解決しなければいけないことがあるようだ…。
こんにちは兄のサトシです。…ちょっとイラッとくるシューティーに会ったんですけど、今度は俺たちの世界のシューティーに会って驚いた様子で騒ぎ始めたから、俺はやろうとしていたことを止めてため息をつく。騒いでいる間にルカリオが何か考えたのか、妹達を少し遠くに移動させ守るように背に隠している。…まあこれは仕方ないだろう。またこの異世界のシューティーになにかやられたらヤバいからな…。
というか、異世界のシューティーというよりも、おそらくこの目の前にいる俺たちは原作世界の人物たちなのだろうと直感している。何というか、妹達を知らず、ルカリオがマサラタウンから来ていないと言う世界は原作なのではないかと思ったからだ。まるで最初の頃に会ったシューティーやアイリス、デントだと思えるぐらい懐かしいと感じる部分があったというのも要因になっていたりする。…まあそれはともかく。
俺は遠くの方にいるもう1人のシューティーに手を上げて挨拶する。それを見た俺たちの世界のシューティーは反応しものすごい勢いで走って俺に近づき、90度の角度で挨拶をする。
「ようシューティー。さっきは手伝ってくれてありがとうな」
『ピカ』
「いえ!サトシ先輩の頼みならばどんなことでもやります!!」
「な、え、どういうことだよ一体?!シューティーの性格が全然違う!?」
『ピカッチュ!?』
「こっちの僕はもしかしてパラレルワールドの…クッ、何でサトシなんかを先輩として敬っているんだ!!」
原作の俺…まあつまりサトシ達は俺とシューティーを見て驚いたような表情を浮かべている。もちろんさっきまで争っていたらしい原作のアイリスたちもシューティーの異変を見て驚いた様子で俺たちの方に近づいていく。…というか原作のシューティーかなり性格酷くないか?なんだよサトシなんかって…こっちの世界のシューティーも、もしも俺が最初やらかしてなかったならそうなっていたのかなとふと考えてしまった。…いやそれだと余計に俺暴走するなとも思う。ちょっと後でシューティーに関していろいろとやろうと心の底で決意しながらも、俺たちは話を聞く。やはり原作世界のアイリスたちの反応と、俺たちの世界のアイリスたちの反応とでは全く違っていた。
「ど、どういうことなのよ!?何でこっちのシューティーはサトシを先輩って呼んでいるのよ!!!」
『キ、キバキバ!!!』
「さすがパラレルワールドってことだけはあるみたいだね…うーんファンタスティック…」
「…まあサトシだからとしか言えないわよね」
『キバキバ』
「こればかりは僕たちも説明しにくいかな…」
俺の世界のアイリスたちが苦笑しながらその様子を見守る…というか、お前ら俺にばっかり押し付けないでちゃんと説明しろよ。まあ説明しにくいとは思うけどさ。どうして性格が変わってしまったのか、そして何故俺のことをサトシ先輩と呼ぶのか…まあ原因はぶっちゃければ俺のせいだろう。
最初に出会った時、いろいろと準備をして、基本しか語らなかったシューティーの心をバッキバキに叩き折り、負かしたことがある。そして意気消沈なシューティーに他の地方から来たトレーナーに対する礼儀や、強さについての話をして叩き込んでいった。そのおかげでシューティーの心境に変化が起こり、ポケモントレーナーとして必要なのは強さだけでないということを知ることができた。実は俺はそういう意味で説教等をやらかしたわけではない。あの時妹達に言った言葉、そしてその嘲るような暴言を許せなかっただけなのだ。
だけど、シューティーの態度を改めるためにやったことだったけど、結果的には良かったと思った。ポケモントレーナーは強さだけではないと俺も感じているから…本当に良かった。
そしてアデクさんと出会った時に俺は気づいた。あの時、シューティーは悩んでいたのだ。アデクさんに幼い頃言われた言葉を信じて強さだけでポケモントレーナーとしてバトルに勝ち続けようとしていた。それ以外の弱さはいらないと排他的になっていた。でも俺たちと出会ってその考えは改められ、ポケモントレーナーとして必要な強さを学んでいったのだろうと思う。俺たちと出会って…そして旅をして―――ポケモントレーナーとしての本当の強さを知った。だから、俺たちの世界のシューティーは強いと…俺はそう思っている。シューティーもいろいろと悩んで、迷って…そしてアデクさんと話した時に目標を決めたようだと感じた。感じたと思ったのはドンナマイトで再会した時。自分に必要な強さ…そしてポケモンを大切にする優しさを持って他の地方関わらずに皆と平等に接しようとしてくれていると分かったのだ。そんなシューティーを……≪後輩≫を俺はとても強いポケモントレーナーになるのかもしれないと思っているし、そうなるように学んでもらう部分は教えたりもしている。…まあ土下座とかやりすぎなとこもあったりするけどな……。
そう思いながらも、俺はシューティーと会話を続ける。もちろん大量の疑問を頭に浮かべながら騒いでいる原作世界の俺たちを無視して…。
「あ、そうだ!サトシ先輩!!後でバトルをしてくれるという約束…よろしくお願いしますね!!僕、ずっと待ってますから!!」
「おう…まあとにかくこの状況をどうにかしたらバトルしような」
『ピカピカ』
「え、この状況?………な、先輩だけじゃなくて僕もいる!!!??」
「遅い!!こっちの僕は鈍感か!!?」
「へえバトルする約束してるのか!そっちのシューティーも俺とバトルしようぜ!!」
『ピカピカ!!』
「え…サトシそういう問題じゃないでしょ!!子供ね…」
『キバキバ』
「はは…パラレルワールドだからこそ、性格も違うってことかな…」
「え、ちょっと待って…気づいてなかったの?」
『キバキバ!?』
「ははは…」
「カオスすぎるでしょ…」
『カゲェ…』
『ピチュ…』
『……………………』
何だかこっちの俺たちと原作世界の俺たちとは全然違うみたいだなと印象に残った。シューティーも俺たちと関わってきたことでいろいろと性格が変わっているというのは分かっているし、アイリスたちも変わってきたのは知っている。でもこんなふうに比べてわかるのは面白いと思う。それに原作の俺…まあつまり、サトシもかなり天然というか、バトルが好きということが分かったというか…まあいいか。
俺はため息をつきながらも、シューティー達に話しかける。
「とにかく、原因を突き止めねえとな…さっき調べに行ったジュンサーさんに聞きに行こう…って何だ?」
『ピィカ?』
「え?」
『ピカ?』
何か声が聞こえたと思い、俺とピカチュウは後ろを振り向く。するとポケモンのとっしん並みの勢いで走っているベルがいた。…というか、あっちのベルも原作世界のベルだと思った。最初に出会った頃もあんな感じだったよなと懐かしんでしまった。…でも懐かしむ暇もないみたいだ。
「どいてどいてどいてどいてぇぇえ!!!!」
「うわぁあ!!!」
『ピィカァ!?』
「おっと…大丈夫かシューティー?」
『ピカッチュ?』
「サ、サトシ先輩が僕を助けてくれた!!…グハァ!!」
「おいシューティー!?」
『ピカ!?』
ベルが原作世界のサトシと俺を押して近くにあった池に突き落とそうとしたため、俺はそれを避ける。でも原作世界の俺と肩に乗っていたピカチュウは避けることができず、そのままぶつかってしまい池に落ちてしまった。助けられたらよかったんだけど、俺と少し離れていたからとっさに行動できず無理だった悪いな。
俺の世界のシューティーがベルの衝撃で転びそうになったため腕を掴んで助ける。そして助けた俺に感激してしまい白目向いて気絶してしまった。…原作世界のシューティーはすこし離れていたから助かったみたいだ。でも俺の世界のシューティーを見て愕然としている。ま、まあ白目向いて気絶する自分の姿は見たくないよな…。
「あれ?サトシ君たちが2人ずついる?…というかそっちのシューティー君どうしたの?」
「ははは…さらなるカオス来た…」
『カゲェ…』
『ピッチュゥ…』
『………………………』
「うわぁ可愛いぃぃ!!ねえ君、その子たちと私のポケモンと交換して!!!!」
「え!?嫌です!!!」
『カゲ!!』
『ピチュ!!』
『おい、ヒナたちに近づくな』
「ポ、ポケモンが喋ったァァ!!?」
「えええルカリオって喋るの!?」
『キバキバ!?』
「始めて見たよ!!イッツミラクル!!」
「何!?もっと僕にも見せろ!!」
『ッ…だから近づくなお前ら!!はどうだん打つぞ!!!』
「…ああ、そういえば俺たちが出会ったルカリオも喋ってたなぁピカチュウ」
『…ピィカッチュ』
「それでいいのかそっちの世界の俺……」
『ピカピカ…』
「あ、ありがとうお兄ちゃん」
『カゲ』
『ピチュ』
「ああ。というよりも、もうあいつらに近づくなよ…」
『ピカピカッチュ…』
「うん、分かってる…」
『カゲェ…』
『ピチュゥ…』
原作世界の俺たちってかなりフリーダムだと思いつつも、妹とヒトカゲ、ピチューをあいつらから離して俺の背に隠す。というよりも、水浸しの原作世界の俺をどうにか乾かさないといけないんじゃないのかと思考の片隅で考えながらも、このままじゃ何も解決しないと思う。ルカリオがそろそろキレて本当にはどうだん放ちそうで危ないし…。
ベルの妹達に対する交換発言は後で話し合うとして、はやくジュンサーさんに会いに行き、この状況を何とかしなければとため息をつきながらも行動を開始した―――――――。
To be continued.