インフィニット・ストラトス ~紅の騎士~   作:ぬっく~

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第37話

IS学園の屋上は今、戦場化していた。

屋上を埋め尽くす幾人もの黒衣の少女。

ISの生みの親である紅の髪の女性。

 

「・・・・・・お、お母様」

 

今この場でもっとも会いたくなかった人物に出会ったかのように前方から声が響いた。

巨大な時計を背にし、右手に歩兵銃、左手に短銃を握ったエンペラーが、怯えていた。

 

「あなたは少しやり過ぎたのよ。だから、愛のお仕置きをしてあげる」

 

右手に出現させた巨大な戦斧を肩に担ぎ、ファイは鼻を鳴らす。

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

エンペラーは今すぐにもここから逃げることを考え、屋上から飛び降りる。

だが、それは敵わなかった。

 

「何処に行くの?」

 

エンペラーよりも早く、彼女を取り押さえる。

 

「〈刻々帝(ザフキエル)〉ーーー【一の弾(アレフ)】」

 

すぐさま、『Ⅰ』から漏れ出した影を装填した短銃を自分に撃つ。

刻々帝(ザフキエル)〉【一の弾(アレフ)】は撃った対象の時間を早める弾である。

影すら追いつかないような速度で、エンペラーは逃げる。

 

「無駄よ・・・」

 

だが、ファイの前では無駄だった。

 

「がは・・・ッ!?」

 

ハイパーセンサーですら感知不可能な速さで移動しているエンペラーをファイは背中から踏みつける。

 

「ふふふ、ふふ」

 

あり得ない光景だった。

先程まで、エンペラーが主導権を握っていたのに、ファイが現れただけで全てが逆転した。

 

「お、お許しください・・・お、お母様」

 

「いやよ」

 

許しを請うエンペラーをさらに踏みつける。

終いにはSMプレイを見るかの様にエンペラーを痛めつける。

 

「さて、あなたたちも、さっさと戻りなさい」

 

『はいぃぃぃ!!!』

 

分身体であるエンペラーたちはすぐさま、影の中へと逃げ帰る。

全ての分身体が消え、専用機持ちは解放されると楯無の元へと駆け寄る。

 

「久しぶりね。ちーちゃん」

 

「・・・・・・」

 

今頃現れるとは、どういうつもりだ?と言った顔で睨み付ける。

エンペラーのお仕置きを終えたのか、ファイの赤騎士が砕け散る。

 

「話は後にしましょ」

 

言って、ファイはエンペラーの目の前で立ち止まる。

そのまま背中に手をのせ、何かを唱える。

唱え終わると、エンペラーは一夏へと戻っていった。

 

「とりあえず、これで大丈夫ね」

 

織斑一夏の捜索は終わりを告げた。

 

 

 

 

保健室では、更識姉妹と織斑一夏が寝ていた。

その隣、検査室では専用機持ちと織斑先生に山田先生が集まっていた。

 

「お、織斑先生。この方は・・・」

 

彼女らとは別でもう一人いた。

 

「自己紹介位はしろ・・・紅葉」

 

「いいけど・・・いまは違う名前で名乗っているよ」

 

垂れていた髪を耳に乗せ、自己紹介をはじめた。

 

「ファイ・D・フローライトだよ、ちなみにISの開発者でもあるのね。終わり」

 

ISの開発者ってところで疑問が生まれた。

ISの開発者は篠ノ之束しかいない。

これは一般常識であるのに、この女性はそう名乗った。

 

「もう少し、まともに挨拶はできんのか?」

 

「自己紹介なんて、10年ぶりだからね(笑)」

 

千冬はため息をつき、山田先生は目をぱちぱちしながら見ていた。

 

「教科書などには束ちゃんが作ったことになっているけど、実際は私もそれに携わっていたのよ」

 

それを聞いた専用機持ちは驚いていた。

 

「ちなみに一夏くんのISは私が作ったものだよ」

 

それを聞いた専用機持ちは、驚く。

 

「とりあえずこの後、予定があるからここで閉めちゃうね」

 

そう言って検査室を出て行った。

 

「おい!待て・・・」

 

だが、ファイは何処にもいなかった。

その後、専用機持ちには今日の事は話さないことを言いつけ解散となった。

数日後、織斑一夏は目を覚まし、また普通の生活へと戻った。

 


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