雪の軌跡   作:玻璃

53 / 269
良いタイトルが思いつきませんでした。

では、どうぞ。


学園祭って、こんなに忙しいものだっけ。

前日、稽古を終えた後は手伝いに奔走した。

「これで良しっと…」

あらかた手伝いを終え、休憩しようとしているとエステル達が近づいてきた。

「あれ、アル?」

「あ、エステル、クローゼ、ジル。どーしたの?」

「今から夕食会をしようと思うんですけど…」

「あー、行ってもいーなら行くよ?」

一線は引いておく。

いずれ、会わなくなる人たちなのだから。

「モチ、良いに決まってんでしょ。てか来なさい。」

「あはは…」

アルシェムは、強制的にクラブハウスへ連行された。

「お待たせ~。」

「ふ~、みんなお疲れ~。」

「お疲れ様、ジルさん。」

「早速料理を注文するか。」

料理を注文し、待っている間に話す。

「あ~、もう疲れたわよ…」

「お疲れ様、ジル。でも今日で終わりなんじゃねーの?」

「そうよ。ホント、気合い入れ直さなきゃ。新しい仕事も出来たことだしね。」

「新しい仕事?」

…手伝えることなら手伝っておこう。

それが、遊撃士だから。

「後で相談するわ。…じゃ、エステル、アル、ヨシュア君。明日は宜しく頼むわね!」

「うん、任せて!」

「精一杯頑張らせて貰うよ。」

「右に同じ。じゃージル、乾杯の音頭でも取ってみねー?」

話を長引かせたくなかったし、何よりも飲み物が来たので話を中断させた。

「そうね。カンパーイ!」

「乾杯。」

思いっきり騒いで、ソフトドリンクを呑んで。

疲れ切った皆は、眠りについた。

だけど…

アルシェムは、眠れなかった。

「…アルさん…?眠れないんですか?」

クローディアはなぜか起きていたようだ。

まあ、気になったのだろう。

「はい…まだ…信じられなくて…寝たら、醒めちゃうんじゃないかって…」

「醒める…ですか?」

「だって…おかしいでしょ?犯罪組織にいたはずの人間が…こんな、幸せな夢を見られるなんて…嘘だとしか思えない…」

一瞬後で、殺されていてもおかしくない世界で生きていたのに。

皆が平和すぎて。

泣きたく、なった。

「嘘なんかじゃありませんよ。アルさんが掴み取った平和です。」

「平和…ですか…?」

「…え?」

平和なんて、一時的なもの。

すぐに、混沌と混乱が待ち受けている。

「今に、大変なことが起こる…そんな気がしてならないんです。」

「…それは。」

「…わたしから言えるのは1つだけです。…情報部に、気を付けて下さい。」

一番キナ臭くて、伝えられるのはそこだけだから。

「…!」

「助けに行けるなら、行きますから。だから…捕まらないで下さい。」

「…分かりました。肝に銘じます。…もう、遅いですし寝て下さい、アルさん。」

優しいのか、偽善なのか。

嘘でも良いから、優しさであって欲しかった。

「はい。…おやすみなさい、クローゼ…」

 

学園祭当日、用意を済ませた後は、自由行動にさせてもらった。

集団で回るのは慣れないのだ。

「…アイツは…まさか、ゲオルグ…?…まさかね、こんなとこにいる訳ねーよね…」

ふと目を逸らすと、そこには白銀の髪の…

「…まさか、か…レオン兄。」

「?…少し聞きたいことがあるのだが。」

「何ですか?」

どうして、話しかけてくるんだろう。

今は敵なのに。

「お前の記憶は戻っているか?」

「…?何のことですか?」

それは、こちらのセリフだ。

「いや…良い。急に済まなかった。ではな。」

「…はー…待って下せーね?記憶はさておき、お礼くらいはさせて下さいませんか?」

「…何のことだ?」

しらばっくれるつもりか。

でも、そうはいかない。

「孤児院の火事。あの場にいたあなたにはじじょーを聞くひつよーがあるんですよ?」

「…聞くな。」

「答えられねー、ですか。…はあ。これ、あげます。」

「…何だ?」

お守りだ。

発信機付きの。

「お守りです。あなたのばーい、めんどくせーことに首を突っ込みたがりそーですからね。」

「…否定は出来ないな。」

「じゃー、また会いましょー。何時か何処かで、機会があるのなら。」

すぐに壊されるのかもしれなくても。

少しだけでも、繋がっていたかったから。

「…ああ。」

レオン兄が去った後、劇の準備を知らせるアナウンスが流れた。

「行くか…」

控え室に行き、更衣室で手早く着替える。

「お待たせ。」

「何でギリギリなの!?もう…」

「…少し…考え事してた。」

とても、酷い顔をしていたようで。

エステルに心配そうな顔をされてしまった。

「…もしかして…記憶が?」

「後で話すから…きーて?」

「うん…」

そうして、皆が位置につき…

緞帳が、上がった。




おお、今回は短かった。
次回から、三部作「白き花のマドリガル」開幕です。
表記方法にちょっと問題ありかもしれないです。

では、また。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。