ハイスクールD×D 匙ストーリー   作:ヒツジン

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13話 顔合わせ

「そろそろ貴方にも使い魔が必要かしら」

 

「使い魔……ですか?」

 

ソーナの一言に匙は首をかしげる。

以前も使い魔がどうとか言っていた気がする。

 

「ええ、主の手伝いから情報伝達、追跡にも使えます。悪魔稼業もそれなりにやっていますし、そろそろ頃合いかと思いまして」

 

一応生徒会の仕事だけではなく、悪魔稼業も色々とやっている。

主に爺さん婆さんの話し相手や囲碁、将棋の相手として何度も召喚されている。

何故老人ばかりなのかは疑問だ。最近、孫を紹介されたときは本気でどうしようかと思った。

 

「その前にリアスのところに一度挨拶に行かなければなりませんね。堕天使の件を終えて新たに眷属が増えたみたいですし」

 

堕天使の件とは悪魔に転生したての頃から起こっていた問題だった。

多少の話は聞いていたが、知らず知らずのうちに解決していたらしい。

 

「さぁ、呆けてないで行きますよ。一度会っているとはいえ失礼のないように」

 

いつのまにか生徒会メンバーを引き連れ生徒会室から出ようとしていたのであわててついていく。

使い魔をどこで捕まえるのか聞き忘れたな……。

 

オカルト研究部のいる旧校舎へと向かう。

多分そこの部員は全員悪魔なんだろうな、兵藤も含めて。

 

「匙先輩がリアス先輩に突っかかった時はどうしようかと思いましたよ」

 

いつものごとく隣を歩いている仁村がボソリとつぶやく。

仁村はリアスが悪魔だと知っていたので、かなり焦ったらしい。

 

「元士郎君、リアス先輩ということを除いても先輩相手に凄い度胸ね」

 

「当り前だろう?人が苦労して準備して、ようやく捕まえた三人を解放しろなんて言うんだ」

 

今思い出しただけでも腹立たしい。あそこでリアスが悪魔だと気づかなかったらぶん殴っていたかもしれない。

そんな匙の表情をみて花戒と仁村は苦笑いする。

 

「着きましたよ、先ほども言いましたが失礼のないように」

 

「わかってますよ」

 

腹は立つが終わったことは仕方ない。

今後とも関わる事もあるだろうから、事を荒げるのだけはやめておこう。

 

草下が部屋をノックし返事の声が聞こえる。

 

「失礼します」

 

ソーナを先頭にゾロゾロと部屋に入っていく。

その姿をみた兵藤が驚く。

 

「なぁ!?このお方は!!」

 

「あのどちら様ですか?」

 

見知らぬ金髪の女子生徒が兵藤に質問する。

 

「この学校の生徒会長の支取蒼那先輩だよ、隣にいるのは副会長の真羅椿姫先輩。ってか生徒会メンバー勢揃いじゃん!」

 

「あらソーナ。お揃いでどうしたの?」

 

「お互い下僕が増えたことですし、改めてご挨拶を、と」

 

リアスの問いにソーナがこたえる。

 

「下僕ってまさか?」

 

「このお方の真実の名前はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期党首様ですわ」

 

「この学園に他にも悪魔が!?」

 

知らなかったのかよ。

いや、こっちも最近知ったばかりだけど、その可能性ぐらいは考えとけよ。

 

すると匙に気づき、さらに驚愕の顔になる。

 

「お前!!確か匙だったな!!じゃあお前も悪魔なのか!?」

 

「匙元士郎、『兵士』です」

 

「『兵士』の兵藤一誠、『僧侶』のアーシア・アルジェントよ」

 

お互いに眷属を紹介しあう二人。

金髪の子はアーシア・アルジェントというらしい。最近の転校生でその名前を見た気がする。

つうか兵藤も『兵士』だったのか。

 

「へぇ!お前も『兵士』だったのか!それも同学年なんて」

 

「ああ、まったく世も末だな。変態三人組の一人と同期な上、同じ『兵士』なんてな」

 

しれっと悪口で返す。

 

「なんだとテメェ!!!」

 

「やんのかこの野郎!!!」

 

お互い一触即発の空気になるが、ソーナに止められる。

 

「サジ、おやめなさい。彼は駒8個消費の『兵士』です。今のあなたじゃ勝て……なくはないでしょうね、ええ。貴方ならやりかねそうです」

 

「そんな目をして頭を抱えないでください。……しかし本当にコイツに駒全部消費の価値があるんですか?この変体野郎に俺の2倍の価値があると?」

 

「うっせぇ!!」

 

自分の価値が高いとは言えないが、それでもこんなやつより価値が低いのは気に入らない。

 

「ごめんなさいね?兵藤君、アルジェントさん。よろしければ新人悪魔同士仲良くしてあげてください」

 

サジ、と目線をこちらに送る。

握手しろって事ですか。

 

「……はい。よろしく」

 

そう言いながらアーシアの方に右手を伸ばす。

出した右手が両手でつかまれる。なんか前も有ったな、こんなこと。

 

「よろしくお願いします!」

 

この子は素直なんだろう。

……どこか仁村を連想させるのは気のせいだ、うん。

 

握手していた手が無理やり離され、兵藤が右手を握り潰さんとばかりに握手してくる。

これも前にあったな。

 

「ハハハ俺の事もよろしくね?匙君!!アーシアに手を出したらマジで殺すから!!!」

 

「よろしくな、兵藤。その前にお前に拳を出しそうだよ!!」

 

右手を握りつぶさんと強く兵藤の手を握る。

 

「はん!!駒4個消費が俺に勝てると思ってるのかよ!?」

 

「どうせ神器が凄いだけなんだろう?人としての価値は俺の方が上だ!!なぁ?エロ本を拾おうとして落とし穴に落ちたエロ兵藤君!!!!」

 

「お前!?今それを言うなよ!!!なにが人としての価値が上だ!?お前なんて外道に片足突っ込んでるじゃないか!!!」

 

「テメェ等の所為でどれだけ生徒会に仕事がたまってると思ってやがる!!!ふざけんなよ!!その殆どが俺にまわってくるんだぞ!!?」

 

あまりのイライラにとうとう本音が出始めてしまった。

 

「……大変ね」「……そちらも」

 

主である二人が苦笑いしながら見てくる。

 

「サジ、そのくらいにしておきなさい」

 

「イッセー、貴方もよ」

 

二人の言葉に渋々引き下がる。お互い目はそらさないが。

 

「ところでソーナ。挨拶と顔合わせも兼ねてとは言ってたけど、他にも理由があるんでしょう?」

 

「ええ、そろそろサジに使い魔を持たせようと思うのですが、リアス達と被るといけないので、その話も兼ねて」

 

「そう……。困ったわね。イッセーとアーシアにも使い魔を持たせようと思っていたのだけれど」

 

「やはりそうでしたか。彼は月に一度しか仕事を請け負ってくれませんし、どうしましょうか?」

 

なんだか話がよくわからないが、使い魔を手に入れるには、その彼が必要らしい。

 

「あの、会長?俺はまた別の機会でかまわな「そうはいきません」……そうっすか」

 

正直、多少遅くても全然かまわないけれど、そうもいかないらしい。

 

「なら公平に実力勝負というのはどう?」

 

「勝負?」

 

「勝った方が彼に依頼する権利を持つの」

 

「もしかしてレーティングゲームを?」

 

レーティングゲーム?なんだそれ?

 

「まさか、まず許可してもらえないもの。ここは高校生らしくスポーツで決めましょう?」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

スポーツで決めることに決定してしまった。

 

そして何故か生徒会の会長、副会長、オカルト研究部の部長、副部長が代表してテニスをすることになった。

 

普通使い魔を持とうとする者同士でやるんじゃないかと思ったが、4人とも乗り気で何も言えなかった。

 

兵藤はフェンスに顔をつけて4人を見ている。鼻を伸ばしながら……。

 

「気が付いたらずいぶんギャラリーが増えてるね」

 

「これでは魔力は使えませんね」

 

そう話すのは2年の木場と1年の搭城の二人。この二人も悪魔らしい。

 

「……普通に使ってるけど?」

 

さっきからガンガンに使ってる。スピンアタックとか、

周りは気づかずに魔球だとか騒いでいる。

 

「……魔球で納得してるみたいだね」

 

「いろいろ平和で何よりです」

 

「まったくだな」

 

コートの中はだんだん熱くなっているけど、単にテニスやりたかっただけとしか思えない。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

白熱した結果、決着つかず。

 

今度は団体戦でドッチボールをするらしい。

 

「元ちゃんの為にも勝たないとね!!」

 

そう言って気合を入れている巡。ソーナも含め皆気合は十分らしい。

 

……個人的にどうでもいいとは言い出せない。

 

「匙先輩!頑張りましょう!!」

 

「……仕方ないか」

 

開始のホイッスルが鳴る。

敵も含め殺気立っているのは気のせいか?目がぎらついている。

 

由良がボールを投げ、それが塔城の服を破りながら当たる。

彼女の怪力は知っているが、服を破るほどとは思わなかった。

本気で殴られたらひとたまりもないな。

 

そんなくだらない事ばかり考えている。

だってそうだろ?少なくとも自分の知っているドッチボールじゃない。

追尾するボールなんて知らないし、体操服を吹き飛ばす威力も知らない。

 

これを混沌って言うのだろうか?

 

遠い目をしていると、塔城の投げたボールが股間に当たり動けなくなる。

 

ああ……もうヤダ。だからどうでもよかったんだ。

 


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