でもみんなにとってはちょっとだけ違う。
ここ、カント―地方のニビシティにはサトシと一緒にシンオウ地方までよく旅に同行していたタケシがいる。タケシはただいまポケモンドクターとして修行の真っ最中であったりするのだ。
「よし、今日の治療はここまで!…よく頑張ったな」
『コラ…コラッタ!』
「よくできましたねタケシ君」
「はい!不肖このタケシ、ジョーイさんの教えに背くことなど一つもッ!?…シ…シビレビレ…!!」
『………ケッ!』
タケシはいつも通り、ジョーイさんにポケモンドクターとしてのポケモンの正しい治療方法を教わり、そしていつも通りジョーイさんにアタックして、グレッグルによって砕け散っていた。
そのタケシの行動にジョーイは苦笑して見ていたが、そろそろ次の患者が運ばれてくるためタケシに起きてもらい、準備をしていく。
――――――そんな、いつも通りの彼らに、ある一つの連絡が届いた。
「大変です!森の中で…エンテイが怪我をして暴れていて!!」
「エンテイ!?確か、ジョウト地方の伝説と呼ばれているポケモンでは…!」
『ラキッ!』
「すぐに行きます!!」
「待ってタケシ君。私たちも行くわ!」
『ラッキィ!!』
そして森の中にたどり着き、見た光景はかなり悲惨なものだった。木々が燃え、森の中に住む草ポケモンたちが隠れて怯え、遠くにはエンテイが暴れている光景がタケシたちから見えていた。
「これは…」
『ラキ…』
「お、お願いします…何とかエンテイの怒りを鎮めてくださいジョーイさん!」
「ええ、何とかやってみます…けど…!」
普通の人間、ポケモンたちはこの様子に怯え、恐怖で震えていた。エンテイを助けようと駆けつけたジョーイ、ジュンサーも同じようにエンテイの強さを見て圧倒していた。あの怒りをどうやって鎮めればいいのだろうか…どうやって怪我を治せばいいのだろうかと。でもプロとしてそれを考えているというのに、やはり良い案は浮かばず、どうすれば解決するのかわからないままだった…。
―――――――そんな時に、タケシが行動を開始した。
「行くぞ、グレッグル」
『……ング…』
「え?…タケシ君…!!」
ボールから出したグレッグルと共に、エンテイに近づいて行ったのだ。しかも恐れることなく。
そしてタケシに向かって炎を吐き、攻撃しようとしてくるのをグレッグルが止め、怒りを鎮めようとタケシがにこやかに笑みを浮かべて言う。
「痛いだろ?すぐに治してやるからな!」
『……………グゥォォ』
「え!?怒りが鎮まった…!!」
『ラキィ!?』
「彼、凄いわ!どうやって抑えたのよ…!」
皆が驚くのは無理のないことだ。エンテイはとても強くて近づくだけで攻撃してきそうな様子だったというのに、グレッグルが余裕でその攻撃を防ぎ、そしてタケシの一言でエンテイの怒りが鎮まり落ち着いていったのだから。
でもタケシにとってはそんな行動は普通だった。いつものようにポケモンを助け、いつものように治療をしているだけなのだ。
「…いつか、タケシ君がポケモンドクターになったら…絶対に立派なポケモンドクターになるわね…」
ジョーイは思った。今目の前で見ている行動、そして伝説にも平等に接して治療するタケシの強さを。まだ分からないけれど、いつか立派なポケモンドクターになる日は必ず来るだろうとジョーイは確信したのだ。
タケシはサトシのようにいつも通りポケモンに接したまでのことだが、周りの人間はそうは思っていない。
「よし、頑張ったなエンテイ!」
『……ング』
『グォォォオ!!』
タケシはこの後いつも通り治療をして、ポケモンドクターとして立派に成長するために学んでいくだろう。
何があっても、どんなポケモンが来たとしても…。
「おねいさぁーん!自分と一緒にお茶でも…グハァ!シビレビレェェ!!!」
『………ケッ!』
………いつものように大人のお姉さん相手に暴走したとしても。タケシの平和で平凡な日々は毎日のように続いていく。