雪の軌跡   作:玻璃

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ストックがたまってます。
消化しています。
でもね、年内に終わるのかしらこれ。

では、どうぞ。


黒のオーブメント

そして、次はあの黒いオーブメントの番になった。

「次は、あのオーブメントね…」

「ドキドキ、ワクワク…」

そこ、落ち着くように。

「そーちきどー、出力ちょーせーは博士に任せました。」

「出力45%に固定、スタンバイ開始。」

「了解。うんっ、各種測定器、準備完了だよ、おじいちゃん。」

「いくぞい…ポチっとな。」

博士がスイッチを入れると同時に、青い光がオーブメントを包む。

「へえ…如何にもそれっぽい光ね…」

「成る程…」

「ティータや、そっちの反応はどうじゃ?」

「た、タコメーターが…ぶるぶる震えちゃってて…あ、ぐ、ぐるぐる回り始めたよ!?」

これはマズい。

「何じゃと!?」

「博士!ちゅーしして!」

止めないと、導力が…!

黒いオーブメントからあの時の光が放たれる。

「ヨシュア、これ…!?」

「あの時の…!」

「博士っ!どーりょく器が止まってる!やべー!多分波及するタイプだ!」

アルシェムのその声に、エステルが外を見る。

すると、町中の明かりが消えてしまっていた。

「ちょっとちょっと!町中の照明が消えちゃってるわよ!?」

状況を確認するためにヨシュアが外に出る。

「ふえっ!?」

「ええい…仕方無い!これにて実験終了じゃあ!」

名残惜しいのはわかるが、こうなってしまってはどうしようもない。

スイッチを切ると、暫くしてから導力が復旧した。

「あ…」

「はうう~…」

「計器はほぼ全滅か…ヤバすぎるじゃねーの…」

これで、兵器かもしれないという予測はたった。

これが拡大されれば…

どれだけヤバい代物になるだろう。

「良かった、中止したみたいだね。」

外から戻ってきたヨシュアにエステルが声をかける。

「ヨシュア!外はどうだった?」

「うん…照明は戻ったけど、混乱してるみたいだ。」

「そっか…」

そりゃ混乱もするでしょうよ。

「博士…これ、やべーんじゃ…」

「うむ…敢えて表現するならば『導力停止現象』と言うべきかの…」

「…これがもし、量産されたら…」

飛行船が、落ちる。

生活が成り立たない。

マズ過ぎる…!

「広範囲に渡るしのう…面白い、実に面白い!」

「お、面白がってる場合じゃないと思うんですけど…」

そこに、苦労人が駆け込んできた。

「はーかーせーっ!」

「こーぼーちょー、今のはこのオーブメントのせーのー分析の結果です。」

だから博士のせいじゃないよ?

と暗にいうが…

「…何と…って、それが原因でも、博士が無関係な訳あるかぁぁ!」

そりゃ無関係なわけないでしょうに。

「ちっ…」

「舌打ちしたって可愛らしくも何とも無いわぁぁっ!」

「てへ。」

とぼける博士と突っ込む工房長。

何だか哀れになってきた…

「…な、何というか…」

「いつもこんな感じなんだね?」

「あう、恥ずかしながら…」

夜も遅い…

というか、深夜になってしまっていたので、エステル達はラッセル家に泊まらせてもらうことになった。

まあ、博士は寝付けなかったのか、わりと早い時間に中央工房に出かけて行ったのだが。

「おはよー、ティータ。やっぱり博士は行っちゃった?」

分かっていて聞く。

「おはようございます、アルシェムさん。…アルシェムさんの言うとおり、朝早くに…」

「やっぱり。じゃ、朝ご飯作るの手伝うよ。」

「あ、お願いします!」

さくさくと適当に朝ご飯を作り、粗方出来たところでティータに頼みごとをする。

「ティータ、エステル達のよーす見て来てくれる?」

「あ、はい!」

ティータは2階へと上がり、起こした後で階段から顔をのぞかせる。

「…相変わらず、元気だねー…」

「あ、アルシェムさん!エステルさん達、起きてましたよー。」

「りょーかい。じゃ、よーいは出来てるから早く降りておいで。」

「はいっ!」

朝食を手早く済ませ、ラッセル家から出る。

「わたしはギルドに行くけど…エステル達は?」

「うん、取り敢えず報告に行かないとね。」

「あ、そうね…ねえ、ティータちゃん、ちょっと寄り道しても良いかな?」

「はい、勿論です。」

遊撃士協会(ギルド)へと向かう。

朝からキリカの容赦ない口撃か…

「おはよう。昨日は大変だったわね。早速、報告を聞かせて頂戴。」

「はい、それでは…」

やりたがっているように見えたので、ヨシュアに報告の一切を任せる。

「成る程…流石、匿名のカシウスさん宛てだけあって、真っ当な品ではなかったわね。ギルドとしても気になるからこのまま博士に協力して頂戴。…アルシェムは掲示板を片付けて。」

「りょーかい。…エステル達は博士にきょーりょくしてて。片付けとくから。」

それも、早急に。

「あ、うん…じゃあ、博士の所に行ってるわね。」

「何か分かったら報告します。…失礼します。」

エステル達が遊撃士協会(ギルド)から出た後、キリカはアルシェムに1枚の紙を差し出した。

「…それと、これを。」

「…キリカ…これ、でも…」

「これはギルドの総意よ。受け取りなさい。」

今何もしていないのに、推薦状をもらうのはおかしくないか?

「…ありがとーございます。掲示板、取り敢えず出来る範囲で受けるよ。」

「…ああ、ヴォルフ砦に向かった運搬車、余裕があれば探しておいて。」

「…りょーかい。」

「…何か、気になることでもあるの?」

あるに決まっている。

どうして、そこまで推測できるのに…

「…ねぇ、キリカ…キリカは、さ…もう、《飛燕紅児》として…動くことは、ないの…?」

「…多分、無いわ。」

「…そう。…ごめん、忘れて。トラット平原道の手配まじゅー、受けるよ。ついでに運搬車を見つけてくる。」

「行ってらっしゃい。」

キリカと顔を合わせていられなくて、遊撃士協会(ギルド)から出る。

「…バカだな、わたし…期待なんか、しねーって決めたのに…」

期待しても、応えてなんてくれないのが目に見えているのに。

アルシェムは、その場から駆け出した。




空FCは八十話で終わりますよ。
ただね、零とか碧とか、いったい何話になるんでしょうねえ。

FC(80)+SC(30)+3rd(36)=146話。
零(現時点で20)+碧(未知数)。

何て恐ろしい子。
てーか、FC多い。

では、また。

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