ハイスクールD×D 匙ストーリー   作:ヒツジン

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あけましておめでとうございます!
年明け早々風邪ひいてしまい咳が止まりません。

あと、後編の予定だったのに思ったより長くなったんで中編になりました……。


44話 京都大決戦(中編)

――二条城・本丸御殿

 

英雄派の刺客を倒した俺達は兵藤達と合流した後、曹操達の待つ二条城の本丸御殿に足を踏み入れた。

そこで待っていたのは曹操と霧使い、昼間に見た白髪の剣士以外に始めて見る顔が二人、そして九尾の御大将と思われる人物。

 

「やぁ、待ってたよ。思ったより来るのが早かったね。ま、此方の準備は万端なんだけど」

 

「母上!!九重です!!お目覚め下され!!……おのれ、母上に何をした!?」

 

瞳が陰っており、無表情な九尾の御大将。

多分抵抗されないように何かしらの術をかけられているんだろう。

 

「言ったでしょう?彼女には実験に協力してもらうと」

 

「う……うぅぅ、うああああああああああっ!?」

 

曹操が槍の石突で地面を叩くと九尾の御大将の様子が激変する。

悲鳴をあげながら体が光り輝き、その姿を徐々に大きくなっていく。

 

「させるか!!」

 

俺はあらかじめ準備していた物を懐から取り出し、それを巨大化した九尾の御大将向けて投げつける。

投げつけられたソレは一瞬だけ光り、事前に組み込まれていた物を解放していく。

 

「あああああっ……」

 

複雑な術式と黒い炎に包まれた九尾の御大将。

巨大化した体は力が抜けて徐々に小さくなっていき、本来のサイズまで元に戻っていく。

 

上手くいくかどうか心配だったが、何とかなったようだ。

 

「どうせ碌でもない実験なんだろ?それを邪魔する準備をしていないわけないだろ。そんなのを指を咥えて大人しく見てる義理はないな」

 

「……」

 

「貴様ッ!!一体何をした!?」

 

曹操や霧使いが苦虫を噛み潰したような顔でこちらを睨む。

今度は此方が先手を打つことが出来たらしい。

 

「実験の内容は分からないが、九尾の御大将を使うのは分かってたことだ。じゃなきゃ攫った意味がないからな。実験は九尾の御大将あっての実験なんだろ?なら、九尾の御大将を何とかすればいいと思ったんだ。ヴリトラの『漆黒の領域』『龍の牢獄』の能力にロスヴァイセさんの封印術を組み込んだ特殊な術だ。簡単に解除はできないだろう?」

 

「……匙、そんな物いつ用意してたんだ?」

 

「ホテルで目が覚めた後、ロスヴァイセさんと一緒に準備してもらった」

 

「昔先輩に教えてもらったことがこんな所で役に立つとは思ってませんでした。下準備に時間がかかりますが、これは十分な戦果です」

 

今の状態に驚いている兵藤と、唯一の協力者であるロスヴァイセさんは満足げに頷いている。

 

「曹操、不味いぞ。この術、他の術の干渉を受け付けない。しかも、ヴリトラの能力も組み込まれてる所為か解除に時間がかかりそうだ」

 

「やってくれるじゃないか、ヴリトラ君?」

 

「残念だったな。『龍王変化』を封じて、いい気にでもなってたか?確かに『龍王変化』は強力だが、俺本来の武器は頭でね。そう何度も俺から先手を取れると思うなよ?」

 

「……ふふ、ははははははは!!面白い、やはり君は面白い!!」

 

曹操は急に顔を押さえて笑い出した。

さっきまでは俺を睨みつけていたくせに、えらい変わり様だ。

 

「おい、曹操。笑ってる場合かよ。どうすんだ?」

 

「うん?ああ、そうだな……。昼間に手合せをしたばかりだけど、ゲオルグが解除してくれるまで少し相手をしてもらおうかな。ヘラクレス、ジャンヌ、ジークフリート、君達は好きな奴を相手するといい。ヴリトラ君と赤龍帝は俺がもらう」

 

昼間に見た白髪の剣士はジークフリート、始めてみる顔の内、先程曹操にどうするのか聞いた巨漢はヘラクレス、もう一人の女性はジャンヌ、消去法で霧使いはゲオルグか……。

どいつもこいつも聞いたことのある名前だ。だから英雄派って呼ばれてるのか。

 

「当然、剣士としてそこの『騎士』二人の相手をさせてもらおうかな」

 

「じゃあ、私は天使ちゃんにしようかな。かわいい顔してるし」

 

「俺はそっちの銀髪の姉ちゃんだな。随分、気持ち悪そうだけどよ!!」

 

曹操は俺と兵藤、俺ジークフリートは木場とゼノヴィア、ジャンヌは紫藤、ヘラクレスはロスヴァイセさんを指名してきた。

 

「――それじゃあ第二ラウンド開始だ!!」

 

曹操が俺と兵藤に向けて走り出すとともに他の英雄派がそれぞれの相手に向かっていく。

どうやら本当に一人で俺と兵藤の二人の相手をするらしい。

 

「これでもくらえ!!ドラゴンショット!!」

 

「甘いよ」

 

ドラゴンショットが放たれる前の兵藤の左手を僅かな挙動で弾き、攻撃を防いだ曹操は聖槍を兵藤に向けて振り下ろそうとする。

 

「俺を忘れてもらったら困るな――ラインよ!!」

 

曹操に向けてラインを放ち、聖槍を持つ腕の動きを止め、その間に兵藤は距離をとる。

 

「そうか、君の本来の神器は『黒い龍脈』だったね。すっかり忘れてたよ。さて、どうやって相手をしようかな」

 

曹操は聖槍を持ち替えてラインを易々と切り裂く。

やっぱり、あれ程の物になると幾ら頑丈なラインであっても意味はない……か。

それに、周りの状況もあまりよろしいとは言えない。全員、禁手化した英雄派の三人に押され気味だ。

 

「龍之炎≪崩≫!!」

 

複数の黒炎の玉を作り、操作しながら曹操に向けて放つ。

 

ここに来る時、魔獣相手に使った程の細かいコントロールは残念ながらできない。

今の俺が完璧にコントロールできるのは数個が限界だ。

 

「おっと、本当に君には驚かされるな。昼間にこんな技は使ってなかった筈だけど?」

 

軽快なフットワークで俺の攻撃を躱しながら炎の玉を一つ一つ確実に消していき、最終的には放った攻撃全部を防がれてしまった。

本来の良さが発揮できていないとは言っても、初見で完璧に防がれたのは流石にショックだ。

 

「だが、君ならもっと炎の玉をコントロールできると思うんだけどな。……やっぱり、九尾の御大将を捕らえている結界の維持が足を引っ張っているのかな?」

 

「……さぁな」

 

思わず心の中で舌打ちをする。

曹操の言うとおり、あの結界の維持は俺がやっている。

術の基本ベースがヴリトラの能力だからなのかは分からないが、これは予想外の出来事だった。

そこに気づくなんて、本当に戦いにくくて仕方ない。

 

「よそ見してんじゃねぇぞ!!」

 

「ッ!?馬鹿野郎!!」

 

兵藤が曹操の隙をつこうと突撃したが、ひらりと簡単に躱され、聖槍の一撃をもらってしまう。

 

「ごふっ」

 

「君の力は脅威だけど、もう少し考えた方が良いね」

 

聖槍が抜かれると同時に緑色の光に包まれる兵藤。

アーシアからのサポートもあり、消滅まではしなかったようだ。

 

「大丈夫か?頼むから消滅とかやめてくれよ。お前が居なくなったら勝機がなくなるだろうが」

 

「悪い。やっぱ二人で協力しないと駄目だな」

 

兵藤の言うとおりだ。個々で戦っているわけではないのだから、お互いに協力するべきだ。

 

「(兵藤、まだ突っ込める勇気はあるか?)」

 

「(それを俺に聞くのか?)」

 

不敵に笑う兵藤。

一撃もらっただけでビビるほどの根性なしでもなかったか。

 

「(お前は突っ込むだけでいい。ほんの少し時間を稼いでくれ)」

 

「(あいよ)」

 

「作戦会議は終わったのかい?」

 

ほんの僅かな時間とはいえ律儀に待っていたようだ。

……その余裕、絶対に後悔させてやるよ。

 

「いくぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost!!!』

 

兵藤と曹操が接近戦を始めたのを確認した俺は右手に黒炎を集めていく。

いつもと違うのは、黒炎を大きくするのではなく、極限まで圧縮していく。

 

圧縮された炎は手のひらのサイズほど。

結界の維持もあるし、ここまでが限界か……。

だが、たった一人の人間を屠るのには十分な筈だ。

 

「おりゃりゃりゃりゃ!!」

 

「さっきよりかはマシだけど、これじゃヴァーリも倒せないよ?」

 

「うっせぇ!!それに……本命は俺じゃないからな!!」

 

俺の準備が終わったのを感じ取ったのか、兵藤が右に避ける。

 

「なっ!?」

 

兵藤が急に避けた理由が理解できなかったようで、一瞬だけ隙が生まれる。

――今しかない!!

 

「龍之炎≪虚空≫!!」

 

ドォォォォオオオオオオン!!

 

右手に今すぐにでも爆発しそうなほど圧縮された黒炎は、解放されるとレーザーのごとく一直線に伸びていき曹操の腹を貫く。

 

「な……に……!?」

 

貫かれた腹を押さえながら膝から崩れ落ちる曹操。

 

手数と操作性を重視した≪崩≫とは逆。操作性などをすべて無視して、ただ威力だけを追求したのが≪虚空≫。

今の俺が持ち得る最大火力の攻撃手段だ。

 

「は……はは……。本当に……厄介だな。危うく……死ぬところだった……」

 

「殺すつもりだったんだけどな。まぁ、その傷ならもう無理だろう」

 

本当に殺すつもりだったし、殺せたと思った。

一瞬だけ黒い霧が曹操を守ったおかげで威力が若干弱まり、死は免れたらしい。

 

「ああ、本当に死ぬところだった。ゲオルグに感謝しないとな」

 

「はぁ!?」

 

「なんで!?匙の攻撃は間違いなく致命傷だったのに!?」

 

曹操は腹を押さえながらも平然と立ち上がった事に俺と兵藤が驚く。

しかし、その手に握りしめている物を見て理解する。

 

「『フェニックスの涙』ッ!!……随分貴重な物を持ってるじゃないか?」

 

「裏のルートで手に入れた。ルートを確保し、金さえ払えば手に入る物さ」

 

最悪じゃないか。

ただでさえ貴重な物なのに、それがテロリストの手に渡ってるとかシャレにならない。

 

「匙!!後ろだ!!」

 

「え?ぐあぁぁぁぁぁ!?」

 

兵藤の声と共に背中から凄まじい衝撃が体を襲う。

 

「へっ、龍王と言ってもこの程度か。コイツも大したことなかったし、俺が赤龍帝とやればよかったぜ」

 

俺達の前に投げ飛ばされる血まみれのロスヴァイセさん。

 

「後ろから奇襲しておいて何を言ってるんだい?」

 

「奇襲だって立派な戦い方よ」

 

ジークフリートとジャンヌの手には同じく血まみれの木場、ゼノヴィア、紫藤。

 

「だが、ヘラクレスのおかげでヴリトラ使いの維持していた結界が解かれた」

 

実験が再開できると満足げに笑っているゲオルグ。

 

 

 

――ああ、本当に最悪の状況じゃないか。

 




曹操の計略「グレートレッド召喚実験」発動!

匙の計略「看破」発動!

匙「考えそうなことだ」

曹操の計略は無効化された!

曹「何…だと…?」

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