インフィニット・ストラトス ~紅の騎士~   作:ぬっく~

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第34話

数時間前・・・・・・

 

「そっちにいた?」

 

「だめ!こっちにもいない」

 

学園中の生徒、教師はある生徒を探していた。

 

「「「織斑くん、何処へ行ったのよ!!」」」

 

学年別トーナメントが中止になってから、次の日の事だった。

織斑一夏が、行方不明になっていた。

 

 

 

 

学年別トーナメントが中止になり、またもや生徒たちはしょぼくれてのSHRが始まった時に事件が起こった。

 

「お、織斑先生!!」

 

「何事だ?山田先生」

 

慌てて教室に入って来る山田先生。

 

「お・・・織斑くんが・・・」

 

「織斑がどうした?」

 

白騎士を使った事による副作用で今日は休むことになるのはわかっていたが、山田先生の慌てて具合いが異常だった。

 

「いなくなりました!!」

 

「「「・・・・・・」」」

 

山田先生の言葉に生徒たちは一瞬、フリーズしたかのように固まっていた。

 

「「「ええええええ!?」」」

 

このことが学園中に広まり、急遽織斑一夏の捜索が始まった。

 

 

 

 

「ふふふ・・・。随分と皆さんは貴方をお探しのようですよ?一夏さん」

 

アリーナの上では、あちらこちらを探す生徒たちを観戦する者がいた。

 

『そう、言われてもな・・・』

 

現在捜索中の織斑一夏だった。

だが、いつもとは雰囲気が違っていた。

 

「ここも危ないよなので、移動しますわ」

 

そして、彼?は影の中へと入り姿を消した。

 

 

 

 

現在、IS学園内は織斑一夏の捜索で持ち切りだった。

 

「お、織斑くん」

 

簪は偶々一夏を見つけた。

そのまま歩調を緩めくなく、すたすたと屋上前の扉に歩いていく。

 

「探したんだよ・・・」

 

「ーーーああ、ああ。あなた。更識簪さんでしたわね」

 

「・・・・・・!」

 

一夏がそう言った瞬間、簪はその場から飛び退いた。

根拠はない。

ただ脳が得体の知れない違和感を覚え、簪に逃げろと警告したのだ。

 

「まあ!まあ!素晴らしい反応ですわ。素敵ですわ。素敵ですわ。でぇもォ」

 

姿形は織斑一夏であるのに、中身がまるで違っていた。

 

「ーーーっ」

 

簪は息を詰まらせた。

後方に飛び退いた先で、何者かに足首を掴まれたのである。

見ると、いつの間にか簪の足元にまで一夏の影が伸びーーーそこから、白く細い手が二本、生えていた。

しかも影はじわじわとその面積を増すと、壁をも這い上がっていった。

そしてそこからも無数の手が生え、後方から簪の腕や首をがっちりと拘束してくる。

 

「くーーー」

 

もがくも、細い指は簪の身体から離れようとはしなかった。

それどころかさらに力を増し、簪を壁に磔にしてくる。

 

「きひひ、ひひ、駄ァ目ですわよぅ。そんなことをしても無駄ですわ」

 

一夏が、笑う。

 

「昨日はお世話になりましたわね」

 

一夏が、閉じた左目を開きながら簪の方近づいてくる。

そしてそこにあったのは、無機的な金色。

およそ生物の器官とは思えない瞳に見えるのは、Ⅻの文字と二本の針。

そうーーーそれは、まるで時計のように見えた。

 

「あなたーーーは、誰」

 

喉を締め付けらながらも、声を発する。

すると一夏はにぃぃ、と唇の端を上げた。

 

「うふふ、まだお気付きにならないとはーーー」

 

そこで一拍おいてから、息のかかるくらいの距離にまで顔を近づけてくる。

 

「ーーーエンペラー」

 

「ーーーッ!!」

 

その名前を出されて、簪は言葉を詰まらせた。

そんな反応を見てか、一夏いなエンペラーがいたく楽しそうに笑みを濃くする。

 

「学年別の時はそれ程、出られませんでしたが・・・今ならーーー」

 

ーーー戦慄。

簪は背中がじっとりと湿るのを感じた。

 

「・・・・・・っ」

 

そんな状況にエンペラーが、簪の身体に怪しい手つきで指を這わせてきたのである。

 

「簪さん。更識、簪さん。あなたもーーーとても、いい(、、)、ですわよ。すごく、美味しそうですわ。ああ、たまりませんわ。たまりませんわ。今すぐにでも食べてしまいたい」

 

頬を上気させ、息づかいを荒くしながら、左手を胸元に這わせ、右手で足をなぞって、スカートの中をまさぐるようにしてくる。

 

「・・・・・・っ、触らないで」

 

「ふふ、そうつれないことをおっしゃらないでくだいまし」

 

そう言い、長い舌を伸ばして、簪の頬に唾液の線を引いていく。

 

「 うちの簪ちゃんに何をしているのよ!! 」

 

突如、後ろから回し蹴りが飛んでくる。

 

「ああ、ああ、とてもいい所でしたのに・・・」

 

当たる寸前で簪から離れる。

そこにいたのは、IS学園生徒会長ーーー更識楯無だった。

 

「・・・っ、けほっ、けほっ」

 

床にうずくまるような格好で咳き込む。

簪を拘束していた手が影の中に吸い込まれ、主のもとに帰るかのように収縮していった。

 

「簪ちゃん!!」

 

楯無は簪を守るようにエンペラーに対峙する。

 

「ふふ、楯無さん。そこで、待っていますわ」

 

エンペラーは屋上へと出る。

まるで、決着は外でやろうと言わんばかりに。

楯無は簪を被き保健室へ目指し、預ける。

そして、専用機持ちと織斑先生を呼び、再度屋上へと向かった。

 

「ーーーようこそ。お待ちしておりましたわ、皆さん」

 

背の高いフェンスに囲まれた屋上の中心で、左目が金色の少女がフリルに飾れた服装の裾をくっと摘み上げ、微かに足を縮めて見せていた。


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