やっぱり兄はやらかした。
こんにちは妹のヒナです。ただいまオーシャンに向けて電車に乗っています。そのオーシャンではバトル大会が開かれるらしいんですけれど…まだまだその町へ行くのは遠いようです。兄たちのポケモンたちは電車で遊んだり寛いだりとボールから出てのんびりしています。
そんな中、デントが買ってきた駅弁情報の載っている本のページを開き、これから行くオーシャンの途中にある駅で名物になっている駅弁の情報を皆で確認します。
「これだよ!風の駅名物ダルマッカ弁当!!」
「美味そうだな!!」
『ピッカッチュ!!』
『ミジュゥ!!』
『ズッグゥ!!』
『…タジャ』
「へえ…風鈴にもなるのね…」
『キバキバ…』
『エッモ!』
『サンドウィッチのようなものか…面白そうだな』
「冷凍オレンのみもあるんだね!早く着かないかなぁ…」
『カゲェ…』
『ピチュゥ…』
冷凍オレンのみってなんだか冷凍蜜柑みたいな感じかなと思ってしまった。でも似たようなものだろう。風の駅に着くまでの間、私たちは電車から見える風景を見てその途中でポケモンたちを発見したり、ヒトカゲ達は兄のピカチュウたちと一緒に電車の中を探検しに行ったりとそれぞれが楽しんでいます。
そろそろ風の駅に着くようで、私たちは電車の乗車口へ急いで向かう。
「停車時間は3分しかない…!ここは、駅弁ソムリエの僕の指示に従ってくれ!」
「了解!」
「任せたわよ!」
「よし…頑張ろう…!」
デントの指示でダルマッカ弁当を売っているお店に走って行った。ダルマッカ弁当を20個と冷凍オレンのみ4袋、そして水とお茶を4本ずつ購入した。兄がほとんどのダルマッカ弁当を持ち、私もいくつかの弁当をもっていく。でも途中で電車が発車しそうになり慌てて走り出したんだけれども、転んでしまって持っていたダルマッカ弁当を落としてしまいそうになった…。
「うわっ!?」
『カゲ…!』
『ピッチュゥ!』
『平気かヒナ…怪我はないな?』
「あ、うん大丈夫…ありがとう皆」
『カゲカゲ!』
『ピチュピッチュ!』
『いや、無事でなによりだ』
「おいヒナたち早く乗れ電車が発車するぞ!!」
ヒトカゲとピチューが私の落としそうになった弁当をキャッチしてくれて、ルカリオが地面にぶつかりそうになった私の腕を掴んで防いでくれた。それに私は礼を言うのだけれど、兄が急いで戻れと言ったため、私たちは走ろうとしたのだけれど―――――ルカリオに私たちと弁当ごと抱き上げられそのまま急いで走って行ったため間に合った。…なんというか、ルカリオって力持ちだね。
「ありがとうルカリオ!」
『カゲカゲ!』
『ピチュピチュ!』
『…気にするな』
「…ちょっと待って…サトシ、ズルッグはどうしたのよ!?」
『キバキ!?』
「あれズルッグ!?」
『ピィカァ!?』
『ズッグゥゥゥウ!!!!』
アイリスが冷凍オレンのみと弁当を自分たちの席に戻って置き、座って周りを見た時にズルッグがいないことに気づいた。兄もそれに慌てて窓を見ると発車している電車の外から走って追おうとしているズルッグを見て慌ててしまった。そして兄たちが車両の後ろにある場所まで行こうと走り出す。
「お兄ちゃん!?」
『カゲェ!?』
『ピチュ!?』
「お前たちはそこで待機して待っててくれ!」
『ピッカ!』
「お弁当とかよろしくね!」
『キバキバ!』
「ルカリオ、ヒナちゃんたちのこと頼んだよ!!」
―――――――その後、座ってお弁当や冷凍オレンのみをしまいながら私たちは待っていた。でも待っているだけで兄たちが戻る様子はない。ズルッグを無事に電車に乗せたならすぐに来そうなんだけど…。そういえば確か原作だとここでケルディオに会ったような気がする……。それにしては結構待っているけれど大丈夫かな…兄がまたやらかしてたらどうしよう……。
「…遅いね」
『…カゲェ』
『…ピチュ』
『……ん、何だ?』
「どうしたのルカリオ?」
『カゲカゲ?』
『ピチュピチュ?』
ルカリオが何かに気づき上を向いた瞬間だった――――――――。
『ギュァァァァァアアアアアアッッ!!!!!!!』
「な、何!?」
『カゲッ!?』
『ピチュゥ!?』
『窓から離れろ!!』
天井から物凄い音と冷気が伝わり、窓が一瞬で凍っていったのだ。そしてポケモンのような大きな鳴き声が天井から響いていく。窓が凍ったことや天井の異変に驚いた私だったけれど、確かキュレムが来た時に列車が凍ったような気がするということを思い出した。ああ、キュレムが来たということはケルディオに会ったのだろう。だからまだ兄たちは帰ってこないのだろう…。
「だ、大丈夫かな…お兄ちゃんたち…」
『カゲカゲ…』
『ピチュ…』
『サトシなら平気だ。待っていればすぐに来る』
「うん…そうだね」
『カゲ』
『ピッチュ』
そして待っていたら、兄たちが急いで私たちの席まで戻ってきた…傷ついたケルディオも連れてだけれど…。
ケルディオを見た瞬間驚いたヒトカゲ達だったけれど、ルカリオが冷静に怪我の様子を確かめながら、重症だと思える部分にいやしのはどうで治していく。その間にも私たちは兄たちから何があったのかを聞いた。ケルディオが電車の屋根部分で倒れていたということや怪我をしてかなり混乱していた様子、そしてキュレムが来ると怯えていたということや本当にキュレムが来て襲ってきたということを話してくれた。
その後、私たちはオーシャンに到着し、すぐにポケモンセンターへ急いで向かう。ポケモンセンターのジョーイさんにはケルディオが傷ついていることに驚いていたが、すぐに重症患者だと急いで処置をするため動いてくれた。
角が折れた部分は最近だと分かり、ケルディオの名前とキュレムの居場所…そして聖剣士たちのことをジョーイさんは教えてくれた。ケルディオが聖剣士の後継者となるポケモンだということも……。
そして元気になったケルディオと私たちはポケモンセンターから外へ出てオーシャンの大きな広場へ向かいケルディオはキュレムに対して何があったのかを細かく話してくれた。聖剣士となるにはキュレムと戦わなければいけないということ、聖剣士になりたくてケルディオ自身で勝負に挑んだということ…戦いの途中で怖くなり逃げ出してしまったということやケルディオを助けようとした聖剣士たちがキュレムに凍らされてしまったということを。
「……それでお前はどうしたいんだ?」
『え…』
「そのままキュレムを恐れて逃げ続けるのか?」
『そんなわけない…!僕は…僕は聖剣士になるんだ!!』
「ならこれからどうするつもりなんだ?」
『僕は今から…聖剣士たちを助けに行く!!』
「…そうこなくっちゃな!!」
『ピィカッチュ!』
「うわ…なんか嫌な予感がする」
『カゲェ…』
『ピチュ…』
『サトシのあの笑顔を見たらそう思うのも無理はないな…』
「サトシのあの表情…たぶんケルディオをキュレムに勝てるぐらい強くするんでしょ?私も協力するわ!」
『キバキバ!』
「ははは…とりあえずまずはダルマッカ弁当でも食べてからにしようか」
兄が悪戯を思いついたような表情を浮かべてケルディオの頭を撫でたのを見て私とヒトカゲ、ピチューは思わずルカリオの後ろに隠れてしまった。兄が何かをやらかすだろうという嫌な予感がしたからだ。ヒトカゲ達もそう感じたのだろう…私の手を掴んだり、肩に乗ってきたりとしてちょっとだけ怖がっている。…まあやらかすのはよく物理での解決策が多いから怖いのは分かる…主にシューティー達の件でね。
そしてデントが言った通りまずはダルマッカ弁当を食べることになったんだけど…味は美味しいんだけど兄がこれから暴走するとなると美味しく感じられないのが残念に思えてしまった…。とにかくこれから犠牲になるであろうキュレムに同情だけはしておこうと思う。
そして始まったのは兄とピカチュウ指導による強さの強化…。その途中でケルディオは自分の聖剣士としての本当の意味を…逃げようとしない強さと今までの聖剣士たちとの生活を思い出し、兄の協力のもと強くなろうと必死に覚悟を決めていた。そして兄はそれを見抜いてもっと覚悟を決めろと言っていろいろとやらかしてましたよ…詳しくは言いたくないですけどね…。
その時途中でキュレムが襲って来たりフリージオ達が追って来たりといろいろと危ない目にもあったけれど、それは邪魔すんなとばかりに兄とピカチュウが吹っ飛ばしてました…。ちなみにアイリスも笑顔でカイリューを出してかえんほうしゃでフリージオ達を蹴散らしたりも…。もう原作崩壊確定だよね…いや仕方ないか…。
――――――――――――結果?まあ…凍らされていた聖剣士たちが思わず驚いて自ら氷を砕いてしまうというほど強くなったケルディオが覚悟の姿にフォルムチェンジして戦い、キュレムが哀れになる結果になってました。
あ、でもケルディオ自身の覚悟を決めたこと、立派な聖剣士になったとコバルオン達に言われていたからまあ良い結果になったのかなとは思った…。
ちなみにその時兄とピカチュウは満足そうな表情を浮かべ、それ以外の私たち…いや、アイリスとキバゴ以外の私たちは苦笑していたりする。
妹の心境。
ま、まあケルディオ達が良ければそれでいいんだけどね…。