「というわけでっ!織斑くんクラス代表決定おめでとう~!!」
クラッカーが乱射される。
ちなみに今は夕食後の自由時間。
場所は寮の食堂、一組のメンバーは全員揃っていた。
(はぁ~。今日は騎士の調整に入ろうと思っていたんだがな・・・)
壁には『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と書かれた紙がかけてあった。
「対抗戦、頑張ってね!」
「試合の時の織斑くん、かっこよかったよ」
よく見ると、二組も集まっていた。
というより、あきらかに三十人は超えている。
「人気者だな一夏」
「そう見えるか?」
なぜか、隣に箒がいた。
箒は鼻を鳴らしてお茶を飲む。
「新聞部でーす。話題の白き騎士、織斑一夏くんにインタビューをしにきました!」
その時、一同が盛り上がる。
「私は新聞部副部長の黛 薫子ね。はいこれが名刺」
名刺を確認すると、画数の多い漢字だった。
「ではまずは織斑くん!クラス代表になった感想を!!」
無邪気な子供のように瞳を輝かせながら、ボイスレコーダーを俺に向ける。
「あ・・・なってしまった以上、頑張ってみます」
「えー。もうちょっといいコメントを頂戴よ~」
そう言われても、あんまりなる気にはなかったんだけどな・・・
「まあいいわ。そこは適当に捏造しておくわ」
よくねえよ。
「それと、セシリアちゃんもコメントちょうだい」
「わたくし、こういうコメントはあんまり得意ではありませんが、仕方ないですわ」
といいつつ、いつよりも髪をセットしていた。
「ゴホン。ではまずは・・・」
「ああ、長くなりそうだからいいや」
「最後まで聞いてください!!」
うん。
確かにこれは長くなりそうだな・・・
「とりあえず並んで。写真撮るから」
「それて、個人?クラス?」
「個人もほしいけど、今回はクラスね」
そう言って、一組の全メンバーを集める。
「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は?」
「えーと・・・」
(74.375ですよ)
いち早く、フレアが答える。
「74.375」
「おお!正解」
パシャッとデジカメのシャッターが切られた。
ともあれ、『織斑一夏クラス代表就任パーティー』は十時過ぎまで続いた。
◇
「どうだった?」
部屋に戻ってベットに寝転がると、楯無さんが洗い場から出て来た。
「まあ・・・そこそこはですけど」
「そう・・・」
今日はなぜか、楯無さんの様子がおかしかった。
「どうしたのですか?」
「ん~ちょっとね。一夏くんは『精霊』って知っている?」
「『精霊』?ファンタジーとかで出ってくるアレですか?」
「ちょっと違うね。騎士シリーズのもう一つの名前よ」
「どういうことですか?」
「騎士シリーズは『赤騎士』、『青騎士』、『黄騎士』、『風騎士』、『土騎士』、『白騎士』、『黒騎士』の7つの騎士だからそう呼ばれているけど、実はもれと別でもう一つ名前があるのよ」
「それが、『精霊』ですか・・・」
「そう。『精霊』は『プリンセス』、『ハーミット』、『ナイトメア』、『イフリート』、『ベルセルク』、『ディーバ』、『ウィッチ』と名があるけどそれしか知らないわ」
「フレアは何かわかるか?」
『ええ、それは私たちのもう一つの名前といえばいいでしょうか・・・ちなみに私は『イフリート』です』
『私は『プリンセス』です』
フレアが『イフリート』、サーが『プリンセス』らしい。
「となると、他の騎士にもフレアみたいに意思があるということか?」
「はい。ちなみに私の中にありますよ。他の5体は」
「え?まじで?」
「はい。ですが、まだ目覚めていないのでアクセス権がありませんけど・・・」
「そうか・・・ファイさんもとんでもない物を残していったな・・・」
「もう、遅いし。寝ましょうか」
「そうですね」
ともあれ、楯無さんは自分の布団に入って消灯。
(騎士と精霊か・・・ファイさんと束さんは一体どうしてこんな名前を付けたのだろう・・・)
少しずつ眠くなってきた俺は、睡眠に入った。
◇
「一夏くんは無事に赤騎士と適合し、白騎士まで手に入れるとは思っていなかったわ」
静かえったIS学園の屋上に白い白衣を着た紅の髪の女性がたばこを吸っていた。
「あなたはどう思う?ちーちゃん」
「その名前で呼ぶなと言っているだろ・・・紅葉」
屋上には束と並ぶ懐かしい顔がいた。
「いいじゃない。束が付けたあだ名なんだから」
「ふん。で、お前は一体どこにいたんだ」
そこにいたのは、あの事件で死んだと言われていた。
ファイがいたのだ。
「ちょこっとね」
「それで、私に会いに来ただけではないだろう?」
「ええ。『精霊』のことでね」
「アレがどうしたんだ?」
「精霊に隠された力・・・『反転』が起こる可能性が出てきたのよ・・・」
「それは一体・・・」
「当分はないと思うけど・・・決して、
「・・・」
気付いた時には、彼女はいなかった。
「反転か・・・」
千冬はファイの残した言葉を片隅に置いて屋上を後にした。