「なんだ・・・」
『どうやら、招かざる客が来たようです』
侵入者が乱入してきようで、鈴からプライベート・チャンネルが飛んでくる。
『一夏!試合は中止よ!今すぐピットに戻って!!』
「そう言いたいが、無理だな」
そう、現在。
ステージ中央の正体不明の何かににロックされている。
「なっ!」
「で、どうする?」
相手はあの遮断シールドを突破する程の攻撃力がある。
まだ、生徒の避難が済んでいない、下手に刺激しない方がいいだろう。
「こんな異常事態だし、すぐに学園の先生たちがやって・・・ちょ!!」
鈴を掴み避ける。
その直後、先ほどいた場所に熱腺で砲撃された。
「ビーム兵器か・・・サー!」
『もう少しお待ちください』
とりあえず、サーに状況を調べてもらっている間は回避を最優先で行う。
「さっき、サーって言ったけどなに?」
「ああ、このISのAIの名前だ」
「はあ?そのIS、AIが積んであるの!?」
「まあな」
うるさい鈴をおいておき、煙の中から侵入者が姿を現した。
「あれは・・・」
そこにいたのは『全身装甲』の人の形をしたモノがあったのだ。
『解析が終了しました。侵入者は『バンダ―スナッチ』と呼ばれる機械人形です』
「機械人形?つまり無人機なのか?」
『はい』
「ちょっと待ってよ!ISは人が乗ってなきゃ、動かないのよ!!」
『私はいつ、あれがISといいましたか?』
「!!」
そうだ、サーは一度もあれをISなんて言っていない。
「なら、本気で潰しちゃってもいいのね?」
『構いませんけど、あれのせいで避難が遅れています』
サーが提示した情報を見て、苦笑いする鈴。
「そんじゃ、増援は望めないね・・・」
「だな・・・」
避難が遅れている上に遮断シールドを突破する攻撃力・・・人質を取られている以上、こちら側は不利だ。
(フレア、行けるか?)
(わかりました)
フレアに救助の方に回ってもらい、俺たちはあの機械人形を相手することにした。
「そんじゃ、やりますか」
キンッとお互いの武器の切っ先を当てる。
俺と鈴の即席コンビネーションで飛び出した。
◇
「織斑先生!わたくしにISの使用許可を!」
「そうしたいが、これを見ろ」
ブック型の端末の画面に表示されていたのは、第二アリーナのステータスチェックだった。
「遮断シールドがレベル4・・・」
「そうだ。これでは避難どころか増援に向かえない」
実に落ち着いた調子で話す千冬だったが、よく見るとその手は苛立ちを押さえられていなかった。
『織斑先生、聞こえますか?』
オープン・チャンネルから突如、機械音が聞こえた。
「フレアか」
『はい。私はこれからアリーナのロックを解除します』
「わかった。山田先生、各班システムクラッチを一旦中止。突入の準備に入れ」
「は、はい!!」
山田先生は慌てて、各班に連絡を入れる。
「今のは・・・」
だが、織斑先生は答えなかった。
それからふと、あることに気付いた。
「あら?篠ノ之さんは?」
周囲を見渡すが、篠ノ之 箒が何処にもいなかったのだ。
◇
「サー、状況は?」
「現在、フレア姉さんがロックの解除に入っています」
人形の攻撃を避けながら、時間を稼ぐ。
「サー、避難終了時にアレを使うぞ」
「了解です」
鈴の時に使う予定だった奥の手の準備に入る。
「一夏ぁっ!」
俺が突撃姿勢に入ろうとした瞬間、アリーナのスピーカーから箒の大声が響いた。
「何やっているんだ、あのバカは!!」
中継室の方を見ると、審判とナレーターがのびていた。
「男なら・・・そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!!」
気付くと人形の腕から熱原が感知された。
「ちっ!!サー!!」
『行きます!!』
一夏は地面に踵を突き立てた。
瞬間、そこから巨大な玉座が出現する。
「『
刹那、一夏が足を置いていた玉座に亀裂が走り、バラバラに砕け散った。
そして玉座の破片が一夏の握った剣にまとわりつき、そのシルエットをさらに大きなものに変えていく。
全長10m以上はあろうかという、長大に過ぎる剣。
「眠れ・・・」
一夏はそれを軽々と振りかぶると、人形に向かって振り下ろした。
刀身の光が一層強いものになり、一瞬にして太刀筋の延長線上である地面を這っていく。
次の瞬間、凄まじい爆発があたりを襲った。
「な・・・ッ!」
アリーナの遮断シールドはこの攻撃に持ちこたえられず貫通した。
そして、人形は跡形残さずに消滅してしまった。
「なんなのよ・・・あれは・・・」
鈴は今の状況が掴めていなかった。
一夏は振り下ろした剣で人形どころかアリーナごと縦に両断していたのだから。
「やべ・・・限界か」
「一夏!!」
剣にヒビが入り、バラバラに霧散して空に溶け消える。
そして、俺の意識が切れた。