバトルしようぜデント!」
こうして俺とデントはお互い握手をして第三試合を終わらせることができた。…次に進むのは決勝戦。ちなみに妹の方はトレーナー未満のもう一つのハンデとして試合を2回しか行わず戦って勝った方が決勝に進めるということになるため――――――――次に戦うのは俺と妹ということだ。
【さてさて始まりました決勝戦!!!サトシ選手VSヒナ選手のバトルになります!!聞いたところによりますとサトシ選手とヒナ選手は兄妹らしく…とても熱いバトルが繰り広げられそうで私大変興奮しております!!!】
実況者が勝手に興奮しながらも、俺たちは向き合い睨み合った。トレーナーと幼いトレーナー未満の子が勝負する場合は先にトレーナーの方がポケモンを出す決まりらしく、ルーレットは回らないようだ。もちろん俺は妹と戦うのならと決めていたポケモンを出すことにする。
「いくぞピカチュウ!君に決めた!!」
『ピカピッカ!!』
「うわピカチュウ。お兄ちゃんいきなり鬼畜すぎるよ…よし、ピチューお願い!」
『ピッチュゥ!!』
【まず始まりましたのはピカチュウ対ピチューの戦いです!!電気対決となりますね!!】
「ピカチュウ、10まんボルト!」
『ピッカァァ!!』
「ピチュー、ダブルでんきショックでんじはよ!!」
『ピッチュゥゥゥ!!!』
ピカチュウの10まんボルトに対抗するためなのか、妹はピチューに合体技であるでんきショックとでんじはを指示する。ピチューの攻撃は通常のピカチュウの10まんボルトに負けず劣らず凄まじい。だが俺のピカチュウの方が圧倒的にレベルも経験も上だ。
ピチューの放った技を10まんボルトで押し返し、ピカチュウの電撃に当たってしまう。
『ピチュゥゥウ!!?』
「ピチュー頑張って!!!」
『ピチュ…ピィッチュ…!』
「ごめんなヒナにピチュー…でもバトルは全力で決めるものだ。ピカチュウ、でんこうせっか」
『ピカ…ピッカァ!!』
『ピッチュ!?…ピチュ…ゥゥ…』
「ピチュー!!…ごめんねピチュー。ありがとう…」
ピチューが一度ピカチュウの電撃に耐えて立ち上がったのだが、身体がふらつきあと一撃で倒れてしまうぐらいのダメージを負っていた。おそらくピカチュウが対戦相手が妹のピチューであり、弟分だと認識していたから無意識に手加減をしていたのだろう。
だがポケモンバトルは全力で戦うのが礼儀だ。だからこそピカチュウにでんこうせっかを指示して止めを刺す。ピカチュウはちょっとだけピチューを倒すことに罪悪感を抱いていたようだが、俺の全力を出してバトルに勝利するという気持ちが伝わったのかすぐに全力のでんこうせっかを決めてピチューを倒す。ピチューはでんこうせっかを受けて気絶し、妹はバトルをして負けてしまったことの謝罪と礼を言ってピチューを抱きしめる。そして次に妹はヒトカゲを出してきた。
【ポケモンバトルは全力を出すもの…確かにその通りです!!今度はピカチュウとヒトカゲとの勝負!面白いことになってきましたよ!!】
ちょっとだけ実況者がうざいと感じながらも俺は妹の方を見る。妹はヒトカゲを見て頷き、ヒトカゲも妹を見て頷いていた。この様子はマサラタウンで修行をしてきた時に鍛えあった絆なのだろうと俺とピカチュウはそう思った。妹とヒトカゲは良いパートナーになりそうだと思いながらもバトルを続行する。
「ピカチュウ、エレキボール!!」
『ピカチュッピィ!!』
「ヒトカゲ…今よ、ダブル≪猛火の炎≫!!」
『カゲェェエ!!!!』
「へえ…新しい技か…!」
『ピィカ!』
猛火の炎と呼んだヒトカゲの技は、まるでかえんほうしゃのような凄まじい炎を吐き出しピカチュウの放ったエレキボールと激突し爆発する。
恐らく猛火の炎とはひのこを大きくした技なのだと俺は直感した。おそらく旅の途中でルカリオと一緒に鍛えた技なのだろうけれど…さすが俺の妹だと感心したぐらいだ。まるでひのこがかえんほうしゃのように凄まじく、威力のある技だと感じた。
でもそのぐらいで俺のピカチュウを倒せるわけはない。俺はピカチュウを見て、ピカチュウも俺を見て頷いた。
「ピカチュウ、ボルテッカー!」
『ピカピッカ!!』
「ヒトカゲジャンプして避けて!!」
『カゲ!!…カゲ?!』
「無理だ。ピカチュウのボルテッカーは避けられないぜ…!」
『ピッカァ!!』
「ヒトカゲ!!…ごめん。よくやってくれたわ……ありがとう!」
『カゲェ…』
【決勝戦を勝ち抜いたのはサトシ選手です!!!いやぁ面白い戦いでした!!皆さんこの兄妹に拍手喝さいを!!】
ヒトカゲがジャンプをしてピカチュウのボルテッカーを避けようと動いたが、ピカチュウはそのぐらいの動きならすぐに対応できる。ヒトカゲは避けた先に来たピカチュウの技を受けてしまい倒された。妹は本当に悔しそうな表情を浮かべながらも…俺と戦うのが楽しかったという表情でこちらを見ていた。その表情はもうトレーナーとして立派に成長しそうだと俺とピカチュウは思えた。
「ヒトカゲ、ピチュー…本当にありがとう!」
『カゲカゲ…!』
『ピチュピチュ…!』
「ヒナ、お前と戦えて本当に良かったよ」
「うん。お兄ちゃんと戦うの怖かったけど…でも楽しかったよ。ありがとう!」
俺と妹は握手をして、そして無事に大会は閉幕した。イッシュリーグ前に行った試合だったけれども…楽しかったしもう一度やりたいとも思える試合だった。
兄の心境。
妹がトレーナーになった時がかなり楽しみだ。