ハイスクールD×D 匙ストーリー   作:ヒツジン

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12話 生徒会の仕事2

≪記憶≫の混乱により倒れてから数日が経った。

 

あれから≪記憶≫によって引きずられた感情であっても、それは自分自身の感情であると言われてから、少しだけ自分の世界が明るくなったのは間違いない。

 

ソーナ以外には≪記憶≫の事は話していない。倒れたのは生徒会の仕事に戦闘訓練と無理をしたからだということにしてある。

そのため、戦闘訓練は元々頻度が低いらしくしばらくは自主練、生徒会の仕事も最初は気づかなかったが幾らか他のメンバーがやってくれていて最初のクレームの山は若干減っていた。

 

そんな中、匙は数日の間で地道にたてていた計画を実行することにした。

 

「変態三人組を捕まえる……ですか?」

 

「そうだ。いい加減あのアホ共を捕まえないと生徒会の仕事が減らない」

 

何故なら減る量より増える量の方が多いから。最初のクレームの山は減ったが、新しいクレームの山が出来つつある。

いくら覗きに対応したとしても、ありとあらゆる手段で覗きをしているらしい。

その執念にあきれを通り越して尊敬の念すら抱く。

しかし、やらなければ自分の仕事が減らない。他の仕事もまわされてるとはいえ、覗きの対応に走らされるのはこりごりだ。

いくら退屈しないとはいっても、それだけは嫌だった。

 

「捕まえるのはいいですけど、どうするんですか?あの先輩たちかなり逃げ足が速いですよ?」

 

サポート役として付いている仁村が首をかしげる。生徒会として捕まえようとしたとこは何度かあるらしいが、全部逃げられているらしい。

 

「そのために数日で色々準備をしたから大丈夫だ。なに、問題ないさ。正義はこちらにあるんだからな。多少力づくでも文句は言われない」

 

「匙先輩、笑顔が黒いです……」

 

そう、色々と準備してきた。情報収集は完璧、協力を取り付け、情報もつかませた。馬鹿三人を捕まえるには十分すぎるほどの罠も準備した。

 

「準備は上々。あとは計画を動かすだけだ」

 

「て、手が早いですね。わかりました、私も頑張ります!」

 

「頼むぞ、と言っても仁村は罠にかかった三人組を捕まえてくれるだけで十分だろうけど」

 

「いったいどんな罠を準備したんですか?」

 

「そんなすごいものじゃない。あの三人しか引っかからない罠さ」

 

罠にかかるかどうかの『検証』も済んでいる。あの三人は既に手のひらの上だ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

二人は目的の場所まで歩いていた。

 

「こっちは道場の方ですよね?もしかして協力するのは・・・」

 

「ああ、剣道部だ。相談したら喜んで協力してくれるそうだ。まぁ、協力者は剣道部だけじゃないがな」

 

「まだ協力者がいるんですか?」

 

「その話はまた後でな。目的の場所に着いたぞ」

 

着いたのは以前に覗き穴を探した、更衣室のある場所だった。

 

「本当にここ来るんですか?覗き穴はふさぎましたよね?」

 

仁村の言うとおりその穴は以前ふさいだ。

 

「新しい穴を作った。大き目のな。もちろん剣道部から許可は取ってあるし、三人には穴があるという情報は流してある」

 

あの三人なら間違いなく来る。これは確定情報だ。

穴の話を聞いたときは涎を垂らして喜んだらしいからな。

 

「ほら、噂をすればノコノコやってきたぞ。隠れよう」

 

近くの茂みに隠れて少し待つと三人が来た。

罠とも知らず、馬鹿な奴らだ。

 

「松田、本当に穴があるのか?ここはちょっと前にふさがれたんだろ?」

 

眼鏡をかけた男子生徒は、スポーツ刈りの男子生徒に声をかける。

 

「それに関しては問題ないぜ、元浜。情報元の奴と一緒に来て確認したからな。マジであったんだ。しかも大き目の穴が!」

 

松田は興奮しているようで、すこし大き目の声を出してしまう。

 

「松田、もう少し静かにしないと気づかれるぞ。それにしても最近生徒会に入った匙って奴、俺らの楽しみの邪魔ばっかりするよな?あいつの所為で覗きスポットがいくつか潰されてるんだぞ」

 

「まったくだな」

 

そんな中、一人黙っていた茶髪の男子生徒が口を開く。

 

「……なぁ、二人とも今回は止めにしないか?なんか出来過ぎてるっつーか、嫌な予感がするんだ」

 

松田、元浜ときたら残りは兵藤だろう。

 

いい感してるよ。もう遅いけどな。

 

「なにを言っているイッセー!怖気づいたか!?」

 

「そうだぞイッセー!!オカルト研究部に入って一人だけいい思いしてるんじゃないだろうな!?」

 

松田と元浜が兵藤を非難する。

 

「いや、そんなわけじゃないけどさ・・・」

 

「そろそろだな・・・・あったあったこの穴だ。見ろよ二人とも!!中が丸見えだ!!」

 

「おい、松田!!俺にも見せろ!!」

 

「お、おい!待ってって!!俺にも見せてくれよ!!」

 

「イッセーは興味ないんだろう?まだ誰も来てないな。時間的にそろそろか?」

 

「しかしこの穴は素晴らしいな、前と比べるとかなり大きい。松田、いったい誰情報だ?」

 

「ああ、青山って奴でな。ご丁寧に案内して教えてくれた!剣道部が来たぞ!おお!!!」

 

完全に自分たちの世界に入ってしまったようだ。

 

「(そろそろ良いかな。仁村、打ち合わせした通で行くぞ)」

 

「(はい!匙先輩)」

 

隠れていた茂みから飛び出すが三人は未だ気づかない。

三人が来た道を仁村がふさいだのを確認し、声をかける

 

「楽しそうだなぁ、オイ。俺も混ぜてくれよ」

 

「「「!?」」」

 

「現行犯だ。捕まえても文句はないよな?」

 

「お、お前は生徒会の匙!?なんでここに!?ここはノーマークじゃなかったのか!?」

 

松田が匙に向かって声を荒げる。

 

「その穴は俺が剣道部の許可をとって作ったもんだ。お前らを捕まえるためにな」

 

「じゃあ松田に情報を流したのは……」

 

「俺があの馬鹿を使ってワザと流した」

 

元浜が歯ぎしりをする。

 

「だから止めようって言ったんだ!!!」

 

「大丈夫だ、来た道はふさがれたが逃げ道はある!!元浜、イッセーこっちだ!!」

 

松田が駆け出し、二人がそれに付いていく。その先には罠があるとも知らずに。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「これは!なんでこれがこんな所に落ちてるんだ?どわぁ!?」

 

「松田!?あれは!?これ程の逸品がなんでここに?んなぁ!?」

 

「元浜!?なんて奴だ……こんな罠を準備してるなんて!!あ、あれは!?チクショウ!!こんな物落ちてたら拾うしかないだろ!?ああ!?」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「一丁上がりだな」

 

縄でグルグル巻きにされた三人が校門前に吊るされていた。まるで蓑虫のように。

そんな三人には共通してとある本を持っていた。

 

「あの、匙先輩?三人が持ってる本ってもしかして……」

 

頬を若干赤らめて仁村が聞いてくる。

 

「見ての通り、エロ本だ。三人の趣向に合わせて準備させてもらった。なかなか手に入らないレア物をな」

 

「……どうやって準備したんですか?」

 

「俺の秘蔵のコレクションから準備した。……冗談だよ。友達が持ってたのを拝借しただけだ」

 

まさか三人の趣向にあうレアものを持ってるなんて思ってなかったが、ある意味ラッキーだった。

三人は落とし穴の上に置いてあった本を拾おうとして、落とし穴に落ちたところを仁村に縄で縛ってもらった。

 

「お、俺たちが引っかからなかったらどうするつもりだったんだ!!」

 

兵藤が聞いてくるが、そこら辺も抜かりない。

 

「お前ら三人とも、最近エロ本拾っただろ?普通ありえないところに、取るのに少し危ない所にあったヤツだ」

 

三人が目をそらす。三人がそれを拾ったことも青山を使って確認済みだ。

 

「木の上とかにある物を取る奴等だ。落とし穴と分かっても拾うと思ったよ」

 

ぶら下げられている三人には『私たちは覗きをしました。反省中です』と書いてある紙を張り付けてある。

それを学生達が見ながらクスクス笑っている。

これで少しは懲りるだろう。

 

「安心しろ、下校時間になったら解放してやるよ。じゃあ仁村、生徒会室に戻ろう」

 

仁村を連れて戻ろうとしたら、後ろに紅い髪をした女子生徒が立っていた。

 

「時間になっても来ないと思ったら……。こんな所で何をしているの?イッセー?」

 

「部長!?助けてください!!こんな扱いあんまりです!!」

 

兵藤の状態を見た女子生徒は匙の方を向く。最初は睨まれたが、生徒会の腕章と反省中の文字を交互に見て今の状況を分かってくれたらしい。すぐに申し訳なさそうな顔に変わった。

 

「ごめんなさい、うちの部員とその友人が迷惑を掛けたわ。私からもよく言い聞かせておくから今回は許してくれないかしら?」

 

仁村に誰?と目線を送る。

 

「(オカルト研究部の部長のリアス・グレモリー先輩ですよ)」

 

「先輩、この三人には生徒会としても困っているんです。ハイそうですかって解放するわけにもいかないんですよ?」

 

仁村はあわあわ言いながらこちらを見てくる。突っかかると不味い先輩なのだろうか?

そんなの知ったことではない。

 

「そこを何とか……ね?イッセーには今から大切な話があるの。私からソーナの方にも謝っておくから」

 

手を合わせてお願いしてくる。

ソーナと呼び捨てにしているところから仲は良いのだろう。

ん?グレモリー?……なるほどね。

 

「つまり兵藤はそういうことですか?リアス・『グレモリー』先輩?」

 

「察しが良くて助かるわ。ソーナは中々頭のきれる子を引き入れたみたいね」

 

仲は良いのだろうが、反抗しすぎるのは良くないな。

あまり事を起こすと逆に面倒だ。

 

少しの時間とはいえ、ここまでやったのだ。この馬鹿どももしばらくは大人しくするだろう。

 

「……はぁ、仕方ないですね。今回だけですからね?」

 

変態三人組の縄をほどき解放する。

 

「部長ぉ」

 

「よしよし私のかわいいイッセー。もうこんなことしちゃダメよ?貴方たち二人もね?」

 

「は、はい!」「あ、ありがとうございます!」

 

松田と元浜の目がハートになって、鼻が伸びている。

 

「ついでにお前らが持ってるヤツそのままやるよ。戻ろうか仁村。会長に報告しないとな」

 

「はい!失礼します、リアス先輩」

 

ぺこりと仁村はリアスに頭を下げる。

 

「ええ、ソーナによろしく言っておいてね?」

 

「いいのか?これ返さなくて」

 

「いいさ、どうせ表紙だけだから」

 

「え!?あ!!本当だ!!だ、騙されたぁぁぁぁあ!!!」

 

他の二人もその事実に気づき激しく落ち込む。

 

せっかく捕まえたのに、ついてなかったな。

 

そう思いながら匙はその場を後にした。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「そうですか、ご苦労様でした」

 

生徒会室に戻った匙はソーナに報告をしていた。

 

「はい、やっぱりあの先輩って?」

 

「ええ、私たちと同じ悪魔です。それと同時に私の幼馴染でもあります」

 

なるほど、道理で親しげだったハズだ。

 

「そろそろ彼女の方にも貴方の紹介に行かなければいけませんね。向こうも新しい眷属が増えたみたいですし、顔合わせも兼ねて」

 

新しい眷属とは兵藤の事だろう。つまりはアイツと同期になるようだ。

 

 

……なんかそれはそれで嫌だなぁ。

 


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