小説投稿なんて初めてなので表現がおかしかったりするかもしれませんが、皆さんの暇つぶし程度になれば幸いです。
いきなりだが皆さんは転生というものを信じるだろうか。
死んだ主人公とかが自称神様にあって、なんらかの力をもらったりして別世界で生まれ変わる小説とかでよくあるアレだ。
なんでこんな非科学的な話から入るかというのも俺、匙元士郎は俗にいう転生者である……
と思われるからだ。
神様になんかあってはいないし、生まれ変わった実感なんてものもないから断定できない。ただ物心ついたときから何故かある匙元士郎ではない別の人間の記憶。
全く知らない人間を父、母と呼ぶ記憶。
全く知らない人間と仲良く話す記憶。
全く知らない人間が自分に微笑んでいる記憶。
記憶が断片的とはいえ一つ一つがハッキリ残っているせいで時折自分が誰なのか分からなくなる。
匙元士郎としてこの世に生まれたハズなのに。
俺は匙元士郎なのか、それとも――――――――――――――――――――――――――
「おい匙!!」
「ッ!?」
「次お前の番だぞ!!!」
突然の大声で深い思考の海に沈んでいた匙の意識が戻され、目の前には将棋盤と仲の良い友人の姿が目に入る。
(そうだった。今暇つぶしにコイツと将棋をしてるんだった)
「どうしたよ?匙が長考するなんて珍しいな?それとも俺の神の一手になにも出来ないか?」
「悪い。お前の一手一手の時間が長くて考え事してた。あとそのドヤ顔やめろ」
「なんだとコノヤロウ……。今に見てろよ?今日こそはお前に勝ってやる!」
今は昼休憩前の授業の時間。授業中ではあるが、先生が出張中とかで自習時間なので堂々と友達と遊んでいる。もちろん自習などしていないし、その必要もない。
バカが次の一手をせかすため、容赦なく次の一手をうつ。
「王手。これで詰み「待ってください。マジでお願いします」……待っては5回までだって言ってんだろ?」
先ほどのドヤ顔はどこに行ったのか、友人がきれいな土下座をしてくる。
盤上は素人が見ても明らかにこちらが優勢であり、むしろこの状態からどうやって逆転しようとしたのかが知りたいところである。
「チクショウ……。この外道!悪魔!人でなし!金欠の俺からまだ搾取するのか!?もっと手加減しやがれ!!!」
「負けた方が昼飯おごるって言ったの青山だろうが。それに手加減なら十分してるだろ?六枚落ち(飛車と角行、両方の香車と桂馬を落とす)で負けるとか相当だぞ?」
でもよぉと言いながら泣き崩れる友人、青山にさらに追い打ちをかける。
「今日は何にしようかなー。やっぱ日替わりランチかなぁ?いやぁ毎回ごちそうさまです」
「それ学食で一番高いやつだろ!?俺の財布の中身を空っぽにするつもりかよ!?」
そして丁度鳴り響く授業終了のチャイムの音。学食を奢らせる為に泣いている財布(青山)をつかみ、教室を後にする。
「食った食った。ごちそうさま」
「……」
学食をでた二人のテンションは真逆だった。
片方はタダ飯の満腹感でご機嫌。もう片方は財布を見ながら落ち込んでいる。
言うまでもなくご機嫌は匙、落ち込んでいるのは青山である。
「うう……。俺の野口さんが……。次こそは匙に奢らせてやる。」
「楽しみにしとくよ。無理だろうけどな」
「……(ぶつぶつ)」
隣の友人が目を虚ろにし、呪いのような言葉をぶつぶつ言いながら下をむいている。流石にやりすぎたかなぁと思いながら教室に向かう。
その途中で、黒のショートカットの女性が率いる集団が前方からやってきた。
「(綺麗なひとだな……。同学年じゃ見たことないし、先輩かな?)」
この駒王学園は共学になったばかりで女性の割合が非常に多い。しかも美人が多い。
七不思議かなんかにしてもいいくらい。
それを含めても、先頭の女性は魅力的だった(ただ自分の好みにドストライクだったのかもしれない)。そしてすれ違う瞬間……
「ッ!?(目があった!?がん見しすぎたか?)」
ほんの一瞬だけ目があった。恥ずかしくてすぐに目をそらしてしまったが。
そして何事もなかったかのように通り過ぎていく集団。
その集団を見ながらいつの間にか復活していた青山がつぶやく。
「支取先輩今日も綺麗だよなぁ。生徒会メンバーは美人が多いし、俺も生徒会入りたいな」
「お前、今の人知ってんの?」
「寧ろ知らないのかよ!?この駒王学園の生徒会長だぞ!?歴代でも美女ぞろいと言われる生徒会メンバーの長だぞ!?」
「ふーん(やっぱ先輩だったのか……。)」
興奮しながら語りだした友人に若干引きながらも、どこかで話す機会があればいいな、とのんきに思う匙であった。
生徒会メンバーを率いて歩いていたソーナは先ほどすれ違った男子生徒が少し気になっていた。背は少し高かったが特別目立つわけでもないただの一般生徒。だが自分が人間でないからこそ気づけた微弱な力を感じていた。
「先ほどすれ違った金髪の男子生徒。誰か知っていますか?」
自分の後ろを歩いていた眷属たちに問いかける。
ソーナの質問に2年生の眷属悪魔たちが反応をしめした。
「もしかして匙君の事ですか?2年C組の匙元士郎君。」
2年を代表して巡巴柄が答える。
「匙元士郎……。聞いたことありますね。昨年度の成績優秀者にその名前があった気がします。」
匙の名前を聞き、副会長である真羅椿姫も反応が返ってきた。
「……?」
一人だけ誰の話をしているのかわからず首をかしげている一年生の仁村留流子以外は全員匙の名前を知っているようだった。
「しかし会長、彼がどうしたのですか?」
「彼から神器らしき力を感じたので少し気になって」
「「「「!?」」」」
それに……とソーナは話を続ける
「最近女子生徒では扱いにくい案件も増えてきましたし、生徒会としても男子生徒がほしい所でした。さらに神器持ちが眷属悪魔になってくれれば一石二鳥です。」
女子生徒が扱いにくい案件と聞いて、全員が三人組の男子生徒を思い浮かべる。
確かに彼らにはあまりかかわりたくない。
眷属たちがうなずいているのを見てソーナは思わず苦笑いする。
「……とにかく話してみないと事は始まりませんね。さっそく明日彼とコンタクトをとってみましょう」
匙はまだ知らない。自分の願いがさっそく叶うことも、ソーナ・シトリーとその眷属の出会いで自分の人生がガラリと変わることも……
「はくしょん!!……誰か噂してんのかな?」
まだ知らない。