ハイスクールD×D 匙ストーリー   作:ヒツジン

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やっと一話書けた……。
久しぶりの投稿です。


62話 自覚

アザゼル先生から色々とチェックされ、疲れ果てながらも俺は無事に家に帰ることができた。

 

先生曰く、両親には生徒会の仕事をし過ぎて体調を崩したことになっているらしい。家に帰ると何か言いたげな表情をしていたが、意外とすんなり部屋に行かせてくれた。深く聞いてこない両親に感謝しながらも俺は久しぶりの自分のベッドで眠りについた。

 

そして何事もなかったかのように学校に登校しに来たわけだが……。

 

 

――ヒソヒソ

 

 

周りの視線が俺に突き刺さる。ソーナ達と偶に登校していた時も何度かあったが、今日のは今までの比ではない。

 

『……どうしたのかな、アレ』

 

『……事故でもあったのかな?』

 

『……そういえば少し前にもあったな』

 

『……もしかして目覚めたとか?』

 

『……あの匙にそんな趣味が?』

 

集中して周りの話を聞いてみたが、何を言っているのかがあまり理解できなかった。事故に遭ったは理解できるが、目覚めたってどういうことだ?

 

「おはよう、匙君。退院おめでと……」

 

「よう、木場」

 

爽やかな笑顔で挨拶してきた木場の顔が俺を見て一瞬固まる。

 

「……木場?」

 

「あ、いや……なんでもないよ。じゃあまた」

 

「……?」

 

そう言って木場は口元を抑えながら早足で教室に向かっていった。やっぱり何かがおかしい。俺の顔に何かついてるのか?確かに包帯と眼帯しているが、どう見たってただの怪我人じゃないか。

 

そんな中で時間は過ぎていき、放課後にまでなった。結局一日中周りの視線の意味が分からず、久しぶりの生徒会室で作業をしていた。

 

『……』

 

全員黙々と作業しているが、やっぱり何かがおかしい。時折視線を向けられ、そちらに顔を向けると視線を逸らされる。

 

「……留流子」

 

「な、なんですか?」

 

隣に座って作業をしている留流子に声を掛ける。顔がこちらを向くが、明らかに俺を直視しないように視線を逸らしている。

 

「正直に答えろ。俺の顔に何かあるのか?」

 

「そ、それは……」

 

視線があっちこっちを泳いでいる。この反応は間違いなく何かある筈だ。

 

「あの……えっと……その……もしかして自覚してないです?」

 

「……何がだ」

 

「何でそんな恰好をしてるのかは重々承知していますよ?でもその恰好って――」

 

留流子は少しだけ躊躇して言った。

 

 

 

「――俗に言う『中二病』ってヤツじゃないですか?」

 

 

 

頭をハンマーでぶん殴られたような衝撃が走る。

 

「……中二病?……俺が?」

 

中二病という言葉の意味くらいは俺でも多少は知っている。中学2年生前後で発症することが多い思春期特有の思想・行動・価値観が過剰に発現した病態だった筈だ。当然ながらいい意味ではない。

 

「もしかして気が付いてなかったの?」

 

「気が付いてたらあんな堂々としてるわけないでしょ?大方、怪我人に見える程度の認識だったのよ」

 

巴柄と翼紗が呆れたような表情をしている。

 

この眼帯を準備したのはアザゼル先生だ。そしてアザゼル先生が天界にいた頃、酷い中二病を患っていたのは有名な話だ。更にアザゼル先生は俺が眼帯を付けたときに笑っていた。

 

 

「ふ、ふふふ……」

 

 

あのクソ堕天使、絶対ワザと準備したな。俺が意味も分からず、怪我人に見えると思って眼帯を平然と付けていくことを理解したうえでこれを俺に渡したんだ。さも俺のために準備したように見せかけて、周りの視線に戸惑っている俺を想像しながら笑っていたな。

 

「げ、元ちゃん?」

 

「ものすごーく怖い顔をしてるんだけど……」

 

「やめなさい、二人とも。今のサジを刺激すると何をするかわかりませんよ」

 

桃と憐耶、椿姫先輩の表情が引きつっているが、今はそんなの関係ない。

 

「……『会長』、少し用事が出来たので今日は帰ります。勿論、許可していただけますよね?」

 

「え、ええ……」

 

「『会長』にも何であの場で言わなかったのか、後でたっぷりと聞かせて貰いますので逃げないでくださいね?」

 

「……はい」

 

俺は生徒会室の扉を乱暴に開けて、アザゼル先生のいるであろう職員室を目指して走る。この時間ならまだオカ研には行っていない筈だ。

 

猛スピードで走ったから、職員室には直ぐに着いた。しかし、残念ながらアザゼル先生は既にいなくなっていた。普段仕事をしない癖に、今日だけ早く仕事を終わらせて早めに職員室を出ていったらしい。

 

「ハァ……ハァ……あのクソ野郎!!絶対確信犯だ!!」

 

職員室をあとにして、今度はオカ研に向かう。間違いなく逃げられているだろうが、どこに向かったかは分かるだろう。

 

色々と考えているうちにオカ研の部室前に着き、その扉を開ける。俺にとっては一秒も無駄にするわけにはいかないから、ノックをしないのは許してほしい。

 

「あら、匙君。そんなに急いでどうかしたの?」

 

周りを見渡すが、やはり此処にもアザゼル先生はいなさそうだ。

 

「リアス先輩、アザゼル先生を知りませんか?」

 

「アザゼル先生?彼ならイッセーを連れてイッセーの家の訓練室に行ったはずよ」

 

「そこまで連れて行ってください」

 

「……え?」

 

ツカツカと距離を縮め、リアス先輩の両肩をつかむ。

 

「緊急事態なんです。俺をそこに連れて行ってください」

 

「え、ええ。分かったわ」

 

緊急事態という言葉に勘違いしてくれたらしく、アッサリ転移を発動してくれる。体が赤い光に包まれると景色が一変し、目的の人物を発見する。

 

「……見つけましたよ、アザゼル先生」

 

「チッ、思ったより早かったな」

 

「え?なんで匙が……ブフォッ!?」

 

 

 

「はははははははは!!なんだよその恰好!!とうとう先生と同じように中二病に目覚めたのか?」

 

 

 

「ああ゛ぁ!?」

 

 

 

俺の怒りの矛先が兵藤にも向けられる。

それを見てアザゼル先生は笑みを浮かべ、兵藤の肩にポンと手を置く。

 

「じゃ、イッセー。後始末はよろしくな」

 

「いやいや、どこに行くんですか?逃がすわけないでしょう?」

 

左手からラインを伸ばし、この場から逃走しようとしたアザゼル先生に巻き付ける。俺の怒りの矛先を兵藤に向けて、その間に逃げようとしたのだろうがそうさせない。

 

「クソッ……イッセーに全部押し付けて逃げるつもりだったのに!!」

 

「そう何度もアンタの予定通りに進ませてたまるか!!」

 

「ちょっとどういう事っすか!!つうか何で俺にまでラインを伸ばしてんだよ!?」

 

「うるせぇ!!テメェも同罪だ!!」

 

神器を発動させ、二人を攻撃する為に黒炎を滾らせる。

 

「ちくしょう!!……禁手化ッ」

 

「舐めるなよガキどもが!!」

 

 

ほんの少しの間、この場が地獄絵図となり異変を感じ取ったグレモリー眷属とシトリー眷属によって止められるまで二体の龍と聖書にしるされた堕天使総督の大喧嘩が続いた。

 




匙君の中二病自覚回でした。
なんとかGW中に一話更新しようとして少ないうえに纏まりきってない感じがしますが作者のリハビリ回と思い、どうか許してください……。


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