雪の軌跡 作:玻璃
では、どうぞ。
「ふざけるな…何故平民などに勝利が与えられねばならんのだ!」
酔いに酔いまくったキノコ頭が、暴発した。
「か、閣下…!」
「…下がっていろ、オスカー、ユリウス。皆を避難させよ。あの女は尋常ではないからな。」
仕方がない。
ちょっと笑いを取らせてもらおうか。
「しかし…」
「ええい、やれ!フィリップ!」
「かっ…」
閣下とは言わせない。
これは、芝居だ。
最早茶番だが。
「随分と落ちぶれたものだな、サファイア・フィリップ!(…合わせて。)」
口の動きだけで意図を伝える。
「何をしておる!早くやらんか!」
「私は落ちぶれてなぞおりませぬ。」
分かってくれたようで何よりだ。
「…まさか…アメジスか!おのれ、卑怯な真似を…!」
「ブラッド殿…」
「来い、サフィー!オレがお前を止めてやる!」
というか、断じてこんな話じゃなかったはずなのだが。
何でこうなった。
鍔迫り合い、冗談抜きで火花が散る。
浅く衣装が切れ、冗談ではないのかと話し始める観客。
…仕方がない。
「…飛べ!黎明剣舞!」
おふざけで、技名なんかを叫んでみる。
まあ、クラフトでもなんでもないのだが。
「く…っ!」
「フィリップ!?」
「…滅びよ、王位を脅かす矮小なる雌豚よ。」
キノコ頭を吹き飛ばし、無駄に決めてみる。
「うぎゃああっ!?」
「セシリア様の邪魔はさせぬ。」
「…見事でございます…ブラッド殿。次に相見える時は、本気にて…」
「…待っている。」
いや、待ってないから。
フィリップとデュナンを強制退場させる。
「ブラッド殿!」
「ユリウスか…安心せよ、不逞の輩は去った。そちらは大事ないか?」
「はい…」
さあ、台本に戻ろう。
「それは良かった。オスカーの怪我は?」
「それも大事ありません。」
「これで安心だな。」
もう、後は任せられる。
「安心…とは…?どういう意味ですか!?」
「なに、老害は去るだけのこと…お前達には、もうオレは必要ない。まだまだ甘いところはあろうが…それも若さ故。セシリア様を守り抜けと、オスカーにも…」
「ブラッド殿!どういう意味かと聞いているんです!」
「…こういうことだ。」
引き裂かれた衣装を見せる。
本来ならばちょっとした血糊がつくはずだったのだが。
舞台袖に忘れた…
「…その、傷は…」
「もう、現役ではおれまい。」
「そんな…」
「気張れよ、ユリウス。さもなくばオスカーに姫を取られるぞ?」
本気で。
エステル、気を抜くとクローディアにヨシュアを取られるよ?
「ブッ…!ゴホッ、ブラッド殿っ!?」
ブラッド、退場。
やりきった。
「…ユリウス…ブラッドは、去ってしまったのですか?」
「ええ…」
「そうですか…」
やりきった。
あの、難敵を…
「…さあ、姫。…今日のところは、勝者への祝福を。皆もそれを期待しております。」
「…分かりました。」
キスとみせかけた顔を倒すだけの行為。
「きゃあきゃあ!」
「お2人とも、お似合いです!」
「…空の女神も照覧あれ!今日という良き日がいつまでも続きますように!」
こら、エステル。
動揺しすぎだ。
「リベールに永遠の平和を!」
「リベールに永遠の栄光を!」
そうして、幕が閉じた。
「フ…やはり最後は大団円か…だが、それで良い。」
とかいう気障野郎を放置して。
おお、短い。
活動報告にて、不定期投稿再開のお知らせを出しました。
たまーに投稿するかもしれませんが、まだまだ未定です。
では、また今度。
…エタりませんからね?