インフィニット・ストラトス ~紅の騎士~   作:ぬっく~

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第39話

学宿二日目は午前中から夜まで丸一日使ってISの各種装備試験運用とデータ取りが行なわれる。

しかも、俺を除いてた専用機持ちは大量の装備が待っているので大変だろう。

 

「それでは予定通りに実装試験を行う。候補生は自国の装備を、それ以外の者は……」

 

「ちーちゃ~~~~~~ん!!!」

 

ずどどどどどど……!と砂煙を上げながら人影が走ってくる。

 

「……束」

 

稀代の天才・篠ノ之束が関係者以外立ち入り禁止の臨海学校に堂々と乱入してきたのだ。

 

「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、愛を確かめる為にハグハグし―――ぶへっ」

 

飛びかかってきた束を片手で掴む。

 

「五月蠅いぞ、束」

 

「相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」

 

そしてその拘束から抜ける束もすごい。

着地した束は、今度は箒の方を向く。

 

「やあ!」

 

「……どうも」

 

 

 

 

IS……インフィニット・ストラトスは、内在するコアによって存在・稼働している。

このコアを作ったのは二人の女性だった。

一人は467ものコアを作り、もう一人は伝話を元に7つの騎士を作った。

だが、騎士を作ったことを知る人は少ない。

束はコアを世界各国に分配したが、467個目を最後にコアを作る事を否定し、同時に失踪した。

コアを作る技術は彼女たち以外に不明であり、コアの研究を行う傍ら、世界中が彼女を探している。

 

 

 

 

「あれって……もしかして……」

 

一部の女子の気付いたらしく、女子の間がにわかに騒がしくなる。

 

「はぁ……」

 

今まで外に顔を出さなかった篠ノ之束が外に出て来たのだから、騒がしくなるのは当たり前だった。

 

「それで、頼んでおいたものは……?」

 

箒は尋ねるが、返ってきた言葉は……

 

「束さんはね、よーーーく考えた結果、今の箒ちゃんには専用機は与えられないな」

 

「な!? どういうことですか!!」

 

箒の思惑が大きく外れた。

 

「そのままの意味だよ。今の箒ちゃんには、専用機なんて早いと言うことだよ」

 

「どうしてですか……専用機をくれるって……」

 

「あれ? 束さんはいつあげるって言った?」

 

箒はあの時の会話を思い出し、束は一度もあげるとは言ってないことを思い出す。

 

「そういうことで、おしまい」

 

言って、束は一夏の方へと目を向けた。

 

「久しぶりだね、いっくん」

 

「……そうですね」

 

昨日会ったことを隠して、今日会ったことにしていた。

 

「うんうん、流石はくれっちの作ったISだね。コアを7()()も搭載するなんて、束さんもびっくりだよ」

 

え? 

今何て言った?

コアを7つ?

 

「束、どう言うことだ……」

 

この時だけ、千冬姉はマジだった。

 

「そのままの意味だよ。いっくんのISにはコアが7つ搭載されているんだよ」

 

俺のISは7つの騎士だから、7つのコアがあってもおかしくはないが、一人がそんなに独占すると世界のバランスが崩れる。

 

「しかも、このコアはくれっちの作ったコアだから束さんの圏外だね」

 

「あのやろう……」

 

ファイさんのプレゼントはとんでもないものだった。

 

「織斑くんがISを7つも所持しているってこと?」

 

「それ、なんかずるくない」

 

この話を聞いた女子はISに限りがあることをしって知っているからこそ、その言葉がでる。

 

「だけど、稼働しているのは3つだけみたいだから、その内、全てが稼働するね」

 

つもり、騎士一つにつき一つのコアが稼働するということだ。

知らざる真実の連続が続く中、事件が起こった。

 

「お、織斑先生! 大変です!!」

 

 

 

 

「これで、よかったのでしょうか……」

 

「なに、これはただの挨拶代りだよ」

 

IS学園が見えるホテルに一組の男女が食事を摂っていた。

昨日、織斑一夏の前に現れた者たちだった。

 

「これごときで彼は落ちないよ」

 

「はあ~」

 

「なんせ、あの女が選んだ者なんだから」

 

すべて、あの女の手の上だしたとしても構わない。

最後に勝のは私だ。

 

「さて、彼はどんな答えを出すのか」

 

 

 

「―――では、現状を説明する」

 

旅館の一番奥にある宴会用の大座敷・風花の間では、俺たち専用機持ちと教員が集められた。

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働中にあった軍用ISが制御下を離れて暴走した。名を『銀の福音』……アメリカ・イスラエル共同開発の第三世代だ。衛星に追跡の結果、福音はここから2km先の空域を通過する事がわかった。時間にして50分後……学園上層部からの通達により我々が対処することとなった。教員は訓練機で空域及び海域の封鎖を行う。福音はお前達で止めろ」

 

軍用ISを止めろか……流石に俺を除く専用機持ちでは荷が重いだろうが、やるしかないだろう。

 

「織斑先生、目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

 

国家代表候補生だから、こう言った事態に対しての訓練も受けていたのかもしれない。

とくに現役軍人であるラウラの眼差しは真剣だった。

 

「その必要はない……そうだろ?おまえたち」

 

『確かにそうですね』

 

『スペックデータを見ましたが、弱すぎます』

 

大型の空中投影ディスプレイから2人の少女が姿を現す。

 

「お、織斑先生……これは」

 

「フレア、サー。お前達はこれをどう見る?」

 

ディスプレイにいたのは俺のISのコア人格だった。

 

『まず、軍用ISと言う時点でSE量がリミッターが掛かったISの1.5倍以上あるので、短期戦に持ち込まないと勝てないでしょう』

 

『武装に関しては、広域殲滅を目的とした特殊射撃、「ブルー・ティアーズ」と同じくオールアレンジ攻撃が可能ということです』

 

流石は何処にも所属しないコアなため、情報収取がはやい。

作戦が始まる前から、『銀の福音』の情報を入手していた。

 

『結論からして、更識簪とマスターの2人でこれを撃墜した方がいいと私は思いました』

 

『私も以下同文です』

 

フレアとサーの意見により、作戦の要が決まった。

と言うより、反論の余地がなかったのだ。

正論すぎて、何も言えないの方が正しいけど……

 

『では、作戦を説明します。マスターは簪を連れて福音に向かってください。簪さんは着き次第、〈雪片弐型〉で斬るだけの簡単な作業です』

 

「失敗した場合は?」

 

必ず成功とするとは思っていない。

その時のことも考えなければならないのが、今回の作戦なのだ。

 

『その場合、【最後の剣】で近くの島ごと巻き混んで消滅させます』

 

力づくで終わらせるつもりだな……

何より、現状でこれが最も最善策なんだろう。

 

「では、決まりだな。本作戦は織斑・更識の両名による目標の追撃及び撃墜を目標とする」

 

そして、福音事件の火蓋が落とされた。


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