雪の軌跡   作:玻璃

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はい、依頼消化回そのに、です。

では、どうぞ。


ストレス性喫煙と、司書の仕事じゃない仕事。

遊撃士協会(ギルド)に戻ると、キリカが待ち受けていた。

「あら、早かったわね。」

「手配まじゅー、運搬車のしゅーり、あと何故かラブレター配達終わらせたよ。」

「そう。エステル達はティータと一緒にエルモへ向かったわ。」

何でエルモ?

ああ…

何か故障したのかな?

「ふーん。…あ、臨時司書受けます。」

「…行っても良いのよ?」

「じょーだん。人手足りねーでしょ。じゃ!」

「…素直じゃないわね…全く。」

煩いキリカ。

アルシェムは、階段で中央工房の2階へと向かった。

「…?工房長、煙草なんて吸ったっけ…?」

そのまま素通りして資料室へと向かう。

「コンスタンツェさん、準遊撃士です。お待たせしました。」

「あら、アルシェム。…貸出期限切れの本を回収してきて頂戴。設計室に実験室、医務室よ。」

「りょーかいです。」

場所はわかっているので、さくさくと設計室、実験室で回収し、医務室へ行くと…

「ふう、全く…絶対に逃がしませんからね。」

と、怒り心頭なミリアムがいた。

「ミリアムせんせ?」

「あら、アルシェム。どうかした?」

「本のかいしゅーに。」

「そう…」

いったい何があったんだろうか。

「今、少し立て込んでますし、後で依頼受けますよ。」

「本当に!?…出来れば早くお願いするわ。」

「分かりました。じゃー。」

資料室へと戻り、依頼を終わらせるべくコンスタンツェに本を渡す。

「はい、どーぞ。」

「…流石ね。じゃ、次は…『エルベキツツキの生態』って本を探して頂戴。手掛かりはこの…」

俳句か。

でも…

あそこしかない。

「あー…あそこか。じゃ、見付けて来ます。」

「うふふ、期待してるわよ。」

その場所に向かう前に、ミリアムの依頼を受けておいたほうが良いと思って遊撃士協会(ギルド)へと向かう。

「臨時司書の続き受けました。後…これか、煙草受けますよー。」

「ええ、宜しく。」

医務室へと戻ると、ミリアムが首を長くして待っていた。

「早かったわね。」

「そーですか?」

「ええ…」

「で、煙草のとーなんですか…ちょっと、心当たりが…」

だって、さっき匂いが…

「え。」

「行きましょー。」

匂いの根源、工房長室へと向かう。

「な、何だね?」

「…ビンゴ!」

「え…」

「ちょっとしつれー。」

奥の部屋へと侵入する。

すると、呆気なく煙草は見つかった。

「はい、みっけ。」

「…工房長?」

ミリアムの目が怖い…

「ち、違うんだ!一服したらすぐに返そうと…」

「いや、とーなんはとーなんですからね?」

「全く…呆れるしかないわね。まさかよりによって工房長の仕業だなんて…」

同感である。

長が示しをつけなくてどうするのだ。

「も…申し訳ない…どうしても一服したくなってね…」

「でも、確か随分前に禁煙なさったはずですよね?」

「ストレスじゃねーですか?ゆっくり休んだほーがいーですよ?」

「いや…苦情が凄くてね…本当に…」

ごめんなさい。

「…事情は分かりました。今回の件を水に流す代わりに、休養を取って下さい。」

「い、良いのかい?」

「体調を崩されては元も子もないですからね。」

「肝に銘じるよ…」

まあ、工房長の気が休まる時なんてないのだが。

「じゃ、私は医務室に戻っていますね。ありがとね、アルシェム。」

「いえ、お気遣いなく。」

「…君…ちゃんと遊撃士やってるんだね。」

失礼な。

「けんきゅー員にはなれませんから。…しつれーします。」

煙草の件で遊撃士協会(ギルド)へ報告に戻り、臨時司書を続けることを宣言しておく。

「煙草、終わりました。臨時司書の続き探してきます。」

「…無理はしないで。」

「分かってるよ。」

無理なんて、してない。

エルモへとたどり着くと、湯気が出ていない源泉が見えた。

「…あー、それでエルモにね…」

旅館へと入り、あの1年で顔なじみとなったお婆ちゃんに挨拶する。

「おや、アルシェムじゃないか!」

「久しぶりです、マオさん。ちょっと露天に入らせて貰えませんか?」

「や、今はお湯が…」

「いや、立ち入りって意味で。探し物があるはずなので。」

流石にこんな時間から混浴の露天に入ろうと思うほど変態じゃない。

「ああ、良いよ。」

露天に行くと、案の定本を発見することができた。

「うわっはー…」

ここまでする根性がわからない。

マオさんに挨拶をしに戻る。

「あったかい?」

「えー、まー…じゃ、わたしはツァイスに戻ってます。ティータとエステル達を宜しくです。」

「…分かったよ。じゃ、またゆっくり浸かりに来なよ。」

「はい。」

きっと、来れないのだろうけど。

資料室へと戻り、コンスタンツェに本を渡す。

「あら…」

「どうぞ。」

「早かったわね…じゃ、次はこれよ。」

渡された紙には…

「…ねーわー!」

とアルシェムに言わしめる記号が記されていた。

 

● ●

  ×

● ●

 

である。

どうしろと。

「仕方ないじゃない。『ハーツ少年の冒険・下』探して頂戴。」

「…はい。」

まあでも、当てはまりそうな場所は少ない。

トラット平原道へと出て、ストーンサークルへと向かう。

「多分…あった。」

本当にあるとは思ってもいなかったのだが。

資料室へと戻り、もうないだろうと思いながらコンスタンツェに本を返す。

「あら…意外と早かったわね。」

「はい、返す。」

「じゃ、最後は…」

「アーネンベルクの…三階にある樽?」

渡された紙には、そう書いてあるように見えた。

まあ、横書きだったのだが。

「へ…あ、ああ。そう読むのね。『31本の糸杉』、頼んだわよ。」

「はいよ。」

アーネンベルクへと向かう。

遠い。

遠いが、体力をつけるにはもってこいだ。

3階へ向かい、樽から本を発見する。

「…あった…けど…人騒がせなけんきゅー者がいたもんだ。」

謎を解けって。

Bじゃあるまいし。

流石にもうないだろうと思いながら資料室へと戻る。

「ひょっとして…」

「これと、これも見て下せーね。」

「間違いないわね…うん、そのクオーツはあなたにあげるわ。一日中走り回ってくれたしね。」

ありがたく貰っておこう。

使わないかもしれないが。

妨害系の最高位クォーツはあっても分解するだけだし。

「気にしねーで下せー。遊撃士ってこんなもんですし。」

「そう?…お疲れ様。また何かあったら宜しくね。」

「はい。ではまた…」

遊撃士協会(ギルド)へと戻ると、キリカが般若の形相で待ち受けていた。

解せぬ。




般若のキリカ。
アルシェムの運命やいかに!?
冗談です。

では、また。

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