ハイスクールD×D 匙ストーリー   作:ヒツジン

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執筆開始からおよそ一か月。
話数23にして、ようやくまとも?な戦闘回まできました。


23話 命をかけて

―――――――決戦前夜

 

ソーナは眷属全員を集めて作戦会議をしていた。

 

「試合の舞台は当日にならなければ分かりませんから、これ以上は何とも言えませんね」

 

作戦会議と言っても、細かい所までは話していない。

誰に対して誰をあてるのか。

グレモリー眷属の能力と特徴の確認。

戦闘スタイルとその対策。

それ以上は当日の舞台を見て決めるしかない。

 

「会長、兵藤君には匙よりも私の方が良いのでは?」

 

真羅が手を上げ、ソーナに意見を出す。

 

「パワータイプの兵藤君にカウンター使いの椿姫をあてるのは正しい事かもしれませんが、忘れていませんか?兵藤君には洋服破壊があるのですよ?」

 

「それは……そうですけど」

 

「大丈夫ですよ。サジ、できますね?」

 

「当然です。その為に色々と準備してきたんですから。むしろ兵藤の相手は誰にも譲れないです」

 

そう、誰にも譲れない。誰にも譲ってはいけないのだ。

 

「サジが兵藤君に劣等感を抱いていて、それを完全に払拭出来ていないのは知っています。でも、ずっと準備してきた事も私は知っています」

 

ソーナは続ける。

 

「貴方なら兵藤君に勝てると信じています。見せてやりなさい、貴方のやり方を」

 

「サジ、会長にここまで言わせるんだから、絶対に負けてはダメですよ?」

 

「もちろんです副会長」

 

バシン!バシン!と背中をいきなり二回叩かれる。

 

「負けちゃダメよ?元士郎」

 

「そーよ元ちゃん。兵藤なんかに負けるのは許さないんだから!」

 

「由良、巡」

 

「元士郎君なら勝てるよ!」

 

「元ちゃんファイトー!」

 

「あんなに頑張ったんだもん。匙先輩なら絶対勝てます!」

 

「花戒、草下、仁村」

 

きっと俺が勝つことは他の人たちは信じていないかもしれない。

それでも、信じてくれる人たちの為にも絶対に勝たなければならない。

 

「さぁ、明日に備えて今日はもう寝ましょう」

 

『はい!』

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

―――――――決戦当日

 

魔方陣でジャンプし到着したところは、どこかの食品売り場だった。

 

「ここは、駒王学園の近くのデパートですね」

 

到着するとアナウンスが鳴り響く。

 

両陣営の本陣について。

『フェニックスの涙』は一個支給。

そして―――――――

 

「『バトルフィールドとなるデパートを破壊しつくさない事』これは此方に有利なルールですね」

 

シトリー眷属にそれほど強力な火力を持った者はいない。逆に相手は火力が強すぎる奴が多いから、力を加減していかなければならない。

 

「しかもこの本陣。使えそうですね」

 

ソーナには何か策が思いついたようだ。

 

「まず、椿姫、翼紗、巴柄の三人はゲーム開始後立体駐車場の方へ。パワータイプのゼノヴィアさん、そのサポートにテクニックタイプの木場君の『騎兵』二人が来るでしょう。攻撃の本命は兵藤君と見せかけてこっちです。昨日の作戦通りに迎撃しなさい!」

 

「「「はい!」」」

 

「サジ、留流子はデパート内です。一人じゃないなら兵藤君と塔城さんの二人が来るでしょう。サジ、今回の戦いの要は貴方ですよ?」

 

「「はい!」」

 

「桃、憐耶は本陣でサポートです」

 

「「はい!」」

 

「アーシアさんはリアスと一緒、ギャスパー君は蝙蝠になって店内の偵察でしょうが、こちらは策有りです」

 

「あとは各自時間まで自由行動です。試合開始5分前に本陣に集合です」

 

開始まで時間は少しある。デパートなのだから、物は沢山ある。

今のうちに物色して、使えそうなものをそろえておこう。

 

「仁村、使えそうなもの探しに行こう」

 

「あ!待ってください!」

 

追いついてきた仁村は右手で手遊びしている小瓶に視線を向ける。

 

「な、なに持ってるんですか?」

 

「ん?ああ、いいだろコレ?さっき食品売り場で見つけたんだ」

 

「一体なにに使うつも……いや、いいです。なんとなく予想がつきました」

 

この子も中々俺の思考回路が分かってきたな。

 

「それにしても、デパートだから色んな物が有りますね?」

 

「ご丁寧に中身を丸々コピーしてあるな。まぁそういったものもレーティングゲームの醍醐味なんだろうな」

 

雑貨売り場に入っていく。

近くにあるのは電気屋、ジャンクフード、雑貨売り場だ。

この中で使えそうなのは雑貨しか思いつかなかった。

 

「な、なんかデートしてるみたいですね?」

 

「そうでもないかな」

 

そもそも、今そんな考えは思いつかない。

自分の頭にあるのはアイツにいかにして勝つかだ。

 

「そ、そうですか?……はぁ」

 

雑貨売り場に入ったは良いけど、使えそうな物あんまりないな。

 

「匙先輩!これなんかどうですか?」

 

「うん、使えなくはないか。よし、あんまり収穫はなかったけど本陣に帰ろう」

 

「はい!」

 

本陣に戻ると全員そろっていた。

 

「遅かったですね。なにか収穫はありましたか?」

 

「時間もなかったしそこまでなかったですね。でも『手札』は増えました」

 

「そうですか。ではサジ、ラインをこれに繋ぎなさい。これが兵藤君を倒す、とっておきなんですから」

 

そう言ってバックからとある物を取り出し、ラインを繋げる。

 

「準備は上々。舞台は有利。このゲーム勝ちますよ!!!」

 

『はい!!』

 

試合開始のアナウンスが鳴り響く。

試合時間は3時間。その為の作戦会議の時間があったのだろう。

 

それぞれの持ち場へと動き出す。

 

「仁村、俺に乗れ!!二階まで一気に行くぞ!!」

 

ラインを天井まで伸ばし、引っ張る。

ラインは届いてしまえばソコまで一気に行ける移動手段に出来る。

 

それに二階にはアイツの気配がする。

間違いなく此方の予想通りに動いている。

 

天井まで到達すると二階で隠れながら動いている兵藤と塔城を発見する。

どうやらあっちも此方に気が付いたようだが、もう遅い!!

 

「匙か!?」

 

「先手必勝!!」

 

高所からの勢いを使い兵藤を攻撃する。

ついでにラインを二つ繋げる。これが今回の生命線だ。

 

「よぉ兵藤」

 

兵藤の視線が右腕に向けられる。

黒い龍脈は修行のうちに、いつの間にか変化していた。

今は黒い蛇が何匹もとぐろを巻いているような形だ。

 

『リアス・グレモリー様の「僧侶」一名、リタイヤ』

 

「なぁ!?」

 

「やられたのはギャスパーだよ。会長の策がうまくいったみたいだな」

 

内容は深くまで教えない。

あんまり言いすぎると、相手の感情を刺激する可能性があるからな。

 

兵藤は仲間を倒されたからか、速攻で倒された仲間に対してなのか、勢いのまま倍加をしようとするが止まる。

……気づかれたか。

 

「なんだよ?倍加しないのか?」

 

「倍加したらお前に力が吸われるだろうが!!」

 

そう、だから倍加封じの為のラインだ。

ポンポン強化されたら勝てないからな。

 

「スタート!」

『Count Down!』

 

どうやら、『禁手』を使うことにしたか。

こっちもお前が至ったことは知っている。

そして、鎧を纏うのに時間がかかることも。

 

兵藤は距離を取ろうとするが、そうはさせない。

 

「距離なんか取らせるか!」

 

ラインを引っ張り、兵藤を引き寄せ、そのまま蹴りを放つ。

 

「ガハッ!?」

 

腹筋に力を入れていたのだろうが、そんなの意味がない。

 

「鳩尾を正確に蹴ってやったんだ、なかなか堪えるだろ?」

 

兵藤は蹴られたところを押さえ苦しそうにしている。

 

「げほっ!!この野郎!!」

 

「仁村!さっき取ってきたグラサンだ!」

 

ラインを照明に伸ばし光をはじけさせる。

目つぶしとしては十分すぎる。

 

「しまった!!目が!?ガァ!?」

 

そんな無防備な状態を見逃すわけもなく、再度鳩尾を狙う。

さらに追い打ちをかけるように、今度は顎を殴る。

 

「が……「止めだ!!」ぐぁああ!?」

 

膝から崩れ落ちた兵藤の頭を全力で蹴り飛ばす。

 

「イッセー先輩!?」

 

「よそ見はいけませんよ?塔城さん!!」

 

「くっ!?」

 

どうやら仁村も塔城の相手を上手くこなしてくれている。

 

「ごほっ!げほっ!……やるじゃねぇか、匙?」

 

フラフラと立ち上がる兵藤。

本気で攻撃したんだが、コイツのタフさは一級品だな。

 

「兵藤、俺は本気だ。本気で赤龍帝であるお前を倒すつもりだ。あんまり舐めてると……痛い目みるぜ?」

 

既に幾つかの『布石』はうってある。

しかし、それはあくまで保険。

一番はコイツが鎧を纏うまでに倒す事だ。

 

胸にラインを繋げる。

そして変換した魔力を手に溜めて、兵藤向けて放つ。

 

「うお!?」

 

魔力弾はそのまま背後の店舗を破壊する。

兵藤はその威力と胸に繋がれたラインを見る。

 

「お前まさか、自分の命を魔力に変換してるのか!?」

 

「そうさ、弱者が強者に勝つにはいつだって命がけだからな」

 

「正気かよ!?本当に死ぬぞ!?」

 

「正気だよ。そんでもって本気で、死ぬ気でお前に勝つつもりだ。……お前に分かるか?夢を馬鹿にされた会長の悔しさが!!俺たちの誇りをけなされた気持ちが!!」

 

「この試合は冥界全土に放送されている。だから見せてやるんだ!!俺たちを馬鹿にした奴ら全員に、俺たちの本気を!!そして、お前に勝って証明するんだ!!格下の奴でもやり方次第で勝てるって、それを学ぶために誰もが平等に通える学校が必要だって!!」

 

だから―――――――

 

「その為だったら、俺の命なんていくらでもかけてやるよ!!」

 

食品売り場から持ってきた物を取り出し、兵藤に投げる。

魔力弾ではないそれは、とっさに反応した兵藤に簡単に壊される。

 

「なんだこれ!?ぺっぺっ!!」

 

見事に引っかかってくれたよ。お前は本当に分かりやすいな。

 

「ぶえくしょん!!これ、コショウか!?ぶえくしょん!!」

 

『相棒!!前だ!!早く逃げろ!!』

 

「もう遅い!!これで詰みだ。兵藤!!」

 

命を削ってまで作り出した魔力弾を手のひらにあるまま、それを兵藤に向かって振り下ろす。

このままなら自分にも衝撃がくる可能性があるけど、腕一本で倒せるのならお釣りがくるくらいだ。

 

『Divide!』

 

魔力弾が半減された!?

 

「これは白龍皇の力!?」

 

「一応、山籠もりで使えるようにはなってたんだ。発動成功率は一割程度。成功、失敗に関わらず俺の生命力は減るけど、それはお互い様だ!」

 

「こんな所で立ち止まっていられないんだ。行くぜぇぇぇぇっ!輝きやがれっ!

ブーステッド・ギアァァァァァァ」

『Welsh Dragon Balance breaker!』

 

目の前には赤い鎧に身を包んだ兵藤が立っていた。

どうやら、そう上手く事は進んでくれないらしい。

 




匙君は勝つためなら手段は選びません。
今のところ、頭以外は雑魚同然なので。

二分の制限時間があって、長々と書くと不自然なのでコショウが思ったより生かせなかったのは残念です・・・(´・ω・`)

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