まるでマサラタウンにいる時の日常のようだ。
こんにちは妹のヒナです。シロナさんの別荘で大会に向けてポケモン強化合宿のような状態で毎日を過ごしています。まあ、私にとってはバトルに出るということもなく、旅に出てから久々にのんびりとした毎日を送っていますけどね。
「ルカリオ…これぐらい?」
『カゲェ?』
『いや、もう少しかき混ぜた方が良いな…俺がやろうか?』
「ううん大丈夫!私がやるよ!」
『そうか…ヒトカゲもあまりきのみを投入するなよ』
『カゲ!』
『ロメェ?』
「あ、メロエッタ…それぐらいでいいんじゃないかな?…よし。どうルカリオ?」
『ちょうどいいな。メロエッタ、そこにあるバターをとってくれ』
『ロメッタ!』
「次何したらいいー?」
『カゲェ?』
『ロメェ?』
『ちょっと待っていろ』
私たちは現在シロナさんの別荘のキッチンにいます。ルカリオが旅ではあまり作れない本格的なお菓子を作ろうとしていて、私たちもそれを手伝えたらいいと思って行動しました。メロエッタはルカリオがどんな料理を作るのか興味をもって、私と同じようにルカリオのことを手伝っています。
これから作るのは人間用のシュークリームとアップルパイ。そしてポケモン用のモモンの実シフォンケーキと様々な味のポフィンです。兄たちが大会に向けて特訓している間に作っておくというから凄い。たくさん作っているのにルカリオの手際が良くて私たちがかえって邪魔しているんじゃないかと思ってしまうぐらいだ。
でもルカリオはむしろ手伝ってくれて感謝していると微笑みながらも言ってくれたから大丈夫…かな?まあ駄目だと言われたらすぐにキッチンから離れようとは思ってるけどね。
『ミィ…美味しそうな匂いでしゅ…!』
『ピッチュゥ!!』
「あれ…シェイミにピチュー…外で遊んでたんじゃなかったの?」
『カゲ?』
『ピチュピーチュ!』
『ミーはお腹がすいたんでしゅ…何かくれ!』
『少し待て。まだ冷めていないからつまみ食いするな!』
「あはは…」
『カゲェ…』
『ロメッタ…』
シェイミとピチューが一緒になって焼きたてのポフィンを食べてしまっていて、ルカリオが少しだけ怒ってシェイミとピチューに説教している。でもシェイミもピチューもお腹が空いたらしくルカリオは最後に仕方ないとため息をついていた。
そんなシェイミたちに私とヒトカゲ、メロエッタは苦笑しつつも先ほどルカリオに言われたパイ用の生地を伸ばす作業を続行する。
『ピチュ…』
「あ、駄目だよピチュー。それは後でケーキ用に使うきのみだからね」
『カゲカゲ』
『ピィッチュ…ピチュピチュ!!!』
『ミーもお腹空いたでしゅ…何かくれぇ!!!』
「こらこら…」
『もう少しだけ待てといっているだろう。我慢して待て!』
『待てないでしゅよ!早く作るでしゅ!!!』
『ピッチュ!!』
『ロメロメ…ロメッタ…♪♪♪―――――――』
メロエッタがお腹が空いて苛立っているピチューとシェイミのために歌を歌ってくれた。その歌はとても心地よくシェイミやピチューの苛立った気持ちが癒されるような…そしてお腹が空いたという感情が消えていくようなそんな感覚かもしれないと私は思った。私もメロエッタの歌に癒された。そして歌を聞いている間にルカリオが物凄い勢いで先程までシェイミとピチューが食べようとしていたポフィンやきのみを遠ざけていたのはちょっとだけ苦笑してしまったけどね…。
『ロメッタ!』
「ありがとうねメロエッタ!」
『カゲカゲ!』
『メロォ!』
『ミィ……仕方ないでしゅね…もうちょっとだけ待ってやるでしゅ。ミーに感謝するでしゅ!!』
『ピチュゥ…ピチュピッチュ!』
「はは…うん分かった」
『カゲカゲ』
『はぁ…まったく。ポフィンが冷めたらすぐに言うからその間外で遊んでいろ』
ルカリオがため息をついて疲れたような表情でシェイミとピチューを外に出して、そしてまたお菓子作りを開始した。私たちもできることをやっていく。たまにまたお腹が空いたとシェイミとピチューが襲撃してくる時もあったりしたけれど、その時は激怒したルカリオに説教されてつまみ食いはしない方が良いと学んだらしい。ちゃんと出来上がったといわれるまで待ち、そして兄たちが来るまで勝手に食べようとはしなかった。
―――――そしてできたお菓子は本当に美味しかったといえる。たまにはこういう日もあってもいいよね?
妹の心境。
シェイミたちもいつかマサラタウンに来そうな気がする…。