ハイスクールD×D 匙ストーリー   作:ヒツジン

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2話 勧誘

翌日、いつものごとく勝負を挑んでくる友人を今度はチェスで返り討ちにし、お金がないからと一日中パシリにしてご機嫌な匙は帰路につこうとしていた。

 

なんだか昨日から寒気がとまらない。風邪をひいて体調が悪いわけではないが、とてつもなく嫌な予感がする。こんな時の予感はなぜかよく当たる。予知なんじゃないかってくらいよく当たる。

せっかくいい気分なのだから、面倒事に巻きこまれてはたまらない。

 

しかし、そんな意向を無視するかのように自分の足を数人の女子生徒が止めた。

 

「匙君だよね?ちょっとお話があるんだけど時間あるかな?」

 

匙は一瞬で理解する。この悪寒の原因はコイツ等だと。かかわると碌なことにならないと。

そう考えた匙の行動は早かった。

 

「今日はゲームの発売日なんだ。悪いけど話してる時間なんてない」

 

我ながら素晴らしい嘘だと思いながら女子生徒たちの横を通り過ぎようとするが、残念ながらそれは赤毛の女子生徒に腕をつかまれ叶うことはなかった。

 

「ちょっと!!女の子の誘いをそんな事で断るの!?どう考えても時間あるでしょ!?」

 

そんなのじゃ女の子にモテないよ!と言われるが知ったことではない。

 

「放せ!女子数人で囲んでなに話すつもりだ?どう考えてもまともな話じゃないだろ!?」

 

「ちょっとくらい良いじゃない!」

 

「まともな話じゃないことは否定しないのか!?」

 

これは絶対にかかわってはいけない。早く帰らねば。

しかし少女の力は思いのほか強く、腕を振りほどくことができない。

 

「(この細腕のどこにそんな馬鹿力があんだよ!?)」

 

「抵抗するなら仕方ないわね。翼紗!強制的に連れてくわよ!」

 

その瞬間もう片方の腕が背の高い女子生徒につかまれる。

 

「そういうことだから、悪いわね。少し付き合ってちょうだい」

 

両腕がつかまれた匙は力の拮抗が崩れ、なすすべもなく引きずられていく。

 

「ちょっと待て!?お前らなんでそんな力が強いの!?」

 

「うるさいわね。桃、憐耶、コイツ黙らせて」

 

赤毛の女子生徒は残りの二人に声を掛ける。

 

「えーっと、ごめんね?」

 

「ちょっとだけだから、ね?」

 

お下げと黒髪の女子生徒はどこからか取り出したガムテープで匙の口をふさぎ、足をグルグル巻きにする。

 

「ムー!!(この怪力女!!)」

 

どうせ分からないだろうと、腕をつかんでいる女子生徒を罵倒する。

 

「……」

 

「ムゴ!?」

 

罵倒した女子生徒から無言の蹴りが匙にはなたれる。

 

何故わかったのかは分からないが、これ以上の抵抗は無駄だと理解して大人しく引きずられていく。

 

心の中で己の不運を呪いながら。

 

 

 

強制連行され、引きずられること数分。匙はとある部屋の前まで連れてこられていた。

部屋のネームプレートには生徒会室と書いてある。

 

「(生徒会室?なんでこんな所に?)」

 

ガムテープで口をふさがれている匙の質問は誰も答えてくれない。

女子生徒たちは匙を連れて、そのまま生徒会室に入っていく。

中には話す機会があればいいなと思っていった人が待っていた

 

「会長。匙君を連れてきました」

 

「ご苦労様でした。……ところで何故彼は口をふさがれて縛られているのですか?」

 

「全部巴柄が指示しました」

 

「抵抗するなら拘束して連れて行こうって言ったのは翼紗でしょう!?」

 

「本当にやるなんて思わなかったわ。冗談だったのに」

 

「あんた結構乗り気だったじゃない!!」

 

匙は今の状況に混乱していた。いきなり二人が口論を始めたし、それを見て残りの二人はオロオロするし、なにより何故生徒会室に連れてこられたのか、分からないことだらけだった。

 

「二人ともその程度にしておきなさい。彼も困っているでしょう?」

 

長身で眼鏡をかけた女子生徒が二人を止めに入る。

落ち着いた雰囲気だし、二人も大人しくなったのでこの人も先輩なのだろうか。

 

「ごめんなさい、うちの者が失礼しましたね。怪我はないですか?」

 

そう言いながら生徒会長、支取蒼那は匙の拘束をといていく。

 

「ちょっと体が痛いですけど、問題ないです。ところでなんで俺はこんな所に連れてこられたんですか?」

「いろいろと理由はありますが、あなたと少し話してみたかったんです」

 

その言葉に思わず匙の顔が赤くなるが、すぐに冷静になり自分を連れてきた四人をにらむ。

全員が気まずそうに目をそらす。

 

「抵抗したとはいえ、その程度の事で俺はあんな目にあったんですか?」

 

「それに関しては申し訳ないと思います。彼女たちには私からよく言っておくので許してあげてくれませんか?」

 

「……先輩にそこまで言われたら許さざるを得ないじゃないですか」

 

好みのタイプの人の頼みだから許すわけではない。ポイントを上げようとかそんなことは決してない。

気恥ずかしさをごまかすために咳払いをして本題に入る。

 

「で、話ってなんですか?」

 

「いきなりですけど、匙君は生徒会に興味はありませんか?」

 

「……生徒会入るって選挙とかしなくていいんですか?」

 

「人手が足りない場合は生徒会長の裁量で一人くらい生徒会に入れることができます。」

 

淡々と話が進むが、どうやら問題はないらしい。

しかしもう一つ疑問がある。

 

「なんで俺なんですか?」

 

そもそも昨日会ったばかりの人間に、しかも目があっただけなのに、いきなり生徒会に入りませんか?は変だ。どう考えたっておかしい。なにか別の理由が有る筈だ。

 

「そうですね……。まずはこっちから聞くべきだったかしら?」

 

 

 

――――――――――悪魔になってみませんか?

 


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