雪の軌跡 作:玻璃
では、どうぞ。
そうこうしているうちに、一行はエア=レッテンにたどり着いた。
「うわ~っ!壮観ねえ!」
「これは凄いね…」
「ルーアンって素敵な場所が多いわよね。住んでみたいな…」
住むにはあまり向かないのではないだろうか。
良くも悪くも観光地だし。
「エステルにはムリ。」
「何でよ!?」
「…ぜってー飽きるから。」
景色と滝の音に。
「う…」
「確かにね…」
「にしても…ツァイスか…はぁ…」
行きたくない…
「?どうかしたの?アル。」
「いや…一番推薦じょーが貰えねー場所だから…」
それだけじゃないけど。
「え…どうしてだい?」
「昔色々やりすぎたから、ね…あーキリカに会いたくねー!こーぼーちょー生きてるかな!?ティータ無事かな!?博士にも会いたくねー!」
「あ、アルが壊れた…」
「クスクス…」
笑うな。
結構死活問題なんだから。
「てゆーか、もーあの頃みてーなクレイジィさ溢れる受け方したくねーし!」
「あ、あの…因みに、どんな受け方してたんですか?」
「…手配まじゅー1日20匹とか…手配まじゅーとか…手配まじゅーとか…あ゛ー!思い出したくねー!?」
というか、手配魔獣専門だった。
「…何というか…」
「凄すぎです…」
「ぐだぐだ言わないの!行くわよ、アル!」
エステルに引きずられて、関所まで引きずられていく。
「ヨシュア、たーすっけてー…」
「いや…棒読みで言われてもね…」
手続きを終え、関所の上でクローディアがしんみりとした様子で言う。
「お別れですね…」
「うん…」
「あ…そうだ、エステルさん達とは王都で会えるかも知れません。」
フラグを建てるな。
それはきっと会えないフラグだから。
「女王生誕祭できせーするの?」
「はい。ですから…」
「そうね!また会えるわよね!」
あ、何かわからないけど気配が。
これは…
「うん…じゃあ、そろそろ…」
「また会おうね、クローゼ!」
「はい!」
絶壁の人…!
「あ…っエステル、ヨシュア、先行っててくんない?」
「どうかした?アル。」
「いや…クローゼと内緒のお話。」
「聞いちゃ不味いの?」
よし、誤魔化そう。
「うん。…エステルもヨシュアもきーたら悶絶すると思うよ?」
「悶絶…!?」
「え、つまり…」
「えっちいお話。」
「じじじ、じゃ、後でねっ!」
案の定、先に行ってくれた。
まったく。
「はぁ…全く。世話の焼ける…」
「クスクス…それで…アルさん。お話とは…?」
「シュバルツ中尉にもきーてほしーんだけど…」
その言葉とともに、絶壁の人が現れた。
「…まさかとは思ったが、君がアルシェム・ブライトか…」
「まずは、謝罪を。」
「それはもう聞きました。」
その謝罪じゃない。
本当に、騙していたことへの謝罪を。
「…いいえ。わたしは、貴女達を騙していました。」
「え…?」
「あの時…本当は、意識があったんです。そして、操られてはいましたが、それ以外の理由でも貴女を襲った…」
七耀教会のために。
「それ以外の、理由…?」
「わたしは、《身喰らう蛇》から抜けなければならなかった。」
「それは…どういうことですか…?」
察しても貰えない、か。
残念だ。
「分からないんですか?わたしは、身喰らう蛇を抜けるために貴女を襲いました。きちんと止められるように根回しした上で、ね。」
「…!やはり、あの時いきなりカシウス殿が護衛を買って出たのは…!」
「いえ、そこにどうやって情報が回ったか全然分からないんですが…。」
大方、アインあたりから回ったのだろう。
「いや…事情は分かった。だが、そもそも君は何故その身喰らう蛇とやらに…?」
「…残念ながら、今の貴女方には話せませんね。」
「え…?」
何も知らない、未熟な姫君にはね。
「もしも陛下にお会いできたら、こうお伝え下さい。《ハーメルの首狩り》が更なる真実を知る、と。」
「ハーメルの、首狩り…?」
「もしかしたらお話し下さるかも知れません。…歴史の闇を。」
「闇…」
これで、話の主導権を握れた。
さあ、始めよう。
「本題に入りましょう。…今、各地で動いているのは情報部です。」
「え…?」
「な…バカな…」
いや、気をつけろって言ったでしょうに。
「それに軍も弱みを握られていますからね、実質情報部の傀儡です。」
「そんな…!」
「しかも、先日の一件で恐らく殿下の素性がバレた。裏付けを取られれば終わりでしょうね。」
取るのは簡単だ。
書類を見れば良い。
「アルシェム君、君は何処からその情報を…」
「黙秘します。が…間違いはないと思って貰いたいね。」
「君は…」
「わたしはツァイスに向かい、その後期をみてグランセルへ向かう。出来るだけ手を貸せるようにはする。だから…捕まんないでほしいんだ。」
捕まったら、終わりだから。
「アルさん…」
「捕まったらほぼ詰みだしね。殿下の…いや、クローゼの意志が曲げられちゃうのは嫌だから。」
「…私が責任を持ってお守りしよう。」
本当に守れるのか甚だ疑問だが、絶壁の人に任せることにしよう。
「親衛隊だしね。…あ、そろそろ行かなくちゃ。」
「あ…」
「気を付けてね。…じゃー。」
「また…会いましょう。」
会って、どうする。
やっぱり、今のままでは相応しくない。
そう思いつつ、アルシェムはカルデア隧道に足を踏み入れた。
ああ。
うっすらと殺意を覚えます。
絶対に殺りませんけどねえ。
何てこったい何てこったい。
わあ、文字数が一緒だ。
では、また。