兄たちはあるポケモンと出会った。
こんにちは兄のサトシです。先程ジム戦に向けてバトルをしていたんですけど、何故かモノズたちが飛び出してきて驚きました。しかもそのモノズ達はポケモンの育て屋に預けられているポケモンたちらしいです。
慌ててモノズ達が預けられている人のポケモンだということ、攻撃してしまい申し訳ないと俺たちに謝ってきたボビーという人に俺たちは苦笑した。育て屋だという彼は言い方や行動がちょっとだけデントのテイスティングタイムに似ているような気がしなくもないと思ったからだ。
『モガァァァア!!!』
『モッノォォォオオオ!!!!』
「げ、元気いいねモノズ達…」
『カゲェ…』
『ピッチュゥ…』
「こら、俺のズボンを引っぱるな」
『ピカ』
「あ、ごめんなさい…」
『カゲ』
『ピチュ』
モノズ達が元気に大きな岩を砕いている様子を見て妹達が俺の後ろに隠れ、呟いていた。おそらくモノズ達の攻撃の餌食になりたくないのだろう…。育て屋のボビーさんはドラゴンタイプを育てるのは初めてで不安そうな様子を見たアイリスが竜の里出身者としてドラゴンタイプを育てる手助けをしたいと言ってきた。俺たちもできることがあったら手伝っていこうと考えてボビーさんに言うのだけれども…まさかモノズ達だけじゃなくて他のポケモンたちの世話も任されるとは思ってもみなかった…。
「…なんか体のいい雑用係になっちまったな」
『ピィカッチュ…』
「まあそうかもしれないけど…私はたくさんのポケモンたちに触れ合えるし、どんなご飯が好きなのか知れて楽しいよ?」
『カゲカゲ!!』
『ピチュ!!』
妹達は楽しそうにシキジカたちに飯を与えており、マメパトたちと触れ合ったり遊んだりしていた。俺は気を取り直して、これもいい経験になると考えポケモンたちに飯を与えていく。時折モノズが俺に向かってずつきをしようとしてくるのだけれど、俺が避けたらすぐに悔しそうにしていて、かなり好戦的なんだなと思えた。
デントとルカリオはポケモンたちの食べている飯を見て、どういう特徴があるのか、どのタイプがどのような食べ物を好むのか話し合い、時々ボビーさんに聞いているのが見えた。
…そしてアイリスは、もう一体いた人見知りのモノズに一生懸命話しかけていた。夜になっても傍を離れず、ご飯を食べてくれるように願い、そして心を開いてくれるようにずっと行動していた。俺たちはそんなアイリスの分まで働いていた。
「…モノズがご飯を食べてくれた!」
『キバキ!』
『モ、モノォ……』
モノズがアイリスに心を開き、飯を食べてくれたのは預けられた約束の最終日の前日。アイリスのおかげでようやく俺たちの前にも姿を見せてくれたモノズの体調を確認して、そして真剣に健康をチェックしていく。そんなボビーさんの様子にルカリオが真剣に見つめていて、そして時々質問をしながら話を聞いている姿に、もしかしたらあいつはタケシのようになるのかなと思ってしまった。…そういえばタケシ……ポケモンドクターを目指して頑張っているらしいけど、元気にしてるかな。
「…なあピカチュウ…モノズのトレーナー遅いな……」
『ピィカ……』
人見知りだったモノズのトレーナーが約束の日に来ない。他のモノズ達はちゃんとトレーナーに返されていったのだが、この人見知りのモノズのトレーナーは全然来なかった…。アイリスが寂しそうなモノズを励まし、大丈夫だと慰める。
「モノズ、絶対にトレーナーはやってくるからね…大丈夫よ」
『キバキ!』
『モ、モノォ……』
アイリスが励ましたとしても、モノズは寂しそうな表情が変わらず、俺たちはどうすればいいのか悩む。
…だが、そんな俺たちの前に現れたのが、モノズのトレーナーだった。
「モノズ!ようやく会えた!!!」
『モノォォォオ!!!』
モノズがとても悲しそうに鳴き、出入り口を見つめて待つ。そうしてようやくやって来たトレーナーにアイリスは怒ろうとしたのだが、何だか様子がおかしいことに気づき、慌ててボビーさんを呼んで来た。
――――――話を聞くと、どうやらこの先にある電気石の洞穴でポケモンを追いかけて迷ってしまったらしい。それで約束の日に遅れてしまったと説明され、謝罪された。それにボビーさんは無事でよかったと言い、モノズも嬉しそうにしていた。そしてボールに戻る直前、アイリスに向かって一鳴きし、返っていった…。
アイリスは寂しそうにしていたけれど、でもドラゴンマスターとしてもっと頑張っていこうとやる気を出したようだ。ボビーさんにまたポケモンに飯を配ってほしいと頼まれたとき、アイリスは元気よく向かい、手伝っていたから気合が入り直したのではないかと思う。
「…まあ、アイリスもモノズも……これで良かったんだよな」
『ピッカッチュ…』
兄の心境。
夢に向かって進むために…か…。