雪の軌跡   作:玻璃

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物理法則を無視したあいつが登場です。

いや、あのね?
浮くわけねーだろ!

では、どうぞ。


《グロリアス》

「相変わらず趣味わりー…」

《身喰らう蛇》の拠点に忍び込んだアルシェムは、拠点の屋上の飛空挺に忍び込んでいた。

「…来た。」

来たと思ったら、エステル達ではなかった。

何故にヘタレ。

アネラスや、カルナや、ブラッ…

いや、違った。

グラッツか。

彼らは拠点内に捕まった。

まあ、助けなくてもあの…

「…な、ないすぼーと…」

が助けを呼んでくれるだろう。

これからは《nice boat》と呼んでやろう。

せっかくだから。

そのまま暫く待つと、エステル、ケビン、リオ、アガット、シェラザードが乗り込んできた。

いや、エステルは分かる。

ネギも、リオも分かる。

アガットも辛うじて分かる。

でも、何でその悪い意味でのオールラウンダーが来てるんだ。

アーツ要員か。

気配を消し続けながら、様子を窺う。

まあ、見えないので気配を追うだけだが。

…全く、よくやるよ。

趣味の悪い…

流石は《面白》。

…じゃなかった、《白面》。

上の方まで上がってきたエステル達は、人ではない何かにやられてしまったようだ。

人形、かな。

って、ちょっと待て《面白》。

ヨシュアに刺されるフラグ建ててるよ、この人。

御姫様抱っことかしてるし。

そのままエステルが飛空挺に乗せられたのを確認し、そのまま潜み続ける。

アルシェムは、飛空艇が止まったのを確認し、《グロリアス》内部へと潜入した。

「…気配、消えたか…」

まだまだ隠形を続けながらヨシュアとは違う場所に爆弾を仕掛ける。

何でそんなややこしい構造の奴を仕掛けてるんだヨシュアは。

仕掛け終わり、エステルが囚われている部屋へと潜入する。

そこで、胸糞悪い《ハーメル》の話をしているレオンハルトとそれを聞いているエステルを目撃した。

「…全ては、あのアルシェムという少女が仕組んだことだ。」

いや、違うから。

…まあ、逃げの一手を選択するか。

仕方ないから。

見捨てたらそれこそ殺されそうだし。

足元に地雷を蒔きながら、接近する。

「…うそ…だって、アルは…」

「事実だ。」

「事実無根だ(キリッ)。」

ナチュラルに会話に混ざったアルシェムに、2人は固まった。

「…へ?」

「誰だっ!」

いやいや、分かるでしょうに。

仮面付けてるけど。

「…はろー、レーヴェ。」

「何だ、シエルか…ではない、何故お前がここにいる?」

「さて、何故でしょーか?」

思い出しては、くれないか。

法術をかけるしかないが…

生憎、アルシェムにはそれだけの技量がない。

「…確か、《銀の吹雪》さんだっけ…」

「エステル・ブライト。君、図太すぎるよ…」

この状況で口を開くとか。

流石は《剣聖》の娘。

「この際聞いておきたいんだけど、良い?」

「ダメって言っても聞く気でしょ?」

「うん…あたしね、あなたを知ってる気がするの。気のせいじゃないと思う。あなたは、誰?」

明言してくれないだけマシか。

「…直感、凄すぎ…ま、気付かれてもおかしくねーけどさ…」

「じゃあ、やっぱり…!」

さあ、逃げる時間だ。

「…レーヴェ。そことっても危ないよ。」

「…っ!?」

レオンハルトの足元で、爆発が起きる。

「行くよ、エステル・ブライト!」

「あ、うん!」

アルシェムは、エステルと共にその部屋から逃走し始めた。

「な、何だったのアレ!?」

「ん?対人地雷。怪我しねータイプの。」

驚いて絡まるくらいが関の山だ。

ネットを放出するだけの代物と、爆発物とを混合してあるし。

「サラッと言ってんじゃないわよ!?」

「だいじょーぶ。暫くは追っては来れねーよ。バラ蒔いたし。」

「うわー、鬼畜…きゃっ!?」

足元からいきなりせりあがってくる謎の物体を間一髪で避けるエステル。

流石。

「…防衛機関は健在か。エステル・ブライト、付いて来て。」

「わ、分かった。」

防衛機関の穴を突きながら、2人は甲板へと出た。

「何か上まで出ちゃったけど…大丈夫なの!?」

「出ないと行けねーのよ。…チッ、雑魚が。」

前からやってくる雑魚に、悪態をつく。

「この先は行かせないぞ!」

「黙れギルバーカ・ズタズタイン。」

「僕はギルバート・スタインだっ…!」

バカだし。

ズタズタでも良いし。

ピッタリなんじゃない?

「シュトゥルムランツァー。」

「みっぎゃあああああ!?」

しかも一撃で終わりとは。

まあ、そのおかげでレオンハルトが追いつけたのだが。

「…小物だね。アレに比べたら。」

「へ…っ!?もう追い付いてきたの!?」

「ぜー、ぜー、はー、はー…お、追い付いたぞ…」

ボロボロだった。

服は焦げて、所々穴が開いている。

「手加減したのにその有様?レーヴェ、鈍った?」

「お前が容赦なさすぎるんだ!」

「…そー?」

それくらいしないと、足止めできないじゃないか。

「じ、自覚ないんだ…」

「はぁ…兎に角、今逃げられては困るのでな。」

「困らねーでしょ?レーヴェが追い求めるのは、エステル・ブライトじゃねーんだし。」

レオンハルトが追い求めるのは、ただ1人の面影のみ。

カリン・アストレイ。

彼が死んだと思っている最愛の人だ。

「…!」

「さて、足止めはわたしに任せて、エステルを頼んだよ?ヨシュア。」

「…全く。君って人は…」

「え…」

「迂闊すぎるんじゃないの、エステル?」

そっちかい。

「う…わ、分かってるわよ!でも…それより…ヨシュア、よね?」

「…他の誰に見えるのさ。」

「正真正銘ヨシュアでしょ?」

これがヨシュアじゃなかったどうする。

「うー…」

「さ、だから行きなって。わたしなら止められるし。何より…飛び降りられるからね。」

「いや、死ぬからね!?」

そーらーをじゆうにっとーびたーなー♪

「そー?」

ハイ、聖獣レグナート~♪

じゃダメかな。

「全く…本当に、無茶苦茶だよ…」

「…行ってよ。」

「ダメ。あんたも一緒に脱出すんのよ。」

するから。

打つ手はあるから。

「…ヨシュアー、この我が儘娘どーにかしてー。」

「ごめん、無理。」

「…はぁ…分の悪い賭だね、ホント。」

この距離でばら蒔いて、無事でいられる保証はない。

「…シエル?」

「合図と共に走れ。振り返らねーでよ、頼むから…!」

振り返ったら、多分死ぬ。

「…分かった。」

「ちょっ、ヨシュア!?」

「…今!」

「待って…待ってってばぁ!」

爆発音とともに、エステルの背後が吹き飛んだ。

「アルっ…!」

「呼んだ、エステル?」

「…へ?」

黒焦げになりながら、アルシェムはしっかり脱出していた。

「さっきの地雷。もっかいバラ蒔いたの。」

「ぱくぱく。」

「…兎に角、急ごうか…」

どうやらヨシュアが疲れているようだ。

解せぬ。

飛空挺を求めて格納庫へと向かうと、妙な気配が待ち構えていた。

「…ストップ、エステル、ヨシュア。」

「…っ!」

「何やってんのUMA。」

アルシェムが、そのUMA…

《道化師》に声を掛けた。

「相変わらず酷いね、シエル。ボクと君の仲じゃないか♪」

気持ち悪い。

「《道化師》カンパネルラ…!」

「邪魔してもしなくても結果が同じなら、邪魔しても仕方ねーんじゃねーの?宇宙人。」

「恋は障害があった方が燃え上がるじゃないか。こんなふうにね!」

「…わーお。」

レオールガンイージ。

ただの嫌がらせじゃないか。

「君の相手はボクだよ。さ、楽しもう!」

「却下。」

「つれないなぁ…」

釣られるか。

面倒な。

「ヨシュア、前衛。エステルはヨシュアの援護。」

「分かってるわよ!」

それから…

十分もかからずに、それらを撃破してみせた。

面倒だったが、所詮硬いだけだ。

「…はあはあ…」

「…うふふ、楽しめたよ。じゃあね。」

完全に未確認生物の気配が消えたのを確認してからヨシュアに話しかける。

「…行ったか。さて、ヨシュア?脱出用に細工してるんでしょ。どこ?」

「一番奥だよ。」

「…そ、りょーかい。」

近くの飛空挺から機銃を掻払う。

これがないと話にならない。

「何してんのよ、アル!」

「いや、攻撃手段は増やしといたほーがいーかなって。」

撃てるかどうかは別にして。

「そうだね。でもそれだけにしておいて。」

「ま、エステルじゃ撃てないしね。」

一番奥の飛空艇に乗り込む。

「アル、早く中に!」

「良いから閉めててよバカっ!」

ドアを閉め、気銃を構えた瞬間にハッチが開いた。

容赦ねえ。

「ヒィィィィィヤッハァァァァァァッ!」

追ってくる飛空挺を撃つ。

「さ、景気よくバラまくよーっ!」

反動が凄いが、今はそんなことを言ってはいられない。

そこそこ減ったところで山猫号が見える。

「お。当たんないでよね。」

気を付けて撃ってはいるが、如何せん山猫号が邪魔で数が減らせない。

そのまま山猫号は飛空挺を吸引してしまった。

「…バカ?」

だけど、マズイ。

アルシェムは、飛空艇の中に駆け込んだ。

「ヨシュア、ちょっと山猫号助けてくるよ。」

「え゛。どうやって!?」

「ばーい!」

外に出て機銃を持ったまま鋼糸を飛ばし、乗り移る。

上手く飛び移れてよかった。

「…狙いはあそこだね。」

密集地帯を狙い撃ち、経戦不可能にまで追い込む。

まあ、落としたら後が面倒だし。

「よし。」

そうこうしていると、中からジョゼットが飛び出してくる。

「…って何やってんのさアンタ!?」

「あ、ジョゼット・カプア。中入ってないとあぶねーよ。」

「へ…うわわっ!?」

敵飛空艇からの一斉掃射にやられかかる。

危ない奴だ。

「しつこい!」

機銃を撃ちまくって飛空艇を追い払った。

「…ぽかーん…」

「よし、もーだいじょーぶ。降ろしてくれる気ある?」

「あ、うん、ヨシュアと合流したいし…」

「んじゃ、いーか。」

最悪、飛び降りなきゃいけないかと思った。




シェラザードは嫌いかって?
はい、嫌いです。
あんなに使いにくい人、面倒です。

では、また。

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