雪の軌跡   作:玻璃

76 / 269
最終回が近いわけじゃないですよ。

では、どうぞ。


終焉への足音

昇降機が止まり、皆はそこに降り立った。

「な、何だこの空間は…」

「…古代文明の遺跡…だね。」

アルシェムには、何となく分かってしまった。

ここは…

何か、懐かしいような雰囲気で溢れていた。

だから、きっとここは…

だけど、ここは…

それを、確かめるために。

「…せんこーしよーか?」

と、アルシェムは申し出た。

「いや…いくらお前さんでもマズいだろう。」

苦い顔でジンが言うけれど。

「…そー、かな?行けそーだけど。」

少なくとも、《不動》なジンよりはフットワークが良いはずだ。

「油断は禁物よ、アル。それにあんた、さっきの赤ヘルム独りで倒したでしょ。相当疲れてるはずよ。」

疲れている?

だからどうした。

「…ひ弱なシェラさんと一緒にしないでよ。」

シェラザードよりは、丈夫だ。

「何ですって!?」

シェラザードはもっと鍛えるか決め手を持った方が良い。

このままではただの変態お姉さんだ。

「アルシェム…お前さん、何ピリピリしてるんだ?」

もう、ここにはいられない。

きっと…

もう。

「称号の如く《不動》なあんたには言われたくない。あー、もー…」

イライラする。

これまで隠せてたことが、露見しそうなくらい。

アルシェムは、動揺していた。

「アル…?どうしたのよ、ホント。あの赤ヘルムと会ってから変よ?」

当然だ。

彼が原因なのだから。

「…分かってる。終わりが…近いのかもね。」

エステル達とは、もう一緒にはいられない。

「終わりって…何のだい?」

そう不思議そうに聞くヨシュアも…

やはり、思い出してはくれないのだろう。

「…ヨシュアもやっぱりダメか。」

どうして…

だったんだろう。

「…え?」

アルシェムは、複雑な思いを抱えながら。

大きな紙を広げて、導力銃から音響弾を放った。

途端に響き渡る爆音。

「ちょっと…!」

「い、いきなり何じゃい!?」

音の反響を聞き。

それを読み取り。

理解して…

そして、測る。

「…ここはふけーな…うん、入り組みすぎ。」

だけど、複雑すぎる。

「も、もしかして…アルシェムさん、反響で距離を測ったんですかー!?」

ティータは、全容を把握していたようだ。

口には出さないがラッセル博士も。

「流石ティータ。せーかい。でも…フクザツすぎてぜんよーはハッキリしねーのよね…」

「け、警告くらいしなさいよ!」

たまらず怒るエステルと…

「ピュイ!」

それに追従する鳴き声。

何故。

来るなと、言ったはずだった。

なのに…

何故!

「…何でジーク?何で殿下がいんの?降りてこないで下さいって言ったよね?」

絶対零度の視線でクローディアを睨む。

それにたじろぎながら、クローディアは答えた。

「あ、あの…おばあ様の代わりに…」

はい、0点。

見届けに来て、どうする。

今のうちから女王陛下の技を身につけるべきなのに。

護衛もつけずに何をやっている…!

「はー…まぁ、い…良くない!?ちょっ…」

自称護衛のつもりなのか。

肝心な時に守れていないのに、何が護衛か。

「こら、ジーク!」

クローディアの制止も、空しく響く。

どんどん端まで追い詰められて、そして…

「ピュイーっ!」

ジークは、最大速度でアルシェムを突き落した。

「ちょっ…うわあああ!?」

「アル!?」

スピードがスピードなので、捕まることすらできずに。

そのまま落下する。

「アルぅぅぅっ!」

エステルの絶叫が聞こえるが、もう後の祭りだ。

まあ、死にはしないが。

忘れかけていたモノを探り当て、底の底まで落ちてしまう前に建造物に巻きつける。

「…うわ、ギリギリ…」

その下の層は、ないようだった。

地面にぶつかる前にぎりぎりで止まれた。

「…ま、ちょーどいーかな。」

隠形で姿を隠し、大佐がいると思しき所まで行く。

「…さてと。…見物に徹するか。」

そうして、アルシェムはその場で暫し待つのだった。

1人ですべてを終わらせるため、ではない。

たった1回のチャンスでも、逃さないようにするために。




クレイジーク。
いや、あのね?
最強はジークかもしんない。

では、また。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。