解決策にはまだ分からないことがあるみたいだ…。
こんにちは兄のサトシです。シューティーとアイリスが原作世界の自分自身と…あとラングレーに対して一緒になって正座させ説教しています。でもバトル場では邪魔だと判断したのか、ゆっくりと話し合える場所へ移動していくみたいです。おそらくこのバトル施設の外で説教でもするのだろうなと思った。
歩き出していく様子を見た原作世界の俺は首を傾けて何で怒ってるんだろうと思っているみたいだ。デント(俺たちの世界)とデント(原作の世界)は苦笑して見ていて、そして妹達は遠い目でそれを見つめている。もう悟ったような表情だ。
…ちょっとだけ、俺の隣にいる原作世界の俺に謝りたくなった。もしもこれでシューティーとアイリスとラングレーの性格が変わったらごめんな…。でもたぶん態度が変わるだけで悪化することは…おそらくなくなるだろうから安心して大丈夫だぜ…たぶん……。
まあそういう問題は後でにするか。あいつらを止めようという気は俺たちにはないし、止めたとしても俺たちの世界のシューティーやアイリスが不満に思ってしまうからな。それに俺が止めようとして余計に悪化する事態は避けたいし。
俺はため息をついてから誰もいなくなったバトル場を見て、そして隣にいる原作世界の俺たちに話しかける。
「…さて、アイリスたちも外に行ったみたいだし…どうする?」
『ピィカ?』
「もちろんバトルするしかないだろ!やろうぜパラレルワールドの俺!!」
『ピッカ!!』
原作世界の俺はバトルしようと言って張り切っているみたいだ。そのやる気に俺は笑みを浮かべて頷く。やっぱり原作世界の俺もバトル大好きで好戦的なんだと思えた。ちょっとだけ共感するぐらいには…。そして俺たちはバトル場へと歩き始め、異世界での自分自身と勝負しようと行動し始めた時だった―――――――――。
「…あら?バトル施設にいたのねあんた達…その様子だと町で起きてる騒動は本当だったようね…」
「ラ、ラングレー!?…ってまさか君はパラレルワールドのラングレーかい!?」
「ラングレー!!?……あ、そっちの世界のラングレーも性格が違うのか…!」
『ピィカ…!』
「ようラングレー!アイリスなら外に行って異世界のお前に説教してるぜ」
『ピッカァ!』
「そ、そう…なら良かったわ…もうあのトラウマ思い出したくないもの……」
「ああ…悪い…それとラングレー、さっきは泥棒探し手伝ってくれてありがとな」
『ピカピカチュッ』
「ははは…ラングレーにとってアイリスはバットテイストだから仕方ないかな。悪かったね…」
「…アイリスの名前を出さないでちょうだい」
「ごめんねラングレー…それとさっきはありがとう」
『カゲカゲ』
『ピチュピチュ』
『すまないな…』
「いいのよ。私がしたいと思ったことだし…泥棒ももしかしたらドラゴンタイプのポケモンを持っているかもしれないと思ったから行動したまでだし…」
すこし顔をそっぽ向けていうラングレーに、原作世界の俺たちは本当に驚愕しているようだ。でも最初のシューティー騒動に比べたら慣れた感じで俺たちの世界のラングレーに話しかけている。こちらのラングレーもドラゴンタイプに執着しているけれど、剣呑な雰囲気を出さず優しく接している態度に驚きながらも仲良くできそうだと原作世界の俺たちが嬉しそうに言っていた。…これもう原作世界の俺とバトルするどころじゃないよな?でもさっきバトルしようかと言ったばかりで戦いたい。とにかくラングレーと話を終わらせてから原作の俺ともう一度バトルしようかと言うか…。
「そういえばラングレー…どうしてバトル施設に来たんだ?」
『ピィカ?』
「ああ、暇だったし…ドラゴンタイプと戦いたいからこっちに来たのよ。でも今それどころじゃないみたいだからショッピングにでも行ってくるわ……アイリスと会いたくないし…」
「戦う…そうだバトル!!」
『ピカピカ!!』
「今思い出したのか…」
『ピィカ…』
ラングレーは町で起きている騒動を見ながらそう答えた。そして後ろを振り向き、私たちに挨拶をしてからショッピングへ向けて歩き出していく。
まあバトル場で戦おうとするトレーナーもいないし、町から出たらどうなるか分からないから待機しているしかないしで町の人間と巻き込まれた旅人たちは不安なんだろう。それもバトルできないほどに…。いつもとに戻るのか、これは悪夢なんじゃないかと騒いでいる人もいれば、違う世界の自分自身に対しての暴言を言ったり争ったりと問題が起きているらしい。でも中には俺たちのように普通に仲良く会話したりしている人たちもいるようだ。
…まあ先程までシューティー達やアイリスたちも争ってたからわかることだけどな。
そう考えると、俺たちはかなりマシな方かもしれない。たとえ目の前に自分自身がいたとしても仲良く話をして、そしてこれからバトルしようと明るく言う原作世界の俺に苦笑してしまうぐらい…平和だと思えた。カオスなのはもう確実だけどな。
そして原作世界の俺がまた俺にバトルを申し込もうと笑顔になって顔をこちらに向けるのだけれど、すぐに近くにやって来たジュンサーさんのせいで阻止されてしまった。
「―――――あ、サトシ君たち!こんなところにいたのね!!」
「ジュンサーさん?」
『ピィカ?』
「どうかしたんですか?」
「ようやく見つけたのよ!!この事件を解決できる方法を!!」
「えええええええええ!!!!?????」
ジュンサーさんの言葉によって確信した。もうこの町での騒動が終わろうとしているのだということを…。
そろそろこの原作の俺たちと別れる時が来たのかと思ってしまった。でもやっぱり、別れる前に…できることなら、バトルしてから帰りたいなと思う。原作世界の俺自身とバトルするだなんてこと、もう二度とできないことだと思うしこれがチャンスなんだと感じているから…よし。我儘かもしれないけれど、ジュンサーさんに時間があるかどうか聞いて、あったらバトルして、なかったら我慢しよう。俺はそう考えてから口を開いた。
「あの、ジュンサーさん…その解決できる方法って今すぐにやらないといけないことですか?」
「いいえ。まだ未解決な部分も残っているから大丈夫よ。調べたりない部分も残っているから」
この言葉を聞いて俺は思わずガッツポーズをしてしまった。二度とない原作世界の俺自身とのバトルなのだから、最後まで楽しみたい。だから時間があるという言葉がとても嬉しいと感じたのだ。ここで妹が何か察したのか呆れたような表情で俺を見つめてきた。原作世界の俺は首を傾けて何を考えているのか不思議そうに見つめている。
「どうしたんだそっちの世界の俺?」
『ピィカ?』
「…ああ、お兄ちゃんのことだからバトルしたいとかなんじゃないかな?」
『カゲ?』
『ピチュ?』
「バトル!?」
『ピッカ!?』
「ちょっとだけ時間もらえますかジュンサーさん」
「ええ、そのぐらいの時間は取れるし大丈夫よ。…でも終わったらポケモンセンターに来て頂戴ね。私はもうちょっと調べてからポケモンセンターに行くわ」
「わかりました。俺の我儘聞いてくれてありがとうございます」
俺はバトル施設から出て行こうとするジュンサーさんに礼をしてから、妙にわくわくとした表情でこちらを見ている原作世界の俺に向かって口を開く。
「…どうせこの原因が解決出来たら元に戻るんだし…今のうちにバトルしようぜ!」
『ピィカッチュ!!』
「おう!売られたバトルは買うのが礼儀!やろうぜバトル!!!」
『ピッカァ!!!』
――――――――結果はどうなったか?もちろん俺が勝ちました。知識の差、戦略の差で最後はいろいろとバトルのコツを教えながら戦った。原作の世界の俺はどうにも根性とやる気で相性を考えず、ポケモンにとっての最大限の力を引き出すための知識を知らずに戦うことがあるようだから、もうちょっとちゃんと考えてバトルの指示を出せばもっともっと強いトレーナーになるのではないかと考えたからだ。だから分からないポケモンがいたら調べるということ、やる気だけじゃなくそのポケモンがどんなバトルをしたいのか見ていくこと、そして特攻するだけじゃなくて事前に戦略だけでも立ててみたらどうかと教えていった。まあどうにも原作の世界のサトシは考えるより行動するタイプの人間らしいから、俺の言うことを何一つ分かってないみたいだと思った。修行などでポケモンに合ったやり方、バトルスタイルを考えているみたいだけど、それはバトルで敗北してからわかるみたいだった。そのバトルでどう勝っていくのか逆境を乗り越えて戦うことが多いらしい。まあ俺も暴走するときは考えるより感じてから行動するから考えずに行動するという意味では理解はできるけど…でもやっぱりポケモンマスターを目指すのなら、一つのバトルスタイルだけじゃなくてもっと色々と考えてバトルできるということを知ってほしい。負けるのではなく勝ちたいのなら、バトルの仕方、戦略は無限にあるのだということを知ってほしい。だから時間のある限り俺は教えようと思い口を開く。
「だから、バトルするのに必要なのはやる気だけじゃダメなんだって…」
『ピィカ…』
「分かってる…でも俺たちに合うバトルスタイルなんだよ。急には変えられないんだ…」
『ピッカ!!』
「まあわかる…自分にあったバトルスタイルじゃないとやりにくいもんな……でももうちょっと考えてバトルすることも覚えとけよ。知識の差によって勝敗が決まることもあるんだからな。ゆっくりでいいから少しづつ自分に合った戦略を改善してもっと強くなるために俺の話を聞いてほしいんだ」
「そうか…分かった!」
『ピカ…ピカピカ!』
「よし、じゃあ教えるからもうちょっとこっち来い」
「ああ!ありがとう!」
『ピカピカ!』
『ピッカッチュ!!』
バトルでは俺の方が勝ったけど、でも戦っている間はとても楽しかった。正々堂々としたバトルであって、ちゃんとポケモンのことを気遣いながらバトルするやり方が好感できたと思っている。さすが原作世界の主人公だと感心したぐらいだ。だからもっともっと強くなって夢を目指して頑張れと応援した。異世界の俺自身の言葉と教えに、不満など何も感じずただ笑顔でありがとうと言ったサトシに…俺の方こそありがとうと礼を言った。原作世界の俺とは本当に仲良くできそうだとバトルを通じて分かったし、会えて本当に良かったと思えた。
To be continued.