兄の非常識が他の人に影響していた…
こんにちはヒナです。最近兄が新しく仲間になったハルカさんにポケモンについて詳しく教えているようです。
…ですが教えていることは何やら普通だけではないみたい。
「…つまり?」
「やりすぎましたすいません」
「何お兄ちゃん。ハルカさんをスーパーミシロ人にしたいの?いろいろと問題ありすぎるよ!?」
ハルカさんが兄と同じくいろいろと常識から外れつつあるみたいだ。前に話聞いたときは普通だった気がするんだけど一体何をやったんだこの兄は。
私は小さくため息をついた後、テレビ電話の向こうでのほほんとしている兄に言う。
「ハルカさんに何をやったの?」
「バトルの仕方、ポケモンとの交流の仕方。…あと技の開発なんかを」
「まだ技開発なんてことやってたの!?」
兄が旅をして半年と少しの間に技開発をしていたのは知っていた。テレビで出てきたくらいだしその後は話題がすさまじかったからもう懲りてやってないと思っていたのに…。
なんだろう、すごく嫌な予感がする。
「…ハルカさん、どんなふうになっちゃったの?」
「いやそれがついこの間、ハルカがバトルに挑まれてさ―――――」
そう、それは旅で起きた出来事だった。
まだまだ新人で何もできないと言っていたから俺はいろいろとポケモンの凄さについて教えていったんだ。
その話に興味を持ったハルカと…あとマサトも学んでいった。もちろんタケシも自分の経験談とか語っていったんだぜ?
それで実践したり、一緒になって修行したりして、ハルカも少しは自信が出てきたみたいで、ついこの間バトルを承諾したんだ。
「行くわよアチャモ!」
『チャモっ!』
アチャモが走り、相手のジグザグマに向かっていく。だが相手は余裕の表情を浮かべていた。
「へっ走って向かっていくことだけがポケモンバトルじゃないぜ?たいあたりだジグザグマ!」
『グゥ!』
「分かっているわよそれぐらい!アチャモ!回り込んで炎のとび蹴り!」
『チャモ!!』
「はぁ!?」
『グ、グゥウ!!?』
アチャモが炎を纏いながらもとび蹴りをしてジグザグマに強烈なキックをする。
技じゃない技を受けたジグザグマは飛び上がり、宙を舞った。
「よし、そのままひのこ!」
『チャーモ!!』
「ちょっちょっと待て!!」
相手のトレーナーが止めようと叫ぶが、アチャモは止まらずジグザグマにひのこを浴びせてそのままダウンした。
「やったわ!ありがとうアチャモ!」
『チャモチャーモ!!』
「おい待て!!」
ジグザグマをボールに戻し、今起きたことを信じられない様子の相手トレーナーがハルカに怒鳴りかける。
「お前、ちゃんとした技を使おうとはしないのか?!炎のとび蹴りって非公式な技を使うな卑怯だろ!!」
「何を言ってるのよ!ポケモンはまだまだ未発見の秘密が多くあるわ!非公式とか公式とかそんなこと言える?それにまだまだ技には可能性が含まれてるってサトシが言ってたわ」
「誰だよサトシって!!」
「だからっ!私はアチャモの可能性を信じてるし、私自身もアチャモと同じくもっともっと頑張れるって分かっているの!」
『チャモー!!!』
「そうよアチャモ!もっと熱く燃え上がって!!!!」
『チャモチャモ!!!』
アチャモの周りに火が渦巻き、まるで大きな炎の竜巻のようになる。そしてそれに呼応するかのように、ハルカの声も大きくなり、アチャモの炎も大きくなっていく。まるでキャンプファイヤーのごとく大きく燃え上がり、周りの温度も急上昇していく。
「ヒ…ヒィイ!!!」
相手トレーナーがその異様な様子を見て震えあがり、怒っていたことも忘れて走り去っていく。
それでもハルカとアチャモの勢いは止まらない。
『チャモォ!!!』
「もっともっと熱くなるわよアチャモ!!」
『チャモチャモッ!!!』
「―――――ってことがあった」
「修造かっ!!?」
もっと熱くなれよォ!!ってか!!?
ハルカさんがスーパーミシロ人になった瞬間じゃないか!!
兄のやらかした所行に頭が痛くなる…。
それに、こんな出来事を起こしたというのに、タケシさんたちは何も言わないのが気がかりだ。
…すごく、ものすごく嫌な予感がしてしまう。
そしてそれは絶対に当たっているはずだ。
「ちょっと待ってお兄ちゃん…もしかしてハルカさんだけじゃなくタケシさんたちも非常識の仲間入りとかしてないよね?何もやってないよね?」
「……………………………あ、そろそろ時間だからもう切るな?」
「ちょっ」
兄はそのままテレビ電話の通信を切り、私の目の前は画面の真っ黒しか映らなくなった。
「……ミュウツゥウウウウ!!!!!」
私はそのまま勢いよくオーキド博士の森の中に入り、ミュウツーの名を呼んで兄の暴走を止めてもらおうとした。
だがしかし、ミュウツーでは兄の暴走を止めることができませんでした畜生。
妹の心境。
他の伝説ならお兄ちゃんのこと止められるかな…。
兄の心境。
やりすぎたと思ってるけど後悔はしてない。