マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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いろんな意味で有名になったある話―――――。




第百三十話~イッシュチャンピオンとのバトル~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決勝戦で勝ちあがって優勝したのはチャオブーで戦ったサトシだ。シューティーは悔しそうな表情で…でも清々しい表情で次は…イッシュリーグでは負けません!と言ってサトシに向かって笑みを浮かべており、サトシもその言葉に頷いて笑ってシューティーと握手をして決勝戦を終わらせていた。

 

そして始まったのは優勝したトレーナーがイッシュチャンピオンとバトルをすること。サトシは好戦的な表情を浮かべてバトルフィールドへ歩き始め、アデクと向き合う。

 

 

「…頑張れ、お兄ちゃん」

『…カゲ』

『ピッチュ』

『…大丈夫でしゅ。サトシなら…絶対に勝つでしゅよ!』

『ああ…サトシなら絶対に勝つ』

『ロメロメ!!』

「うん…そうだね!」

『カゲカゲ…!』

『ピッチュ!』

 

 

ヒナたちは観客席でサトシのことを応援していた。イッシュチャンピオンに勝てるかどうかはまだ分からないけれど、勝ってほしいと願い、そして大声で応援する。もちろん観客席にいるヒナたちだけでなく、参加者がいるべき場所でヒカリ達もサトシのことを応援していた。もちろん決勝戦で負けてしまったシューティーも大きな声を出して応援している。

 

そんな盛り上がっている中、バトルフィールドでは今まさに、開始の合図が出されそうになっていた。

 

 

【チャンピオン・アデクが出したのはバッフロンです。対してサトシ選手はピカチュウを出しました!】

 

「サンタロウはピカチュウで来るか…」

『バルル…』

 

「…俺の名前はサトシです。…アデクさん、全力で挑ませていただきますよ!!ピカチュウ、10まんボルト!」

『ピッカァ!!』

 

「バッフロン…そのままつっこめ!」

『バルルゥ!!!』

 

 

【おおっとバッフロンがピカチュウの10まんボルトを平然と受けている!これは凄いぞ!!流石チャンピオンだ!!】

 

 

バッフロンがピカチュウの10まんボルトを振り払い、その電撃の強さに闘争心が掻き立てられたのか足元を何度も蹴り、叫んでいる。

その声を聞いたアデクは感心したようにサトシとピカチュウを見る。

 

 

「ほう、かなり強い電撃のようだな。バッフロンが興奮しておるわ…!」

『バルルゥ!!!!』

 

「いえ…まだまだこれからですよ!ピカチュウ、≪雷の舞い≫!!」

『ピカピッカ!!!』

 

 

「何…?」

『バルゥ!?』

 

 

【これは一体どんな技なのでしょう!?サトシ選手がピカチュウに指示した技によってピカチュウが複数現れ、そして上空に雨雲が出現しました!!!!】

 

 

「イッシュリーグで使えると思って今まで修行していた技の1つです!」

『ピッカ!』

 

 

サトシとピカチュウがシロナの別荘で修行していた時に編み出した技。あまごいとかげぶんしんを使って次にバッフロンに攻撃する際の一点集中型である。あまごいはかみなりの命中を上げるため、そしてかげぶんしんはあまごいをしている間に攻撃されないための予防策である。

これでもしあまごいを避けるために相手のポケモンがにほんばれなどを発動されてしまったら次にかげぶんしんを使用したままエレキボール&でんこうせっか&炎のボルテッカーで…命名≪雷撃ボルテッカー≫で攻撃していこうという方法を編み出している。…ちなみに炎のボルテッカーはサトシとピカチュウが作り上げたタイプが電気と炎の新しい技であったりする。

 

サトシはその後、アデクがどのような行動をするのかを見て待っていた。どんな攻撃をされても油断せずに次に移るためである。もしも今攻撃をしようとしたならば、反撃してきたバッフロンにピカチュウの攻撃リズムを狂わされ、すぐに負けてしまう可能性もある。バトルが最後まで油断できないのがこのポケモンバトルの楽しめる1つだと言えるだろう。

それにサトシが今相手しているのはこのイッシュ地方のチャンピオンだ。たとえどんな性格の…ちょっとだけ残念な性格のチャンピオンだとしても油断はせずにいつもの力を出して戦おうとサトシとピカチュウは決心していた。だからこそ今こうして次の攻撃を待っているのだ。あまごいを消されたら次の攻撃に移り、もしもそのままならば一点集中型の攻撃をするだけだと考えながら…。

 

そう考えていたサトシに対して、雨雲が出現しピカチュウが複数現れたことに驚いていたアデクであったが、サトシが絶対に勝ってやるというやる気と向上心、そしてその強い好戦的な鋭い目に思わず笑ってしまっていた。爆笑するアデクであったが、強者の雰囲気を漂わせていて、サトシとピカチュウはこれからアデクが何をするのかを警戒する。

 

 

「ハッハッハ!!面白いなサンタロウ!!…いや、サトシか!決められた技を使うのではなく、自ら技を開発するとはなぁ!!――――――――こりゃあ全力で戦った方がよさそうだな」

『バッフォォォォオオ!!!!!』

 

 

「…来るぞピカチュウ」

『…ピカ』

 

 

【バッフロンがアフロブレイクを決めようと動き始めたァァ!!!だがサトシ選手は避けようという指示を出さない!!むしろ避けずに立ち向かう気のようだ!!!??】

 

 

「…バッフロン!」

『バフォォォ!!!!!!』

 

 

「…今だピカチュウ!電気砲(レールガン)!!!」

『ピッカァァァァア!!!!!』

 

 

 

『バッフォォォォオオオオ!!!!!????』

 

 

 

ピカチュウの技、電気砲(レールガン)はその名の通り、かみなりと10まんボルトとエレキボールを混ぜ合わせ、ボルテッカーの勢いで放つ雷のはかいこうせんのようなものである。かげぶんしんを解いたピカチュウはそのまま一気に電気技である電気砲(レールガン)を放った。この技は一撃必殺のような大技のため避けようとすれば避けられる命中力がかなり低いのが難点な技なのだけれど、それは先ほど行ったあまごいによって発生した雨雲のおかげでかみなりの命中効果を活かしたため、ピカチュウの攻撃を避けようとしたバッフロンに必中し、技を受けてしまう。

………ちなみにその攻撃技を名づけたのはデントであり、その名前で某小説を思い出してしまった兄妹が苦笑していたという秘話があったりする。

 

 

そんなピカチュウの攻撃にあったバッフロンは吹っ飛んでいってしまい、凄まじいダメージを受けたような衝撃がアデクや審判のもとまで来たと感じたみたいだ。会場は一瞬静かになり…そして凄まじい歓声が聞こえてきた。盛り上がるジュニアカップの観戦者たちにピカチュウとサトシは苦笑する。苦笑したのはチャンピオンの意図が分かったからだ。アデクはサトシの指示するピカチュウの攻撃を受ける気でいたのだろうということ、その対策を考えていたことがサトシとピカチュウには分かった。

だが周りは分かっていないらしい、むしろチャンピオンが不利なのかと盛り上がっている。

 

 

 

【……な、なんということでしょう!!バッフロンがピカチュウの凄まじい雷のはかいこうせんのような攻撃にあい吹っ飛ばされましたァァ!!これはバッフロン不利なのかぁぁ!?】

 

 

「…いや、そんなことはないですよねアデクさん?…≪みがわり≫でピカチュウの攻撃を防いでいましたよね?」

『ピカピッカ』

 

「はっは!いやぁバレたか!!そうだなぁここで負けてしまってはチャンピオンと自信をもって言えなくなるからな!!」

『バッフォォォオオオ!!!!!!』

 

 

【おっとバッフロンは無傷だぁぁあ!!!これは面白いことになって来たぞ!?そろそろ時間もやばいけれど大丈夫かぁぁ!?】

 

 

時間というのは、チャンピオンと戦える時間ということだ。本当だったらタイムリミットをつけて勝負することはなかったのだが、シューティーとサトシのバトルが思った以上に長引いてしまったために、予定を大幅に変えてチャンピオンとのバトルを時間付きで挑めるというルールになってしまったのだ。

そしてそろそろ時間もない状態。次の攻撃ですべてが決まると言うことだろうとアデクとサトシは考えていた。

 

 

「ああ、そういえばタイムリミットがあったなぁ…いやいや、もうちっと楽しみたいんだがなぁ」

『バッフォ!』

 

「楽しむ時間はここまでということでしょうね!…次で最後です。行くぞピカチュウ!」

『ピッカ!』

 

 

「バッフロン、アフロブレイク!!」

『ブルルォォォオオオオオオオ!!!!!!!!』

 

 

「ピカチュウ、ボルテッカー!!」

『ピカピッカァァァアアアアアアア!!!!!!!』

 

 

 

地面を揺らすほどの地響きと衝撃が会場内に伝わっていく。時間がゼロになり、この攻撃でどちらが勝っているのかで勝負が決まることとなった。だが土煙でどちらが勝っているのかが分からず、静寂だけしかない状態。

だが、しばらくすると土煙がなくなり――――――立っていたポケモンはバッフロンとピカチュウの両者となった。

時間がないということから、この勝負は引き分けということになり、審判がそう叫ぶ。

 

 

 

【何ということだぁぁ!!!!!サトシ選手とイッシュチャンピオン・アデクのバトルは引き分けとなってしまった!!いやぁ凄い戦いだった!!!できれば時間なんて関係なく試合を見ていたかった!!!!!!】

 

 

 

「面白い…またバトルできる日を期待しておるぞ…サトシ」

『バルルゥウ』

「はい、こちらこそ…全力で挑んでいただいてありがとうございます!」

『ピッカ!!』

 

 

 

サトシとアデクが握手をして、ジュニアカップは盛り上がったまま閉幕した。

 

そしてこれが――――――後のイッシュリーグでサトシがイッシュ地方の有力なトレーナー達から注目され、有名になった一つの要因となる出来事となったバトルでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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