雪の軌跡 作:玻璃
え、展開はやい?
知らん。
では、どうぞ。
各地の動揺が収まってきたある日のことだった。
久しぶりに謁見していると、兵士が駆け込んできた。
「ほ、報告します!正門前に、何者かが…!」
「…やるね、結社。…リオさん。ここは任せたよ。」
「え…アルシェムさんは!?」
まだ、演技は続ける。
正体は絶対にバラさない。
バラせば切り札が失われてしまうから。
「時間を稼ぐ。せめてカシウス氏が来るまではね。」
「無茶だよ!」
「やるしかねーのよ。時間を稼ぐしか…」
たとえ、余裕がなかったとしても。
「だけど、危険だよ!」
「…無茶は承知の上だよ。じゃ。」
女王宮の外へと出ると、既にそこには執行者4人と…
もう1人がいた。
「…来たね。」
「わざわざお出迎えとは、傷み入るね。」
「…悪いけど…誰も通さないよ。」
棒術具を構えて、その場にとどまる。
「あら、レンが頼んでもダメなの?」
「ごめんね、レン。これ以上はダメなんだ。」
「これ以上…?」
誤魔化してはいられない。
本気でいっても、今の状態だと勝てない。
「虚勢を張り続けてらんないの。…手加減してる余裕はないからね。」
「…ほう…?」
「あら…」
「ふむ…」
「うふふ、その雰囲気のシエルは久し振りね♪」
雑念が邪魔をする。
だから、その状態でも何とか渡り合えるように。
隠れていた彼を呼んだ。
「…ってわけだから、手伝ってよね。大佐?」
「やれやれ…私はもう大佐ではないのだがな。」
大佐とタマネギ以外に手っ取り早い呼び方なんて…
「てめぇは…」
「元、情報部所属。アラン・リシャールという。以後お見知り置き願おうか?」
「《剣聖》の後継者…?」
「これで互角、くらいかな。大佐、ヴァルターとルシオラ頼んだ。」
これで通じるのかは甚だ謎だったが、通じたようだ。
流石大佐。
「承知。」
「さて、覚悟してよ?」
「…フ…では、喜劇のフィナーレを飾るとしよう!」
そう言って、どこから出したのか分からない棺桶に詰められそうになるが…
まあ、遅い。
「…遅い!」
「な…!?」
棒術具を宙に投げ、導力銃を取り出して。
アルシェムは、導力銃を乱射した。
「わたしは、ただ1人の空を行く。」
「っ…!?ま、待ちたまえ…!」
焦りを見せるブルブラン。
だが、容赦はしない。
「誰にも、邪魔はさせない…!」
「が…グフっ…」
奇術でもよけきれなかった弾丸がブルブランを襲い、そして…
「…アリアンシエル!」
「ぐ、ああああああああ!?」
ブルブランは、滅多打ちにされた。
「ブルブラン!?」
「む、無念…」
「弱い。」
崩れ落ちたブルブランの四肢を撃ち抜く。
「あ…ぐっ、は…がっ!?」
微かに痙攣しながら、ブルブランは倒れた。
「再起不能にしてやりたいけどね。…次は、レンの番だよ。」
「…え、遠慮するわ…レン、まだ死にたくないし…」
「賢明だね。さて、大佐ー?」
大佐の方を伺い見れば、普通にヴァルターと渡り合っていた。
「な…デタラメすぎんだろ!?」
「腐っても《剣聖》の後継者ね…」
「ルシオラー、死にたくなかったら大人しくしててよー?」
この状況、露出狂は一発死だ。
いくらそのガムテープが「ガムテじゃないわよ!?」丈夫でも、耐えきれはしない。
だから、止めた。
「…そのようね。」
「諦めんの早すぎだろ!?」
「認められない未熟者は…お仕置きかな♪」
棒術具を握りしめ、そして…
「え…ちょ、おま…」
とてもイイ笑顔でアルシェムはクラフトを炸裂させた。
「覚悟してよ?」
「あ…」
「シュトゥルムランツァー♪」
その連撃は、過たずヴァルターに突き刺さった。
「にっぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」
「…見苦しいわね。」
「うふふ、可愛らしいじゃない♪」
どこが可愛いのか後で話し合いませんかレンさんや。
「ぐっ…」
「あー、君。やり過ぎじゃないかね?」
「情けよーしゃなしでいかねーとね♪」
再起不能にする勢いでやったのに、流石にまだ動けるようだ。
「ひでぇ…」
そこに、エステル達が現れた。
「クローゼ!って…あれ、アル!?」
「あ、エステル。」
「というか、大佐じゃねぇか!?」
だからもう大佐じゃないって。
「こんな所で何してんの…って、ルシオラ姉さん!?」
ほかにも各々驚いているようだ。
「皆、驚きすぎ。」
「致し方あるまい。よもや犯罪者がここにいるとは思わぬよ。」
あんたじゃないし。
「…さ、さーて、レン。引いてくれる?」
「嫌よ。これからが楽しいんじゃない♪」
「パテル=マテル。レンを止めて。」
冗談半分に言ったのに、本当にパテル=マテルはレンを止めた。
「え、ちょっと…何でシエルの言うこと聞くのよ!?」
まさか、まだアカウントが残っていたなんて思いもしなかった。
「やっぱり残ってたか。…接続。防壁突破。…コードに従い、銀の吹雪のアカウントを破棄せよ。」
「パテル=マテル!?シエル、ちょっと待ちなさい!パテル=マテルが嫌がってるわ!」
嫌がらないで。
もう、そっちには戻らないんだから。
「分かってるよ。…繰り返す。銀の吹雪のアカウントを破棄せよ。」
「何でそんなことするの!?」
「わたしは、もうそっちには戻らないから。」
「え…」
レンの顔が、揺らいだ。
「わたしはレンの側にいたい。だけど、蛇の中じゃ意味がないんだよ。」
「何で…何で、エステルみたいな事言うの!?」
因みに恐らく前者だろうと推測する。
「むしろ、エステルがそんなこと言ってたんだ、なんだけど…ねぇ、レン。わたし、わたしには出来ないけど、レンには出来ることいっぱい知ってるよ。」
「シエルに出来ないことなんてないじゃない!」
いや、あるけどさ。
「いや、色々あるんだけど…ま、良いか。1つだけ…わたしには絶対に出来ないことがあるよ。」
「…何よ…」
そんなレンに、アルシェムは言葉を投げた。
「生物学上の親に文句を言うこと。」
アルシェムには、どう頑張ってもできないこと。
アルシェムには、そんなモノ存在しないのだから。
レンが、息をのむ。
「…っ!」
「アル…?」
「だって生きていないんだもん。レンの生物学上の親は、生きてるでしょ?」
「そんなの…いない…レンのパパとママはパテル=マテルだけだもの!」
いや、どうやって無機物からレンが生まれるのよ。
そう、言おうとした。
だけど、それよりも。
伝えなくちゃいけない、大切なことがあった。
「偽物のパパとママはまだクロスベルに住んでる。文句、言いに行こうよ。あんた達のせいで、レンの人生滅茶苦茶だって。殺さない程度にぶん殴ったって良い。我が儘言って、困らせちゃえば良い。だってレンは子供だよ?」
「レンはもう子供じゃないもん!」
ティータよりも年下のレンが何を言いますか。
「…そうだね。一人前のレディだもんね、レンは。」
「子供扱いしないでよ。独りで出来るもん…」
「じゃあ、1人で本当のことを確かめに行ったら?」
「…っそれ、は…」
できない、と分かっていて。
それでも、言った。
「怖い、よね?だからさ、まずは自分の心を先に整理しちゃうのが良いと思うよ。」
「…っ、そんなの…そんなの、出来るわけないじゃない…シエルの…シエルのバカ!」
そんなレンの叫びに呼応するようにして。
執行者達は去って行った。
タイトルとのギャップ。
だって、思いつかないんだもの。
そのうちタイトルがかぶっていても気づかない気がする。
では、また。