雪の軌跡   作:玻璃

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脳内でドナ○ナが流れる中でも四月になるんですなあ。
ああ、やだやだ。

では、どうぞ。


さよならルーアン

遊撃士協会(ギルド)に戻ると、あからさまに演技をしている格好でジャンが落ち込んでいた。

「は~、まさか親衛隊がアルセイユでご登場とはね…受付の仕事がなきゃ見に行きたかったんだけどな…」

「ジャンさんって意外とミーハーだったのね…」

「ジャンさん、連絡先はレイストンよーさい、リシャール大佐で間違ってねーよね?」

「ああ、そうだけど…何で親衛隊が来たのかは分からないかな。」

マジで何をやっているんだクローディアは。

「連絡系統にも色々あるんでしょうね…」

「あの…今回の事件で、ルーアンの行政はどうなってしまうんでしょうか?」

「市長が逮捕されちゃったしね…どうなの?ジャンさん。」

「取り敢えず市長代理の派遣、市長の有罪が確定し次第選挙かな。…ああ、そうそう、孤児院については正式な補償があると思うよ。」

いや、なかったらクローディアのしたことは無駄だから。

「良かった…これも皆、エステルさん達のおかげです。本当に…ありがとう御座います。」

「もう、水臭いこと言わないでよね。当然のことをしたまでなんだし。」

「僕達だけじゃなくアガットさんも…」

「そうだ、アガット!ねえジャンさん、アガットから連絡は…」

あからさまに残念な顔になったので連絡はないのだろう。

「ああ…残念ながら、黒装束は取り逃がしたらしいけど、切り抜けて今はそのままツァイスに向かうそうだよ。」

あったのか。

「な、何かハードね…」

「アガットなら出来るってカシウスさんが判断したんですよね?」

「えっ!?」

「アル、それどこで聞いたんだい!?」

済みません、ただのカマカケです。

「推測だよ。多分だけど、アガットはカシウスさんに更生させられたんだと思う。で、頭が上がらねー状態でカシウスさんにこき使われてると。」

「それは推測じゃなくて真実なんだけど…」

「それで突っ張ってると。いーめーわくだよね。」

主にこっちが。

「やっぱり父さんのとばっちりじゃないのよ!」

「クスクス…あ、エステルさん達のお父上といえば…」

「…あのオーブメントだね。」

黒塗りのオーブメント。

不可思議な現象を引き起こす、なぜか既視感のある代物。

「コレ、一体何なのかしら…」

「やっぱり、ラッセル博士に頼るしかねーかな…」

「珍しい色のオーブメントだけど…一体どうやって手に入れたんだい?」

「それがね…」

ジャンに説明する。

彼が結社と繋がっていないという保証はないが、仕方がない。

いずれにせよクローディアにも言わなければならないことだ。

そうこうしているうちに、エステルが事情を話し終えた。

「まあ…そうだったんですね。」

「ふむ、R博士にKか…まあ、博士の方はラッセル博士だろうけど…」

「博士、ちゃんとツァイスにいますよね?ジャンさん。…無事かどーかは別にして。」

爆発事故とかで死んでいないだろうか。

有り得そうだし。

「いや、生きてらっしゃるから。で、まあそれを調べるにはツァイスに行く必要がある…」

「そうだけど、あたし達、まだ…」

「ふっふっふ…受け取ってくれ。」

勿体つけずにさっさと渡せ、と言いたかったが、まあ複雑な気分だ。

「これって…!」

「推薦状!?」

「まさかだったけど…ありがとーございます。」

貰ったら、ツァイスに行かなくてはならなくなる。

「当然だよ。」

「え…」

「あれだけの大事件を解決されちゃあ、渡さないわけにはいかないからね。」

解決したのはアルセイユじゃないのだろうか。

「ありがとうございます。」

「えへへ…ありがとう、ジャンさん。」

「良かったですね、エステルさん、ヨシュアさん、アルさん…その…ちょっと、寂しくなってしまいますけど…」

一国の後継者候補がそれで良いのか。

「クローゼ…」

「…そうだね、僕達も名残惜しいよ。」

「ぜってーまた会えるから。」

その不甲斐ない一国の姫を守るために、動かなければならない時が来てしまうから。

「そう…ですよね。あの…出発の日が決まったら教えて貰えませんか?お見送りしたいので…」

そういうクローディアの声は、少しだけ虚無感をはらんでいた。

 

次の日。

「…やっぱりまだね。早すぎたかな?」

「そうだね…」

「そりゃ、30分前だしねー…どっかで時間潰す?」

早すぎる。

暇だ。

「ううん、風も気持ち良いし、ここで待ちましょ。」

「うん、分かった。」

だが、アルシェムの耳には聞こえていた。

鳥の声が。

「…待たなくていーかも。」

「へ?」

「ピューイ!」

ジークはアルシェムの額に直撃した。

「痛っ!?ちょっ、ジーク!刺さってる!刺さってるから!?」

なおもつつき続けるジークをクローディアが止める。

「こら、ジーク!ダメでしょう!?」

「ピュイ。」

ざくっと刺して、ジークは離れた。

痛い。

「最後にさっくり刺さねーでよ…」

「はあはあ…ごめんなさい、お待たせしましたか?」

「いや、エステルの気がはえーだけだから。」

むしろ早すぎるだけだから。

「慌てなくて良かったのに…」

「いえ、お見送りするのに遅れるわけには…」

「クローゼ…もーちょい利己的でもいーと思うよ?」

私の部分はね。

公の部分に出さないように、手綱を握っておいてもらわないと。

「はい?」

「ピューイ!」

ふざけんな!

と、ジークが襲い掛かってくる。

「いてーからね!?」

こっちがふざけんな!

である。

「き、気を取り直して出発しようか?」

「そ、そうね…」

最早諦められたようだ…

そう思いつつ、アルシェムはルーアンを出発した。




桜とかどうでも良いから花粉なんて飛ばないでほしい。

では、また。

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