雪の軌跡 作:玻璃
しかも、ついでに。
では、どうぞ。
リベール上空に、《輝く環》が出現していた。
その瞬間に流れ込んで切る大量の情報。
その多さに眩暈がして…
アルシェムは、蹲った。
「…っ!」
「大丈夫!?」
「…情報量が多すぎて…っ…」
頭が割れるように痛い。
「…何とかしないと…!」
焦るリオの前に、1人の女性が現れた。
「リオ!」
「へっ…ヒーナっ!?」
それは、大聖堂にいるはずのヒーナだった。
「あれは…あれが、《輝く環》なのよね?どうしてエルが…」
「分からない。けど…兎に角落ち着かせなきゃ…」
「…だいじょ、ぶ…だよ…頭、痛いだけ…」
大分、落ち着いてきた。
それと同時に、分かってしまった。
「それは大丈夫ではありません!全くもう…」
「…はー…」
「ほら、じっとして。」
落ち着かせてくれるヒーナ。
だけど、今のアルシェムにはそんな余裕はなかった。
《輝く環》は、やはりアルシェムとは無関係ではなかったのだと。
理解させられてしまったから。
「う、ん…」
「…ホーリーブレス!」
「…どう?」
治ったようにふるまわなければ。
暫くは…
《輝く環》が消えるまでは、ずっとこのままだから。
「…うん、大分楽になったよ、ありがとー。にしても…やっぱ導力止まっちゃったか…」
「ゴスペルからしてアレだしねぇ。どうする、ストレイ卿?」
「機を見て乗り込む。ま、その前にリオには一働きしてもらうことになるかな。…ごめんね?」
リオには、まだ星杯騎士として目立っていて貰わなければならなかった。
それが、リオの身を危険に晒すことだと分かっていても。
「何で謝んのさ。」
「良くも悪くも、わたしのせいで有名になっちゃったからさ…」
「良いよ、別に。アタシはアンタを信頼してる。信頼出来るから、今までもこれからもついて行く。」
アルシェムは、そんな大層な人間ではない。
そう、言いたかった。
言えなかった。
「リオ…」
「そういう意味ではさ、アタシは単純なのかもね。けど、きっと後悔はしない。」
「…ありがとう。」
きっと、最後まで連れて行く羽目になってしまうのだろうけど。
それでも、置いていかなければならない時だってある。
頼りすぎるのは、危険だった。
それに…
「…ヒーナ。お願いがあるんだけど。」
「何ですか、エル?」
「多分、アレについて帝国が強硬手段に出る。逆手にとってリベールに恩を売って。」
それで、従騎士から外せるのなら良い。
これ以上、ヒーナを危険な目には合わせたくない。
「…おかしなことを考えてはいないかしら、エル?」
「…考えてないよ。」
「…そうですか。言っておきますけど…リオも言ったように、私も貴女を信頼しています。付いていきますからね?何があっても。」
…見透かされた。
だけど…
それでも。
「…ありがとう。交渉は任せたよ?」
「ええ。…さて、そろそろ誤魔化し切れませんからね。戻りましょうか、エル、リオ。」
「そーだね。」
グランセル王城へと戻り、女王に謁見する。
「…あれが、《輝く環》なのですね、アルシェムさん。」
「はい。導力が止まっている事と多少の動揺を除けば、概ねいつもどおりでしょうね。」
「…導力に頼りすぎるのも問題のようですね…」
まあ、導力がなかった時代の方が平和でもあったのだが。
今は導力から脱却することは出来ないだろう。
導力停止現象破りをアルシェムも考えてはあるが、結局は導力頼りなのだから。
「効果範囲が一番の問題ですね。帝国南部にかかってしまっています。」
「…!それは…」
「恐らく、帝国はそれを口実に…攻めてくるでしょうね。」
あまり考えたくないことではあるが、あり得ることだ。
「対策を練らねばなりませんね。」
「それもそうでしょうがね…問題はそこではありません。陛下ではなく、誰を代役に立てるかが問題となってくるでしょう。」
「…デュナンは兎も角、クローディアには覚悟を決めて貰わねばならない、ということですか…」
というよりも、最初から覚悟させておくべきだった。
「…まだ決まってないのなら容赦なく叩き潰しますが。」
「…え。」
「だってそうでしょう。全ての国民に責任を負うのが王族です。」
それ以外に、王族が存在する意義がわからない。
王は、民を守るものであって民を殺すものであってはいけないのだ。
「それは…そうですが…」
「嫌なら、合議制とかにしちゃえばいーんですよ。共和国とか、クロスベルみたいにね。でも、そういうわけにはいかないでしょう?」
「…ええ。クローディアにはもう覚悟を決めさせましょう。」
ただ守られているだけのお姫様は、果たしてちゃんと女王になれるのか。
まあ、なってもらわないと困るのだが。
「…そろそろ時間です。各地の混乱を収めるのはエステル達がやってくれるでしょう。わたしは、少しやることができましたので。では、失礼します。」
これ以上、聞く気もなくて。
アルシェムは、その場を後にした。
はい、忘れたころに暗躍するヒーナ嬢の紹介です。
え?忘れてたのはお前だろう?
その通りだ。
ごめんなさい。
name:ヒーナ・クヴィッテ
星杯騎士エル・ストレイの従騎士。
とある事情からアイン・セルナートに拾われ、従騎士となる。
weapon:法剣(レイピア状)
craft:ホーリーブレス
インフィニティ・ニードル:インフィニティ・スパローの劣化版。出血30%
朧月夜:自分を中心に法剣を振り回す。即死20%
虚無の弾丸:無属性の法術を放ち、ダメージと共に状態異常を付与する。
ランダム20%
S-craft:
スフィアノヴァ
味方全体に完全防御の膜を張り、虚無の弾丸を撃ちまくる。ランダム異常50%