マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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もしもこんなことがあったなら…。


If~もしも〇〇が登場したら~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――もしもトゲチックが登場したら―――

 

 

 

 

それは、泥棒がサトシ達に捕まって時間の宝玉を取り戻せて安堵していた時だった。ヒナとヒトカゲ、ピチューはルカリオの後ろに隠れつつ事件が解決して良かったとため息をついた時――――――――――。

 

 

「うわッ!?」

 

時間の宝玉が強く輝き始めてしまったのだ。何故宝玉が輝きだしたのかはわからない。時計塔から宝玉を取り出しては危険だとジュンサーさんが言っていたからこれはそのせいかと、サトシ達はそれぞれ警戒しながらその光が途絶えるのを待つ。

 

 

 

「……おさまった?」

『カゲ?』

『ピチュ?』

『ああ、どうやらそのようだな…』

「でも今の何だったのかしら…」

『キバキ…』

「不思議な光だったね…」

「……光るだけだったなら良かったけどな」

『ピカピ?』

「どうしたのお兄ちゃん?」

 

 

サトシがある方向を見て疲れたようなため息をつく、ヒナたちはそんなサトシにどうしたのか話しかけてみると、サトシはその見ていた方向を指差して教えてきた。そこにいたのは…

 

『チョッチック!』

 

「トゲ…チック?」

『カゲ?』

『ピチュ?』

『サトシの知り合いか?』

「多分な。お前カスミのトゲチックだろ?」

 

『チックチョチック!!』

『ピッカ!』

 

トゲチックは嬉しそうにサトシとピカチュウの周りを飛んで鳴いている。サトシは懐かしそうにトゲチックに話しかけ、ピカチュウはトゲチックに会えて嬉しそうに抱きしめていた。

 

「カスミっていう人は?もしかしてトゲチックのトレーナーかい?」

「え、でも周りに人なんていないわよ?いるのは私たちか倒れてる泥棒くらい…」

『キバ?』

 

「ああ、カスミはハナダジムのジムリーダーで、トゲチックの元トレーナーなんだ。トゲチックは色々と理由があってカスミのもとを離れたんだ。だからここにいるのはおかしいと思うんだけど…」

『ピィカ…?』

「そうなんだ…どうしてここにいるのトゲチック?」

『カゲ?』

『ピチュ?』

 

『チョチックチック!!』

 

『目の前が光ったと思ったらここにいた…と言っているが』

 

「え、じゃあ分からないの!?」

『カゲ!?』

『ピチュ!?』

「それは大変ね…!ここはイッシュ地方だし、トゲチックっていうポケモンはあなた以外にいないから捕まると危ないわ…」

『キバ!』

「うーんこれは…どうにかしないといけないね」

 

「いや、大丈夫だろ…」

『ピカピッカ!』

「え、どういうこと?」

 

サトシとピカチュウは何でもないという様な表情でトゲチックを見て答えた。トゲチック含めたヒナたちは首を傾けてサトシとピカチュウを見つめる。サトシは頬をかきながらも言う。

 

「こっちに来たんなら、ちゃんと帰る道もあるってことだよ」

『ピッカッチュ!』

 

「いやそれ全然解決してないし…」

 

『チョッチック!』

 

ヒナたちが呆れたような表情で言う。でも来ることができたのなら帰ることだってできるはずという根拠のないサトシの話に、何故かできるのではないかと納得してしまうヒナたちであった。

 

(その前にカスミに連絡でも入れるか…)

 

 

 

 

 

 

―――もしも事件解決後の原作組の世界(シューティーラングレーアイリス)―――

 

 

 

事件が解決した後、サトシ達は元の世界に戻ることができた。サトシの妹だと言ったヒナもいないし、ヒトカゲやピチュー、ルカリオがいない世界だ。サトシ達は少し悲しそうな表情を浮かべて時計塔を見つめていた。時計塔には時間の宝玉が1つだけ埋め込まれていて、もう二度と光らないような…そんな気がした。

でももう仕方のないこと、会えるかどうかさえ奇跡だった出来事だったと今になってサトシ達は考えた。

 

「サトシ…アイリスを探しに行こう」

『ピカピ?』

 

「…ああ、そうだな!」

 

声には出さず、またなと言ってその場を離れるサトシ。そしてそんな彼を見たデントとピカチュウもサトシの後を追って歩き始める。アイリスはあの兄妹がいる世界のアイリスに連れて行かれたため、どこにいるのかわからないけれど、でも町にいるはずだと思って探していった――――。

 

 

―――――――そして見つけたのがポケモン交換施設の近くで座り込んでいるアイリスたちの姿。でもその姿は異様だ。ぶつぶつぶつと呟いていて、見る人が見れば何か危ない人間たちが集まって座っている光景に見えてしまう。顔を俯せて地面に膝をつき、蹲ってしまっている者(アイリス)両手で顔を覆って体育座りをして小さくなっている者(ラングレー)、そして土下座をしているような状態でいる者(シューティー)などがいて、サトシ達は引き攣った表情でそれを見ていた。何があったのか聞きたいけれど聞きづらい雰囲気を漂わせている3人がそれぞれ落ち込んでいるようなのだ。

サトシは意を決して近くにいたシューティーに話しかける。

 

「お、おいシューティー…大丈夫か?」

 

 

 

「……………あ、サトシ……………サトシ……先輩」

 

 

「シューティー!?」

『ピィカ!?』

「これは重傷だね…」

 

 

シューティーが先輩とサトシに向かって言うことにサトシ達は驚愕してしまった。よく見るとシューティーの目が虚ろだ。…あ、だがサトシが周りをよく見てみると、シューティーだけじゃなくアイリスやラングレーも虚ろな目でぶつぶつぶつと小さな声で呟いていた。その姿は知り合いだと思われたくないほど哀れで異様だった。

 

 

 

「サトシ先輩は偉大で素晴らしくて僕の先輩…先輩ではは…ははははは」

「ごめんなさいごめんなさいもう馬鹿なことは言わないしドラゴンタイプも馬鹿にしたりしないから怒らないでごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「子供だなんて言わない…子供って言ったら駄目…子供じゃない子供じゃない子供子供……」

 

 

 

「おいお前らしっかりしろォォォォオオ!!!!???」

『ピィカァァァア!!!!???』

 

 

「と、とりあえずジョーイさん呼んできた方が良いかな…」

 

 

デントがジョーイを呼んだことによって彼らの精神的ダメージは回復し、何とか立ち直ることができたのだけれども、それでもやはりトラウマは残ってしまったらしい。シューティーもたまにサトシのことを先輩と呼んでしまうことがあって、そのたびにアイリスが怯え、サトシ達は苦笑してしまったりする結果となった…。

 

 

 

 

 

―――もしも原作世界のベルが兄妹世界のベルに遭遇したら―――

 

 

 

兄妹世界のベルはたまたま偶然その姿を見つけてしまった。兄妹世界のサトシ達のために何か問題を解決できるようなことがあればいいと思って、資料を探したり様々な施設へいき何か変わってしまったことはないか確かめたりと行動していたのだ。そんな時に出会ったのが、もう1人のベルだった。

 

 

「うわぁ私だ!!!ねえあなたもポケモンを交換しに来たの!?」

「…………何を言っているのです?」

 

兄妹世界のベルは訝しげな表情で原作世界のベルを見つめていた。交換するというのは、手持ちとお別れをするということに等しい行為だというのは、サトシ達から学んでいたからだ。

アララギ博士と交換したのもまたいつでも会えるということ、研究に協力してほしいと頼まれたこと、そしてチョボマキも交換を望んでいたということから成り立ったのだ。でもこの目の前にいる原作世界のベルは交換すること自体を楽しんでいる様に思える。ポケモンたちとお別れをしてもいいのだろうかと兄妹世界のベルは思った。

 

「ねえねえ…聞いてるの?」

「聞いてます…そちらの世界の私はもう交換してしまわれたのですか?」

「ううん!でも可愛いポケモンと交換できたらするつもりだよ!!」

「それは…自分のポケモンたちにも交換してほしいと聞いてみたのですか?」

「聞いてないけど?」

「………そう」

 

兄妹世界のベルはその事実にとても悲しいと思ってしまった。この目の前にいる原作世界のベルはポケモン交換をすることに何も苦じゃないと思っているらしい。そして可愛いポケモンがいたらすぐに交換しようと思っているらしい。そんなことをしてしまったらもう二度と自分のポケモンたちと会えないかもしれないというのに…ポケモンたちの気持ちを考えずに交換してしまう行為はある意味裏切りに等しいというのに…。

 

原作世界のベルをこのままにしておけないと考えた兄妹世界のベルは、自分の考えやポケモンたちの交換について話そうと決意した。交換はメリットもあればデメリットもあるということ。そして手持ちのポケモンたちに会えるかどうか分からないということを心に刻みつけなければならないことを。兄妹世界のベルが原作世界のベルに向かって指差して叫んだ。

 

 

「そこに正座しなさいそちらの世界の私!」

「…え?どうしたの?」

「あなたに交換することの恐ろしさを教えてあげます!!」

 

 

―――――その後、兄妹世界のベルは町が宝玉で光り輝くまでずっと話し続けていた。原作世界のベルが正座しすぎて足が痛いと文句を言っていても、逃げようとしても…兄妹世界のベルは逃がさずに説教をした。

 

その途中で宝玉が輝いてしまい交換についてすべてを言うことはできなかったけれども…でももう楽観的に考えてポケモン交換をしようとは言わなくなるだろうとベルは満足そうな表情を浮かべ、協力すると言ったサトシ達を探して歩き始めた。

 

「…またどこかであの別世界の私に会える気がしますわ…その時にまた交換すると言っていたらちゃんと考えて交換しなさいと説教しなければ……」

 

 

そう自分に言い聞かせて、そしてサトシ達を探し始めるベルであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――もしも未来の妹が登場してしまったら―――

 

 

 

 

「…あはは」

「どちらさまですか!?」

 

 

泥棒を倒し、取り戻した時間の宝玉が光り輝いたと思ったらサトシと同じぐらいの年齢の女の子が目の前に立っていて、ヒナは驚き叫んだ。だがヒナだけじゃない、サトシ達もその姿、連れているポケモンに驚き固まっていた。

 

「初めまして…になるのかな。過去の私」

『ピチュ!』

「え、えええええええ!!!??」

『ピチュゥゥ!?』

 

「へえ…やっぱり見覚えがあると思ったら未来のヒナが来たってことか…」

『ピィカッチュ…』

「あの時間の宝玉には未来の人間をこちらに呼び寄せる力があるみたいだね…!うーんファンタスティック!!」

『未来のヒナ…か…』

「というかヒナちゃん…凄く驚いているわよ…」

『キバキバ…』

 

過去のヒナは目の前にいる少し成長した自分を見て驚いて口を開き固まっていた。ピチューは未来から来たピチューと挨拶をして、そしてヒトカゲやピカチュウと一緒に遊んでいるみたいだ。未来のヒナは苦笑して頬をかき、過去の自分の頭を優しく撫でて落ち着くように促していく。

 

「初めましてになるな未来から来たヒナ…そっちはうまくやってるか?」

「まあね…お兄ちゃんが暴走しない限りはうまくやってるよ」

 

「……ああ…お兄ちゃんは未来でもやっぱりお兄ちゃんなんだ…暴走しているんだ……」

「もう諦めなさい…お兄ちゃんはお兄ちゃんよ…」

「「………はぁ」」

 

「おいそこのダブルヒナ。ため息つくんじゃない」

 

過去のヒナが未来の自分と兄であるサトシの会話を聞いて小さく呟き、そして未来の自分と一緒にため息をついた。サトシの暴走を止めようと頑張ったり、たまに放置したりしていたけれどもみたいでもその問題は解決していないというのはちょっと嫌だと思う過去のヒナであった。でもため息をついたことでサトシが不機嫌そうな表情で過去と未来のヒナたちに向かって言う言葉に、ほのぼのとしたようなちょっとだけ同情するような光景を見ていたルカリオ達が微笑ましそうな表情で見ていた。

 

『ヒナ…お前ヒトカゲはどうした?』

『カゲ?』

「そういえばそうだ…ねえ未来の私。ヒトカゲはどうしたの?もしかしてさっきの光の影響で置いて行ってしまったんじゃ…!」

 

「ああ大丈夫。大丈夫よ…ほらここにいるから」

 

「会わせて!」

『カゲカゲ!』

 

未来のヒナが取り出したのは1つのボールだった。そのボールはとても古そうな状態で…でもきちんと磨かれているボールだ。

過去のヒナ達は会いたいと言って未来のヒナにボールからヒトカゲを出してもらうように頼む。その頼みに苦笑した未来のヒナはまあ大丈夫かと呟いてからボールを投げてその中に入っているポケモンを出す。

 

でも、そこにいたのはヒトカゲじゃなくて――――。

 

 

「黒い…リザードン!!」

『カゲカゲェ!!!』

『ピチュゥ!!!』

 

 

『グォォオ!!』

 

 

全身が黒のリザードンが出てきたことに過去のヒナは喜び、ヒトカゲやピチューと一緒になって抱きつきに行く。抱きつかれたリザードンは嫌そうな表情を浮かべず、むしろ懐かしいといった表情でヒナたちと一緒になって笑い合っている。その様子を見た未来のピチューも乱入し、リザードンが過去のヒナたちと戯れている中、サトシ達が未来のヒナに近づいて話しかけていた。

 

 

「進化したんだな……リザードンに」

「うんそうだよ。私はもうトレーナーだからね」

『そうか。もうそんな時期なのか』

「ルカリオ…なんだか旅立つ子供を見送るお母さんみたいよ?」

『キバキバ』

『誰がお母さんだ!!!』

「まあまあ落ち着いて…じゃあ未来のヒナちゃんはもうバトルできる立派なトレーナーなんだ」

 

「そうだよ…それでお兄ちゃんにちょっとだけ頼みがあるんだ」

「頼み?」

『ピィカ?』

 

サトシは首を傾けて未来のヒナを見る。時間の宝玉のせいでこうなってしまった事故だけれど、頼みとはいったいなんだろうと思っていた。

そして未来のヒナはサトシに強気な目でにっこりと笑って叫ぶ。

 

 

 

「ポケモンバトルをしよう!過去の世界のお兄ちゃんに勝てるかどうか分からないけれど…でもトレーナー同士会ったらバトルしなくちゃでしょ?」

「………いいぜ。売られた喧嘩は買わなくっちゃな!よし勝負だヒナ!!」

 

 

 

「あれ…何か盛り上がってるねあっち…?」

『カゲカゲ』

『ピチュピチュ』

『グォォォ』

『ピッチュ』

 

 

過去のヒナ達が何だか盛り上がっている未来のヒナたちに近づいて話を聞いた。そしてバトルをするということに興味を持って未来のヒナに頑張れと応援していく。リザードンと未来のピチューがスタンバイし、サトシ達も準備を始める。

 

こうして、未来のヒナとのバトルが今、始まろうとしている―――――。(続かない)

 

 

 

 

 

 

 

―――もしも原点にして頂点と出会ったら―――

 

 

 

 

「………………」

「………………」

 

 

「ど、どういう状況なの…?」

『カゲカゲ?』

『ピチュ?』

 

 

現在サトシは宝玉が光り輝いたことで目の前にいる少年を見つめてずっと黙っている状況だ。その異様な光景にヒナたちが話しかけ辛そうに見ていて、何時になったら話すのだろうと考えているようだ。少年はサトシがカント―地方を旅していた頃の服を着て、帽子をかぶっている。そしてサトシと少年の肩にはお互いピカチュウを乗せてただ見つめ合っている状況だ。

 

(あれってお兄ちゃんじゃない…としたら原作の方のアニメ…?いやでも違うような……まさかゲームの…!)

 

ヒナはふと考えてしまった。宝玉が光り輝いたせいで現れたこのサトシに似た少年がもしかしたらゲームでのレッドではないかと思ってしまったのだ。でも無口でピカチュウを連れていて、無表情というのはゲーム世界のレッドだからできることなの?というよりも本当に原点にして頂点のあの方なの?とヒナは自分で考えたことに半信半疑だ。その間もサトシと少年は何も話さずお互い見つめ合っている。

 

「こ、これ止めなくてもいいのかしら…?」

『キバキ?』

「いやアイリス…むやみにサトシたちの邪魔をしたらいけない…もしかしたらサトシ達はお互いの力量を見ているのかもしれないからだよ…!」

『だが、このままだと夕暮れになるぞ』

 

 

「お、お兄ちゃん…?」

『カゲカゲ…?』

『ピチュピチュ…?』

 

 

「…………………」

「…………………」

 

 

サトシと少年が話さないことに時間の無駄だとヒナたちが話し始め、そして意を決してヒナがサトシに話しかけた。だがサトシは何も言わず、ただ見つめている。

 

―――――そしてすぐにサトシと少年が目を見開き、同じタイミングで握手をした。ただし無言で。

 

「え、どういうことなの?」

「何か通じたってことかしら?」

「トレーナーとしての力量を感じ、そして共鳴し合い同志として握手をする…うーん素晴らしい光景だね!」

 

「デントだけだよそういうの…」

『カゲカゲ…』

『ピチュピチュ…』

 

その後少年がバトルをしようと無言で合図をし、サトシがそれを受け入れるまでずっと握手したまま見つめ合っていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――もしもラティアスが登場したら―――

 

 

 

 

泥棒を捕まえ、宝玉を取り戻したと思ったらいきなり輝きだし、何かあるのではと警戒していた。そして光りが収まり、ようやく目を開けて見てみると、光景はある一点を除いて変わってはいなかった。サトシ達は輝く前の場所で立っているし、泥棒も倒れてしまっている状況。でもただ一つだけ、変わっていた所があった。

 

 

「………え?」

 

 

『キュ――ン!!!』

 

 

「ラティアスじゃねえか!どうかしたのか?」

『ピィカッチュ?』

 

『キュ――ン!!』

 

 

ラティアスがヒナとヒトカゲの周りを飛んでいると思ったら、サトシが話しかけたためそちらに近づいて嬉しそうにサトシに頬擦りをする。ヒナはおそらくこの目の前にいるラティアスがマサラタウンでよく遊んでいたラティアスなのだろうと分かった。でも何でここにいるのかが疑問だ。そう思い話しかけようとしたときに、アイリスが興奮したように話しかけてきた。

 

「ラティアス…ラティアスって始めて見たわ!!」

『キバキバ!!!』

「どうかしたのかいアイリス?」

「デント…私はドラゴンマスターになるっていう夢を持ってるのは知ってるでしょ?ラティアスはドラゴンタイプでめったに人に姿を見せないポケモンなのよ…だから夢のようだわ!」

『キバァ!!』

 

 

 

『キューン?』

 

 

アイリスがラティアスに迷惑をかけない距離まで近づき、挨拶をしている。その姿に首を傾けたラティアスだったが、すぐにサトシ達の仲間だということを知り、友好的に接してきた。アイリスは笑顔で近づいてきてくれたラティアスの頭を撫でてありがとうと礼を言っている。その姿にサトシ達は癒され、笑みを浮かべて眺めている。

 

「…でも何でここにいるんだろう?」

『カゲェ?』

 

『ああ、確かにそうだな…』

 

ヒナとヒトカゲ、ルカリオはどうしてこのイッシュ地方にラティアスがいるのか疑問に思った。マサラタウンにいると思っていたのに何故ということ、光り輝いた宝玉のせいで来てしまったのではないかということが思い浮かぶ。ラティアスがヒナたちの呟きを聞いてアイリスから離れ、ヒナに近づいて抱きついてきた。

 

 

『キュゥ!キュ――ン!!』

 

『ああ、なるほどな…』

「ラティアス、なんて言ってるんだ?」

『ピィカ?』

『ラティアスは、宝玉のせいでここに来てしまったけれど、サトシに会えたことや妹分のヒナに会えてとても嬉しいと言っている』

 

「そっか!ありがとうラティアス!!私も嬉しいよ!!」

「俺もラティアスに会えて嬉しいぜ!」

 

『キュー――ン!!!!』

 

 

ラティアスはヒナの頭を撫でてサトシに向かって笑いかける。ラティアスはサトシに救われたことと、マサラタウンに行ってからヒナと遊ぶようになったことで2人がとても好きになったのだ。もちろんピカチュウやヒトカゲも一緒だけれど、サトシやヒナの方が一番好きだとラティアスは思っている。そしてラティアスが抱きしめている幼くて小さなヒナのことを実の妹のように可愛がり、親友のように遊ぶことがイッシュ地方を旅してしまったことでできなくなってしまったことを嘆いていたけれど、宝玉のおかげで会えることができたから嬉しいのだ。

兄妹とそのポケモンたち、そしてルカリオがほのぼのと戯れている間に、デントとアイリスとキバゴが凄く聞きたそうな表情でサトシに話しかけた。

 

「ね、ねえ…前にラティアスにあったことあるの?どんな出会いなのか話を聞かせて!!」

『キバ?』

「ラティアスがヒナちゃんのことを妹分だといった話も聞いてみたいな!!」

 

 

「お、おう…」

『ピィカ…』

 

サトシとピカチュウが困惑しつつもアイリスとデントの質問に答え、出会いについて説明していく…その間もヒナたちは笑い合っていた。

 

「マサラタウンに帰ったらまた遊ぼうね!!」

『カゲカゲ!!』

『キュ―――――ン!!!』

 

『ピチュ…』

「もちろんピチューもだよ!」

『カゲ!』

『キュー!!』

『ピッチュ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――もしもオーキド博士(少年時代)が登場したら―――

 

 

 

 

「あれ…サトシ?」

「ユキナリ!?」

『ピィカ!?』

 

泥棒を倒し、宝玉を取り戻したと思ったらいきなり宝玉が光りだし、気がつけば目の前にユキナリという少年が立っていた。

ユキナリがいたことにサトシとピカチュウは驚き、ヒナはサトシが言った名前に驚いている。それ以外のアイリスたちは誰なんだろうと首を傾けていた。

 

 

「サトシ…誰なの?」

『キバキバ?』

「知り合いかい?」

 

「ああ、ユキナリって言って…俺たちは40年前からときわたりしてきたユキナリに出会ったんだ」

『ピィカ』

 

「どういうこと!?」

「ときわたりって何があったんだい!?」

 

 

「あっと…実はな―――――」

 

 

サトシはユキナリと話をしながら説明をした。ハテノの森でユキナリがセレビィのときわたりに巻き込まれて40年前の時代からときわたりしてきたということ。そしてセレビィと事件を解決して、ときわたりで元の時代に戻ったということを話してくれた。それに納得したアイリス達はなるほどと頷く。そしてユキナリに挨拶をしていく。

ユキナリはキバゴやルカリオを見て興味津々でスケッチブックに描いていた。

 

「始めて見たよ…名前はなんていうの?」

「こっちがキバゴで、こっちがルカリオだ」

「そっか…よろしく」

 

『キバキバ!』

『…ああ、よろしく頼む』

 

「喋った!?」

 

ユキナリはルカリオが喋ったことに驚いていて、そんな反応になれたサトシ達は苦笑してルカリオは喋れるよということを説明する。それにも興味津々なユキナリにヒナは笑みを浮かべた。

 

 

(ポケモンに興味津々なのはさすがオーキド博士…ってとこかな)

『カゲェ?』

『ピチュ?』

「ううん、なんでもないよ…」

 

 

ヒナが何も喋らずただ笑みを浮かべていることにヒトカゲとピチューがどうかしたのか疑問に思って声をかけた。でもヒナは首を横に振って何でもないと言い、談笑しているユキナリ達のもとへと近づいた。

 

「僕、またときわたりをしたのかな…?」

「たぶん…ディアルガの仕業だろうな」

『ピィカ…』

「ディアルガって一体…?」

「ディアルガはセレビィと同じように時を越えられるんだよ。でも安心しろよ。絶対に元の時代に戻すからな!」

『ピッカ!!』

「……ありがとう、サトシ」

 

 

「………とりあえず解決策が物理にならないことを祈っとこうかな」

『カゲェ…』

『ピチュゥ…』

『無理だろうな…』

 

 

 

サトシとユキナリが再び再会し、笑い合って絶対に元の時代に帰そうと約束している。だがヒナたちはディアルガが可哀想な目に遭うのではないかと予想して遠い目をしてしまった。

 

 

そしておそらく、ヒナたちの予想は外れてはいないだろう。

 

 

「ごめんねディアルガ…でもこうなっちゃったら止まらなそうだよ…」

『カゲェ…』

『ピチュゥ…』

『こうなった原因であるディアルガの自業自得だろうな…放っておけ』

 

「そしてルカリオはいつも通りだ…」

『カゲカゲェ…』

『ピッチュゥ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――もしも伝説が全員集合したら―――

 

 

 

 

 

「こんな時どう表現したらいいんだろう…」

『カゲェ…』

『ピチュゥ…』

『無視しろ。他人のふりをすれば問題ない』

「それって大丈夫じゃないからねルカリオ結局は放置してるからね!」

 

 

ヒナたちが引き攣ったような表情で周りを見て会話をしている。それには理由があった。泥棒を倒したと思ったら宝玉が輝きだし、気がついたら普通の人間なら気絶してしまいそうな状況が出来上がっていたからだ。輝きが消えたと思って目を開けると、ヒナたちの周りを取り囲むように伝説たちが現れていた状況に誰も叫ばなかったのが幸運かもしれない。叫んだことによって人々が何だろうと来てしまうし、そのせいでパニックになってしまうこと間違いなしの状況だからだ。

そしてデントやアイリスもこの状況に驚き、ヒナとルカリオの近くで伝説たちを見ていた。めったに人に姿を見せないと言われている伝説が多く集まっている状況に喜べばいいのか怖がればいいのか分からず、とりあえず見ているという感じだろう。

 

ヒナたちが遠い目でその状況を眺めていた、その時だった――――――。

 

 

 

 

『ヒナちゃん久しぶり!!!』

「うひょわッ!!?」

『カゲ!?』

『ピチュ!?』

『ヒナちゃんて本当に小さくて可愛いなぁ!!!』

「ちょっとォォォ!!!??」

 

 

 

『ヒナから離れろこの変質者!!!』

 

 

 

『おっと危ない危ない!』

 

 

 

ヒナに後ろから抱きついたのは以前マサラタウンに現れたギラティナの人バージョンだ。笑いながらヒナの頭を撫でて抱きつくギラティナにヒナは鳥肌が立ち、そしてヒトカゲとピチューもヒナが抱きつかれたことに驚き…ルカリオはヒナに抱きつくなと言ってギラティナに攻撃を仕掛ける。だがギラティナは笑いながらルカリオの攻撃を避け、ヒナたちから離れる。それにヒナはほっと一息ついてからルカリオの後ろに行きギラティナから隠れた。

その間も誰なのかアイリスやデントが聞きたそうにしているけれど、でもこれ答えられる状況じゃないから無理だとヒナが首を横に振る。

 

 

「え、待って…全員勢ぞろいなのもそうだけど何でギラティナもいるの!?」

『俺も伝説だからね!!』

『お前を伝説と呼べるものか!!』

『えー酷いなぁ…まあいっか!じゃあ俺行くね!』

「え?どういうこと?何か用があって来たんじゃないの?」

 

ギラティナが怒るルカリオや戸惑うヒナたちに向かって爽やかに手を振って行こうとしたため、ヒナがどうしてきたのか、何でもう行くのかを言う。するとギラティナが少し遠くの方でアルセウスとミュウツーに話しかけられているサトシを見てから苦笑して言う。

 

 

『俺たちはさっきの光りに引き寄せられてきただけだからね。それにそろそろ逃げないと怖いからさ』

「…え?」

『じゃあね!!また会おうヒナちゃん!!』

『二度と来るな!!!』

 

 

「……行っちゃった」

『…カゲ』

『…ピチュ』

 

ルカリオが反転世界へ戻って行くギラティナを見て怒りながら叫ぶ、先ほどヒナにやられた行動でキレているのだろう。

でもその前に気になった言葉があるとヒナは思った。逃げないと怖いとはいったい何なのだろうと…。ふとギラティナが先ほど見たサトシ達の方向を見ると…酷い状況になっていた。

 

 

「アルセウス。こうなった原因って何だ?」

『ああ、その石の力が源となって私たちはこちらへ引き寄せられた…』

「石の力…この時間の宝玉のせいってことか?」

『そういうことになるな』

 

「………じゃあこれ全部ディアルガがやったことでいいんだよな?」

 

 

『ッッ!!!??ギュルァァァァァァアア!!!!!!』

「うるせえぞゴラ!!人気のない場所で良かったけど…もしも何かあったらどうするつもりだったんだ!!!」

 

『サトシ、それは…』

「ミュウツーは黙ってろ!!…というより、さっさと自分の居るべき場所に戻れ!」

『ピィカ…』

 

サトシは心配しているのだろう。伝説たちがこの場所に集まってしまったという状況に人々が気づき大騒ぎになってしまったらどうするつもりかと。そしてもしも伝説たちがその騒ぎで捕まってしまったらどうするつもりなのかと…でもサトシの怒りはそれだけじゃなかった。むしろ伝説たちが集合したことに怒り、自分のいるべき場所に帰れと考えているようだ。

 

 

「さっさと帰らないとどうなるか…分かってるだろうな?」

 

 

『皆の者、解散するぞ!!!』

 

 

「あ、でもディアルガお前は残れ」

『ギュルァ!!!??』

 

「残 れ ?」

『ッッ!!!!!!』

 

 

サトシがにっこりと笑みを浮かべて握っている拳を見せ、帰らないとフルボッコ☆という感じで言っている雰囲気にルギアが大声で伝説たちに向かって叫ぶ。そして伝説たちが散り散りになって行く中、アルセウスとディアルガはその場に残っていた。アルセウスはサトシの怒りに恐怖心はなく、むしろもっとサトシと喋りたいからという気持ちでその場に残り、そしてディアルガは震えながらサトシに言われたとおり動かなかった。でもおそらくは帰りたいのだろう…ディアルガは涙目になって震え、怯えていた。その姿にヒナたちは同情するが、止める気はない。むしろ止めようとしたら酷くなりそうな気がするからだ。

だがサトシはそのまま暴走せず、アルセウスの方を見て困ったような表情を浮かべた。

 

 

「アルセウス…悪いけど帰ってくれないか?」

『…何故だ?』

「ここにいたら絶対に人に騒がれる。お前が危ない目に遭ったら俺が悲しいんだ…」

『……分かった…だが、またいずれ会おう』

「ああ、その時を楽しみにしてるぜアルセウス」

 

アルセウスは渋々帰っていき、残りはそろそろ恐怖で気絶するんではないかと言えるディアルガのみとなった。アルセウスに助けてほしいという表情で見ていたのだけれど、アルセウスはそれに気づかず、帰って行ってしまった。

 

「さて…じゃあいろいろと話を聞こうか?」

 

『ッッ!!!!―――――――』

 

 

 

 

 

―――――――――その後起きた悲劇については想像におまかせしておこう。

 

 

 

 

 

 

 







ディアルガ(と名もなき泥棒)に合掌。




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