ハイスクールD×D 匙ストーリー   作:ヒツジン

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30話 匙君の休日

思い出したくもない恐怖体験のから帰宅後、久しぶりの休みともいえる日曜日だった。

生徒会の仕事もない、毎朝するトレーニングも今日は起きた時間が時間なので休みにした。

 

「ふぁああ。10時か……。ちょっと疲れてんのかな」

 

いつもは決まった時間に起きるが、前日の疲れが未だに残っているようだった。

折角手に入れた力なのだから練習したい気持ちもあるが、体が痛くて動くのが辛い。

 

「とりあえず、飯だな」

 

起きてから腹が鳴ってしょうがない。

とりあえずリビングに行くとしよう。

 

「……誰かいるのか?」

 

リビングから話し声が聞こえる。それも複数。

日曜だしお袋が客呼んでてもおかしくはないけど、嫌な予感がするな。

ドアに手をかける。

 

「そうなのよ、あの子ったら可愛げがないでしょ」

 

「へぇ、あの匙にも子供のころがあったんだな」

 

「なんだかイッセーさんと比べると子供っぽくないというか……」

 

「そうだな、イッセーの方が良く笑っている写真が多かった」

 

リビングにはお袋含め四人いた。

 

「あら、元士郎。起きたの?」

 

「よぉ匙!お邪魔してるぜ」

 

「匙さん、おはようございます」

 

「遅いお目覚めだね、匙」

 

その三人を見てからの行動は早かった。

 

「もしもし警察ですか?家に不審者が「おい!」……なんでお前らがいるんだよ」

 

三人のうちの一人である兵藤に携帯が奪われる。

残りの二人はアーシアとゼノヴィアだ。

なんでコイツ等なんだ?というかなんで家を知っているんだ?

 

「元士郎、折角来てくれたお友達になんてことを言うの!!」

 

友達?誰が?誰の?

 

「お袋、俺の友達にこんな変態はいない」

 

「それは酷くないか!?……本当は生徒会の連中が来る予定だったんだけど、皆今日は予定があるらしくてな。ソーナ会長に頼まれて俺らがお前の様子を見に来たってわけ」

 

どうやら、会長が家の場所を教えたらしい。

一応住所は知ってるからな。

 

「ああ、俺は元気だ。会長にも連絡しておく。だから帰れ」

 

「そんな事言わないの!ごめんなさいね、私はこれから買い物に行ってしばらく帰ってこないから、ゆっくりしていってね」

 

そう言って、お袋はリビングから出ていく。

 

「はぁ……で、何見てたんだよ?」

 

「匙さんの小さいころの写真を見してもらってました」

 

「……部屋に入れてやるから、それを見るのは止めろ」

 

流石にいい気はしないから。

 

「む、いいのかい?年頃の男子が女子を部屋に入れて」

 

「どういう意味だ」

 

心配そうな目で見てくるゼノヴィア。

 

「いや、見られて困るものが有るんじゃないのか?イッセーの部屋には沢山あるぞ?」

 

「兵藤……」

 

「ゼノヴィア!?余計な事言わないで!!」

 

「大丈夫だよ。見られて困るものなんてないから」

 

「そうか。ならいいんだ」

 

なんだかゼノヴィア雰囲気が変わったな。

聖剣事件の時は切れ者という感じがしたが、今はそんな物微塵も感じない。

なんというか、馬鹿のにおいがする。

 

 

 

三人を引き連れて自室に戻ると足元からヴリトラが出てくる。

 

『久しいなドライグ』

 

『久しぶりだなヴリトラ。話には聞いていたが、本当に意識が戻ったようだな』

 

「そういえば匙、神器の統合だっけ?先生に連れられて何をしたんだ?」

 

「兵藤」

 

「な、なんだ?」

 

兵藤の右肩を左手で強めに掴む。

 

「次にその話を俺に振って見ろ。消し炭にするぞ……!!」

 

右手に黒炎を出して兵藤の目の前まで近づける。

 

「(こくこく)」

 

「わかればいいんだ。ところでゼノヴィア、人のベッドの下を見ながら何してる」

 

「いや、ないなぁと思って」

 

「ゼノヴィア止めて!!なんか今日の匙怖いから!!先生に連れてかれてすっごく怖くなって帰ってきたから!!」

 

「でもイッセーさんの部屋と比べると物が少ないですね……」

 

「兵藤の部屋にエロ本が多いだけだろ」

 

「悔しいけど否定できない……」

 

「で、何するんだ?見ての通り何もないけど?」

 

部屋にいれたのは良いけど、特に遊ぶものなんてない。

ゲームはあるけど、基本一人用の物しかないし、あとはボードゲームしかない。

 

「ふふん。そこら辺の準備はしてるぜ?」

 

兵藤は鞄から幾つかの装置らしきものを取り出してくる。

 

「なんだよ、ソレ?」

 

「まぁ見てろって」

 

その内の一つをいじり出す。

電源のようなものが付くと立体映像が映される。

スゲェ。冥界にはこんなのもあるのか。

再生が始まった。

 

『おっぱいドラゴン!はっじっまっるよー!』

 

禁手状態の兵藤が歌いだした。

 

「……」

 

「はははっ!ビックリして何も言えないな?」

 

ああ、言葉が出ないよ兵藤。

お前がここまで馬鹿だったなんて思わなかった。

 

なんでも兵藤が主人公のとして作られた特撮物らしい。

おっぱいドラゴンに乳龍帝。

一つだけ言うなら

 

こ れ は ひ ど い。

 

『……ドライグよ、なんだこれは?』

 

見ろ、ヴリトラも目の前の映像を見てあきれてるぞ。

 

『言うな、ヴリトラ!!うおおおおおん!!赤き力の帝王である俺が乳龍帝などと!!』

 

ドライグも泣いてるじゃないか。流石に可哀想だ。

 

「……で、コレはなんだ?」

 

「ああ、実はレーティングゲームに子供のファンを増やそうっていう計画でな?グレモリー家主体でコレを撮ってるんだ。もちろん俺の顔はCGだけどな!!」

 

そんなドヤ顔されても困る。

 

「結構面白いんですよ?」

 

「しかも、これのおかげで君たちに負けて下がったグレモリーの名声は徐々に回復しつつあるらしい」

 

ああ、多分そっちが本命なんだろうな。

グレモリーはレーティングゲームに負けてかなり評価を落としたらしい。

圧倒的とすら言われながら、殆どの駒が獲られて負けたのだから当然だろう。

こんな物で名声が回復するなんて単純すぎてビックリするが。

 

「ああ、かなりの収益が出ているらしいし、良い事ばっかりだぜ!!おっぱい万歳!!」

 

『うおおおおおおおおおおん!!』

 

お前の大切な相棒の心が犠牲になったけどな。

 

「なんだよ、反応が薄いなー。仕方ない、実はもう一つあるんだ。こっちは面白いぜ?」

 

「おお、イッセー早く再生してくれ!!続きが気になるんだ!!」

 

大人しかったゼノヴィアの目がきらめきだした。

 

映像が再生される。

パッと見て判断するに、どうやらこれは普通のドラマのようだ。

 

ニヤニヤしている兵藤の顔が凄く気になる。

ゼノヴィアとアーシアは食い入るように見ている。

 

映し出されている映像は主人公が戦ってボロボロになっている。

ああ、兵藤と戦ってるときの自分もこんな感じだったな。

 

 

……ん?

 

 

いやいや、そんなまさか。そんな事があってたまるか!

でもなんで兵藤はあんなにニヤニヤしている?

 

『どうした我が分身よ。顔色が悪いぞ?』

 

「……気のせいだ、うん」

 

映像に視線を戻すと主人公が何か言いだして立ち上がるシーンだった。

 

『俺は……会長の夢を叶えてあげたい!!だから、負けられないんだよぉおおおおお!!』

 

「ブフォッ!?」

 

「ははははははっ!気づいたな?」

 

「二人ともうるさい。今いい所なんだ」

 

なんだよコレ!?明らかに俺をモデルにしてるだろ!?

 

映像が終わってスタッフロールが流れる。

 

監督:セラフォルー・レヴィアタン

脚本:セラフォルー・レヴィアタン

 

あ ん た か!!

 

「コレはセラフォルー様が作ったドラマなんだ。冥界の大人に大人気らしいぜ?この前のレーティングゲームでお前が言った事全部冥界に放送されてるしな。それを元に作られたドラマらしい。タイトルは『主従を越えて』」

 

「ああ、素晴らしいドラマだ」

 

「素敵ですよね」

 

「……頭が痛い」

 

あの人著作権って知ってるのか?

いや、冥界にはそんな法律ないか。

 

「お前も俺と同類!有名人!はっはっは!」

 

……なんか言い返す元気ないや。

 

「……頼むもう帰ってくれ。俺は疲れた」

 

「そうだな。二人とも帰ろう」

 

「はい!」「ああ」

 

『うおおおおおおおおん!』

 

「じゃーなー!!なぁドライグ、もう泣き止めよ」

 

手を振って帰っていく兵藤たちと泣き止まないドライグ。

相棒をなんとかしてやれよ。いつか大事になるぞ。

 

やっと嵐が去って行った。

折角の休みだったのに、時間を無駄に過ごした気分だ。

マジで何しに来たんだアイツ等は。

 

『あれが今の赤龍帝か。ドライグが不憫でならんな』

 

「言うな。あの馬鹿に関わり過ぎたら俺たちも馬鹿になる」

 

……もうひと寝入りしよう。

 




グレモリーの名声回復の為、収益を出すのを理由に多少強引ながら「おっぱいドラゴン」は作られました。
あとは色々ぶっちゃけた匙を元にドラマも作られました(笑)


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