時が重なる―――――――。
「…え?ディアルガの通り道?」
『カゲカゲ?』
『ピチュゥ?』
「そうだよ!これから向かう町ではディアルガが通る場所として有名なのさ!」
「へえ…何か面白そうだな…もしかしたらディアルガに会えるってことか」
『ピカピカ!』
こんにちは妹のヒナです。これから向かう町にはディアルガがいる場所として有名らしいですよ。でもこんな話原作であったかなぁ……。というか、ここはイッシュ地方だと言うのに、何でディアルガの話になるんだろうと疑問に思ってしまった…。
町はとても広く、ヒウンシティ程ではないけど、大きくて行きたい場所が様々あるところだと思えた。しかもバトル施設やショッピング市場、交換施設と豊富に取り揃えてある。まるで大きな町バージョンのジョインアベニューのような感じだと私は思えた。そして私たちはいろんな店を見て回って、町の中心まで歩いていくと、大きなディアルガの像が立っているのが見えてきた。ディアルガの像がとても大きく、宝石が入っているかのように煌びやかに太陽の光で輝いていた。その左右にはゼクロムとレシラムの像が立っている。そしてディアルガの像の後ろには何やら大きな時計が時間を刻んでいて、中心には大きくて丸い…まるで綺麗な水色の宝石が入れ込まれていた。
私たちはそれを見て感嘆の息を漏らす。
「へぇ…やっぱりディアルガが有名な町だから像があるのか…」
『ピィカ…』
「綺麗…私も会ってみたいわディアルガに…!」
『キバキバ!!』
「うーん…なんていうファンタスティックなテイストで溢れているんだ…!!僕はこれを見れてとても嬉しいよ!!」
「……実物はたまにマサラタウンにやってくるんだけどね………」
『カゲカゲ…』
『ああ確かに、イッシュ地方へ来る前にマサラタウンで何度か会っていたな…』
『ピチュゥ?』
「ピチュー…旅が終わってマサラタウンにいればわかるからね…いろいろとカオスだけど…」
『カゲ…』
『ピッチュ!』
『確かにそうだな…夢と現実は儚いものか……』
「ああそうだね…フシギダネに説教されてる伝説たちなんて普通は見たくないもんね…」
私たちは兄たちから離れた場所でひそひそと話していた。マサラタウンに伝説がいると言う話はあまりできないことだし、マサラタウンが伝説でいっぱいだと知られてしまったらいろいろと問題が起きるから話せない。…まあ今目の前にいるアイリスとデントなら話してもいいかもしれないけど、それは伝説たちと兄の話し合いによって決められることだ。…前にハルカさんがマナフィの案内で知ってしまった時も驚いていたようだけど絶対に話さないと約束してもらったからマサラタウンは平和なんだけど、本当だったら誰にも知られてほしくない内容みたいだから私はむやみに話をしようとは思わない。騒がれたくない、問題を起こしたくないという理由で今もマサラタウンは平和なのだから……うん。平和だよね?いろいろとフシギダネのおかげで成り立ってるような気がするけどまあ平和だろう。…とにかく決めるのは伝説たちや兄のことだから、私たちは関わらずに行こうと思う。
「ああああああ!!!!??サ、サササトシ先輩!!!!」
「あれシューティー!久しぶりだな!ドンナマイト以来か?」
『ピカピカ!』
「はいお久しぶりですサトシ先輩!!それに皆さんもお久しぶりです!!」
「久しぶり、シューティー!」
『キバキバ!』
「はは…相変わらずパワフルなテイストだね、シューティー…」
「久しぶりねシューティー!」
『カゲカゲ!』
『ピッチュゥ!!』
『久しぶりだな』
私たちの遠くから叫び声が聞こえて、何だろうと振り向いたらシューティーがいた。シューティーは嬉しそうな表情で兄に声をかけて…そして私たちに挨拶をする。…もしかしてドンナマイトの時のようにシューティー以外にも全員が集まっているのではないかと思ってしまった。でもこの場所からは見えていないし、大丈夫かなとルカリオにこっそり聞いてみようと口を開く…。
「ね、ねえルカリオ…もしかしてシューティー以外にもいたりする?」
『……ああそうだな。近くにはいないようだが、この町にはいるみたいだ』
「ぜ、全員?」
『ああ、全員』
ルカリオが波動でいるかどうか調べてくれたようで、私はちょっとだけ嫌な予感がした。原作ではこんな話聞いたことないし、そもそもディアルガがこのイッシュ地方を通るだなんて話も聞いたことがない…だから、何も問題は起きないのではないかと思っていたけど…もしかしたらもしかするから、ちょっとだけ警戒はしておこうと心に決める。その間にも兄たちの話しはかなり盛り上がっているようだ。
「シューティー!後で俺たちバトル施設に向かうけど…その時一緒にバトルしようぜ!」
『ピッカァ!』
「はい!!ぜひサトシ先輩と勝負させてください!!全力でサトシ先輩に挑みますから!!!!」
「おう!楽しみにしてるぜ!」
『ピッカッチュ!!』
「い、いいいえ!こちらこそ本当にありがとうございます!!!!!」
「……だから土下座はやりすぎだって…」
『ピィカ…』
まあちょっとシューティーが暴走してるとこもあるみたいだけど、いつも通りだ。そして私たちはシューティーと別れて、今日泊まるポケモンセンターに行くことになった。ちょっとだけ離れた場所にあるこのポケモンセンターで受け付けを済ませ、さあ遊びまくるぞと意気込んだ時だった――――――。
「へ!?泥棒!!?」
「そうよ!!時計塔にある≪時間の宝玉≫を盗まれたの!!!早く捕まえて戻さないと大変なことになるわ!!!」
「ねえ私たちも探しに行きましょう!!」
『キバキ!!』
「そうだね!手伝えることはやった方がいい!!」
「よし行くぞ!!」
『ピッカァ!!』
「ルカリオ!どこにいるのかわかる!?」
『カゲカゲ!?』
『ピッチュゥ!?』
『…いや、…どんな人物が盗んでいったのかわからない今、人が多いこの町全体を探すとなると…』
「とにかく手当たり次第探しまくるしかないだろ!?」
『ピッカァ!!』
ジュンサーさんが町全体に警報を発して、何があったのか教えてくれた。町の中心にある時計塔に埋め込まれている水色の宝石…つまり、≪時間の宝玉≫が盗まれたということ、その宝玉を早く元に戻さないと何やら大変なことになるらしいということだ。私たちはまず泥棒が隠れそうな場所を探し回る。その時に出会ったシューティーたちにも事情を説明して皆で手分けして探していき…そして私とヒトカゲ、ピチューと兄とピカチュウ、ルカリオとデントとアイリスとキバゴが見つけたのは、泥棒が宝玉を持って逃げようとしている場面だ。
「待てゴラ!!その宝玉を返しやがれ!!!!」
『ピカピッカァ!!!!』
「ギャァァァァァアアアアアアア!!!!!!!!」
「うわーい過剰防衛だ…」
『カゲェ…』
『ピチュゥ…』
兄とピカチュウがまず飛び出してその泥棒に殴りかかったりアイアンテールを食らわせたりとかなりやりすぎな感じで捕まえ、いつの間にかデントが用意した縄で気絶している泥棒を縛り、アイリスたちがその間に泥棒の持っている荷物を奪い取って宝玉を探す。すごいチームプレーだと思う本当に…。え?私たちは何もやってないのかって?現在離れた場所でルカリオに守られながらその光景を見ています。何かとばっちりが来たらやばいと思って兄たちに離れていろと言われ、ルカリオの背に隠されて見守るしかない状況です。
…まあとにかく、兄たちに会ってしまった泥棒に同情するしかないと思って遠い目で合掌してしまった。これも運の尽きだから頑張れ泥棒…。
「…見つけたわ!!」
『キバキバ!!』
「良かった…よしジュンサーさんに伝えに行こうぜ!」
『ピッカッチュ!』
「………あれ?ちょっと待ってサトシ…何だかその宝玉、光ってないか?」
「え?…うわっ!?」
デントが指摘して、私たちが恐る恐る近づいて見つめた瞬間、その宝玉は瞬く間に光り始め、町全体を覆うほどの輝きを増していった。まるで太陽の近くに立っているような輝き…光り過ぎて真っ白で何も見えないぐらいの輝きが私たちに襲いかかった。私とヒトカゲ、ピチューはルカリオに抱きしめられながら、兄たちもそれぞれ警戒してお互いピカチュウやキバゴを守りながら…デントは泥棒が逃げないように縄を掴んでいながらも待っていた。目を開いておられず、私たちはそれぞれ目を閉じてその光が収まるのを待つ。
…なんだか私はこの時、ときわたりに巻き込まれた時の…そしてルカリオがマサラタウンに来た時のあの輝きに似ていると感じてしまった。
そして輝きが収まった瞬間、私たちはようやく目を開けることができた。目を開けて周りを見ると何も変わらない町の様子が見えてくる。縄で縛られ、倒れている泥棒もいるし…何も変わっていないのかなと思った。
「何も…変わってない?」
『カゲカゲ?』
『ピチュゥ?』
『…いや…これは…』
「どうかしたかルカリオ?」
『ピッカ?』
「ちょっと待って、その前にこの泥棒をどうにかするのが先よ…まずは町の中心の広場に行ってみましょう」
『キバキバ』
「そうだね。あと、宝玉を戻さないといけないだろうし…広場に行って見よう」
私たちは泥棒を引きずりながらも歩きだし、そして広場の近くにいたジュンサーさんに泥棒を引き渡す。そして宝玉を戻そうと…したのだけれど…。
「あれ!?時間の宝玉が…………ある!?」
『キバキバ!?』
「どういうことだ!?なんで宝玉が…!」
『ピッカァ!?』
「これは…ちょっと調べてくるわね…協力を感謝するわ!……でもここからは私たちに任せて戻りなさい」
「わ、わかりました…ありがとうございますジュンサーさん…」
ジュンサーさんがアイリスが取り戻した時間の宝玉を手に持ち、バイクに乗っていろいろと調べに行ってしまった。私たちはお互いに顔を見合わせて…そして時計塔にある時間の宝玉を見つめる。本当ならジュンサーさんの手にあるものこそ先程盗まれた時間の宝玉なのになんでなんだろう…。
「これってどういうことなんだろう…そういえばルカリオ、なにか言おうとしてなかったっけ?」
『カゲカゲ?』
『ピチュ?』
「…ルカリオ、何かわかったのか?」
『ピッカァ?』
『…すぐにわかることだ』
そう言って、ある方向を指差して教えてくれた。私たちがその方向を見ると、ありえない人物たちが私たちを見ていて…?
「ええええええええ!!!!!???お…俺!?」
『ピィカ!?』
「な、ななな何で私たちがいるの!?」
『キバキバ!?』
「これは一体どういうことなんだい!?」
「…え?」
『…ピカ?』
「…どういうことなの?」
『キバキ?』
「何というミステリアスなテイスト…僕たちが目の前にいるだなんて…」
「……ええええ!?」
『カゲカゲ…』
『ピッチュ?』
『…どうやら、町全体の人物が増えているようだな…それもお前たち含めて』
―――――――目の前にいるのは、兄たちに似た人物。そして…偽物なんかじゃなくて本物だと分かった。でもドッペルゲンガ―のような彼らは私たちを見て驚いている。ただし、目の前にいる彼らは私やヒトカゲ、ピチューやルカリオが傍にいない。その様子に、何故なのだろうか…私ははっきりと直感した。
私の直感は、間違いなく目の前にいる兄たちが…≪サトシ達≫が原作の存在だと分かってしまったのだ。
To be continued.