ハイスクールD×D 匙ストーリー   作:ヒツジン

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先日、ランキングをチェックしてたらこの作品の名前がありました。
……マジでビビりました。

これからも、この作品をより良く出来るように頑張っていきたいと思います!


41話 片鱗

ギリィッ!

 

曹操の言葉に思わず歯ぎしりをする。

 

……先手を取られてしまった。

まさか『龍王変化』が封じられるなんて夢にも思ってなかった。

曹操……厄介な人間とは思ってたけど、ここまでだったなんて。

 

『落ち着け、我が分身よ。『龍王変化』は封じられたが、能力が封じられたわけではない』

 

「……分かってる」

 

大丈夫だ。神器の能力は使うことが出来る。

戦うことが出来なくなったわけじゃない。

 

「あらら。思ったより冷静なんだね。だが、龍王になるのが封じられた今、ここに居るシトリー眷属の戦力は半分以下になった。せいぜいアンチモンスターに消滅させられないようにね。っとぉ危ない危ない」

 

「よそ見してんじゃねぇよ。お前の相手は俺だろ?」

 

曹操の相手は鎧を纏ったアザゼル先生がしている。

あの人に任せてれば曹操の方は大丈夫だろう。

俺達はアンチモンスターの相手を全力で相手をして、少年の方を叩けばいい。

 

「兵藤!共同でアンチモンスターの方を叩くぞ」

 

「おうよ!……そうだ、木場!匙達にも光を喰う剣を渡してやってくれ」

 

「了解!」

 

そう言って木場から投げ渡されたのは剣の柄のみ。

何だよコレ?

 

「それは木場の創った光を喰う魔剣なんだ。使う時は魔力を流せば刃が形成させるらしい。お前らにもあった方が良いだろ?」

 

「ああ、助かる」

 

「……私、『戦車』なんだけど。まぁ仕方ないか」

 

剣を上手く扱うことはできないけど、防御のみと割り切って考えれば十分だ。

 

「イリナは俺達よりも全線で戦ってくれ!天使なんだから光は弱点じゃないだろ?」

 

「弱点じゃないけど、ダメージは受けるんだけど!?でも、仕方ないわ。私やってみる!ミカエル様のAなんだもの!」

 

幼馴染の紫藤に盾になれとか、結構酷い指示を出すな。

だが、天使である紫藤が前線の方に立ってくれるなら正直助かる。

 

「花戒、草下は回復役のアーシアの所まで下がって俺たちのサポートに専念してくれ!由良、お前は三人を守れ。巡は俺と一緒に兵藤達とあの魔獣を叩くぞ!」

 

『了解!』

 

皆にそれぞれの指示を飛ばす。

俺は黒炎を放ちながら、魔獣たちに牽制をする。

アンチモンスターたちが怯んだすきに、紫藤がそれを倒していく。

 

「まさか匙達と共闘することになるなんて思わなかったな。やっぱり頼りになるぜ!」

 

「ああ、俺も変態野郎と共闘するなんて思ってなかったよ」

 

「ンだとテメェ!じゃあ、どっちが沢山倒すか競争だ!!」

 

兵藤のポテンシャルを上げるのは何もエロだけじゃない。

こうやって挑発すればすぐに乗ってくる。

単細胞なのが悪い所でもあり、それが兵藤の良い所でもある。

何より、俺も自分のペースが戻ってきた。

 

「いいぜ、負けて泣くなよ?」

 

「上等だ!『僧侶』にプロモーションするぜ、アーシア!」

 

「こっちは『女王』にプロモーションだ、花戒!」

 

『女王』にプロモーションすることで、俺自身の力が全体的に底上げされる。

兵藤がドラゴンショットを乱れ撃ちして、魔獣たちを倒していく。

俺も負けてられない!

 

右腕に黒炎を滾らせ、龍の形を作っていき、それを放つ。

 

「燃え尽きろ!」

 

放たれた炎の龍は複数に分かれてそれぞれがアンチモンスターを次々と屠っていく。

前はコントロールが上手くできなかったが、俺もトレーニングしてるんだ。

全力じゃなければ複数だって今はコントロールできる。

魔獣の光の攻撃を剣で防ぎながら、龍を維持し続け、魔獣達を屠っていく。

 

「おお!!なんだよソレ?超カッケェってどわぁ!?」

 

「ゴギュッ!?」

 

コントロールしていた内の一つが兵藤を後ろから攻撃しようとしていた魔獣に当てる。

 

「おい!助かったけど、今当たりそうだったぞ!?」

 

「安心しろ、当たってもこの世から変態が一人消えるだけだ」

 

寧ろ仲間に当てるなんてミスを今さらするかよ。

 

「赤龍帝の相手は私たちがします!」

 

英雄派の構成員だろうか。

数人の女性が前に出る。

おいおい、正気か?兵藤だぞ?

 

「貴様は俺の相手をしてもらおうか、ヴリトラ使い」

 

……誰だよ。

兵藤に挑んでいった奴らと似たような恰好をしているから、ただの構成員らしい。

 

「貴様の黒炎と俺の白炎、どっちが上かハッキリしようじゃないか」

 

『ほぉ、ただの炎と我が邪炎を比べるか……人間ごときが!!』

 

見た所大して強そうには見えない。

ただ、今の言葉にカチンときたヴリトラがやる気満々だ。

 

「これでも喰らえや!」

 

男が特大の炎を放ってくる。

ただ、こんな物わざわざ躱す必要すらない。

 

「……この程度か?」

 

体に黒炎を纏って全部防ぎきる。

温い炎だ。龍王状態の時の方がよっぽど熱い。

 

「な!?この!この!!」

 

何度も何度も炎を放ってくるが結果は同じ。

徐々に徐々に近づいていく俺に相手は焦りを募らせる。

 

「なんで!なんで効かないんだよ!!」

 

「不思議か?」

 

「ヒィィィィィィッ!?」

 

相手の目の前まで行き、首を掴んで持ち上げる。

 

「ガァッ!?」

 

「俺の炎はヴリトラの邪炎だ。お前の火遊びとは元々比べるまでもない」

 

ゴウッ!

 

「ぐぁああああああ!?」

 

掴んだまま、黒炎で焼き尽くす。

動かなくなったところで手を放す。

 

『ふん。己の力量すら分からぬ愚か者が、龍の炎と比べるでないわ!』

 

ヴリトラも龍王の一角だったから、プライドは高いんだよな。

さて、他の奴らは……兵藤は女性構成員を裸にしてて、アザゼル先生は曹操と戦ってて、剣士三人組は白髪の剣士と、由良は後衛の三人を守ってるし、巡も皆からやや孤立気味だが特に問題もなさそうだ。

 

ただ、巡を見た瞬間、言いようもない胸騒ぎを感じた。

そして、俺はそんな理由も考えずに巡に向かって走り出す。

いつだってこんな時は何かが起きてきた。

何も起きなければそれでいい。

でも、今何もしないより動いた方がずっとましだと思ったから。

 

そんな中、曹操が動いた。

 

「流石は聖書に記されし堕天使総督と言ったところかな。……そろそろ頃合いか」

 

「あ?何言ってんだ――ッ!?」

 

曹操の体が霧に包まれたと思ったら、巡の所まで一瞬で転移する。

 

チィッ!?何するつもりだ、アイツ!!

頼む、間に合ってくれ!!

 

「え!?あぐぅ!?」

 

「残念ながら俺の思い描くストーリーには君たちは不要なんだよね」

 

曹操の槍の石突で突かれて巡が倒れこむ。

そして、倒れこんで無防備な巡に対して刃を向ける。

 

「おい、止めろ!!お前の相手は俺だろうが!!」

 

「貴方はそう思ってただろうが、俺はそうじゃない。それに、これだけ居るんだ。一人くらい間引いても構わないだろ?」

 

無慈悲な刃が巡に向かって振り下ろされる。

 

「きゃあああああ!?」

 

「巡!!」

 

ザシュッ!

 

間一髪間に合った俺はその間に入って、その刃から巡を庇う。

 

「あ゛ぁあああ゛ああぁああ゛あぁぁぁあ゛あああ゛あああ゛あ!?」

 

「げ、元ちゃん!?そんな!?」

 

痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

それに聖槍に切られた所為か、意識が飛んでしまいそうだ。

黒炎を纏っていたにも関わらず、紙切れのごとく斬られてしまった。

 

「……凄いな。並の悪魔なら一発で消滅しているだろうに。やはり君は赤龍帝以上に厄介な悪魔だ」

 

ああ、本当に消滅しそうだよ。

傷も致命傷だ。

 

……だが、『そんな事』はどうだっていい。

 

 

――ドクンッ

 

アノ男ハ何ヲシヨウトシタ?

 

――ドクンッ

 

コンナ物デ俺ノ仲間ヲ斬ロウトシタノカ?

 

――ドクンッ

 

俺ノ大切ナ人ヲ殺ソウトシタノカ?

 

――ドクンッ

 

俺ノ大切ナ居場所ヲ壊ソウトシタノカ?

 

――ドクンッ

 

許サナイ

 

「曹操ォオオオオオオオオオオ!!」

 

ドゴンッ!

 

「な!?ごふっ!?」

 

たった一撃で曹操の体が十メートル以上も飛ばされる。

 

いつもの漆黒の炎とは違い、光を全て飲み込むようなドス黒い炎が体を包んでいく。

……ああ、力が溢れでてくるようだ。

 

『ぬぅ!?いかん!!止めろ!!それ以上は――』

 

「ゴホッ!ゲホッ!……何だその力は!?」

 

せき込みながら、焦った様子でこちらを見る曹操。

 

「お前は……お前だけは許さねぇぞ、曹操!!」

 

曹操に更に追撃をせんと、走り出そうとした時だった。

突然魔方陣が輝きながら出現する。

 

「――これは」

 

先生は何かを知っているようだ。

その魔方陣から出てきたのは、金髪の魔法使いの格好をした少女。

その少女は此方に体を向けると、深々と頭を下げてきた。

 

「初めまして。私はルフェイ・ペンドラゴンです。ヴァーリチームに属する魔法使いです。以後、お見知りおきを」

 

ペンドラゴンと言えば、ヴァーリの仲間にアーサー・ペンドラゴンという人物がいた。

 

「ルフェイか。どうやらヴァーリは俺たちが監視を送っていたことにご立腹らしい。……邪魔が入ったことだし、引くとしようかゲオルグ、レオナルド。何より祭りの始まりとしては上々だ」

 

曹操達が黒い霧に包まれ始める。

逃げるつもりか!?

 

「我々は今夜この京都という特異な力場と九尾の御大将を使い、二条城でひとつ大きな実験をする!是非とも制止するために我らの祭りに参加してくれ!」

 

曹操達が消えるとともに霧がだんだんと濃くなり、足元から胸元、そして顔まで上がってくる。

 

 

――そこで俺の意識は途切れた。

 

 




匙の覚醒は嘘だと言ったな。あれは嘘だ。

というのは置いといて、今回のは覚醒というよりもどっちかというと暴走です。
なので嘘はついていない!

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