ハイスクールD×D 匙ストーリー   作:ヒツジン

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大変お待たせしました。
最新刊と原作読み返しててたら、いつの間にか一週間経ってました。



34話 vs悪神

――決戦日当日

 

既に日は落ち、夜になっている。

 

俺たちは神々が会談を行う都内の高層高級ホテルの屋上で待機していた。

 

会長たちは転移を行うため、周囲のビルの屋上に配置されている。

アザゼル先生は会談での仲介役をする為、建物内にいて今ここにいるのは俺、グレモリー眷属、ヴァルキリーのロスヴァイセさん、堕天使幹部のバラキエルさん、遥か上空にはタンニーン様、そして少し離れた所にヴァーリとその仲間数人。

 

よくよく考えると、俺の周囲は化け物揃いだ。

赤龍帝、白龍皇が揃っていること自体がおかしいのに、それ以外も強者揃い。

此処にいる奴等だけで小規模の戦争が起こせるんじゃないだろうか。

いや、これだけの戦力を揃えなければロキやフェンリルには敵わないって事か。

 

「なぁ匙、お前はこっちに居て良かったのか?」

 

静寂な空気の中、兵藤が心配そうな目をして声をかけてくる。

こいつはこれから起きる戦いの凄まじさを理解しているんだろうな。

 

「足手まといにはならないさ。だからこそ、アザゼル先生も俺に前線に行くように言ったんだ」

 

「でもよぉ」

 

「大丈夫だよ。覚悟はできてる。それに――そろそろ時間らしい」

 

ホテル上空に感じる巨大な二つの気配。

 

「小細工なしか。恐れ入る」

 

「ヴァーリまで、何言ってるんだ?」

 

「構えろ、兵藤。来るぞ!!」

 

バチッ!バチッ!

 

ホテル上空の空間が歪みだし、大きな穴が開いていく。

穴から出てくるのは若い男性と、巨大な狼。

あれがロキとフェンリルか。聞いていた以上の存在感だ。

 

「目標確認。作戦開始」

 

バラキエルさんがそう言うと、会長たちが俺たちを戦場に転移させる為、ホテル一帯を包み込む巨大な結界魔方陣を展開し始めた。

ロキはそれに気が付いたみたいだが、不敵に笑うだけで抵抗はしないようだ。

 

転移先は大きくひらけた土地だった。

周りを確認すると全員無事に転移できたようだ。

 

前方のロキとフェンリルを確認すると、全員が戦闘態勢に入る。

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!』

 

『Vanishing  Dragon Balance Breaker!!!!!』

 

鎧を纏った兵藤とヴァーリがロキの前に出て、同時に仕掛ける。

 

「これは素晴らしい!二天龍がこのロキを倒すべく共同するというのか!こんなに胸が高鳴ることはないぞッ!」

 

俺も黙って見ているわけにはいかないな。

手をかざし、タイミングを計る。

二人の攻撃を防ごうとした瞬間に能力を発動させ、動きを阻害する。

 

「なかなかだが、我を倒すには足りないな。……ッ!?なんだこの炎は!?」

 

動きを止められたのは一瞬。

でも、その二人なら一瞬のだけでも十分だ。

 

「ぐおおおおお!?」

 

無防備な状態で二天龍の攻撃を受けたんだ。

いくら神といえどもそれなりにダメージが入っただろ。

 

「匙、ナイスアシストだぜ!!」

 

「ふん、そんなサポートされなくても俺ならロキを吹き飛ばせた」

 

「……ふははは。二天龍だけでなく、随分厄介な能力者がいるようだ」

 

起き上がったロキがボロボロに見えるが、まだまだ余裕がありそうだ。

 

「ならば遠慮はいらんな!神を殺す牙。それを持つ我が僕フェンリル!一度でもかまれれば滅びをもたらす獣に勝てるというのならばかかってくるがいい!!」

 

その瞬間、リアス部長が手を挙げるのを合図にフェンリルにヴァーリの仲間である黒歌の周りに魔方陣が展開し、地面から巨大で太い鎖が出現しする。

それを兵藤とヴァーリ以外の全員で掴み、フェンリルに向けて投げつける。

 

フェンリルを捕縛するための魔法の鎖、グレイプニルはまるで意志を持つかのようにフェンリルに巻きついていく。

 

「――フェンリル、捕縛完了だ」

 

バラキエルさんがグレイプニルで身動きの取れなくなったフェンリルを見て、そう口にした。

一方、ロキはフェンリルを捕縛されたが、不敵に笑っていて特に焦りを見せない。

 

「スペックは落ちるが――」

 

手を広げたロキの両サイドの空間が激しく歪みだした。

それと同時に感じる二つの気配。

 

――――まさか!?

 

「スコルッ!ハティッ!父を捕らえたのはあの者たちだ!その牙と爪で食らい千切るがいい!」

 

「「オオオオオオオオオオオンッ!!」」

 

二匹の狼が此方とヴァーリの仲間たちの方へと向かってくる。

グレイプニルは一つしかない。完全にやられてしまった。

 

「ついでだ。こいつ等の相手もしてもらおうか」

 

ロキの足元から巨大なドラゴンが複数現れる。

サイズがかなり小さいけど、アレは――。

 

『ああ、ミドガルズオルムだな。状況が悪くなってきたようだ。どうする我が分身よ?』

 

そんなの決まってるじゃないか。

長時間維持できないが『手札』を残したまま死んだんじゃ意味ないからな。

 

「兵藤、お前はロキの相手に集中してろ!!――こいつ等は、俺がまとめて相手をする!!」

 

「匙、何を言ってるんだ!?」

 

今の状況にかなり混乱してるんだろう。

一々理解しなくてもいい。

お前は一直線に前を向いていろ。

 

「やるぞ、ヴリトラッ!!」

 

『良かろう、我が分身よ!!眼前にいる全てを我が邪炎で燃やし尽くしてくれようぞ!!』

 

 

「『龍王変化』!!」

 

 

漆黒の炎が体を包み込んでいき、龍を形作っていく。

抑えきれない力が溢れてくる。

 

「ジャアアアアアアアアッ!!!」

 

「――ッ!?この漆黒のオーラはヴリトラか!?あの小僧、まさか龍になれるとは思わなかった!!」

 

「さ、匙さん?アザゼル先生、匙を強化しすぎでしょう!?」

 

「見ろ、アルビオン!!やはり兵藤一誠の周りは面白い!!」

 

この姿を見て驚きの声を上げるタンニーン様と、声が引きつっている兵藤。

そして、新たな獲物を見つけたかのような反応をするヴァーリ。

……今は量産型ミドガルズオルムやフェンリルの子供の方が優先だ。

 

敵全ての動きを能力で封殺し、量産型ミドガルズオルムにはラインを伸ばし、力を吸収する。それだけでなく『漆黒の領域』も使って更に力を削っていく。

力を吸収していき、黒炎の勢いを増して量産型ミドガルズオルムを燃やしていく。

 

「……なんだ、なんなんだ貴様は!?」

 

先ほどの不敵な笑みは消え去り、焦りの表情を見せる。

二体の子供フェンリルの相手は、リアス先輩たちとヴァーリの仲間が一体ずつ相手をしており、此方の能力のサポートもあってか有利に戦闘出来ている。

 

 

――ゾクッ!!

 

 

寒気を感じた方向を見れば、フェンリルに咥えらて瀕死の状態のヴァーリがいた。

迂闊だった。まさかグレイプニルの拘束が解かれていたなんて思いもしなかった。

 

「――天龍を、このヴァーリ・ルシファーを舐めるな」

 

ヴァーリの鎧の宝玉が七色に光り出す。

 

『我が分身よ、アレが『覇龍』だ』

 

この戦場全域を光がまばゆく照らす。

以前の兵藤との戦いで感じた力がちっぽけに思えるくらいの圧倒的な力。

アレが『覇龍』か……。

ヴァーリはフェンリルと一緒にどこかへ転移してしまったが、心配はいらないだろう。

 

「貴様の能力は厄介だ。赤龍帝の前にまずは貴様からだ!!」

 

『ぐあああああっ!?』

 

いつの間にか接近していたロキの攻撃が当たる。

更にそれで集中が乱れ、能力による子供フェンリルたちの拘束が一時的に解除される。

 

『しまった!!姫島先輩が!?』

 

拘束が解かれた子供フェンリルの一匹は姫島先輩に噛みつこうとしていた。

 

「朱乃ッ!!」

 

子供フェンリルからバラキエルさんが姫島先輩を庇って、代わりに牙を突き立てられる。

兵藤は子供フェンリルを殴り飛ばし、アーシアが回復を始めた。

傷は回復しても、もうバラキエルさんは戦えない。

敵の戦力は殆ど削ったが、それでもかなりの痛手だ。

 

すると兵藤が何かに気が付いたらしく、タンニーン様の方向へ向く。

 

「お、おっさん!!乳神様って、どこの神話体系の神様だ!?」

 

 

……は?

 

 

『こんな時に何を言ってる!?とうとう頭がおかしくなったか!?』

 

「俺の頭は正常だよ!!だって朱乃さんのおっぱいが自分は乳の精だって言ってるんだよ」

 

駄目だ。もっと前からコイツの頭は末期状態だった。

どうも、ドライグにも聞こえたらしい。

兵藤はドライグの精神をどこまで追いつめてるんだ……。

そもそもおっぱいが喋るってなんなんだよ。

 

誰しもが兵藤の言葉を疑っている中で、声が小さくて良く聞こえないが、姫島先輩とバラキエルさんが手を取り合った瞬間にそれは起きた。

 

パアアアアアアアアッ。

 

兵藤の鎧の宝玉が光り、持っていたミョルニルが雷を纏いだした。

 

「匙!!今からロキの野郎をぶっ飛ばすからサポートは任せた!!」

 

『いったい何が起きてるのか分からんが、任された!!』

 

もうミスなんかしない。

今の俺の全力でロキの動きを止めてやろう。

 

「ぬぅ!?動けん!?……思い出したぞ。特異な炎を操る龍王がいたと聞いたことがあるが、貴様がそうだったのか!!だが、これしきでこのロキを捕らえ続けることが出来ると思うな!!」

 

ロキを捕らえていた黒炎が消え去る。

今度はロキ側の状況が悪くなったからか、逃げようとするがそうはさせない。

 

『逃がさねぇよ!!』

 

「ぬぅ!?炎は消し去った筈なのに……!?」

 

再度、黒炎がロキを包み込む。

一度呪いがかかれば、炎をいくら消し去ろうとその根元を解呪しないと意味がない。

それがヴリトラの呪いの炎だ。

 

「ナイスタイミングだぜ!!」

 

兵藤は高めた力をミョルニルに譲渡し、それをロキに向かって振り下ろす。

その一撃に耐えられず、ロキはボロボロになり完全に気を失ったようだ。

 

それとほぼ同時に『龍王変化』が解除され、地面に倒れこむ。

意識はあるが、体中が痛くて動けない。

しかし、それなりに収穫はあった。

『龍王変化』の全力を試せたのと『覇龍』をこの目で見れたのは大きい。

まるで龍人とも言えるような姿を見て、良い『ヒント』をもらった。

 

「よ、匙」

 

「……兵藤か」

 

兵藤の体はボロボロだが、思ったより元気そうだ。

本当にタフだな。

 

「凄かったな、アレ。先生に連れてかれて何されたらああなるんだよ」

 

「……その話題を二度とふるんじゃねぇって言っただろ」

 

「悪い悪い。でも、おかげで助かったよ。サンキューな」

 

兵藤が拳を突き出してくる。

 

「ああ」

 

痛む体を何とか動かし、兵藤の拳に自分の拳をぶつける。

体は痛いし、反省点もかなり見つかった。

でも――。

 

「……どうした?」

 

「いや、こんなのも悪くないなってな」

 

達成感でいっぱいだった。

 




俺が相手をするなんて言いながら、ちょくちょくポカミスをやってる匙君。
今後、もっと格好良い場を用意するので許してください。

あと最新刊読んで一言。
……『刃狗』が仕事人で超格好良かった。

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