参加する前からかなり騒がしいみたいだ。
こんにちは兄のサトシです。ジュニアカップが始まり、皆がやる気に満ちているみたいです。いい席をとろうとしてトレーナーたちが走っていたり、バトルのやる気に満ちていたりととても楽しそうな雰囲気だ。さすがジュニアカップだと思う。自由参加だからどんなトレーナーが参加しているのか…またはバトルができるのか期待できる。ヒカリ達もジュニアカップに参加すると言っていたから、もしも対戦することになったとしたらそれも面白くなりそうだと感じた。
「頑張ろうぜピカチュウ!」
『ピッカァ!』
「……あ、ねえお兄ちゃん…あそこにいるのって…」
「ん?何だ?」
『ピィカ?』
『カゲ?』
『ピチュ?』
「どうしたのヒナちゃん…ってあれってアデクさんとシロナさんじゃない!?」
『キバキバ!!』
「へぇ…あの人がイッシュ地方のチャンピオンアデクさんなのね…!」
『ポチャ…!』
『…なんだかギラティナみたいな人間でしゅね…』
「あー…確かにちょっとだけ似てるかも…?」
『カゲェ…』
『ピチュ…』
妹が見つけたのはアデクさんとシロナさんが話し合っている光景だ。でもチャンピオンがいると言われて騒がれないようにという意味でなのかは分からないが、ジュニアカップの建物の草むらの方に2人はいる。妹が発見して言わなければ分からないところで話し合っていたのだ。
アデクさんはシロナさんに一緒に食事でも食べに行かないかと誘っているらしい。でもシロナさんはそれを断っているというのに、アデクさんがかなり積極的に誘おうとしている。それをみて俺たちはちょっとだけ苦笑しながらもアデクさんたちに近づく。だが話しかけようとしたらある人物が俺の声を遮って大きな声で叫んできた―――――――。
その人物…シューティーは90度の角度でお辞儀をして、俺に向かって大きな声で挨拶してくる。
「お久しぶりですサトシ先輩!!!」
「お、おお久しぶりだなシューティー…」
『ピィカ…』
「はい!…もしかしてサトシ先輩もこのジュニアカップに出場するのですか!?」
「まあな。シューティーも出場するのか?なら俺たちが戦うことになるかもしれないな!その時はよろしく頼むぜ!」
『ピッカッチュ!!』
「い、いえ!!こちらこそよろしくお願いします!!!」
シューティーは俺たちに向かって大きな声で話しかけてきたため、俺もアデクさん達ではなくシューティーに笑顔で話しかける。シューティーもこのジュニアカップに出場するらしく、久々にバトルができると知ってちょっとだけこの大会の楽しみが増えたと思えた。シューティーもますます強くなってきていて、チャンピオンのアデクさんと戦って強くなるために必死で頑張っているみたいだから、対戦したら全力で挑みたいと思う。
そして俺たちが騒いでいることに気づいたアデクさんとシロナさんがこちらに近づいて話しかけてきた。シューティーがアデクさんに気づいて表情を硬くする。おそらく前にアデクさんと会った時のことがあって微妙な心境なのだろう。だがアデクさんは出会った時のことを覚えていないようだった。
「おお!…えっと…誰だっけ?」
「シューティーです」
「そうそうシュータロウだったな!」
「いえ、シューティーです。…あの、アデクさん…それにサトシ先輩も…僕は絶対に2人と戦うまで負けはしません。絶対に勝って…そしてサトシ先輩と戦い…全力で挑みます!そしてサトシ先輩とバトルしてもしも勝てたなら…その時はアデクさん……よろしくおねがいします!」
「……シューティー、もしもじゃ駄目だ。もしもじゃなくて全力で勝ってみせますって意気込まないと駄目だぜ!」
『ピッカァ!』
「サトシ先輩……はい。全力でサトシ先輩に挑んで、勝ってみせます!そして優勝して…アデクさんと戦って僕の実力を見せます!!」
「おお、その意気だぞシュータロウ!!」
「シューティーです!…サトシ先輩、僕はこれからジュニアカップの登録に向かいますね…それではまた…!」
「ああ、またなシューティー!」
『ピッカァ!』
シューティーは最初は少しだけ不安そうな表情だったが、俺が全力で挑めということ、勝つ気で来いと言ったため今度は強気な目で俺やアデクさんを見て、そしてジュニアカップ大会が開かれる建物へと向かって行った。最後の方ではシューティーもかなり好戦的な表情でいたため、これでジュニアカップで対戦したとしても大丈夫だろうと思った。俺はそんなシューティーに挨拶をしてから、アデクさんに話しかけた…けれど。
「あの、アデクさん―――――」
「じゃあねサトシ君たち、また会場でね」
「あ、はい」
『ピィカ』
「おお!!?待ってくれ!晩飯は!?」
「……おい」
『……ピィカ』
「ははは……」
『カゲェ……』
『ピチュゥ……』
『ギラティナよりもしつこい男でしゅね……』
『ロメェ……』
アデクさんはそのままジュニアカップ大会の建物に入って行くシロナさんを追いかけて行ってしまい、話しかけることができなかった。よほどシロナさんと一緒にご飯を食べに行きたかったのだろう。まあ仕方ないと俺はため息をついて妹達を見てから言う。
「じゃあ、受付に行こうか!」
『ピッカ!』
皆はその言葉に頷き、意気揚々とジュニアカップ大会の受付へと歩き始めた。…どんなトレーナーやポケモンたちが待ち受けているのかとても楽しみでやる気がでる…絶対に優勝して、それでアデクさんとバトルしようと俺は心に決めた。―――――――ちょっとだけ、シューティーのことが気になるけれど…それは後で妹に相談しようかなと思っている。
兄の心境。
いろいろと何かが起こりそうな大会になりそうだな…。