雪の軌跡   作:玻璃

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いや、展開自体は何番煎じなんだよってやつですよ。

では、どうぞ。


白き花のマドリガル(後編)

「貴族と平民の争いに巻き込まれるようにして、親友同士だった騎士達は決闘することになりました。彼らの決意を悟った姫はもはや何も言うことが出来ず…かつての英雄ブラッドも止めようとはしませんでした。そして…決闘の日。王立競技場に、セシリア姫を除く各関係者が集まりました。」

セシリアを除く全ての役者が配置につく。

「…ユリウス、オスカー。心の準備は良いか?何かあるなら、今の内に言うと良い。」

ここのつながりがおかしい気がするのだが、ジルに聞き入れられなかったのでもうどうしようもない。

「…我が友よ。こうなれば是非もない…我らは、いつか雌雄を決する運命にあったのだ。…抜け!互いの背負うモノのために!何よりも愛しき姫のために!」

「運命とは自らの手で切り拓くもの…背負うべき立場も、姫の微笑みさえも今は遠い…」

「臆したか、オスカー!」

むしろ臆してくれたほうが話が早く済んでよかったのだが。

「だが、この身を駆け巡る狂おしいまでの熱情は何だ?自分もまた、本気の君と戦いたくて仕方ないらしい…」

「…革命の嵐が全てを蹂躙してしまう前に、剣を以て運命を決せ、若き騎士達よ。彼らの魂を女神も照覧あれ。…いざ…始めよ!」

そうして。

剣舞が、始まった。

それなりにここはアドリブ気味なのでハラハラする。

しかし、台本通りに行っているようだ。

ユリウスがオスカーを押す、というシナリオ通り。

「やるな、ユリウス…」

「オスカー…どうやら、未だ迷いがあるようだな!」

更に押す。

エステル、地味に素質あるのでは?

「どうしたオスカー!お前の剣は、帝国軍を退けた武勲はその程度のモノだったのか!?」

「くっ…おおおおおっ!」

オスカーの反撃。

だが、ユリウスには通らない。

「流石だユリウス…なんと華麗な剣捌きか…く…」

「オスカー、お前…!」

「…問題ない。」

「…ま、まさか…決闘の前に…!?」

その通りです。

「卑怯だぞラドー公爵っ!」

「言いがかりは止めて貰おうか。証拠でもあるのか?」

「父上…何ということを。」

どうでも良いがお2人さんや、決闘はどうした。

「良いのだユリウス。これも自分の未熟さが招いたこと。…ユリウス。次の一撃で全てを決しよう。自分は…君を殺すつもりで行く。」

「オスカー…っ分かった…私も、次の一撃に全てを賭ける。」

「…ユリウス…オスカー…」

ブラッド、密かにレイピアを2本抜く。

間違いが起きないように。

間違っても、稽古用のレイピアで互いを傷つけてしまわぬように。

「生き残った者が全ての責を負うのだ。」

「そして、敗れた者は魂となり見守っていく…それもまた、騎士の誇りだろう。」

「ふふ、違いない…」

そうして、2人は。

「おおおおおっ!」

「はああああっ!」

「く…っ!」

ブラッド…

アルシェムにも止められない速度で、ぶつかった。

間に走りこむの大変だっただろう、セシリア(笑)

「ダメーっ!」

少しだけ間に合った。

ブラッドのレイピアに若干跳ね上げられた剣がセシリアを貫く。

「あ…」

「な…」

「セ…シリア…?」

「間に合わなかったか…っ!」

まあ、誰にも掠っていないのだが。

崩れ落ちるセシリア

「ひ、姫ーっ!」

「セシリア…どうして…」

「オスカー…ユリウス…間に合って…良かった…」

はた迷惑な姫様だ。

「セシリア…」

「ひ、姫…」

「皆も…聞いて…わたくしに免じて…争いは、やめて…少しだけ…愛し方が、違っただけで…皆…リベールを愛する、仲間ではありませんか…」

「お、王女殿下…」

姫じゃないのか。

「もう…仰いますな…」

「ねえ…2人とも…そこに、いますか…?」

「はい…」

「君の、側にいる…」

タラしかユリウス。

ヨシュアの耳元でささやいて…

うわあ、本気で顔が蕩けそうにになっている。

落ち着けヨシュア。

「不思議…懐かしい…あの頃の…路地裏の…オスカー…ユリウス…楽しそうに笑って…わたくしは…2人の、笑顔が…大好き…いつも…笑って…」

セシリア、色々な意味で力尽きる。

「姫…嘘でしょう、姫!頼むから嘘だと言ってくれ!」

「セシリア…自分は…」

「…何が英雄か…姫様1人守れぬ男が…何故、止められなかったか…っ何が貴族かっ!…何が平民かっ!姫様を仰いでこそのリベールではないのかっ!」

このセリフが恥ずかしくて仕方がない。

「人は、いつも手遅れになってから過ちに気付く…これも人の子としての宿命か…女神よ、大いなる空の女神よ、お恨み申し上げますぞ…」

光量が落ち、中央に光の柱が現れる

「まだ…分かっていないようですね。」

女神がそれぞれを諭し。

そして、消えていった。

「ああ…」

「消えてしまわれた…」

「…ん…あら…ここは…」

セシリア、起き上がる。

「ひ、姫っ!?」

「セシリア!?」

「まあ…まさか、あなた達まで天国に…?」

そんなわけあるか。

「奇跡だ…」

「姫様~!」

「本当に、本当に良かった!」

「ぎ…きゃっ!?…あら…わたくし…死んだはずでは…?オスカー…ユリウス…これは一体…」

おい、ヨシュア。

今本気でぎゃって言いそうにならなかったか。

「セシリア様…もう心配することはありません。永きに渡る対立は終わり、全てが良い方向に流れるでしょう。」

「甘いなオスカー、決着はまだ着いていないはずだろう?」

「ユリウス…」

「そんな…まだ戦うのですか?」

男の子(役)ですから。

「今回はオスカーの勝ちだ。」

「ええ、ブラッド殿の仰るとおりです。そこの大馬鹿者は怪我を乗り越え互角だったのです。」

「待て、ユリウス!」

本気で落ち着け、クローディア。

「そう焦るなオスカー。後でユリウスとみっちりねっとり心行くまで争うと良いさ。ただし、木剣でな。」

「はは…」

順調だった。

本当に順調だった。

ここまでは。




次回でしばらく投稿が止まる気がします。
ある意味キリが良い。

では、また。

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