雪の軌跡   作:玻璃

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依頼消化回そのいちです。

では、どうぞ。


クロノサイダーと恋文、時々運搬車。

遊撃士協会(ギルド)から出たアルシェムは、トラット平原道に出て、ヴォルフ砦の方に向かった。

「お、クロノサイダーはっけーん。」

さくさく討伐。

狩りなれた手配魔獣ほど楽なものはない。

道に沿って歩いていると、少し外れたところに運搬車が見えた。

「次は…あ、いた。運搬車。こしょーかな?」

「ん…?」

「え…まさか、アルシェム嬢ちゃんか!?」

「あ、ブルーノさん?お久しぶりです。今は準遊撃士ですよ。運搬車、こしょーですか?」

どう見てもそうだ。

「ああ…」

「ちょっと見せて下せーね…あー…こりゃダメですね…オーバルエンジン取り替えかー…」

「やっぱりか…」

面倒だ。

これ、オーバルエンジンを取りにいかないといけないから。

「えっと…アルシェム、さん?」

「けーごはいりませんよ。間違いなくわたしが年下なので。ウォンさん…ですよね?」

「ああ…そうだけど。アルシェムはどうしてここに?」

いや、遊撃士(ブレイサー)なんだから依頼を受けたに決まっているだろう。

「手配まじゅー狩りのついでにそーさくに来…た…おっと。」

「へ…」

大量の魔獣が湧いてきている…

「ウォンさん、後ろ任せました!…不破・弾丸!」

「…っ!」

アルシェムは一瞬で片づけたが、ウォンはそうもいかないようだ。

「あーもー!…喝っ!」

思いっきり殺気を込めた気を発したら、あっけなく逃げて行ったが。

「な…」

「ま、魔獣が、逃げた…」

「さて、ブルーノさん?取り敢えず、ツァイスからオーバルエンジン持ってきます。動けたら動いて下せーね。」

「あ、ああ…」

まあ、無理だとは思うのだが。

「後、ヴォルフ砦にこのことを伝えて来ます。」

「宜しく頼むよ。」

ヴォルフ砦へたどり着くと、居眠りをしている緊張感のない兵士がいた。

「…フェ、フェイ!許してくれ!」

「起きろこのポンコツへーし!」

思いっきり鉄拳制裁。

「あべし!…って、君…確か、アルシェム?」

「えー、そーですとも。職務ちゅーに居眠りなんざいーどきょーですね?」

確か…

何て名前だったか忘れた。

フェイさんの彼氏だ。

「う…」

「さては、フェイさんに振られて寝不足とか?」

「ううっ!」

「でもって、手紙でもだそーかと思うけど迷ってると。」

うわ、ベター…

「…そ、その通りだよっ!あ…アルシェム、君、遊撃士なんだね?丁度良かった、手紙を…」

「いーけど、先にこっちの話きーてね。…運搬車、今立ちおーじょーしてるからまだ来ねーよ。」

「!分かった…隊長に伝えておく。」

まずは重要な用事から。

「で、手紙だけど…それだけじゃ弱えー。プレゼントなり何なり、見繕っ…」

「じゃ、頼んだよ!僕は報告があるから!」

「…丸投げされた…」

面倒だが、可愛らしいものでも贈っておけば良いだろう。

ツァイスに戻り、買い物してからカペルを使う。

「…ふーん…地下か…」

地下へと向かうと、ルーディが思いっきり溜息をついていた。

「はぁぁ~…」

「幸せが逃げるよ?ルーディさん。」

「…ん?ああ…アルシェムかぁ…どうかしたのか?」

「トラット平原道で運搬車が立ちおーじょーしてて、オーバルエンジン取り替えしねーと、もー動かねーんです。」

「ああ…ちょっと待ってな。」

オーバルエンジンを手に入れた!

まあ、数がないだろうし確実に届けなければならないのだろうが。

「お待たせ。」

「ありがとー、ルーディさん。じゃ!」

そのまま地下工場へと向かうと、案の定そこにフェイがいた。

「あれ…アルシェム!?」

「今日は準遊撃士です。はい、フェイさん。」

「これは…まさか…」

心当たりがあるのかー。

「そ、あの朴念仁から。あと、これも。」

「わあ…これ、もこもこニット帽…そっかぁ…。ありがとね、アルシェム。」

「返事は伝えなくてだいじょーぶ?」

「…うん。自分で言うよ。じゃ、仕事があるから…」

爆ぜろリア充。

「またね、フェイさん。」

中央工房から出て運搬車のところへと急ぐ。

「早いな、アルシェム嬢ちゃん。」

「はい、オーバルエンジン。はえーこと換えちゃいましょー。」

「ああ。」

「おー…凄い…」

手早く変えると、なぜか賞賛された。

「相変わらず早いな、嬢ちゃん。」

解せぬ。

「いやいや。しどーしちゃって下せーね。」

「よし…」

ブルーノがエンジンをかけると、無事にかかった。

「…ん、だいじょーぶ。」

「相変わらずのクオリティーだな…」

「ま、最近はサボってたけど…ね…」

今はもう遊撃士(ブレイサー)だし。

「じゃ、もう行くぜ。」

「あ、わたしもよーじあるからヴォルフ砦行くよ。」

「そうか?」

あの朴念仁に報告しないといけないし。

「ま、先に行きます。気を付けて下せーね。」

「おう。」

ウォン達より一足早くヴォルフ砦へとつくと、朴念仁が詰め寄ってきた。

暑苦しい。

寄るな。

「ど、どうだった!?」

「ま、喜んでたけど…返事は自分からするって。ちけー内に会いに行ったら?」

「う、うん…ありがとう!」

もう…

自分でやれこのリア充が。

むしろ爆発しろ。

「じゃ、わたしは行きますね。あ、あと、運搬車はもーきますから。」

「分かった!」

アルシェムは全速力で遊撃士協会(ギルド)まで戻った。

勿論、魔獣を一掃しながら。




うん、一日って無茶だと思うんだ。
ご都合主義のタグが仕事し始めましたよ。

では。

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